フルーツバスケット

フルーツバスケット

母親を事故で亡くし、友人宅に居候する女子高生・本田透と、動物憑きの体質を持つ家族との交流を描く学園ラブコメ。白泉社「花とゆめ」1998年16号から2006年まで連載。2001年、第25回「講談社漫画賞」少女部門を受賞

正式名称
フルーツバスケット
ふりがな
ふるーつばすけっと
作者
ジャンル
ラブコメ
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
全23巻完結
関連商品
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あらすじ

第1巻

唯一の家族だった母親を事故で亡くし、一人ぼっちになった本田透は、引き取られた祖父の家の改築のあいだ、アルバイト生活に励みながらテントで生活を送っていた。しかし空き地だと思っていたその場所は、クラスメイトの草摩由希の家の土地であり、透は学校中の人気者である由希と親しくなる。体調を崩したうえに土砂崩れでテントが埋もれてしまった透は、由希とその親戚である草摩紫呉の計らいで、二人の住む屋敷に居候する事が決まる。しかし、そこへ突然やって来た草摩夾にうっかり抱きついてしまい、彼が猫に変身するのを目撃してしまう。(第1話)

透は異性に抱きつかれると、十二支の動物に変身してしまうという草摩家の不思議な秘密を知ってしまい、誰にも話さない事を誓う。夾は十二支の仲間に入れなかった猫として、鼠である由希を目の敵にしており、近寄るとケンカばかりする二人の関係に透は心を痛める。そして夾は草摩慊人の命令により、透、由希、紫呉と共に生活する事になる。(第2話)

夾は編入試験を受け、透や由希の通う高校に転校する。周囲からは温かく迎えられた夾だったが、これまでの男子校とは違って異性がたくさんいる共学高は、抱きつかれると動物に変身してしまう夾にとっては脅威だった。由希とのケンカを止める透に対して、ひどい言葉を投げた事を後悔した夾は、透に対する態度を反省し、透は夾が不器用だが本当は優しい性格だという事を知る。(第3話)

由希がなにか悩み事を抱えていると感じた透は、アルバイトの帰りに迎えに来てくれた由希の話に耳を傾ける。由希は、夾があっという間に周囲に溶け込む魅力を持っている事にコンプレックスを抱いていた。しかし透の優しさに触れ、由希はこれから周囲とうまく付き合うために努力しようと考える。(第4話)

突然訪ねて来た草摩楽羅は猪の習性に従って暴走し、夾を好きな気持ちを全力でぶつけ、夾は楽羅から逃げまどう。夾のいい部分を密かに発見した透は、今よりももっと夾と由希の事を知りたいと願うが、祖父の家の改築が終わったという知らせを受け、居候生活は終わりになってしまう。(第5話)

祖父の新しい家で遠縁の親戚とも暮らす事になった透は、冷たい態度を取る親戚に囲まれ、寂しい思いをしていた。草摩の家に戻りたい気持ちを吐露する透の目の前に、折しも透を迎えに来た由希と夾が現れ、透を連れ戻す。そして居候ではなく、家族としての共同生活が始まる。(第6話)

第2巻

本田透は親友である魚谷ありさ花島咲にだけ、草摩家に正式に住み始めた事を伝える。二人は透の生活を心配し、草摩家へ泊まりで遊びに来る。草摩由希草摩夾を加えて五人で楽しい時間を過ごした透は、夜寝る前にありさと咲に不思議な男の子からもらった帽子についての思い出を語る。(第7話)

文化祭でおにぎり屋をする事になった透達は、準備に奔走していた。苛立っている様子の夾に話を聞いた透は、夾がなんでもできてしまう由希に対するコンプレックスを抱いている事を知る。いつものようにビル清掃のアルバイトを終えた透は、不思議な外国人の男の子に出会い、頬にキスをされてしまう。実は男の子は草摩紅葉で、草摩一族の人間だった。(第8話)

文化祭当日、おにぎり屋の売り上げに貢献するために、クラスメイト達から頼まれて女装する事になった由希は、恥ずかしくて透を避けていた。そこへ紅葉と草摩はとりがやって来る。紅葉は日本とドイツのハーフであり、はとりは草摩家の一族専門の医師であり、気管支の弱い由希の主治医だった。透ははとりから、次の週末に草摩の本家に来るように命令される。(第9話)

はとりとの約束を守り、由希と夾には内緒で草摩の本家を訪ねた透は、はとりから草摩家を出て行く事を勧められる。しかしそれは透の事を心配しての事と知った透は、はとりの遠回しな優しさに心を打たれる。かつて婚約者を救うために辛い思いをしたはとりの気持ちを慮る一方で、その原因を作った草摩一族の権力者である草摩慊人に対し、透は言い知れぬ恐怖を感じる。(第10話)

由希と夾は、正月に草摩の本家で行われる宴会に出席しなければならないが、まったく気が進まいながらも、透の気遣いを受け入れる。しかし本家に向かう途中に、透が一人ぼっちであるという事実に気づき、由希と夾は既に家族である透と共に正月を過ごすために、本家の宴会をサボってしまう。(第11話)

偶然街中ではとりと遭遇した透は、足を滑らせてはとりに抱きついてしまい、変身した姿を見てしまう。小さなタツノオトシゴに変身したはとりは気を失い、かつての婚約者である草摩佳菜との思い出を夢に見る。暗く閉ざされた草摩の本家の中で、自分を殺して生きて来たはとりは、佳菜の明るさに惹かれて愛し合うようになったが、慊人の反対に会って片目をつぶされてしまう。責任を感じた佳菜は精神が崩壊し、はとりは辛い記憶ごと自分に関する記憶をすべて消して、佳菜の幸せを願うのだった。(第12話)

第3巻

草摩由希となにかと張り合おうとする草摩夾は、校外コースの持久走で由希を負かそうと燃えていた。由希は体調不良を押して夾と持久走に挑む。一方、本田透は由希と夾に会いに来た草摩潑春と遭遇する。潑春は夾に戦いを挑み、挑発に乗った夾は持久走を忘れて潑春と手合わせをする。(第13話)

潑春と夾の路上での戦いを見ているうちに、由希は気管支の発作が出てしまう。潑春は牛に変身し、由希を背中に乗せて家に連れ戻す。潑春は透に、鼠が牛を騙したという十二支の逸話が理由で、かつては由希を嫌っていた過去を打ち明ける。しかし、コンプレックスから解放してくれた由希の事を、今では大好きなのだった。(第14話)

夾のもとへやって来た草摩楽羅は、夾にバレンタインデーのデートとして、由希と透も共に誘い四人でのデートを提案する。由希と夾の仲が緩和していると喜ぶ神楽と[◆草摩紫呉]に対し、夾は心外だと憤慨する。だがそんな中、透の優しさに触れた夾は、心穏やかな気持ちになるのだった。(第15話)

透、由希、夾、楽羅の四人はダブルデートに出かけ、紫呉は透から預かったバレンタインチョコを持って草摩の本家を訪ねる。草摩はとり草摩紅葉、潑春の分を渡した紫呉は、草摩慊人のご機嫌伺いへ行く。四人がデートから戻ると、ちょうど来ていた編集者と遭遇し、紫呉は編集者に監視されながら溜まった仕事を片付ける。(第16話)

期末テストが終了し、透はアルバイトに精を出す。そんな透に、紅葉はホワイトデーのお返しにと、温泉旅行をプレゼントする。透が実はチョコレート代のためにお金をたくさん使ってしまった事に気づいた由希と夾は、透を喜ばせるために一時休戦し、共に温泉旅行へ行く事を決める。(第17話)

透達を出迎えた温泉宿の女将は草摩の人間であり、十二支の仲間である草摩利津の母親だった。由希、夾、紅葉と共に生まれて初めての温泉を楽しんだ透は、透の下手くそな卓球を見た由希が心から笑う姿を初めて見て、心の距離を縮めると同時に、親の前でも笑った事がないという由希が抱える闇を垣間見る。(第18話)

第4巻

春になり、本田透達は高校2年生になった。新入生として草摩紅葉草摩潑春が透達の高校に入学して来る。しかし潑春は装飾品をジャラジャラつけ、紅葉は女子の制服を改造して着る始末で、さっそく生徒会に目をつけられてしまう。そして透は、入学式にやって来ていた草摩慊人に遭遇する。(第19話)

