荒ぶる季節の乙女どもよ。

荒ぶる季節の乙女どもよ。

同じ高校の文芸部に所属する小野寺和紗、須藤百々子、菅原新菜、本郷ひと葉、曾根崎り香の五人は、新菜の「死ぬまでに一度はセックスがしたい」という発言をきっかけに、強く性について意識するようになる。そんな五人が、それぞれに大切な人と向き合いながら成長していく姿を描いた青春群像劇。「別冊少年マガジン」2017年1月号から2019年10月号にかけて連載された作品。

正式名称
荒ぶる季節の乙女どもよ。
ふりがな
あらぶるきせつのおとめどもよ
原作者
岡田 麿里
漫画
ジャンル
恋愛
 
部活動
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

文芸部に所属する小野寺和紗須藤百々子菅原新菜本郷ひと葉曾根崎り香の五人は、校内ではあまり目立たず、部活動に励むだけの日々を送っていた。そんなある日の部活動中、突如新菜が死ぬまでに一度はセックスがしたいと言い出す。新菜は児童劇団に所属していた頃の師、三枝久の言葉を真に受けており、もうすぐ自分の女性としての魅力は失われ、それは自らの死に等しいことだと考えていた。そんな意図はまったく知らない和紗たち四人だったが、これをきっかけに各々が性を意識するようになる。和紗は幼なじみの典元泉のことが気になっているが、現在は泉のファンの嫉妬により距離を置いており、うまく会話することもできずにいた。しかし、その直後に偶然泉の自慰行為を目撃してしまう。これによって一度は気まずくなる二人だったが、結果的に以前よりも距離が縮まり会話できるようになる。一方その頃、潔癖症のり香は、みんなの性事情に強い嫌悪感を抱いていた。そのため、り香はクラスメイトの十条園絵に攻撃的になってしまい、周囲から孤立しかける。しかしこれを天城駿に助けられ、さらに容姿を褒められたことで、駿を意識するようになる。

第2巻

文芸部は突如、廃部の危機に陥る。文芸部は教師たちから、性的な話題で盛り上がる、ふまじめな生徒たちが集まっていると思われていたのだ。そして顧問がいないこともあり、廃部に追い込まれたのである。納得がいかない小野寺和紗たちは新顧問を探すために奔走するが、教師たちはまるで取り合ってくれない。そこで、教師たちの横暴を生徒たちに訴え、文芸部存続の署名活動を始めることにする。こうして週末は部活に励むことになった和紗たちだったが、本郷ひと葉だけは活動できないと言い出す。ひと葉は小説家志望で、デビューしたいのであれば官能小説を執筆するように、編集者から言われていたのだ。しかし、リアルな性描写ができないことに悩んでおり、そこでインターネット上で親しくなった男性「ミロ」と会い、セックスすることで経験を積もうとしていたのである。こうして週末ミロと待ち合わせしたひと葉だったが、そこに現れたのは国語教師の山岸知明だった。二人はお互いが同じ高校の生徒と教師であることを知らないまま、アダルトチャットで交流を深めていたのだ。これを知ったひと葉はセックスどころではなくなってしまうが、知明の弱みを握ったことで、知明に文芸部顧問になるよう命じるのだった。

第3巻

山岸知明が顧問になったことで文芸部は廃部を免れたが、小野寺和紗たち部員には、それぞれ別の問題が生じ始めていた。須藤百々子は最近通い始めた予備校で、小学校時代の同級生の杉本悟と再会するが、彼の馴れ馴れしい態度に辟易していた。だが百々子は、とあるきっかけで、悟が以前から百々子にあこがれていたことを知り、悟と親しくなってみようと考え直すのだった。その頃、和紗は、典元泉が自分のことを友人として大切に思っていながら、性的な対象として見ていないことを知り、深いショックを受けていた。だが和紗は、先日の泉の自慰行為の一件から泉との関係を考え直し、泉への思いを自覚していたのである。一方、曾根崎り香天城駿に告白されたが、これを信じることができずに、自分の好きなところをレポート用紙50枚分書けたら考えると突っぱねてしまう。り香はまずレポートは提出されないだろうと思っていたが、駿は50枚もの真剣な思いを綴ったレポートを手渡し、り香の心は激しく揺さぶられる。菅原新菜はそんな仲間たちの変化を一歩離れたところから見守り、また和紗との件がきっかけで泉と親しくなり、彼の相談にも乗るようになっていた。しかし、二人でいっしょにいるところを、和紗に目撃されてしまう。

