白姫抄

白姫抄

オムニバス形式のCLAMP初の全編描き下ろし作品。雪を生むといわれる雪の神である白姫と白姫の涙にまつわる3つの話を、雪山を往く男が、偶然出会った女に語って聞かせる形で描かれる。

正式名称
白姫抄
ふりがな
しらひめしょう
作者
ジャンル
時代劇
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あらすじ

序、終

吹雪く雪山の中で、は白い着物に身を包んだ美しい女に出会う。なにかを待っているというその女に早い帰宅を促すため、男は雪の神である白姫白姫の涙にまつわる話を語って聞かせることにする。雪の降る日は悲しい出来事が起こる、という言い伝えを話す男を、女は静かに否定する。

牙狼の山

人食い狼に父親を食い殺された少女、吹雪は、父親の仇を討つために形見の刀を携え、1人で雪山へと入る。雪で視界が悪くなるなか、吹雪は山犬の群れに襲われるが、仇である狼に命を救われることになる。自分に危害を加えることもなくただ見守る狼に、「犬鬼」という名を付けた吹雪は、洞窟でともに暮らすようになる。

氷の花

山中にある雪深い村に住む男が、村から出ることになった。男は湖の淵で、愛する少女である花鵺に、必ず帰ると約束する。花鵺はそれに対し、男の帰りをこの場所で待ち続けると湖に誓った。しかし男が帰ったのは、約束の日から30年余りが過ぎてからだった。

比翼の鳥

身分違いの恋人、雪野を娶るための手柄を立てようと戦に出た男が、夜の雪山で道に迷ってしまう。遭難して死を目前にした男は、偶然目にした番いの鷺を妬み、一羽を射殺して留飲を下げる。しかし、その後も道に迷い続けて帰郷を諦めかけた男の前に、頭蓋骨を抱いた美しい女が現れて道を指し示す。

登場人物・キャラクター

白姫 (しらひめ)

エピソード「序」「終」に登場する。雪のように白い肌と漆黒の髪を持ち、白い着物を重ねて身につけた女性。一目見た男が見惚れるほどに美しく、目尻と唇に挿した紅が目を惹く。雪の神とされており、狼の霊体に乗って移動する。

(おとこ)

エピソード「序」「終」に登場する。若い男で編み笠を被り、着物の上から毛皮を着こんでいる。雪山に佇む白姫に目を止め、早い帰宅を促すため話しかけ、白姫の涙にまつわる3つの物語を語って聞かせる。

吹雪 (ふぶき)

エピソード「牙狼の山」に登場する。闇色の狼に父親を殺された少女。父親の仇を討つために形見の刀を携えて山に入ったところ、山犬の群れに襲われる。仇であるはずの狼に二度も助けられたことから復讐心が消え、「犬鬼」と名付けてともに暮らすうちに、一緒に生きたいと願うようになる。

犬鬼 (いぬき)

エピソード「牙狼の山」に登場する。吹雪の父親を殺したとされる狼。闇色の毛皮と血色の瞳を持つ。人を食う魔物とも呼ばれ、吹雪に狙われていた。しかし手負いの吹雪を、山犬から二度守っている。冬の雪山でも毎日獲物を持ち帰れるほど、狩りの能力に長けている。吹雪から犬鬼という名前を付けられた。

吹雪の母 (ふぶきのはは)

エピソード「牙狼の山」に登場する。吹雪の母親で、夫の仇を討ちに山へ向かう娘を送り出した老婆。娘の勝利と無事の帰宅を信じて送り出したが、雪の止んだ日、蓑と編み笠をまとって山に入った。夫の死を目撃し、犬鬼を憎んでいる。

武家の男 (ぶけのおとこ)

エピソード「氷の花」に登場する。回想では武家の若々しい青年だったが、今はやつれて髭も蓄えている老人。かつて何らかの理由で雪深い村から出ることになったが、花鵺に帰郷を約束していた。30年余りが経過してようやく帰郷に至り、約束を交わした湖で花鵺を探す。

花鵺 (かや)

エピソード「氷の花」に登場する。武家の男の恋人で、回想当時には17歳の少女。村を出る武家の男に対し、春でも水が温(ぬる)むことのない冷たい湖に誓って、いつまでも変わることなく帰郷を待つと約束して、涙ながらに見送った。

若い武者 (わかいむしゃ)

エピソード「比翼の鳥」に登場する。身分違いの恋人である雪野を娶るための手柄を立てようと、戦に参加した青年。吹雪の夜、雪山で道に迷って戦場からも離れてしまった先で、仲睦まじい鷺の番を見かけて嫉妬し、一羽を射殺してしまう。

雪野 (ゆきの)

エピソード「比翼の鳥」に登場する。若い武者の身分違いの恋人である少女。父親が権力者で、若い武者に嫁入りするためには、武者が戦働きで手柄を立てる必要があった。本人は戦を嫌い、武者が戦に参加するのを反対していた。

頭蓋骨を抱いた女 (ずがいこつをだいたおんな)

エピソード「比翼の鳥」に登場する。雪に埋もれて死に瀕した若い武者の前に現れた不思議な女性。裾と袖が鳥の翼のようにざんばらになった着物をまとい、常に悲しそうな目をしている。腕の中に大事そうに頭蓋骨を抱え、武者に麓を指し示す。

その他キーワード

白姫の涙 (しらひめのなみだ)

作中における雪の別称。雪が降る日は白姫が泣いているとされ、さらに、雪が降る日には、悲しい出来事が起こるとも言われている。しかし白姫本人はそれを否定し、人の悲しみこそが雪を呼ぶため、雪は人の子の涙だと告げている。

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