透は口調や態度は優しいものの、目はまったく笑っていない慊人と言葉を交わしたが、嫌われている事を察する。しかし自分を心配して駆けつけた草摩由希が慊人におびえる姿を見て、必死で由希を慊人から引き離す。(第20話)

突然やって来た草摩綾女が、寒さのあまり変身してしまい、暖を求めて透の服の中に潜り込んだ事に、由希は激怒する。綾女は由希の兄だが性格は正反対なうえ、年齢も10歳離れている事もあって距離ができていた。しかし、綾女が兄として由希を心配する気持ちに気づいた透は、二人の関係に希望を抱く。(第21話)

由希達の住む家に泊まり続ける綾女に、由希は疲労を感じていた。綾女は草摩紫呉、草摩はとりと同い年であり、三人はかつて同じ高校に通っていた。その当時の破天荒なエピソードを話し終えた綾女のもとに、潑春から知らせを受けたはとりが迎えに来る。無表情ながら綾女を気遣ったはとりに対して、綾女は友情と信頼を感じていた。(第22話)

紅葉の父親は、透が清掃員として勤務するビルで会社を経営していた。ドイツ人である紅葉の母親は、十二支の物の怪憑きである紅葉を生んだ事で精神が崩壊してしまい、紅葉の父親の判断で彼女から紅葉の記憶を消したのだった。いつも明るい紅葉にそんな過去があったと知り、透は紅葉を抱きしめて涙を流す。(第23話)

透の母親・本田今日子の命日に、透、由希、草摩夾魚谷ありさ花島咲は墓参りをする。咲は夾が今日子の墓前で後悔している気持ちを感じ取っていた。笑顔で墓前に花を手向けた透達は墓の前でピクニックをする。家に戻り、由希は透の私物である古い帽子を見つけてある記憶を甦らせ、夾は縁側でうたたねをしていた透に、こっそりと「ごめんな」と呟く。(第24話)

第5巻

草摩紫呉の発案で本田透草摩由希草摩夾草摩はとりの五人は草摩家の保養所に宿泊に行く。はとりのかつての婚約者である草摩佳菜が別の相手と結婚式をするので、気分転換にはとりを連れ出したのだった。墓参り以来ふさぎ込んでいた由希と夾を心配する透だったが、いつものように二人がケンカを始める様子を見て、一安心する。(第25話)

草摩家の保養所に草摩綾女が突然現れ、透、由希、夾は翻弄される。三人が散歩に出かけたところで、綾女は佳菜の結婚式の写真をはとりに届ける。はとりは佳菜に対する未練はまったくなく、幸せになってもらいたいと願っていた。そんなはとりを心配する綾女と紫呉は、はとりには誰よりも幸せになってほしいと願っていた。(第26話)

透と由希は買い物の帰りに雨の中、草摩杞紗を探して保護する草摩潑春に遭遇する。杞紗は十二支の虎に変身した姿のまま、透に噛みついてしまう。実は杞紗はいじめが原因で言葉を話さなくなっていた。そんな彼女を母親はなじるが、透は杞紗に共感する。杞紗はそんな透に心を開き、人間の姿に戻る。(第27話)

まだ言葉を話せない杞紗だったが、透に対してだけは少しずつ表情を見せるようになっていった。杞紗が受けたいじめについて知った由希は、杞紗に共感し、その気持ちを代弁する。それに対して、杞紗はやっと言葉を発する事ができた。そして杞紗と由希はそれぞれ、自分に課せられた使命から逃げずに立ち向かう事を決める。(第28話)

由希のファンクラブ「プリンス・ユキ」の会長・皆川素子は、透が由希と親しくしている事が気に入らず、透の親友であり不気味な力を持っている花島咲の弱点を探るべく、後輩二人と共にその家にやって来る。しかし、咲と咲の弟・花島恵の持つ異様な雰囲気にのまれてしまう。「好き」という理由を正当化する三人に咲は苦言を呈する。(第29話)

中間テストで赤点を取ってしまい激しく落ち込む透は、風邪を引いて熱を出し、倒れてしまう。アルバイトも家事もできず、ますます自分を情けなく思った透に対して、夾はおかゆを作り、ぶっきらぼうながらも慰める。往診に来たはとりや、見舞いに来た杞紗など、みんなの優しさに触れた透は元気を取り戻す。(第30話)

第6巻

雨の日は身体の調子が悪くなる草摩夾の前に、草摩楽羅が遊びに来た。思いがあふれすぎて家を破壊してしまう楽羅に手を焼いた草摩紫呉は、二人を外に追い出す。夾は楽羅を嫌がりつつも、幼なじみである二人は幼い頃を思い出しながら買い物を済ませる。家に戻った夾を、夾の武術の師匠である草摩籍真が待っていた。(第31話)

草摩由希の前で素直に喜ぶ気持ちを見せられない夾だったが、籍真と二人きりになったとたんに、素直に再会を喜ぶ。昔のように再び籍真と暮らしたいと望む夾に対して、夾の本当の救いは本田透が握っていると考えた籍真は、その夜、夾が腕にはめていた数珠を無理やり外し、異形の姿に変身した夾を透に見せる。(第32話)

異臭を放つ醜い異形の姿になった夾を見て、透は驚き固まってしまうが、逃げ出してしまった夾を追いかける。かつて夾は母親にその姿を嫌われ、隠蔽され、あげく自殺されてしまったという過去があった。しかし透は、これからも共に暮らしていきたいと願う事で、夾の冷たく固まった心を溶かすのだった。(第33話)

母親が自殺して以来、一族の中で身の置き所がなかった夾にとって、籍真は夾を保護し、新しい世界を見せてくれた恩人だった。亡くなった祖父が猫の物の怪憑きだった事から、夾の境遇について一族のほかの者達とは違う価値観を持っていた籍真にとって、夾は同情をかける相手というだけでなく、本当の愛情をかけられる相手なのだった。(第34話)

透が夾の異形の姿を見てしまった晩、楽羅はその一部始終をこっそり見届けたあと、由希だけに挨拶をしてこっそり帰ってしまい、由希もまた塞いだ様子を見せていた。そんな二人を心配した透だったが、由希と楽羅はそれぞれ自分の気持ちと向き合い、楽羅は夾と共に籍真の道場へ通い、由希は苦手を克服して自分を変えていこうと考える。(第35話)

これまでの自分を変えて行こうと決めた由希は、透と共に草摩綾女の店を訪ねる。そこは一見すると単なる手芸店でありながら、コスプレ用の服をオーダーメイドで作るという仕事もしていた。従業員である倉前美音は透を着替えさせ、その間に由希と綾女はまったく正反対といえる性格ながらも、お互いをわかり合うために話をするのだった。(第36話)

第7巻

草摩杞紗本田透に心を開き、透に会いに泊まりに行く。それを面白く思わない草摩燈路は透の帰り道に待ち伏せし、因縁をつけては透のカバンから手帳を勝手に持って行ってしまう。手帳に挟まっている母親の写真を取り戻しに、燈路を追いかけて道場へやって来た透は、燈路が杞紗への思いから透に対してライバル心を抱いた事を知り、燈路を許す。(第37話)

杞紗と共に燈路もまた透の家に遊びに来るが、燈路は透を目の敵にする。それは実は自分が原因で杞紗を傷つけてしまったという罪悪感に加えて、杞紗がいじめに遭ってつらい時に役に立てなかった事の不甲斐なさを透に八つ当たりしてしまうからだった。しかし透の温かい励ましに触れ、燈路は杞紗に相応しい大人になろうと前向きに決意する。(第38話)

夏になり、中学の時のスクール水着でプールの授業を受ける透を不憫に思った魚谷ありさ花島咲は、草摩由希草摩夾草摩紫呉とお金を出し合い、新しい水着をプレゼントする。ありさは中学1年生で透と出会うまでは暴走族に所属するバリバリの不良で、レディース界で伝説の本田今日子にあこがれていたが、透と今日子に出会い、衝撃を受ける。(第39話)

あこがれの人物の現実を見てしまったありさはガッカリし、不良の世界でどんどん荒れていく。そんなある時、敵対するメンバーに囲まれて殴られたありさは、偶然遭遇した透にかくまわれる。透と今日子の温かい関係をうらやましいと素直に感じたありさはその気持ちを吐露し、母親に捨てられて寂しかっただけだった自分の気持ちを見つめ直す。(第40話)