第4巻

曾根崎り香天城駿と交際を始め、須藤百々子は悩んだ末に杉本悟とは合わないと判断して距離を置く。一方、本郷ひと葉山岸知明に、リアルな性を教えて欲しいと頼んでいた。ひと葉は、自分たちがアダルトチャット経由で親しくなったことをネタに再び知明を脅し、言うことを聞いてもらおうとしたのである。知明は呆れつつも、作家として成長したいと願うひと葉の真剣な思いを無下にできず、直接的な性ではなく、観念的な性を学ぶのはどうかと提案。そこで二人は下着を見せるなど、お互いの身体には触れずに性的な真似事をするようになる。そんな中、小野寺和紗たち文芸部は、生徒会から文化祭の舞台「恋の伝説」を創作して欲しいと頼まれる。生徒会は文化祭を盛り上げるために噓の伝説をでっち上げたいと考えており、より信憑性の高いものにするため、文芸部に委託したのである。この申し出を引き受けることになった和紗たちは、知明の両親が営むペンションで合宿を始める。しかし和紗は、菅原新菜がやけに挑発的な態度を取ることに不安に感じていた。新菜は、なかなか進展しない和紗と典元泉の関係を変えるために、自分もまた泉を好きなふりをし、和紗を焦らせようと考えていたのである。

第5巻

合宿は終わり、「恋の伝説」は無事完成した。小野寺和紗たち文芸部はこの伝説を広めるため、文化祭では朗読劇を予定していた。和紗が女子役で、菅原新菜が男子役として、お互いに告白するストーリーを演じることになる。和紗は合宿で新菜へのもやもやした気持ちも解消し、文化祭後に典元泉に告白する決心もつき晴れやかな気分でいたが、一方の新菜は複雑な気持ちでいた。新菜は和紗のためにライバル役を演じるつもりが、いつのまにか泉に惹かれ始めていたのである。そこで新菜は三枝久にアドバイスを求めるが、これがきっかけで、新菜は幼い少女にしか興味のない久に、再び関心を持たれてしまうのだった。そして文化祭当日となり、全4回の朗読劇が始まるが、泉と久は同じ会に現れる。その結果、新菜は二人を意識するあまり台本にない行動を始め、最終的に自分の役を相手役である和紗ではなく、観客である泉に告白する展開に変えてしまう。終演後、泉はそんな新菜を呼び出すが、泉は展開を変えたのは久を意識してのものと勘違いしていた。このため結局、新菜は気持ちを伝えられずに終わってしまう。こうして文化祭は終了し、「恋の伝説」の舞台となるキャンプファイヤーの時間を迎える。和紗は泉のもとへ向かい、須藤百々子は新菜を心配し探していたが、その頃新菜は久に新たな展望を打ち明けていた。

第6巻

文化祭がきっかけで、小野寺和紗典元泉はついに交際を始め、曾根崎り香天城駿もより深い関係となる。一方で本郷ひと葉は、山岸知明が国語教師の富多笑美に思いを寄せていることに気づいてしまう。さらに須藤百々子は、菅原新菜がまだ泉をあきらめておらず、今後もアプローチを続けるつもりであることを案じていた。そこで百々子は新菜に、泉との恋愛よりも自分たちとの友情を大切にして欲しいと頼む。しかし新菜はこれに応じず、この件がきっかけで、百々子は新菜への思いを自覚してしまうのだった。その直後、ひと葉は知明を呼び出し、一度でいいからセックスして欲しいと頼む。断られるとばかり思っていたひと葉だったが意外にも知明はこの誘いに応じ、二人はラブホテルへ向かうことになる。しかし、ラブホテルに向かう車をり香と駿に目撃され、二人に尾行されてしまうのだった。一方その頃、新菜もまた泉に会い、今後和紗との関係を円滑に進めるためにも、まずは自分でセックスの経験を積んでみるのはどうだろうかと提案していた。しかし泉はこれを断り、傷ついた新菜は一人その場を去る。するとそこに、百々子から連絡が入る。

第7巻

本郷ひと葉は、山岸知明に説得されてセックスするのをあきらめた。須藤百々子菅原新菜に告白したものの返事は得られず、深く傷ついていた。さらにその翌日、衝撃の事実が発覚する。曾根崎り香天城駿のクラスメイトである十条園絵が、妊娠を理由に退学したのである。園絵と親しくなり始めていたり香は、園絵が妊娠した途端周囲が冷たくなったと思い込み腹を立てるが、ひと葉に反論される。それでも納得のいかないり香は、怒りのあまり、ひと葉と山岸知明がラブホテルに入るところを見たと言ってしまう。その直後、自暴自棄になった新菜は、三枝久にセックスして欲しいと頼む。新菜はかつての思い人である久と結ばれることで、今の自分を変えようと考えていたのである。しかしいざ久がこれに応じると、新菜は久の不快なところばかりが目についてしまい、結局拒絶してその場を去ってしまう。これによって自分の気持ちに踏ん切りがついた新菜は、小野寺和紗典元泉への思いを打ち明ける。その場ではこれを受け入れた和紗だったが、内心では激しく焦っていた。そして、泉の気持ちを新菜に向かせないためには、自分は一刻も早く泉とセックスしなくてはならないと思い込む。

