神威事変

神威事変

謎の生物兵器「黒の神骸」と、その眷属である黒の軍勢たちによって蹂躙しつくされた20世紀の日本を舞台に、雷電兵と呼ばれる特殊部隊が白の神骸と共に、故郷を奪還すべく戦い続ける。第一世代雷電兵の一人である都築誠一郎と、志願兵である朝倉慶一郎の視点から、人類と黒の軍勢の死闘を描いたダークファンタジー。物語は、日本における黒の軍勢との決戦を描いた「東京編」と、人類が初めて黒の神骸を打ち倒すまでの展開を描写した「京都編」で構成されている。「別冊少年マガジン」で2019年6月から2020年4月にかけて連載された作品。

正式名称
神威事変
ふりがな
かむいじへん
作者
ジャンル
ダークファンタジー
関連商品
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あらすじ

東京編(第1巻)

1931年、日本における人類と黒の軍勢の戦いは、佳境を迎えようとしていた。6年前の京都における勝利に沸き立った人類は、徐々に黒の軍勢の勢力圏を削っていき、かつての首都である東京にまで到達する。そして、雷電兵の総指揮官である大迫玄武により、ついに東京奪還作戦が発令される。故郷奪還に燃える日本人たちは、銃を手に果敢に立ち向かい、黒狐が続々と繰り出してくる小型級を打ち倒していく。かつて浅草で暮らしていたという中隊長の東条もまた、部下の西田と共に血路を拓くため奮闘する。しかし、無限とすら言える数の小型級を相手に疲弊していき、ついには身体の一部が欠損するほどの重傷を負ってしまう。絶体絶命と思われたその時、都築誠一郎都築班のメンバーと共に駆けつけ、東条の窮地を救う。都築は、都築班と久我なお美にその場を任せて、白の神骸白刃を駆りつつ、東京の地下深くに眠る龍骸をいぶり出すために、単身で東京駅へと特攻をかけ、女王の護衛を担っている黒狐と対峙する。都築を恩師と仰ぐ倉敷伊織も、彼をサポートするために全力で敵の中核を探ろうと観測の能力をフルに使い、女王の本体が地中に埋まっていることを突き止める。ほかの黒の神骸すら比べ物にならないほどの巨体と能力を誇る女王の姿に人類は戦慄するが、都築は戦意を漲(みなぎ)らせつつ、白刃が限界にまで高めた電力を地面に流し込み、ついに龍骸を地上におびき出すことに成功する。これを好機と見た第一雷電兵団のメンバーたちは、持てる戦力のすべてを投入し、龍骸と黒狐との最後の戦いに臨むのだった。

京都編(第1巻~第2巻)

1925年の京都東京黒の軍勢の手に落ちてから、2年の月日が流れていた。志願兵として京都を訪れた朝倉慶一郎は、街の中に突如出現した黒狐の襲撃に巻き込まれる。黒狐が放出した小型級によって街は蹂躙され、朝倉も重傷を負うが、現れた白の神骸によって窮地を救われる。しかし、白の神骸の白刃に乗っていた日向いつきも致命傷を負っており、最後の手段として自らを白刃に食わせて再起動させ、再生能力で朝倉を救うよう仕向けた。九死に一生を得た朝倉は白刃と同調を果たし、雷電兵の育成機関へと身を投じる。山城継道の率いる第一班に入った朝倉は、同期生となる加賀美ゆれ鋼田哲将と出会い、親睦を深めるが、日向に仲間意識を抱いていた都築誠一郎から一方的に敵愾心を向けられてしまう。そして、朝倉は自分の適性もわからぬまま、前途多難な日々を過ごすが、日向に対する思いをぶつけ合うことで、都築と徐々にお互いに歩み寄っていく。そして、訓練を重ねたある日、雷電兵を率いる大迫玄武から、旧最終防衛線奪還作戦が発令される。初の実戦へと赴いた朝倉は、予想以上に善戦できている自身に驚きつつ、援護に訪れたという大月班のメンバーたちと共闘する。しかしそこに、新型の黒の神骸である蝙蝠扇が現れ、数多の小型級が待ち受ける穴の中に誘い込まれてしまう。大月班のメンバーたちが次々に倒れ、第一班も危機に陥るが、朝倉が特異型として覚醒したことで難を逃れる。そして、未来を予知する能力を駆使し、都築と彼のあやつる白の神骸の蛇骨と連携して蝙蝠扇を打ち倒す。初めて黒の神骸を討ち果たした人類は旧最終防衛線の奪還に成功し、のちに控える東京奪還作戦への足掛かりを得るのだった。

登場人物・キャラクター

都築 誠一郎 (つづき せいいちろう)

第一雷電兵団に所属している青年。都築班の教官を務める。第一世代の雷電兵で、強襲型に分類される。不愛想な性格で、ぶっきらぼうな物言いをすることが多い。しかし面倒見は悪くなく、教え子である加賀美あきらや加賀美じゅん、倉敷伊織からは慕われている。また、同僚である久我なお美からはからかわれることが多く、都築誠一郎自身も彼女の不真面目な一面を快く思っていないが、お互いに力量を認めている。京都襲撃以前から第一線で戦い続けており、東京奪還作戦では第一雷電兵団の主力として前線に切り込み、東京を制圧している黒狐を引きずり出す活躍を見せる。第一世代の雷電兵に対しては、表面には出さないものの特別な仲間意識を持っており、京都で活動していた頃は、仲間の一人だった日向いつきが死亡する原因となった朝倉慶一郎に、強い敵愾心を抱いていたこともあった。また、その影響から彼とチームを組むことになった鋼田哲将や、加賀美ゆれとの関係もギクシャクしていた。しかし、朝倉が日向のためにも強くなることを志し、それが決して口先だけではないことを理解すると、徐々に彼らを認め始める。そして、旧最終防衛線奪還作戦で朝倉と連携して黒の神骸の蝙蝠扇と戦い、これを倒した。旧最終防衛線奪還作戦終結後は、第二世代の雷電兵を全面的に頼ることを決め、朝倉とも良好な関係を築く。また、その際に彼から先生に向いているのではないかと冗談交じりに言われており、このことが、第三世代の雷電兵となる少年たちを育成するきっかけの一つとなった。