ありさとなかよくしている事で、透までもが学校で異質扱いされてしまい、ありさは責任を感じていた。しかし透は、まったくその事を意に介さずありさと付き合い続けた。透の親友として相応しい自分になろうと考えたありさは、身体を張って暴走族を抜ける。制裁を受けて倒れたありさを助けたのは今日子だった。(第41話)

由希が新生徒会長になる事に決定して以来、皆川素子ら由希のファンクラブ「プリンス・ユキ」の会員達は、新生徒会にほかの女生徒が入る事を恐れていた。素子は由希に対する恋心をつのらせており、透をはじめとして由希に近づく女生徒達を憎んでいた。しかし由希が、以前より柔らかく微笑むようになった変化に気づき、その裏には透の存在がある事を認める。(第42話)

第8巻

草摩潑春がいつにもましてキレてしまい、教室を破壊してしまう。止めにいった草摩夾は潑春に挑発され一瞬即発のムードになるが、本田透らの担任教師・白木繭子に仲裁される。潑春は草摩依鈴との破局によって不安定になっていたのだった。帰宅途中で、透は美しい振袖姿の草摩利津と初めての体面をする。(第43話)

すぐにパニックに陥ってしまう利津は、被害妄想が強いところがあり、いつも他人に迷惑をかけてしまう自分を強く恥じていた。パニックを起こして足を滑らせた利津は透と抱きつく格好になってしまい、利津はサルに変身する。利津が男性であった事に驚いた透だったが、自己嫌悪に陥る利津を励ます。(第44話)

幼少の頃から、自分のせいで両親に肩身の狭い思いをさせてしまっている事を気に病んだ利津は、必要以上に自分の行動に過敏になっていた。そのいきさつを聞いた透は、律にとって大切な存在がいつか現れる事を信じて励ます。透と共に帰宅した利津は、草摩紫呉の担当である編集者の女性と意気投合する。(第45話)

進路用紙を学校に提出した事から、透達はそれぞれの進路について真剣に考えていた。透は母親が生きていた頃に描いた、高校卒業後は就職して自活するという目標は変わらなかったが、状況が変わった事で不安を感じていた。しかし夾や紫呉に勇気づけられた透は、草摩由希も誘って全員で夜食の素麺を食べながら温かい時間を過ごす。(第46話)

草摩綾女は休日に由希のもとを訪ね、由希を翻弄する。しかし綾女は、由希が両親との再会を望んでいない事を理解しており、両親の代わりに由希の三者面談のために学校へ行くつもりだった。そんな弟思いの心を知り、由希は綾女に対して少し心を開くが、綾女は照れ隠しに破天荒な事をして由希を怒らせてしまうのだった。(第47話)

夏休みになり、透、由希、夾、潑春は草摩紅葉の誘いでデパートの中で開催していたお化け屋敷に行く。苦手なお化け屋敷に挑んだ透だったが、怖がる透のために潑春は人情味あふれる創作ストーリーでその場を和ませる。(第48話)

第9巻

草摩由希は生徒会の仕事をするために夏休みの学校へ行く。そこで新しく生徒会のメンバーになった真鍋翔、倉伎真知と出会う。副会長である翔はマイペースで人の話を聞かず、会計である真知は人見知りなのか由希と目も合わせない。前途多難なメンバーに、由希は頭を抱える。(第49話)

本田透花島咲、花島恵は魚谷ありさのアルバイト先である喫茶店に遊びに行く。ありさは以前コンビニでアルバイト中に知り合った草摩紅野とばったり再会し、共に昼食を取る。紅野に特別な思いを抱きつつも、ありさは寂しそうな様子の紅野の言葉に一喜一憂してしまう。夕方再び透達と会ったありさは紅野の事を打ち明ける。(第50話)

咲は子供の頃から周囲の人達の心の声を読み取ってしまう能力があった。そのせいで他人を怖がり、学校では周囲になじめずにいじめを受けていた。しかし、咲の憎悪の念がいじめていた少年を傷つけてしまい、咲はその罪悪感を背負ってますます周囲と溶け込めなくなっていく。ひどいいじめから逃れるために転校したものの、そこでも心を閉ざしていた咲は、透とありさと出会う。二人は咲の凍った心を溶かし、周囲の悪い噂など気にも留めず咲を受け入れる。咲の精神は安定し、能力をコントロールする方法も身につけていく。咲はこれまで支え続けてくれた家族、とりわけ花島恵に深い感謝の気持ちを抱いていた。(第51話)

草摩籍真に招待された草摩夾と透は道場へやって来る。しかし料理下手な籍真に代わり、透と夾が食事を作る事になり、おりしも籍真は夾の父親から呼び出されてしまう。夾の父親は籍真に、夾が高校を卒業したら夾を幽閉するという約束の確認をする。だが籍真はそれに逆らい、夾を守っていく覚悟を決めていた。(第52話)

草摩紅葉は海辺にある草摩家の別荘を予約し、透、由希、夾、潑春、紫呉と共に旅行する事を計画する。透はまだ終わっていない宿題を片付けるため、由希に教えてもらいながら勉強に励む。由希はかつて、幼い頃に透と出会った時の思い出をよみがえらせていた。(第53話)

第10巻

草摩家の別荘に行った本田透草摩由希草摩夾草摩潑春草摩紅葉は海水浴を楽しんでいた。紅葉から招待状を受け取った草摩杞紗草摩燈路もまた別荘に向かう。その頃、草摩紫呉から別荘行きを勧められた草摩慊人もまた、よからぬ事を考えていた。(第54話)

杞紗と燈路が合流して賑やかになった別荘だったが、燈路は杞紗の信頼を勝ち得ている透に対して嫉妬の気持ちを抱き、透の亡き母に対する思い入れを馬鹿にして傷つける。杞紗に叱られて反省した燈路は、いつにもまして明るい様子の透に拍子抜けするが、夾はそれがから元気なのだと見破っていた。(第55話)

白木繭子はかつて、親友である草摩佳菜に紹介を受けた草摩はとりと初めて出会った時から、恋をしてしまっていた。佳菜とはとりが恋人同士である事に気づいた繭子は自分の思いをひた隠しにしていたが、紫呉には気づかれてしまう。寂しさから紫呉と付き合い、すぐに破局した繭子は、草摩家の事情から佳菜とはとりの仲が壊されてしまい、佳菜の脳裏からはとりに関する記憶が消去されたという事実を知らされる。2年以上が経ち、佳菜は新しい人生を歩み始めたが、繭子は未だにはとりを思い続けていた。(第56話)

繭子は、はとりと繭子の家である本屋で久しぶりの再会を果たす。次の日、予約の本を受け取りにもう一度やって来たはとりを外に連れ出し、繭子は二人きりで話をする。未だにはとりが幸せそうではない様子に、繭子は悔しくて涙を流す。自分のために繭子が涙を流してくれたのだと気づいたはとりは、繭子を誘って食事に出かける。(第57話)

母親のお腹に新しい命が宿ったという連絡を受けた燈路は、照れながらも母親を心配していた。一同は紅葉の提案でスイカ割りを楽しむ。一人で散歩をしていた由希は、別荘の離れにやって来ていた慊人と、そのお供である草摩紅野と遭遇する。(第58話)

離れに滞在する事を決めた慊人は、挨拶に来させた潑春、紅葉、杞紗、燈路、紫呉、はとりをとどめておいて返さず、夾と透を仲間はずれにする。残された夾と透は別荘で留守番をしていたが、外の様子を伺いに行った透は由希にばったり出会う。由希はいつも自分のすべてを受け入れて笑っていてくれる透の事を特別に好きなのだという自分の気持ちに気づき、透の額にキスをする。(第59話)

第11巻

次の日も草摩由希達は草摩慊人によって呼び出され、取り残された本田透草摩夾は浜辺で砂遊びをする。慊人は草摩潑春を精神的に追い詰め、透と夾への嫌がらせのためにほかの者達は意味もなく留め置く。しかし透と夾は、楽しい時間を過ごしていた。やっと解放された由希達は透と合流し、由希は透に昨日の自分の意味不明だった言葉を詫びる。(第60話)

慊人は由希達を呼び出しておいて留め置き、草摩紅野だけを連れて透に会いに行く。透と夾の惨めな姿を思い描いていた慊人は、楽し気な様子の透と夾の姿を見て、怒りを感じる。透は庭に突然現れた馬の姿に驚くが、それは草摩依鈴が変身した姿だった。(第61話)