第8巻

曾根崎り香天城駿がラブホテル街にいたことがばれ、二人は退学処分となってしまう。学校側は十条園絵の件もあり、男女交際を全面禁止にしようと考えていた。そこで、まずは見せしめとして二人を退学にしたのだ。これに納得のいかない小野寺和紗須藤百々子菅原新菜本郷ひと葉の四人は、学校側へ抗議することを決意。山岸知明を人質に立てこもり、退学処分の撤回を要求する。これを聞きつけた教師たちとり香、駿はすぐさま学校へ向かうが、教師たちは本気にせず、さらに明日が休みであるのをいいことに、早々に帰ってしまう。それでもあきらめ切れない和紗たち四人は、り香が自分も校舎に入れて欲しいという要求を無視して引き続き立てこもるが、その直後、り香たちから話を聞いた典元泉まで学校へ来てしまう。これをいい機会だと考えた新菜は泉のもとへ向かうが、その途中で和紗や百々子との会話が泉に聞かれてしまったことで、告白前に自分の気持ちを知られてしまう。そこで百々子は泉に、和紗と新菜を思うなら、本心を話すべきだと提案するが、泉の本心とは、人間として大切に思うのは和紗だが、女性として性的な魅力を感じるのは新菜であるというものだった。

メディアミックス

TVアニメ

本作『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のTVアニメ版が、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のタイトルで、2019年7月から9月にかけて、毎日放送およびTBSテレビ系列にて放送された。監督は安藤真裕と塚田拓郎、キャラクターデザインは石井かおり、脚本は原作者である岡田麿里がそれぞれ務めた。小野寺和紗役を河野ひより、須藤百々子役を麻倉もも、菅原新菜役を安済知佳、本郷ひと葉役を黒沢ともよ、曾根崎り香役を上坂すみれが演じた。

登場人物・キャラクター

小野寺 和紗 (おのでら かずさ)

高校1年生の女子。文芸部に所属している。暗い茶色のショートボブヘアで、かわいらしい雰囲気を漂わせている。しかし、典元泉のファンからは、泉と親しいことを理由に嫉妬され、地味であると揶揄されることが多く、自分の容姿に自信を持てなくなっている。家族や友人たちの前では明るく振る舞っているが、それ以外ではあまり目立たないようにしており、クラスでも孤立気味。そのため、必要以上に争いごとや変化を嫌う気弱なところがあり、須藤百々子が所属する文芸部に依存しがち。泉とは幼なじみで、子供の頃は性別を意識することなく、非常に仲よくしていた。しかし、年齢を重ねる毎に周囲からの嫉妬もあり、泉と思うように会話できなくなったことに悩んでいる。そんな高校1年生のある日、菅原新菜の死ぬまでにセックスがしたいという発言で、性について強く意識するようになる。さらにこの直後、偶然泉の自慰行為を目撃してしまい、これがきっかけで泉への思いを自覚する。やがて泉に思いを寄せるようになった新菜と、三角関係になってしまう。身長は156センチで、血液型はA型。好きな本はミヒャエル・エンデの『モモ』とJ・K・ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズ。

須藤 百々子 (すどう ももこ)

小野寺和紗と同じ高校に通う1年生の女子。文芸部に所属している。癖のある淡い茶色のセミロングヘアを2本の三つ編みにしてまとめている。かわいらしい容姿で、ほんわかとした印象を与える。和紗とは非常に親しく「もーちん」と呼ばれている。穏やかで落ち着いた性格で、人を和ませる独特な雰囲気を持つ。そのため、周囲の女子とはうまくなじめない和紗と菅原新菜も、須藤百々子のことは信頼し心を許している。恋愛には奥手で、男女の話題には関心を持ちつつも、積極的に異性と親しくしたいとは思っていない。また、下品な男性や性に飢えている男性も苦手。そんなある日、大学受験に向けて通い始めた予備校で、小学校時代の同級生の杉本悟にアプローチされるものの、どうしても彼を好きになれず、やがて、恋愛とは異性とするものであるという考え自体に疑問を持つようになる。そして恋愛とは距離を置こうとしていたところ、友人だと思っていたはずの新菜に惹かれていく。身長は154センチで、血液型はAB型。好きな本はダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』。