朝倉 慶一郎 (あさくら けいいちろう)

黒の軍勢と戦うべく、軍人として志願した14歳の少年。集合場所である京都の比叡山に向かう途中、無数の小型級を従えた黒狐の襲撃に巻き込まれた。その際に、民間人を守ろうとして重傷を負うが、日向いつきの犠牲によって救われ、彼の搭乗していた白刃と接続したことで第二世代の雷電兵となる。そして、雷電兵の育成施設へと招集され、第一班の一員として迎え入れられた。同僚の一人である都築誠一郎からは、日向の死因を作ったことで憎まれており、一時は命を狙われたこともあった。しかし、命を救ってくれた日向に報いるために強くなることを誓い、加賀美ゆれや鋼田哲将と親交を深めつつ白刃を使いこなすための特訓に明け暮れ、次第に都築からも認められるようになっていく。当初は強襲型と考えられており、観測型である加賀美や放出型の鋼田を守る役割を担っていた。しかし、のちになって未来予知の能力を持つ特異型であることが判明し、第一班の作戦のバリエーションを増やすためのキーパーソンとなった。旧最終防衛線奪還作戦では、前線に出た都築と山城に代わり、合流してきた大月班のメンバーと共に、山城班の中核として戦い抜いた。さらに蝙蝠扇と戦う都築と合流し、予知能力を活用して、姿を消す敵の攻撃をかわしつつ、反撃のチャンスをうかがう。そして、相手が攻撃する際に生じるスキを突く作戦を成功させ、都築との連携攻撃で蝙蝠扇を撃破した。作戦終了後は、都築と対等の戦友となり、彼の面倒見がいい一面を指摘すると共に「将来、いい先生になるかもしれない」とからかい半分に口にした。これは、都築がのちに倉敷伊織や加賀美あきら、加賀美じゅんの教官として活動するきっかけの一つとなる。東京奪還作戦までのあいだに生死不明となったが、搭乗機として使用していた白刃は都築に託され、東京奪還作戦の中核を担うこととなった。

白刃 (しらは)

東京奪還作戦において、都築誠一郎が乗り込んだ白の神骸。腰に当たる部分から長い鞭を伸ばし、自由にしならせつつ敵を攻撃する能力を持つ。単機で小型級の大隊をたやすく殲滅するほどの戦闘能力を誇り、都築とシンクロすることによって、黒の神骸である黒狐とも互角以上に戦うことが可能。そのため、司令官の大迫玄武からは、作戦の切り札の一つとして重用されている。倉敷伊織の観測によって、女王が地中にいることを突き止めると、地中に強力な電流を流し込み、その姿をさらした。6年前は日向いつきによって運用されており、3時間もの作戦時間を誇る名機として知られていた。しかし、京都が黒狐に襲撃された際に損傷した挙句、操縦していた日向が致命傷を負い、さらに彼に助けられた朝倉慶一郎も命にかかわる重傷を負っていたため、日向が自らを犠牲にして白刃を修復し、復元された自己修復機能を利用することで、朝倉を新たな搭乗者として選定する。さらにその際に、朝倉を雷電兵として覚醒させ、日本において二人目となる特異型の雷電兵を生み出すきっかけとなった。

久我 なお美 (くが なおみ)

第一雷電兵団に所属している女性。第一世代の雷電兵で、特異型に分類される。エキセントリックな性格で、つねに露悪的な立ち振る舞いを見せる。そのため、都築誠一郎から苦言を呈されることが多いほか、彼の教え子である倉敷伊織や加賀美あきら、加賀美じゅんなどからも、時おり辛辣なツッコミを入れられることがある。しかし、倉敷が都築のサポートを行うために深入りしようとした時は、説得して思いとどまらせるなど仲間を思いやる気持ちは強く、都築や都築班からは内心で強く信頼されている。また、情に流される危うさを知っており、都築がかつての仲間の無念を晴らすために命を捨てかねないことを懸念している。第一世代ということもあり実戦経験が豊富で、東京奪還作戦では第一雷電兵団に的確な指示を下して、都築が黒狐を追い込む助けとなった。なお、都築や山城継道など、仲間の第一世代が京都にいた時は生死不明の扱いとなっており、旧最終防衛線奪還作戦には参加していない。

倉敷 伊織 (くらしき いおり)

第一雷電兵団に所属している少年。都築班の班員を務める。第三世代の雷電兵で、観測型に分類される。まじめな性格で、教官の都築誠一郎を慕っている。また、子供ながら頭脳明晰で、都築から感心されるほど。一方で、久我なお美に対しては、得体の知れない部分が見受けられるほか、性格的な相性もあまりよくないため、一歩引いて接している。しかし、力量や統率力は認めており、彼女の判断にはおとなしく従うことも多い。戦闘能力は同期の加賀美あきらや加賀美じゅんに及ばないものの、観測型としての資質は群を抜いており、東京奪還作戦では地中に潜んでいた龍骸の姿を的確に観測し、その全貌を第一雷電兵団のメンバーたちに公開することで、作戦の成功に大きく貢献した。

加賀美 あきら (かがみ あきら)

第一雷電兵団に所属している少年。加賀美じゅんの双子の兄で、加賀美ゆれは姉にあたる。第三世代の雷電兵で、強襲型に分類される。同期であるじゅんや倉敷伊織と比べると直情的な性格で、歯に衣(きぬ)を着せない発言が目立つ。特に、久我なお美とはよくふざけ合っている。その一方で、直属の教官である都築誠一郎には時おりキツい発言を向けることもあるが、彼の持つ雷電兵としての実力にあこがれている。京都にいた頃はまだ幼かったが、現在とあまり変わらず生意気ながらもまっすぐな性格で、じゅん共々ゆれに手をかけることも多かった。また、都築や朝倉慶一郎、鋼田哲将とも知り合いで、特に都築とは長年にわたって付き合いを続けてきた。黒の軍勢との戦いでは、電気をまとった二振りの刀を使用する。