夾は慊人に呼び出され、離れに赴く。夾はかつて慊人と賭けをしており、それは高校在学中に由希に勝てたら十二支に入れる代わりに、勝てなかったら死ぬまで幽閉するというものだった。慊人は言葉巧みに夾の精神を揺さぶり、透を貶めようとする。しかし夾は透が自分にしてくれた事を改めて思い、そんな彼女を好きな自分の気持ちに気づく。(第62話)

透を好きな自分の気持ちに気づいた夾は、これ以上透を巻き込む事だけは避けようと考え、慊人に対し透を好きではないと嘘をつき、一生誰も好きにならない事を誓う。夾は自分が厄災である事を慊人に刷り込まれながらも、透に救いを求めていた。しかし透のためを思い、残された時間だけそばにいたいというささやかな思いを抱く。(第63話)

本家から急な呼び出しを受けて翌日戻る事になった慊人は、夜中にこっそり透に会いに来る。慊人の機嫌が悪い事に気づいた草摩紅葉は止めようとするが、慊人はそんな紅葉に暴力を振るう。仲裁した透に慊人はひどい言葉を投げかけ、夾が高校を卒業したら幽閉し、由希達も慊人のそばを離れてはならないという事実を伝える。(第64話)

十二支や草摩一族に対して絶対的な権力を持つ慊人は、十二支の魂を統べる存在であり、神に等しかった。透の顔に傷を作った慊人は、迎えに来た紅野に連れられて戻っていく。次の日、透を囲む由希達みんなの優しさに触れながら、透は十二支のみんなが背負っている呪いを解きたいと本気で願う。(第65話)

第12巻

新学期が始まり、久しぶりに登校した草摩由希は、生徒会の新しいメンバーである桜木直人藤堂公との出会いを果たす。一方、本田透は誰にも内緒で草摩籍真の道場へ赴き、十二支達が抱える呪いについての話を聞く。(第66話)

透は籍真から、草摩慊人と十二支達のあいだにある呪いとは、血の絆そのものなのではないかという考えを聞く。透はそのままでいてほしいという籍真の願いを聞く。そして草摩夾は草摩楽羅に、大切な話をするからと強引にデートに誘われ、週末の約束をする。(第67話)

楽羅は幼い頃、一人ぼっちで寂しそうな夾に声を掛け、共に遊ぶようになった。しかし楽羅は興味本位に夾の数珠を外し、異形の姿を目の当たりにして逃げ出したという過去があった。そしてそもそも、物の怪憑きで生まれた自分よりも不幸な運命を背負う猫憑きの夾を見下して慈悲を与える事で、自分の心の安定をはかっていたのだった。醜く汚い自分の心を打ち明け、懺悔する楽羅に対して、夾はその事を責めず、子供の頃に一人ぼっちの自分と遊んでくれた楽羅に礼を言う。楽羅はきっかけこそ醜かったものの、夾を思う気持ちが本物になった事だけは信じてほしいと願う。そんな楽羅を夾は抱きしめ、楽羅の葛藤は終わりを告げる。(第68話)

透の祖父がぎっくり腰になったという知らせを受け、草摩紫呉は透の三者面談の保護者役を引き受ける。草摩潑春草摩依鈴と破局してしまった事について少しだけ詳しい話を聞いた由希は、三者面談の手紙を母親に渡すために草摩の本家に行った帰りに、依鈴にばったり遭遇する。依鈴の口から、潑春が由希を助けるためにしてくれた数々の事を聞いた由希は驚き、胸を打たれる。(第69話)

理由もわからずに潑春を拒絶し続ける依鈴に対して、潑春はかつてのように彼女の気持ちを理解しようと言葉を掛けるが、依鈴は逃げてしまう。由希は潑春や透らに助けられながら、自分の事で精いっぱいな自分を不甲斐なく感じる。一方、祖父の見舞いに行った透は祖父の口から両親の思い出話を聞き、かつて両親を失った時の悲しみを思い出す。しかし迎えに来た夾に支えられ、笑顔で家に戻る。(第70話)

魚谷ありさ花島咲は無事に三者面談を済ませ、透の番がやって来る。保護者代理の紫呉に付き添われた透は就職希望を伝え、担任の白木繭子は一人で背負い込みがちな透を心配する。夾は卒業後の進路についてなにも考える事ができず、そんな夾を籍真は温かく見守りながら、夾がいつか導き出す答えを待つと告げる。(第71話)

第13巻

草摩由希は三者面談のため、久しぶりに母親と顔を合わせる。母親は由希が幼い頃から変わっておらず、由希の将来を決めるのに本人の意見になどまったく耳を貸そうとしない。しかしそこに草摩綾女が訪れ、母親のペースをかき乱す。そして由希は勇気を振り絞り、母親に対して、自分の将来は自分で決めると宣言する。(第72話)

新しい生徒会のメンバーと集まった由希は、その個性の強いメンバー達に押され、居心地の悪さを感じていた。しかし、真鍋翔本田透に関する無神経な質問や意見に腹を立て、感情的になって口論する。自分の悪い部分を素直に認めて謝罪する翔に対して、由希はコンプレックスと同時にあこがれを感じ、少しずつ心を開いていく。(第73話)

魚谷ありさ草摩紅野へのほのかな思いを応援したいと考えた透は、草摩の本家へやって来る。そこで出会った草摩モモに教えられた入り口から草摩の本家にこっそり侵入してしまった透は、モモから草摩紅葉と親しくなりたい事を相談される。透は紅葉の部屋を訪ねてモモの言葉を伝え、お互いを思う兄妹の優しさとつらい境遇に胸を痛める。(第74話)

ありさのためにどうしても紅野と話がしたいと決意した透は、紅葉に教えてもらった地図を頼りに、草摩の本家の敷地内を探す。あやうく草摩慊人に、見つかりそうになった透を助けてくれたのは紅野本人だった。透はありさの友達である事を名乗り、ありさが紅野に会えない事を寂しがっている旨を伝えてありさの連絡先を手渡す。(第75話)

透達は修学旅行で秋の京都を訪れる。女の子に告白されて冷たく拒絶した草摩夾を見て、透は自分もまたいつか突然に突き放されるのかと不安になる。しかし透に向けられた夾の優しい言葉や眼差しに、透の心は温かくなる。(第76話)

修学旅行を楽しむ一行は奈良を訪れる。透に対してなにかと興味を示す翔に対し、由希は興味本位で手を出さないようにとくぎを刺す。旅行から戻り、自分用のお土産である十二支の置物に、紙粘土で作った猫を加えて十三支にしていた透に対して、夾は嬉しさのあまり照れてしまう。(第77話)

第14巻

草摩依鈴は同じ十二支の仲間ともつるまず、たった一人で呪いを解く方法を探していた。何も知らないと言い張る草摩紫呉が、実はその鍵を握っていると期待していた依鈴は彼らの家に忍び込むが、そこで本田透と出会ってしまい、幼い頃に両親から虐待を受けていた時の記憶を思い出してしまう。(第78話)

依鈴は自分を虐待していた両親から捨てられたという過去があった。傷ついた心を癒したのは草摩潑春だった。潑春に惹かれて愛し合うようになった依鈴だったが、その事を草摩慊人に知られてしまい、慊人から罵倒されひどい暴力を受ける。気を失ったままの依鈴を、透が心配そうに見つめていた。(第79話)

意識を取り戻した依鈴は、誰に対しても強い警戒心を示し、打ち解けようとはしなかった。依鈴は潑春のために呪いを解く方法を必死に探すが、同じように呪いを解く方法を探す透に八つ当たりをしながらも、透の優しさに甘えずにはいられなくなってしまう。(第80話)

情緒不安定な倉伎真知が生徒会室で暴れてしまい、ガラスを割り資料などを荒らしてしまう。しかし真鍋翔から、この場は任せてほしいと言われた草摩由希は、翔を信用して身を引く。翔は由希にだけ、実は真知とは異母兄弟である事を告げる。跡取り争いに巻き込まれた二人がそれぞれに苦しい時代を経験し、今のような状態になってしまっていたのだった。(第81話)