加賀美 じゅん (かがみ じゅん)

都築班の班員を務めている少女。加賀美あきらの双子の妹で、加賀美ゆれは姉にあたる。第三世代の雷電兵で、強襲型に分類される。冷静な倉敷伊織やあきらと同様に、教官である都築誠一郎を慕っている。また、ほかの都築班のメンバーたちと異なり、久我なお美の言っていることを最初から正論と認めているが、性格自体はあまり快く思っておらず、仮に都築がいなくなった場合、彼女が新しい教官になる可能性が生じることを懸念している。ふだんは理知的で冷静な判断力を見せるが、戦闘を好む一面があり、小型級を発見するとすぐに武装を展開して挑みかかる悪癖がある。一方で、慎重かつ用心深いところもあり、都築に自分たちは黒の神骸や黒の軍勢に勝つことができるかどうか問いかけたこともある。京都にいた頃はまだ幼く、あきら共々ゆれに手をかけることも多かった。また、都築や朝倉慶一郎、鋼田哲将とも知り合いで、特に都築とは長年にわたって付き合いを続けてきた。黒の軍勢との戦いでは、身の丈ほどもある巨大な鎌を自在に振るう。

東条 (とうじょう)

東京奪還作戦に参加した日本兵の青年。部隊の中隊長を務めている。前向きな性格で、西田などの部下に気さくに接したり、多数の敵の前でも軽口を叩いたりすることで東条自身や、仲間たちの士気を高めることが多い。浅草の生まれで、故郷に格別の思い入れを抱いている。そのため、東京を奪還したいという思いは非常に強く、雷電兵でないにもかかわらず前線に赴き、黒狐の生み出した小型級に果敢に挑みかかる。圧倒的な敵兵力の前に、一度は逃げることも考えたが、倉敷伊織のような子供が戦場に出ていることを考え、奮起する。そして、戦いが進むにつれて多数の小型級の前に苦戦を強いられていき、一時は身体の一部を失うほどの重傷を負わされる。迫り来る軍勢を前に死を覚悟するが、駆けつけてきた都築誠一郎によって救われる。その際に、雷電兵や白の神骸がもたらす圧倒的な戦闘力を目の当たりにし、彼らなら黒狐にも勝てるという希望を胸に、都築を激励する。その後は部下たちの治療によって一命を取り留め、都築と彼の部下たちの進軍を見届けた。

西田 (にしだ)

東京奪還作戦に参加した日本兵の青年。東条の部下で、階級は少尉。まじめな性格で、頼れる隊長として東条を慕っている。地方の出身で、作戦実行の際に初めて東京に赴いた。戦い慣れしておらず、仲間に犠牲を強いるような決断を恐れる傾向にある。東条のことを信頼しつつ共に戦ったが、限りなく現れる小型級に仲間たちを倒され、47名もの犠牲を出してしまった際には、恐怖のあまり身体がすくみ、しばらくのあいだ動くことすらできなかった。

大迫 玄武 (おおさこ げんぶ)

日本軍の司令官を務める男性。山城継道とはかつての戦友の間柄で、東京奪還作戦や旧最終防衛線奪還作戦など、多くの作戦を指揮してきた実績を持つ。雷電兵の育成から戦線への投入までを一手に引き受けており、彼らに多大な信頼を寄せる。中でも、都築誠一郎の実力を非常に高く評価しており、黒の神骸を打倒するための切り札の一つと認識している。いかなる時でも平静を心がけており、劣勢を強いられてもなお、軽口を叩く心の余裕を持ち合わせる。これは、指揮する人間がうろたえては、部下たちの不安につながるという考えによるものだが、不用意な発言を仲間からたしなめられることもある。東京奪還作戦では、黒の神骸の所在をつかむよう指示を出し、第一雷電兵団の倉敷伊織の活躍によってこれを成功させる。その際、東京駅を制圧している龍骸の体軀が最低でも500メートル以上あることを知りつつも、決してひるむことなく部下たちに指示を出し、作戦を成功へと導いた。旧最終防衛線奪還作戦では、雷電兵の多くが子供であるという事情を鑑み、戦線への投入に慎重になっていたが、4機の黒の神骸が活動を開始したことで進退窮まり、彼らの投入を決意した。

黒狐 (くろぎつね)

黒の神骸の一体。かつて猿鬼、三千鴉と共に東京を襲撃して制圧し、黒の軍勢の本部を築き上げた。それから2年のあいだは、大きな動きを見せることなく傍観に徹し、やがて単身でロシアへ赴く。しかし、1925年を迎えると、不意に京都に現れ、多くの小型級を生成して大規模な攻撃を仕掛ける。それによって京都の半分を焦土と化したほか、日向いつきが戦死し、朝倉慶一郎が白刃の搭乗者となるきっかけを作った。しかし、それ以上攻め入ることはなく、早々に東京に戻ってしまい、その先で三千鴉や猿鬼、チェシャと合流した。東京奪還作戦では龍骸の護衛に徹しており、彼女と共に作戦の最終目標として認識される。本来は白の神骸の10倍以上の戦闘能力を誇るとされているが、都築誠一郎と接続することで規格外の力を得た白刃に、一方的に圧倒される。

龍骸 (りゅうがい)

黒の軍勢の頂点に立つとされる神骸。当初は、黒の神骸たちを統率することから「女王」と呼ばれていたが、実際の姿が龍を思わせる形状をしていたことから「龍骸」と呼称されるようになる。黒の軍勢のほとんどは龍骸が生成したものとされており、龍骸が倒れれば黒の軍勢の増殖は止まり、やがて滅びるといわれている。白の神骸を早い段階から兵器として利用した日本を最も重要視しており、黒狐たちが制圧した東京の地下に身を隠し、長い時をかけて脱皮を繰り返しながら力を蓄えていた。その結果、500メートル以上の体軀を誇り、複数の尻尾を備えるなど、ほかの黒の神骸よりはるかに巨大、かつ強力な性能を有するに至る。東京奪還作戦の最終目標として設定されるが、倉敷伊織が観測した姿を目の当たりにした軍司令部に大きな衝撃を与えた。しかし、白刃を駆る都築誠一郎が地中に大量の電気を送り込むことで姿を現し、第一雷電兵団と最後の戦いに臨んだ。

日向 いつき (ひゅうが いつき)

白の神骸の白刃の搭乗者として活動していた青年。第一世代の雷電兵で、観測型に分類される。正義感が強く温和な性格で、第一世代同士の戦友であった都築誠一郎や、教え子の加賀美ゆれと鋼田哲将から慕われていた。しかし、京都に侵攻をしかけてきた黒狐を止めるために白刃と共に出撃し、朝倉慶一郎を守って重傷を負う。さらに、朝倉自身も命にかかわる傷を負っていたため、自らを白刃に取り込ませて白刃の機能を回復し、彼の自己修復機能を使って朝倉の命を助けることを選んだ。日向いつきの死は、単純な戦力喪失にとどまらず、都築が朝倉に対して長いあいだ不信感を抱く原因にもなるなど、強い悪影響を及ぼした。

加賀美 ゆれ (かがみ ゆれ)

山城班に所属している少女。加賀美あきらと加賀美じゅんの姉。第二世代の雷電兵で、観測型に分類される。白の神骸を2時間にわたって操縦することが可能で、この稼働時間は日向いつきに次ぐ。気が強く、やんちゃな弟妹を叱っていくうちに面倒見がよくなり、朝倉慶一郎や鋼田哲将にも一目置かれている。一方、都築誠一郎とは相性が悪く、彼にブスと言われてからはますます目の敵にするようになる。ただし、朝倉が都築と向き合う決意を固めると、それに協力するそぶりを見せるなど、本質的には仲間想いな性格の持ち主。旧最終防衛線奪還作戦では、朝倉や鋼田、そして大月班のメンバーと共に進軍するが、そこに現れた蝙蝠扇の攻撃によって地下区域へと落とされる。さらに、蝙蝠扇が生成した小型級の軍勢に襲われて絶体絶命の危機に陥るが、朝倉の未来予知の能力によって窮地を脱し、観測の力を使って逃れる道を導き出した。作戦終了後は山城の仲間たちと訓練を重ねつつも、ここから先も勝てるかどうか不安がる一面も見せた。そして、東京奪還作戦までのあいだに生死不明となるが、その意思はあきらとじゅんに受け継がれている。

鋼田 哲将 (ごうだ てっしょう)

山城班に所属している少年。第二世代の雷電兵で、放射型に分類される。兄の鋼田将生を尊敬しており、彼のようになりたいと考えていた。しかし、将生が黒の軍勢と戦うために志願兵になり、その2か月後に戦死すると、鋼田の母親が塞ぎ込み、さらに周りから将生の無念を晴らすために戦うよううながされ、流されるままに軍人を志して雷電兵となった。当初は戦う覚悟を決められず、将生のかたき討ちに関しても義務感によるところが大きかったことから、自分の命を賭してまで行うべきものとは思っていなかった。また、かつての仲間を思うあまりかたくなな姿勢を取る都築誠一郎や、日向いつきへの恩返しのためにがむしゃらになる朝倉慶一郎のことも、どこか冷めた目で見ていた。しかし、力を持つ者が、力を持たない者を助けるために自然と身体が動く自分に気づくと、彼らの思いを理解し、真の意味で共に戦う仲間として認めるに至った。旧最終防衛線奪還作戦では、朝倉や加賀美ゆれ、そして大月班のメンバーと共に進軍するが、そこに現れた蝙蝠扇の攻撃によって地下区域へと落とされる。しかし、朝倉の未来予知の能力によって助けられ、生還した。

山城 継道 (やまぎ つぐみち)

雷電兵の育成施設で教官を担当している男性。階級は少佐。第一世代の雷電兵で、強襲型に分類される。都築誠一郎や日向いつき、久我なお美など、第一世代の雷電兵たちとは長いあいだ戦友として共に戦っており、大迫玄武とも親しかった。黒の軍勢との戦いの中で顔を負傷し、それからはマントをかけて隠している。本来は、牧と共に日向のサポートにまわる予定だったが、黒狐の襲撃によって日向が命を落としたため、彼に代わって第一班の教官に就任した。15歳以下の少年少女である第二世代の雷電兵が戦わざるを得ない現状を強く憂いており、一人でも多くの教え子たちを生き残らせるために熱心に指導を施す。また都築が、かつての仲間のために熱くなってしまう欠点を熟知し、彼の暴走を止める役割を担うことも多い。旧最終防衛線奪還作戦では、都築と共に最前線で戦い、後詰めとして残してきた朝倉慶一郎たちをサポートさせるため、大月班のメンバーたちを派遣する。

(まき)

雷電兵の育成施設で教官を担当している女性。階級は中尉。第一世代の雷電兵で、観測型に分類される。まじめな性格の苦労人で、曲者揃いの同期たちに翻弄されることが多い。特に、都築誠一郎に対しては、かつての仲間に対する思い入れが強すぎるあまり、それが高じて暴走することを懸念している。ただし、彼の長所もしっかりと把握しており、朝倉慶一郎が都築に敵視された時は、牧自身の過去の経験などを語って、二人が歩み寄られるように取り計らったこともある。また、朝倉に雷電兵や白の神骸に関する知識や技術などを教授し、彼が成長するきっかけの一つを作るなど、教え方が抜群にうまい。ただし、生真面目すぎる性格が災いして、教え子たちが失敗を重ねるたびに神経をすり減らしている。

丹波 十蔵 (たんば じゅうぞう)

雷電兵の育成施設で教官を担当している男性。第一世代の雷電兵で、分類は明らかにされていない。都築誠一郎や日向いつき、山城継道の戦友で、彼らが京都の雷電兵育成施設にいた時も、前線に赴いて、一人で黒の軍勢と戦っていた。第一世代の中でも抜きんでた実力を誇り、日向からは現存する第一世代の中では最も強いと評される。旧最終防衛線奪還作戦に先駆けて都築と共に視察へと赴き、その情報を伝達するために、育成施設に初めて姿を現す。