食事を取ろうとしない依鈴のために、好物のゼリーを作って見舞いに行った透は、依鈴から慊人と十二支についての呪いの話を聞く。血の絆そのものが呪いなのだという話を聞き、透は衝撃を受ける。そして透自身にも母親を失ったトラウマが残っており、そのために悪夢にうなされて起きる事があった。(第82話)

由希は鍵が壊れてしまった生徒会室の資料室に閉じ込められてしまい、慊人にマインドコントロールされていた頃を鮮明に思い出す。そんな時、真知がドアを破壊して由希を助け出す。そこで由希は、自分が透に抱いていた気持ちは恋心というよりも、母親への愛情に近かった事に思い当る。(第83話)

第15巻

鼠憑きとして誕生した草摩由希は、物心がついた時から当主である草摩慊人の相手をさせられていた。最初の頃は、多少わがままなくらいの性格だった慊人は、ある日突然性格がねじれ、由希に暗い言葉を吐き続け、心まで支配しようとする。学校で生まれて初めての友達ができたものの、鼠に変身する姿を見られてしまい、記憶を消去する事で友達を失ってしまう。(第84話)

もともと病弱だった由希は、病気で苦しんでいる状況で慊人から呪いの言葉を囁かれ続け、絶望の淵にいた。しかしある日突然奮い立ち、屋敷を抜け出してしまう。そこで迷子になった娘・本田透を探す本田今日子を見かけ、人知れず透を探して家に連れ戻す手伝いをする。人の役に立てた事を喜んだ由希はもう一度希望を胸に生きようとする。(第85話)

透が自分にとって、異性である前に母親のような存在なのだという事に気づいた由希は、その気持ちについて真鍋翔に打ち明ける事で、少し気が軽くなる。家では透と草摩夾が楽しそうな様子だったが、由希は透に幸せになってほしいという気持ちを改めてかみしめる。(第86話)

文化祭のクラス劇でシンデレラをする事になった花島咲、夾、透、由希達のために、草摩綾女と美音が衣装作りの協力をする。練習を嫌がって逃げる王子役の夾のために脚本が直され、夾は透のために劇に協力する事を決める。(第87話)

文化祭当日、透達は文化祭に訪れた草摩紅葉草摩燈路草摩杞紗らをはじめとした大勢の客の前で劇を上演する。シンデレラは脚本をかなりアレンジされ、型破りなストーリーになっていた。(第88話)

舞台上のセリフにかこつけ、草摩紅野に会いたい気持ちを爆発させた魚谷ありさのために、透は紅葉に頼んで劇の映像を紅野に届けてもらう。そして透と夾はお互いに相手もまた自分を思っているのではないかと気づいた瞬間に、それを打ち消すのだった。(第89話)

第16巻

草摩夾はかつて、本田透の母親・本田今日子と何度か会い、昔語りを聞いていた。中学生時代の今日子は不良グループに所属しており、家族からは冷遇されていた。学校でも居場所がなく、イライラする気持ちを抱えた今日子はある日教育実習でやって来ていた本田勝也と出会う。今日子は勝也の不思議な魅力に惹かれ、胸に秘めていた寂しさを吐露する。(第90話)

勝也に異性として惹かれた今日子は、まじめに生きていく事を念頭に入れて、高校受験のための勉強を始める。しかし、不良グループを裏切ったとみなされてリンチを受けてしまい、大ケガをして受験をする事ができなかった。両親から完全に見放された今日子に勝也がプロポーズし、二人は結婚する。(第91話)

若い二人は周囲に反対されつつも、幸せな家庭を築こうとしていた。妊娠した今日子は子供を生む事に不安を感じるが、二人で力を合わせていい親になろうと努力する。しかし勝也は風邪をこじらせて亡くなってしまい、まだ若い今日子と幼い透だけが残されてしまう。(第92話)

勝也を亡くし呆然自失してしまった今日子は、無意識のうちに勝也のあとを追おうとして街をさまよう。しかし透の存在を思い出し、やっと現実に戻る事ができた。夾は今日子の死に対して責任を感じており、透もまた自分を好きでいてくれるのではないかという思いが浮かぶそばから打ち消してしまう。(第93話)

母親からゆがんだ形で育てられた倉伎真知は、自分の存在価値を見い出せないでいた。かつて自分と似た空気感を出していた草摩由希に興味を持ったが、由希は少しずつ変化していき、真知は取り残された気持ちになっていた。しかしそんな自分に優しく接して来る由希に対し、真知は少しずつ心を開いていく。(第94話)

正月に由希と草摩紫呉は草摩の本家に行く事になり、透と夾は草摩籍真の家に身を寄せる。そこには草摩依鈴も来ており、にぎやかで楽しい正月を迎える事ができた。一方由希は草摩慊人に対する恐怖心を克服し、本音で付き合おうとした結果、癇癪を起した慊人に暴力を振るわれてしまう。(第95話)

第17巻

草摩紅野草摩紅葉から受け取ったDVDには、紅野に会いたいという魚谷ありさの姿が映っていた。紅野はDVDを紅葉に託けた張本人である本田透に連絡を取ろうと、草摩紫呉の家に電話を掛ける。紫呉と紅野は実は兄弟だが、長い間話をしていなかった。紫呉は紅野に対し、実は呪いが解けているのでないかと指摘する。(第96話)

紅野は透と向き合い、話をする。自分が実は既に呪いが解けている事、しかしどうやって解けたのかはわからないという事、そして自分だけが草摩慊人や十二支の仲間を捨てて幸せになる事などできないという事情を透に打ち明ける。紅野はありさを好きだという気持ちよりも、可哀想な女の子・慊人のそばにいる事を選ぶ。(第97話)

慊人は本当は女性でありながら、生まれた時から男性として育てられて来た。それを決めた母親の草摩楝は心身を患っており、草摩の本家の奥の部屋に引きこもっていた。そして、慊人とは実の親子でありながら憎み合っていた。慊人が女性である事を知っているのは、十二支の中では紅野のほかには、紫呉、草摩はとり草摩綾女だけだった。そして紅野は、繊細で泣き虫という一面を持つ慊人を見捨てる事はできないのだった。(第98話)

紅野と別れ、公園で泣きくれる透のもとに、花島咲が現れる。透は咲の家に泊まり、詳しい事情は話せないものの、ありさのためになにもできなかった自分に悔し涙を流す。咲から連絡を受けて駆けつけたありさは、透の気持ちを喜び、感謝の気持ちを伝える。(第99話)

卒業式の準備をする透達のクラスから、草摩由希の作った飾りつけのための造花が、由希のファンクラブ「プリンス・ユキ」の会員達によって盗まれてしまう。同じく草摩夾の作った造花もまた、夾を思う女子達によって盗まれてしまい、クラスメイト達は犯人探しに行ってしまう。残された透は夾に対して、紅野が呪いが解けている事を打ち明けられず、秘密を抱えて苦しんでいた。(第100話)

かつて慊人が幼い頃、紫呉は慊人に対して愛を誓った事があり、慊人はその思い出を忘れられずにいた。慊人は紫呉が別の女性といっしょにいる姿を見てしまい、嫉妬をあらわにする。そして、紫呉がかつて楝と寝た事を糾弾する。しかし紫呉はそれが、慊人が紅野と寝た事への報復だった事を告げる。(第101話)

第18巻

弟が生まれた事により、跡継ぎ問題から解放された倉伎真知は、両親から用済みとして見放され、一人暮らしをしていた。真鍋翔から真知の事情を聞いた草摩由希は、心に闇を抱えた真知が、整然と並んでいるものを見ると発作を起こすという事に気づく。由希は苦しむ真知の心に寄り添い、彼女の心を理解する。(第102話)

卒業式が近づき、由希のファンクラブ・プリンス・ユキの会長である皆川素子は由希との別れを名残惜しく感じていた。素子は卒業直前に、高校生活が充実できたのは由希のお陰だというお礼を伝える。そして素子もまた、生徒会の書記である桜木直人から、思いを寄せられていたのだった。(第103話)

しばらく前から行方がわからなくなってしまっていた草摩依鈴の事が気になった草摩潑春は、草摩燈路から、二人が別れる事になったきっかけである依鈴の大ケガは、実は草摩慊人によって負わされたものだと伝える。その頃、草摩の本家の一室に幽閉された依鈴を、草摩紅野が救い出そうとしていた。(第104話)