大月 邦治 (おおつき くにはる)

大月班の班長を務めている少年。第二世代の雷電兵で、強襲型に分類される。電力を束ねた足で、小型級程度なら一撃で倒すほどの鋭い蹴りを放つ。優れた戦闘力と統率力をあわせ持ち、つねに冷静な姿勢を崩さないことから、大月班のメンバーから頼りにされている。旧最終防衛線奪還作戦では、山城継道の頼みにより、山城と都築誠一郎が不在の第一班をサポートするため、仲間たちと共に合流する。その際、朝倉慶一郎が特異型としての力を持っていることをいち早く察知しており、彼が黒の軍勢と戦う切り札になりうると考えた。しかし、揃って蝙蝠扇からの不意打ちを受けて、地下区域へと落下してしまう。さらに、蝙蝠扇の放った小型級の攻撃によって、第一班や大月班ともども窮地に陥れられるが、朝倉の未来予知の能力によって難を逃れた。このことから、朝倉を死なせてはならないと考え、彼を守り抜くべく命を賭して奮闘した。

寺子 春美 (てらこ はるみ)

大月班の班員を務めている少女。第二世代の雷電兵で、強襲型に分類される。男勝りで直情的ながらも仲間思いな性格で、大月班の仲間たちを大切に思っている。それだけに、彼らが危機に陥ると感情的になり、その原因を作った相手を責める悪癖を持つ。また、他者に反発することも多いが、大月の言うことには比較的素直に従う。このような性格に至ったのは、家族を守るために黒の軍勢との戦いを志したことに起因している。旧最終防衛線奪還作戦では、山城継道の頼みにより、山城と都築誠一郎が不在の第一班をサポートするため、仲間たちと共に合流する。ただし、第一班のメンバーを落ちこぼれだと決めつけており、彼らと合流することに難色を示していた。しかし、蝙蝠扇の奇襲によって地下区域に落とされ、共に戦わざるを得ない状況に追いやられる。さらに、山田かなえや早見良悟が倒れるとそのたびに悲痛な表情を見せるが、彼らの犠牲を無駄にしないよう訴える大月に触発され、加賀美ゆれや鋼田哲将と共に地下区域からの脱出に専念する。そして、山城との合流に成功した。

早見 良悟 (はやみ りょうご)

大月班の班員を務めている少年。第二世代の雷電兵で、観測型に分類される。生真面目な性格で、観測型としての戦い方を心得ている。また、自ら必要と決断すれば迷わず前線に出るなど、判断力も高い。旧最終防衛線奪還作戦では、山城継道の頼みにより、山城と都築誠一郎が不在の第一班をサポートするため、仲間たちと共に合流する。その際に、地中に潜んでいた蝙蝠扇の不意打ちによって地下区域に落とされ、彼の差し向けた無数の小型級から逃れるために、同じ観測型である加賀美ゆれと共に地上への道を観測する。しかし、地上に向けて進んでいる最中、山田かなえが落下したことに気を取られ、そのスキを突いた小型級から背中から胸を貫かれて、その場に倒れてしまう。

山田 かなえ (やまだ かなえ)

大月班の班員を務めている少女。第二世代の雷電兵で、放射型に分類される。控え目かつ慎重な性格で、大月班が第一班に合流することも肯定している。衣服の袖に仕込まれた、電力を分散させるツールを利用することで、広範囲にわたって電撃を放射し、複数の敵を足止めできる。旧最終防衛線奪還作戦では、山城継道の頼みにより、山城と都築誠一郎が不在の第一班をサポートするため、仲間たちと共に合流する。その際に、地中に潜んでいた蝙蝠扇の不意打ちによって地下区域に落とされ、迫り来る小型級の大群から逃れようとした。しかし、脆くなっている地面を踏みぬいたことによって、地中の奥深くへと落下してしまう。

蛇骨 (じゃこつ)

旧最終防衛線奪還作戦において、都築誠一郎が乗り込んだ白の神骸。白刃と比較するとシンプルな構造をしており、黒の神骸を弾き飛ばす威力のパンチなど、力押しの攻撃を得意としている。蝙蝠扇に襲撃された第一班と大月班のメンバーを救出するために、山城継道によって派遣され、戦線に投入される。そして、逃れた雷電兵を追って地上に現れた蝙蝠扇の前に立ちはだかる。スピードに優れるうえに、自由に姿を消すことができる蝙蝠扇に対し、当初は防戦一方だったが、同乗した朝倉慶一郎の未来予知の能力によって攻撃を避けることが可能になり、互角にまで持ち込む。さらに、朝倉の策略によって蝙蝠扇を誘い込むと、強力な一撃を見舞って戦闘不能にまで追い込んだ。なお、東京奪還作戦では都築が白刃に乗り換えたため、戦線に投入されていない。

鋼田 将生 (ごうだ まさき)

鋼田哲将の兄。勇敢な性格で、鋼田の母親から頼られており、哲将からも強く信頼されていた。軍人である父親が戦死すると、鋼田将生自身の力で国と家族を守ろうと決意し、父親を追って軍人になることを志す。その際に哲将からは、立派な軍人になれると期待されながらも、父親のように戦死してほしくないという気持ちから、将生が戦争に行っても結果が変わることはないと言われてしまう。これに対して、自分のほかにも国を守るために本気で戦う人がいるのなら、その人たちを守るためにこそ戦いたいと宣言し、戦場に赴いた。しかしその2か月後、黒の軍勢との戦いに敗れ、戦死してしまう。

鋼田の母親 (ごうだのははおや)

鋼田哲将と鋼田将生の母親。2年前に勃発した黒の軍勢との戦いで、夫と将生を立て続けに失い、精神が疲弊した結果衰弱し、病院に長期入院をする羽目になってしまう。将生を強く信頼しており、現在も彼が生きているかのように振る舞うことがあるほか、軍服を着た哲将を見て将生と見間違えることもある。しかし、哲将に対して情がないわけではなく、むしろ哲将と似た者同士といった様子を見せることもある。

三千鴉 (さんぜんがらす)

黒の神骸の一体。衣をまとった鴉のような形状をしていることから、「三千鴉」と呼ばれている。本体は蛇のような形状を持つが、衣の下には無数の鳥を模した矢のような武装を隠しており、遠距離からの攻撃を得意としている。かつて黒狐、猿鬼と共に東京を襲撃して制圧し、黒の軍勢の本部を築き上げた。それからは長いあいだ東京を離れていたが、黒狐による京都襲撃の1か月後に、姿を現した。1931年までのあいだに生死不明となっており、東京奪還作戦では姿を現さなかった。

猿鬼 (えんき)

黒の神骸の一体。筋骨隆々とした猿のような形状をしていることから、「猿鬼」と呼ばれている。見た目にたがわず力が非常に強く、敵対する相手に対しては、問答無用で格闘戦を仕掛ける。かつて黒狐、三千鴉と共に東京を襲撃して制圧し、黒の軍勢の本部を築き上げた。それからはしばらくのあいだ東京を離れていたが、黒狐による京都襲撃の1か月後に、三千鴉と共に黒狐やチェシャと合流する。1931年までのあいだに生死不明となっており、東京奪還作戦では姿を現さなかった。

チェシャ

黒の神骸の一体。スマートな人のような体軀と釣り針のような形の尻尾、そして猫を思わせるような顔を持つことから「チェシャ」と呼ばれている。スピードを活かした接近戦を得意としている。かつて欧州を陥落させた実力者で、黒狐が京都を襲撃してから1か月後に、突如として日本に姿を現し、東京にいる黒狐や三千鴉、猿鬼と合流を果たす。しかし、1931年までのあいだに生死不明となっており、東京奪還作戦では姿を現さなかった。

蝙蝠扇 (こうもりおうぎ)

黒の神骸の一体。蝙蝠のような翼に覆われた人型の形状をしていることから、のちに「蝙蝠扇」と呼称される。純粋な戦闘能力は、黒の神骸の中でももっとも低いが、両肩に備わっている翼を変形させ、ドリル状の長槍や巨大な盾を生成することが可能。さらに、ステルス機能も搭載されており、自由自在に姿を消すことも可能。ただし、攻撃を仕掛ける際にはステルスを解除する必要があるため、気づかれずに敵を襲うことはできない。東京を襲撃した個体と異なり、長いあいだ名古屋の地中に潜んでいたことから、人類からその存在を認識されていなかった。しかし、旧最終防衛線奪還作戦が発令されると、雷電兵たちをおびき寄せて一掃するべく姿を現す。第一班と大月班が合流したところを地中から襲撃し、彼らを地下区域に落とす。さらに、小型級を生成して大月班のメンバーたちを次々に殺害していき、残されたメンバーたちも絶体絶命の危機に陥れる。しかし、未来予知の能力を発動させた朝倉慶一郎の活躍によって取り逃がし、駆けつけてきた都築誠一郎の駆る蛇骨と戦闘状態に陥る。姿を消して誠一郎の死角から攻撃を仕掛けようとするが、朝倉の指示によってすべてを回避される。さらに、マントを変形させるためには槍を戻す必要があり、それを見抜いた朝倉から奇襲によってスキをつかれ、蛇骨の渾身の拳を受けたことで倒された。

集団・組織

第一雷電兵団 (だいいちらいでんへいだん)

東京奪還作戦を実行するにあたって集められた雷電兵の精鋭。都築誠一郎や久我なお美など、第一世代の中でも特に強力な雷電兵や、都築の指導によって成長した第三世代の雷電兵などによって構成されている。メンバーはわずかな人数で、黒狐が率いる小型級を即座に蹴散らすほどの高い戦闘力を誇り、その戦いを目の当たりにした東条を啞然とさせるほど。さらに、5機以上の白の神骸を擁しているなど、まさに龍骸を含めた黒の軍勢との決戦を視野に入れた戦力が投入されている。

都築班 (つづきはん)

都築誠一郎が教官を務めている、第三世代の雷電兵によるチーム。倉敷伊織と加賀美あきら、加賀美じゅんの3名で構成されている。メンバーはいずれも都築を尊敬しているが、久我なお美に対しては苦手意識を抱いている。幼い頃から戦士としての修行を続けており、都築の指導の効果もあって、若いながらも小型級程度なら容易に蹴散らせるほどの戦闘能力を持っている。東京奪還作戦では、久我と共に第一雷電兵団の中核として参戦し、東条や彼の部下たちを救うと、都築に続いて進軍して多数の小型級を仕留める活躍を見せる。さらに、都築が黒狐を引き付けているあいだに、伊織の能力によって龍骸を観測し、その姿を作戦司令部に報告した。

黒の軍勢 (くろのぐんぜい)

1923年、突如として現れた謎の生物兵器群。圧倒的な物量を誇り、瞬く間に世界の半分以上を勢力下においた。龍骸を筆頭に、黒の神骸によって統率されており、彼らの指示によって人類を襲撃する。生物の肉体を破壊して取り込む習性を持つが、人間と白の神骸以外にはいっさい反応しない。また、時期によって活性化したり活動を停止したりするなど、奇妙な特性を持つ。存在する理由から目的までいっさいが不明で、東京を含めた世界の主要都市を陥落させて以降、大きな動きを見せていない。白の神骸を敵視しており、早い段階から白の神骸と接続し、雷電兵を誕生させた日本に注目する。そして、1925年に黒狐が京都を襲撃し、さらに東京に、黒狐や三千鴉、猿鬼、チェシャが招集された。しかし、旧最終防衛線奪還作戦で蝙蝠扇が倒されると、その勢力に揺らぎが生じはじめ、1931年には本営となっている東京に龍骸と黒狐を残すのみとなっている。

第一班 (だいいっぱん)