潑春は慊人のところへ乗り込み、依鈴を傷つけた事を糾弾するが、逆にそれに気づかず看過してしまった自分自身の罪について責められてしまう。依鈴は、紅野と草摩はとりの手によって病院へ送られる。慊人の呪縛にとらわれそうになる潑春に対し、紅野は依鈴のもとに行くように背中を押す。(第105話)

呪いを解きたがっている依鈴は草摩楝に騙され、慊人の部屋からあるものを盗み出して来るように命令されていた。しかし慊人に見つかってしまい、お仕置きとして幽閉されてしまっていたのだった。助け出された依鈴は無意識のうちに病院を抜け出すが、潑春は依鈴を抱き上げ、これからはずっといっしょでいる事を約束する。(第106話)

助け出された依鈴が少しずつ元気になっていく姿を見て、潑春は喜んでいた。しかし二人とは逆に、あと1年で猫憑きとして一生幽閉される事が決まっている草摩夾の心を慮り、本田透はどうしても呪いを解きたいと強く願う。依鈴と草摩紫呉が呪いについて話している場に遭遇した透は、夾に会えなくなる未来を考え、涙をあふれさせる。(第107話)

第19巻

本田透は母親・本田今日子を失った日から、今日子の思い出を色あせさせないように、つねに今日子を最優先する事を自分の中で決めていた。しかしいつの間にか自分の中の特別な位置に、草摩夾がいる事に対して衝撃を受ける。自分の思いを自覚した透は、夾のそばにいたいと願っていた。(第108話)

今日子の死に罪悪感を抱えている夾は、今日子の命日に透と共に墓前へ行く事ができなかった。しかし透の祖父から、透が幼い頃に親戚から受けた冷たい仕打ちを聞き、墓参りから戻り家事をする透のもとへ駆けつける。母親を連れて行ってしまった父親を恨む自分自身を責めてしまう透の事を、夾は愛おしいと感じる。(第109話)

透と夾の仲が進展した事に気づいた草摩由希は、休日に気を利かせて二人を残して外出する。訪ねて来た由希に、草摩綾女はかつて自分が傷つけてしまった人に対して、罪悪感と後悔の念を抱いている事を打ち明ける。しかし綾女にとっては、傷つけた事を一番後悔している相手・由希の幸せそうな様子を見て、救われた気持ちになる。(第110話)

世の中が思い通りにならない事に絶望し、自分の殻に閉じこもる草摩慊人に対して、草摩紫呉は冷たい態度を取る。草摩紅野草摩はとりのような優しさを慊人に与えられない紫呉は、冷たい態度を取りながらも、慊人の心が本当の意味で開花し、自分を求めて来る事を待っていた。(第111話)

倉伎真知は由希からもらったペーパーウェイトをとても嬉しいと思ったにもかかわらず、普段から感情を表に出さないため、お礼が伝えられない。1日経ってからお礼を言おうと由希のもとへ尋ねる。そして透は、以前から既視感のあった真鍋翔に対して、以前どこで出会ったのかを思い出していた。(第112話)

今日子の死は、翔の彼女である小牧の父親の過失運転によるものだった。即死した自分の父親を悼む一方で、小牧は翔と共に透のもとに焼香に訪れたが、透の絶望した顔を見て、翔は小牧を思うあまり透にひどい言葉を投げかけてしまう。その言葉を後悔した翔は透に懺悔し、由希に小牧を紹介する。(第113話)

第20巻

本田透草摩夾に対する思いを知った草摩依鈴から、それが本物の愛情なのか、またはただの憐みや同情なのかを問われ、透は夾と離れたくないという正直な気持ちを吐露する。それを聞いた草摩楽羅は、夾に対して伝えるべきだと指摘し、力加減を忘れて強めの気合を入れてしまい、透を気絶させてしまう。(第114話)

かつて草摩の当主であった草摩晶は、幼い頃から病弱であり医師からも短命である事を宣告されていた。世話役の一人である草摩楝を伴侶として選び、反対されつつも二人は結婚する。しかし楝は生まれて来た草摩慊人を晶が溺愛する事に嫉妬し、その歪みから慊人を男として育てる事を決めたのだった。(第115話)

突然に呪いが解けた草摩紅葉は、遠くなった存在である慊人を見つめ、複雑な心境でいた。呪いが解けた事によってほかの十二支達との絆は遠くなり、失った家族が戻るわけでもなく、透を手に入れられるわけもなかった。しかし紅葉は、未来のために新しい一歩を踏み出す事を決意する。(第116話)

大好きな父親に死なれてしまった日、慊人は母親からいらないとなじられた事が忘れられないでいた。寂しさをつのらせ、少しずつ心がねじれて行った慊人は、十二支達に対して呪いの言葉を囁きながら、つなぎとめようと必死だった。その理由は、大好きだった父親が一番好きだったのは母親であり、自分が仲間はずれなのだという事を知っていたからだった。(第117話)

両親の愛情が得られずただの空っぽの箱にすがっていた慊人だったが、また突然に草摩燈路の呪いが解ける。十二支の呪いが解けていってしまう事に、慊人は虚脱感に襲われる。自暴自棄になる慊人を草摩紅野は慰めるが、慊人はすべての原因を紅野になすりつけ、その報復として紅野を刃物で刺してしまう。(第118話)

透の自分に対する思いを知った夾は、透に対してこれまで隠していた事を告白する。それは、生前の今日子に何度か会って面識があった夾が、今日子が亡くなる瞬間に居合わせ、目の前に突っ込んで来る車に気づきながら、正体がばれる事を恐れてとっさに動けなかったという自分の罪だった。(第119話)

第21巻

車に轢かれた本田今日子が血だまりの中で呟いた「許さない」という言葉を自分への恨みだと解釈した草摩夾は、草摩籍真と共に4ヵ月間の山籠もりをし、草摩由希に対する恨みにすり替える事で自分を保っていた。それでも自分を好きだと言い張る本田透に、夾は拒絶の言葉を残して立ち去る。(第120話)

夾に拒絶された透に、草摩慊人の影が忍び寄る。慊人は自分とは対極的に十二支達から好かれている透の存在が許せず、透に対して刃物を向ける。痛めつけられながらも、慊人の寂しさや苦しさを受け止めようとする透に対して、慊人は恐れを感じて走り去る。そんな慊人を追いかけ手を差し伸べた透は、崖の上から落ちてしまう。(第121話)

慊人は崖から落ちた透のために助けを呼び、由希と草摩紫呉と夾が駆けつける。自分には透との幸せなど望む資格がないと考えていた夾は、頭を打って危険な透の状態を目の当たりにし、激しく後悔する。涙を流す夾に、透は力を振り絞って目を開け、彼を慰める。一方、草摩紅野もまた病院へ運ばれ、命を取り留めていた。(第122話)

病院へ運ばれた透は一命を取り留め、意識を取り戻す。十二支の仲間達は透を心から心配する。病院から戻った由希は家で一人で落ち込んでいる夾に対し、情けなさをなじる。夾と由希は殴り合いながら、実はそれぞれがお互いにあこがれていた気持ちを打ち明け合う。夾は自分を責めて閉じこもっていた殻から抜け出す覚悟をする。(第123話)

透をひどい目に遭わせた事を、魚谷ありさ花島咲からなじられた夾は、透の安静のために病院へ見舞いに来る事を禁じられる。慊人は病院を訪れ、紅野に対し、刺してしまった事だけでなく、これまで自分を犠牲にしながらそばにい続けてくれた事に懺悔する。そして次に、謝るために透の病室を訪れるのだった。(第124話)

透が入院している事、透がかつて心が傷だらけだった由希を温かく包み込み、支え続けてくれた事を知った倉伎真知は、由希が自分にとって大切な存在になった事もすべて透のお陰だと感じ、感謝の気持ちを抱く。そんな真知の気持ちを知り、由希は真知に対して抱えていた気持ちを打ち明け、二人は相思相愛になる。(第125話)

第22巻

草摩夾はこれまで逃げていたいろいろな事に立ち向かう事を決め、まずは父親のもとを訪ねる。父親は夾の母親が死んだ事を夾のせいだとなじり、夾は母親を自殺に追い込んだのは自分の存在だけでなく父親の心無い言葉も原因だった事を知る。しかし夾は、父親とも時間をかけて関係を作っていこうと考える。(第126話)