第一世代および第二世代の雷電兵による混成チーム。山城継道が教官を務めており、都築誠一郎を筆頭に、朝倉慶一郎、鋼田哲将、加賀美ゆれが名を連ねている。本来は日向いつきが教官を務める予定だったが、黒狐の襲撃によって命を落としたため、急きょ山城が教官に就任した。当初は、朝倉を守って日向が命を落としたために、都築が一方的に朝倉を敵視していたことからチームワークが最悪で、さらに朝倉は偶発的に雷電兵になったばかりで経験が浅いなど、多くの問題を抱えていた。しかし、朝倉が日向の意思を継ぐために奮起したことで、都築も徐々に朝倉を認めていき、やがて一つにまとまっていく。旧最終防衛線奪還作戦では、都築と山城が前線に出撃するため別行動となり、彼らの代わりとして派遣された大月班と共同で小型級を相手取ることになる。その際に、地中から蝙蝠扇の襲撃を受け、多数の小型級が待ち構える地下区域へと落とされるが、朝倉が未来予知能力に覚醒したことで難を逃れた。

大月班 (おおつきはん)

大月邦治が率いる、第二世代の雷電兵によるチーム。大月のほか、寺子春美、早見良悟、山田かなえが名を連ねる。寺子の独断専行がやや目立つものの、大月の統率力もあってチームワークは優れており、黒の軍勢とも戦い慣れている。ただし、白の神骸を実戦で扱えるレベルには及んでいないため、黒の神骸相手には到底、太刀打ちできない。旧最終防衛線奪還作戦では、山城継道の指示によって第一班と合流し、共に小型級と戦っていた。しかし、地中に潜んでいた蝙蝠扇の奇襲によって地下区域へと落とされ、全滅の危機に瀕してしまう。

場所

東京 (とうきょう)

日本国の主要都市の一つ。1923年、突如出現した黒の軍勢によって制圧され、それ以降は黒の神骸たちの拠点として利用され続けてきた。当初は黒狐、猿鬼、三千鴉と3機の黒の神骸が滞在していたが、1925年に海外からチェシャと呼ばれる新型機が到着し、世界でもっとも危険な場所となった。1931年には、黒の軍勢の頭目である龍骸が潜んでいることが判明。日本における最後の攻撃目標となり、雷電兵の総力を挙げた東京奪還作戦が展開された。

京都 (きょうと)

日本国の主要都市の一つ。1923年に、東京が黒の軍勢に制圧されて以来、国の中枢として機能してきた。軍部の本拠地や雷電兵の育成施設なども存在し、都築誠一郎や山城継道など、第一世代の雷電兵も多く滞在している。長らく黒の軍勢の襲撃を受けたことがなく、それだけに住民たちもほぼ危機感を抱いていなかった。1925年に黒狐の襲撃を受け、都市の半分が壊滅するほどの大きな被害を被る。これを受けた大迫玄武ら軍首脳部は、軍の再編と第二世代雷電兵の育成を急ぎつつ、黒の神骸が東京に留まっていることを好機として旧最終防衛線奪還作戦を発令し、これを成功させる。それ以降は黒の軍勢の襲撃を受けることもなくなり、1931年には無事に復興を果たした。

その他キーワード

雷電兵 (らいでんへい)

白の神骸と接続したことで、人を超えた身体を獲得した兵士たちの総称。自らの手で電気を生み出し、それを自在にあやつることから「雷電兵」と呼ばれる。並の兵士とは別次元の戦闘能力を誇り、生身でも小型級程度なら容易に駆逐できる。さらに、接続した白の神骸の脳の役割を果たしており、頭部に乗り込むことで自在にあやつることが可能。個人によって得意とする分野が異なり、強襲型、放射型、観測型、特異型の四つの型に分けられる。また、1923年の黒の軍勢による東京襲撃の直後に、白の神骸と接続した雷電兵を「第一世代」、京都に招集された志願兵から選抜された雷電兵を「第二世代」、1931年に発令された東京奪還作戦に備えて集められた雷電兵を「第三世代」と、それぞれ呼称される。なお、第二世代の雷電兵は、15歳未満の時に白の神骸と接続する必要があるが、その理由は本人たちにも明らかにされていない。

黒の神骸 (くろのじんがい)

黒の軍勢を率いている自律型の生物兵器群。白の神骸の10倍もの戦闘力を持つとされているが、その数は少ない。1925年の時点で人類から確認されている個体は、黒狐、三千鴉、猿鬼、チェシャの4体だが、旧最終防衛線奪還作戦で5体目となる蝙蝠扇が確認されたことで、ほかにも黒の神骸が存在している可能性が示唆される。そして、1931年の東京奪還作戦で、黒の軍勢を統べる女王にあたる龍骸が発見され、作戦の最終目標として設定された。黒の軍勢を構成する小型級などは、そのほとんどが龍骸によって生み出されているが、ある程度なら、ほかの黒の神骸でも生成が可能。

白の神骸 (しろのじんがい)

黒の軍勢と敵対している半自律型の生物兵器群。黒の神骸と異なり、生物や植物の区別なく、生けるものすべてを体内に取り込む習性を持っている。脳と呼べる器官を持たず、単独ではまともに戦うことができない。しかし、人間と神経接続を果たすことで雷電兵に進化させ、接続した雷電兵の意思によって自在に動くことが可能となる。優れた自己修復機能を備えており、多少の傷ならすぐに再生できる。また、搭乗者が傷ついた場合も、自動的に修復を行うようになっている。接続中に搭乗者が死を迎えた場合、白の神骸自らも死ぬとされるが、搭乗者が死ぬ直前に自らを白の神骸に食べさせた場合、その直後に別の人間と接続を行えば、その相手を新たな搭乗者として設定できる。1925年の時点では、危険性などから6体のみが実戦配備されるに留まっていたが、解析が進むにつれて配備数が加速度的に増加し、1231年の東京奪還作戦では、多くの白の神骸が戦線に投入された。本来は黒の神骸の10分の1の戦闘力しか持っていないとされているが、強力な雷電兵が乗り込むことで、黒の神骸と互角以上に渡り合うこともできる。黒の神骸と同様に、その存在理由や目的、そして人間の搭乗が前提になっている理由などのいっさいが不明となっている。