夾にふられたと思い込んでいる本田透を動揺させないため、夾は透への見舞いを魚谷ありさ花島咲から禁じられていた。ありさと咲は草摩慊人に会い、慊人から透にケガをさせた事情と、これまで草摩紅野を束縛して来た事を打ち明けられる。そして紅野は、慊人のために遠く離れたところへありさと共にひっそりと移り住む。(第127話)

草摩燈路も呪いが解け、慊人は少しずつ別れていく十二支の仲間達との最後の宴会を開く事を決める。草摩由希は相思相愛になった倉伎真知に対して自分の正体を打ち明けようと決意し、休日に真知を呼び出す。そして夾は、退院した透を迎えに病院へ行き、久しぶりに顔を合わせるも、透から全速力で逃げられてしまう。(第128話)

追いかけて来る夾を振り切って逃げた透は、涙を止められないでいた。そんな透を引き留めた夾は、これまで自分の事しか考えていなかった事を懺悔する。そして透への思いを正直に伝える。そして夾は透を抱きしめるが、夾は猫に変身する事はなく、呪いは解けていた。(第129話)

透と抱き合っても猫に変身しなかった事に、夾と透は驚愕する。腕にかかっている数珠を引きちぎっても、夾は異形の姿に変身する事はなかった。その頃、ほかの十二支のメンバー達もまた、次々と呪いが解けていたが、それぞれが寂しい気持ちになっていた。(第130話)

はるか昔、不思議な力を持つ一人ぼっちの神様は、永遠に変わらないまじないをかけた盃を13匹の動物達に分け合い、寿命が尽きて一人ぼっちで死んでいっても、再び巡り合う約束を糧にしていた。呪いが解けた夾は草摩籍真に報告に行き、透は慊人と友達になる。(第131話)

第23巻

十二支の仲間達と草摩夾を集めた草摩慊人は、みんなの前で女性である事を明かし、仲間達を自由に解放する。そして慊人は草摩紫呉に対して自分の正直な気持ちを打ち明け、紫呉もまた、慊人の事を長い間待ち続けていた事を伝える。そして自分を求める限りは、慊人のそばにいる事を約束する。(第132話)

本田透と夾が付き合い始めた事は周囲に知れ渡り、クラスメイト達は二人を微笑ましく見守る。透は夾と草摩由希の関係が以前より緩和された事を喜ぶ。慊人もまた、草摩楝と向き合う事を決意し、時間をかけて今の関係を変えようとしていた。それは難しい事ではあったが、一人ぼっちではなく、支えてくれる紫呉がいた。(第133話)

透と夾は、魚谷ありさ花島咲に邪魔されつつもデートを楽しんでいた。夾の事をさんざんからかって遊んだありさと咲は、最後に夾に対して透の事をしっかり頼み、気を利かせて先に帰る。残った二人は本田今日子の墓参りをしながら、卒業後の将来の事について話し合う。(第134話)

夾は遠い場所で修業をしながら働こうと考えており、透は共についていく事を即決する。本田今日子が夾に向かっていまわの際に残した「許さない」の言葉の真意は、透を守ってくれなければ許さない、という意味だった。一人ぼっちになってしまう透を最期まで心配しながら息を引き取り旅立った今日子は、天国で本田勝也と再会する。(第135話)

透と夾は共に遠い地へ旅立っていく。二人を慕うみんなは別れを惜しむが、会いたい時はいつでも会いに行けるという希望を持っていた。そんな中、由希は遠くの大学に進学する事になり、ありさは既に遠い地に住む紅野を追いかけていく事を決めていた。そして由希は、最後に透に対して伝えきれないほどの感謝の気持ちを打ち明ける。(最終話)

登場人物・キャラクター

本田 透 (ほんだ とおる)

海原高校に通う少女。幼いころに父親を亡くし、さらに高校生になってから母も事故で失った。その後同居することになった叔母一家と上手くいかず、テント生活をしているところを同級生の草摩由希に助けてもらう。草摩家に住むようになって間もなく、十二支の物の怪憑きという秘密を知り、解放してあげたいと考えるようになる。 ビル清掃のアルバイトで生計を立てるなど真面目な性格。草摩家でも掃除や料理といった家事全般をこなす。学校での成績は決して高くないが、自宅での学習も怠らない。物語が進むに連れて、草摩夾に惹かれていく。

草摩 由希 (そうま ゆき)

海原高校に通う本田透の同級生で、行き場所を無くした彼女に住まいを提供する。十二支の頂点とされる鼠の物の怪が憑いている。成績優秀、容姿端麗であることから、学校内にファンクラブが作られるほど。しかし本人は中性的な顔がコンプレックスで、周囲の人気にも無自覚。 また手先が不器用で、料理も下手という欠点がある。気管支炎を患っており、特に幼少期は度々発作を起こしていた。鼠に変身するとさらに病状が悪化することも。

草摩 夾 (そうま きょう)

十二支から外された猫の物の怪憑きであることをコンプレックスに感じている。短気な性格で、本田透が草摩家に居候してきた当日に喧嘩をした。その後、自身も居候するようになり、海原高校に編入。本田透に対しても無愛想な振る舞いをしていたが、交流を重ねるうちに友情・愛情を抱くようになる。 世間知らずな面もあるが、一風変わった性格の多い草摩家の中では常識人。猫の物の怪が水嫌いであるため、自身も雨が降ると体調を崩すことがある。

草摩 紫呉 (そうま しぐれ)

本田透の居候先の主人で由希の従兄。職業は小説家で、主に純文学作品を執筆している。本名で執筆することもあれば、作品によってはペンネームを用いることもある。飄々とした性格を装っているが、本心を見せることはあまりない。戌の物の怪憑きである。「作家っぽいから」という理由で和服を着流している。

草摩 楽羅 (そうま かぐら)

本田透の2学年上の少女。猪の物の怪憑き。 普段は大人しい性格だが、興奮すると一転乱暴者に。草摩夾とは幼い頃からの付き合いで、姉のような存在。元々は十二支憑きの呪いを背負う自分よりも、草摩夾がより可哀想な存在だからという理由で近づいたが、いつしか好意を寄せるようになる。

草摩 紅葉 (そうま もみじ)

本田透より1歳下で、幼さが残る少年。ドイツ人と日本人のハーフで、ドイツ語を話せる。女の子のようにかわいい少年で、高校に入学したばかりのころは女子の制服を着用していた。元気でよく喋るが、調子に乗りやすいことが欠点。趣味はバイオリンで、将来はバイオリニストになることが目標。 兎の物の怪憑き。

草摩 はとり (そうま はとり)

草摩家専属の主治医。草摩家に代々伝わる「記憶の隠蔽術」を扱う人物で、物の怪の秘密を知った人間の記憶を封じる。龍の物の怪憑きだが、変身後の姿は龍ではなくタツノオトシゴ。その姿は自身のコンプレックスになっている。以前は助手の草摩佳菜と付き合っていたが、交際を報告した際に草摩慊人に暴力をふるわれ、左目の視力を失った。

草摩 綾女 (そうま あやめ)

草摩由希の兄だが、由希とまったく反対なにぎやかしい性格。弟のことを溺愛するものの、当の由希からは迷惑がられている。自己中心的な考えの持ち主だが、積極的な面もあり、高校時代は生徒会長を務めた。草摩はとりを尊敬しており、はとりの言うことだけは素直に聞く。服飾店「あやめ」の店長。 蛇の物の怪憑き。

草摩 杞紗 (そうま きさ)

虎の物の怪憑きの少女で、髪も金髪に黒が混じった虎毛模様をしている。髪をはじめとした見た目が原因で学校で苛めに遭う。元来おとなしく無口な性格であったことも手伝って、ショックで誰とも話せなくなる。変身したまま衰弱していたところを草摩潑春に発見され、草摩家に連れて来られた。 草摩家では本田透を慕っている。

草摩 燈路 (そうま ひろ)

羊の物の怪憑き。十二支の物の怪憑きの中では最年少で、本田透より5歳年下。しかし毒舌家で、透を困らせることもある。言葉がきついことから、周囲の反感を買うこともしばしば。本人も自覚しているものの、なかなか素直になれないでいる。思いやりの心を持っている草摩潑春のことを尊敬している。 作中で妹が生まれ、兄になった。

草摩 利津 (そうま りつ)