小型級 (こがたきゅう)

黒の軍勢の兵隊に当たる存在。黒の神骸によって生み出され、小骸や槍骸など、さまざまなバリエーションが存在するが、いずれも黒の神骸と比較すると小さく、武器を使えば人間でも対抗することが可能。しかし、数が非常に多いうえに、いくら倒しても補充されるため、黒の軍勢を攻略するうえでは十分脅威といえる存在。また、脱皮をすることで能力が上昇するという特性も持っており、一度でも脱皮すれば、雷電兵以外では対抗できなくなる。

強襲型 (きょうしゅうがた)

雷電兵の中で分類される四つのタイプの一つ。身体能力が最も向上し、反射神経なども桁違いになるため、前線で戦うことに向いており、脱皮した小型級も容易に撃滅することが可能。その反面、攻撃範囲や白の神骸を操作できる時間などに難があり、基本的には、観測型や放出型の護衛に徹することが多い。雷電兵の中では最も数が多く、都築誠一郎や山城継道、加賀美あきら、加賀美じゅんなど、多くの戦士がこのタイプに分類される。専用の武器を携えていることも多く、都築や山城は長刀、あきらは二振りの短刀、じゅんは巨大な鎌を武器として使用する。また大月邦治のように、身体の一部に電気を収束させて、格闘戦を挑む強襲型の雷電兵も存在する。

観測型 (かんそくがた)

雷電兵の中で分類される四つのタイプの一つ。視覚や聴覚が著しく向上し、周囲の地形や存在する黒の軍勢の数や形などを把握し、遠くにいる雷電兵への連絡なども可能とする。さらに、白の神骸をあやつることに適しており、加賀美ゆれは2時間、日向いつきにいたっては3時間にわたって白の神骸をフル稼働させることができる。このような特徴から、チームのリーダーを務めることが多く、軍事の上でも最も重要視される。その反面、戦闘能力は四つの型の中で最も低く、白の神骸に搭乗していない時は、強襲型や放出型の護衛を必要することが多い。ゆれや牧、倉敷伊織などが該当し、いずれも周囲の状況を観測しては、事態の打開につながる情報を得ている。中でも伊織は、黒の軍勢の親玉である龍骸の姿を観測し、その姿を作戦司令部の大迫玄武に伝えることによって、早いうちから攻略のための準備をうながす活躍を見せた。

放出型 (ほうしゅつがた)

雷電兵の中で分類される四つのタイプの一つ。鋼田哲将や山田かなえが該当する。放電能力が最も発達し、身体能力もある程度向上するため、中・近距離戦を得意とする。また、広範囲にわたって攻撃できるため、強襲型の補助や複数の小型級に対する殲滅戦、不意打ちへの対処などもこなす。ただし、攻撃力自体はさほどでもなく、白の神骸への搭乗可能時間も強襲型と大して変わらないため、脱皮を行った小型級など、強力な敵と一人で戦うには向いていない。山田は衣服の袖に電気を拡散させるためのギミックを仕込んでおり、より広い範囲に攻撃できるよう調整している。

特異型 (とくいがた)

雷電兵の中で分類される四つのタイプの一つ。雷電兵の中でも極めて珍しく、1931年の時点でも、二人しか確認されていない。強襲型に近い特徴を持ち、分類テストの際は強襲型とみなされやすい。特異型の最大の特徴は、ほかのタイプの雷電兵が持たない特有の能力を発動できる点で、朝倉慶一郎は未来を予知する固有能力を持つ。そのため、特異型がチームに一人いるだけで、ほかのチームとはまったく異なる作戦の遂行が可能となる。また朝倉が、不意に東京奪還作戦の光景を幻視するなど、特異型となる人間は、白の神骸と接続する前から特殊な能力の片鱗を見せることもある。なお、山城継道の発言から久我なお美も特異型であることが明かされているが、彼女の固有能力は判明していない。

東京奪還作戦 (とうきょうだっかんさくせん)

1931年に行われた、黒の軍勢に対する最終作戦。1923年に奪われた東京の奪還と、黒の軍勢を生み出し続けている龍骸の撃破を目的としている。作戦には、第一雷電兵団をはじめとした複数の雷電兵による部隊のほか、東条や西田などの一般兵も多数参加した。さらに、日本軍が保持する白の神骸もほぼすべてが運用されるなど、まさに最終決戦を見据えた戦力投入がなされていることから「東京決戦」の異名で呼ばれることもある。作戦の流れは、まず日本軍と雷電兵による混成部隊が小型級を殲滅することで白の神骸の進行ルートを確保し、続いて都築誠一郎が白刃で黒狐を誘い出し、龍骸への障害を排除。倉敷伊織などの観測型の雷電兵が龍骸の全貌を観測して司令部へと伝達し、最後に龍骸を地上におびき出して、黒狐もろとも全兵力をもって撃滅するというものになっている。

旧最終防衛線奪還作戦 (きゅうさいしゅうぼうえいせんだっかんさくせん)

1925年に実行された、黒の軍勢に対する軍事作戦の一つ。かつて黒の軍勢の侵攻によって陥落した名古屋の奪還を目的とする。4体の黒の神骸が東京に集結したことをきっかけに、大迫玄武によって立案された。作戦の内容は、武装した一般兵が小型級をおびき出し、そのスキを突いて雷電兵が巣を叩くという、東京奪還作戦と比較すると小規模かつシンプルなもの。第二世代の雷電兵が多数出撃したほか、都築誠一郎や山城継道などの第一世代も参戦している。さらに、確認されている黒の軍勢がすべて東京から動かないことから、成功率は高いものと思われていた。しかし、名古屋の地中には、今まで確認されていなかった新型の黒の神骸の蝙蝠扇が潜んでおり、この誤算によって作戦の遂行は一気に困難を極めることになる。

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