私立大学に通う青年。相手を気遣うタイプだが、問題が起こるとすぐに自分が悪いと思ってしまうネガティブな性格。誰に対しても低姿勢で、時には度が過ぎて空回りした行動を起こすことも。落ち着くからという理由で女装をしており、大学にも振り袖の姿で通っている。自分にはない、堂々とした性格の草摩綾女にあこがれている。 猿の物の怪憑き。

草摩 依鈴 (そうま いすず)

スタイルがよく、足にかかるほどのロングヘアが特徴の少女。作中では草摩慊人に髪の毛を切られ、途中からショートカットに変化する。両親から虐待され倒れているところを草摩潑春に助けられた。その後は草摩楽羅の家に引き取られるが、虐待を受けたトラウマの影響で心身ともに不安定で、入退院を繰り返す。 馬の物の怪憑き。

草摩 紅野 (そうま くれの)

鶏の物の怪憑き。草摩家の当主・草摩慊人からは過保護ともとれるほど気に入られており、コンビニで買い物をした経験すらなかった。あるときから深夜にコンビニへ出かけるようになり、そこで出会った本田透の親友・魚谷ありさに恋をする。幼い頃から草摩紫呉を慕い、兄さんと呼ぶ。

草摩 慊人 (そうま あきと)

草摩家の当主にして、十二支の物の怪憑きにとっての神といえる存在。母親の命令で男として育てられたが実は女性。その事実は草摩家の人物でも一部しか知らない。自分と十二支の物の怪憑きが呪いの力で結びついていることを知っているため、呪いが解けることを常に恐れている。十二支の物の怪憑きの仲間外れである猫憑きの草摩夾に対しては興味が薄い。

草摩 籍真 (そうま かずま)

草摩夾が尊敬する武術の師匠。母親が亡くなり、父親からも見捨てられた夾を養子として引き取る。夾のことを誰よりも理解し父親のように愛している。また、夾に好意を寄せる本田透のことも好ましく思っており、2人の関係を温かく見守る。料理が苦手で、たびたび失敗する。

魚谷 ありさ (うおたに ありさ)

本田透の親友の1人で、小学5年で暴走族デビューしたという過去を持つ。両親を亡くした透に対して親のように接する。180cmに届こうかという長身の持ち主で、透からはモデルに向いていると言われる。コンビニでレジ打ちのバイトをしていた時に草摩紅野と出会い、恋愛感情を抱く。

花島 咲 (はなじま さき)

本田透の親友の1人。人や生き物の出す電波を感じられるという不思議な少女。この能力から、クラスメイトはもちろん草摩家からも注目される。しかし幼少期は能力のコントロールができず、周囲からは魔女と罵られていた。いつも無気力な態度で、勉強の成績も悪い。

草摩 楝 (そうま れん)

草摩慊人の実の母親。子供の面倒を見ることはなく、また病弱なため、普段は奥の間にいる。草摩家では、慊人に次ぐ権力の持ち主。慊人との仲は悪く、話し合いを持ちかけられても拒否するほど。また、一部の十二支の物の怪憑きに対しても冷たくあしらっている。夫であり故人の草摩晶をいつまでも愛しており、時には異常な執着心を見せることも。

草摩 晶 (そうま あきら)

草摩慊人の実の父親で、草摩の前当主である。故人。生前は病弱で、医者からも短命であることを早くから告げられていた。草摩楝とは、周囲の反対を押し切る形で結婚。しかし、慊人が生まれてからは子供を優先的に愛するようになり、それがきっかけに楝の嫉妬心を生むこととなる。結局、死に至るまで楝と仲直りできなかった。

白木 繭子 (しらき まゆこ)

海原高校に勤める教師で、本田透のクラスの担任。透が草摩家に居候していることを知る数少ない人物でもある。草摩はとりの元恋人である草摩佳菜とは大学時代からの親友で、さらにかつては草摩紫呉と付き合っていた過去も持つ。そのほか、草摩綾女とも知り合いである。 身長が高く、サバサバとした性格。

草摩 佳菜 (そうま かな)

かつては草摩家専属の主治医である草摩はとりの助手をしていた。当時ははとりと恋人同士であったものの、草摩慊人に暴力を振るわれたはとりが左目を失明すると、自分のせいだと思いつめてノイローゼを患う。その記憶をはとりが消してからは、別の男性と付き合い、結婚した。

真鍋 翔 (まなべ かける)

海原高校に通う高校生で、生徒会の副会長を務める。常にハイテンションで、少々の問題でも強引に解決してしまう。しかし倉伎真知の父親が愛人に産ませた子どもであり、そのため、中学時代は家の跡継ぎ問題に巻き込まれる。そうした影響もあって以前は暗い性格だった。生徒会会長である草摩由希からは、テンションの高い性格が肌に合わず苦手だったが、物語が進むに連れて打ち解けていく。

倉伎 真知 (くらぎ まち)

海原高校に通う高校生で、生徒会で会計係を任されている。普段は無口だが、よく整理されているものを見ると、途端に破壊衝動に駆られる。草摩由希と出会ったことがきっかけで、裏表のある性格が徐々に治っていく。生徒会副会長の真鍋翔とは異母兄弟の関係。子供の頃は母親から完璧さを求められ、それがトラウマになっている。

藤堂 公 (とうどう きみ)

海原高校に通う高校生で、生徒会では書記を担当。ぶりっ子な性格で、男子生徒からの人気が高い反面、女子生徒からは嫌われており。草摩由希のファンクラブ・プリンス・ユキのメンバーに対して暴言を吐くことも。普段の生活では自身の性格をうまく隠しているが、真鍋翔には気付かれている。

桜木 直人 (さくらぎ なおひと)

海原高校に通う高校生で、生徒会では藤堂公と同じく書記を担当している。本田透の1学年下で、とても真面目な性格をしておりいい加減な真鍋翔のことを怒る場面も。その性格が仇となって、生徒会のメンバーからいじられることも少なくない。プリンス・ユキの会長である皆川素子に好意を抱いている。 そのため、草摩由希をライバル視。

皆川 素子 (みながわ もとこ)

海原高校に通う高校生で、草摩由希のファンクラブ・プリンス・ユキの会長として会員を束ねている。由希に真剣に恋しているが、思い詰めるあまり突飛な行動をとることも。由希と親しい本田透を敵視している。実家は八百屋で、自身の部屋はファンシーな装飾で統一。

本田 今日子 (ほんだ きょうこ)

本田透の母親。故人。子供の頃は家庭環境に恵まれず、孤独な少女として成長。その後、伝説的なヤンキーになっていく。中学時代に教育実習生として赴任してきた本田勝也と出会い結婚。透が高校1年の時に交通事故に遭い亡くなる。生前は草摩由希、や草摩夾とも親交があった。

本田 勝也 (ほんだかつや)

本田透の父親。故人。本田今日子の通う中学校へ教育実習生として赴任したことがきっかけで今日子と知り合い、その後結婚する。自身は教師にはならず、薬品系の会社で働いていた。出張先で風邪をこじらせたことが原因で、若くして亡くなってしまう。敬語を使った喋り方をし、その特徴は娘の透に引き継がれた。

草摩 潑春 (そうま はつはる)

マイペースな性格の持ち主だが、キレやすい一面もある。牛の物の怪憑きで、馬の物の怪憑きである草摩依鈴に恋心を抱いている。その反面、鼠憑きである草摩由希を一方的に嫌っていた。これは大人たちからよく、鼠に一番乗りを奪われた間抜けな牛とバカにされてきたから。 本田透の1歳年下で、白髪が特徴。

集団・組織

海原高校 (かいばらこうこう)

『フルーツバスケット』に登場する高校。共学の都立高で、本田透や草摩由希が通っている。学業のレベルは高く、本田透は追いつくのに精一杯。校内には草摩由希が会長を務める生徒会が存在し、校則を厳しく取り締まる。また、草摩由希のファンクラブとしてプリンス・ユキも設立され、全女子生徒の半数が加入。

関連

フルーツバスケットanother (ふるーつばすけっとあなざー)

高屋奈月の代表作である『フルーツバスケット』の数十年後の世界を描いた作品。人間関係に対して深い悩みを抱える三苫彩葉が、草摩家の人たちと出会った事をきっかけに、新しい人生を歩み始める姿を描いたヒューマン... 関連ページ:フルーツバスケットanother

書誌情報

フルーツバスケット 全23巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第1巻

(1999-01-19発行、 978-4592171614)

第23巻

(2007-03-19発行、 978-4592184034)

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