菅原 新菜 (すがわら にいな)

小野寺和紗と同じ高校の1年A組に在籍する女子。文芸部に所属している。白い髪の毛をボブヘアにした美少女で、一見細めだがスタイル抜群。そのため幼い頃から非常に目立ち、異性から人気がある。その一方で同性には嫉妬されることが多く、特に恋愛関係のトラブルに巻き込まれがちである。そのため同性の友人はほとんどおらず、和紗と須藤百々子のことを、ようやくできた友人として大切に思っている。クールな落ち着いた性格で、何を考えているのかわからないミステリアスなところがある。菅原新菜自身もこれを自覚しており、何か問題が起きた時も、一歩離れた冷静な視点で意見することが多い。そのため、文芸部でも相談を受けることが多いが、いつも上から目線で回答をする自分自身のことは、あまり好きになれずにいる。子供の頃は児童劇団「そよかぜ」に所属しており、ここで三枝久から言われた「新菜の魅力は少女らしい儚さ、危うさであり、それは成長すればやがて失われるものである」という言葉を信じ込んでいる。そのため、成長してその魅力がなくなる時が自分の死だととらえていたため、これを迎える前にセックスしておきたいという旨の発言をし、部員たちを驚かせる。これがきっかけで、久への複雑な感情や、それまでなんとも思っていなかった典元泉との関係に悩むようになる。身長は160センチで、血液型はB型。好きな本はジョルジュ・バタイユの『眼球譚』。

本郷 ひと葉 (ほんごう ひとは)

小野寺和紗と同じ高校に通う2年生の女子。文芸部に所属している。癖のあるボブヘアで、釣り目の小柄な体型をしている。髪の毛量が多く、もじゃもじゃとしていることから、全体的に小動物のような印象を与える。ハンドルネームは「ひとと」で、この名前でアダルトチャットをしている。クールでマイペースな性格で、将来の夢は小説家になること。そのため、周囲から浮いてしまってもまるで気にすることなく、小説を書いては出版社に持ち込むなど、夢に向かって邁進している。しかし高校2年生の春、編集者から作家デビューしたければ官能小説を書ように言われるが、セックスシーンがうまく書けないことに思い悩んでいた。そこでアダルトチャット仲間の「ミロ」に手伝ってもらい、性経験を積もうとするが、ミロが自分の学校の教師である山岸知明であることが判明し、複雑な関係となってしまう。文芸部内では特定の誰かとなかよくすることはなく、独特の立場を築いているが、文芸部と部員たちのことを愛しており、部に関するトラブルが起きた時は、積極的に対応する。また、語彙が豊かで頭の回転が速く、執筆も速いため、非常に頼りになる。身長は141センチで、血液型はB型。好きな本は村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』。

曾根崎 り香 (そねざき りか)

小野寺和紗と同じ高校に通う3年生の女子。文芸部に所属し、部長を務めている。腰まで伸ばした焦げ茶色のストレートロングヘアに、すらりとした長身の美少女。モデルのえり香に似ているが、自らの容姿に関心がなかった頃は髪を結んで眼鏡をかけ、地味な服装を身につけていた。十条園絵からは「おそね」と呼ばれている。よく詩的な表現や難しい語彙を用い、文学的な話し方をする。まじめな性格の理想主義者で、自分にも他人にも非常に厳しい。そのため自分こそが正しいとの思い込みが激しく、自分と違う意見の人間を敵視し、攻撃的になる。特に恋愛に関しては、低俗なものであるという考えが強く、恋愛や性の話題で盛り上がる周囲を見下す日々を送っていた。そのため、文芸部員やクラスメイトたちに煙たがられ、孤立しそうになるが、天城駿に助けられる。これがきっかけで彼を強く意識し、やがて恋に落ちる。身長は170センチで、血液型はO型。好きな本は小野不由美の「十二国記」シリーズ。

典元 泉 (のりもと いずみ)

小野寺和紗と同じ高校の1年A組に在籍する男子。和紗の幼なじみ。明るく素直な性格で、かわいらしい顔立ちのため異性から非常に人気がある。しかし、和紗がトラブルに巻き込まれるまでは、自分の魅力にまったく気づいていなかった。子供の頃から大の電車ファンで恋愛にはあまり関心がなく、異性にもてるより時刻表に興味があるなど、マイペースな学校生活を送っていた。和紗とは、子供の頃から非常に仲がよく、親同士も親しい。そのため和紗のことは友人であり、家族のような大切な存在と考えている。だが中学生のある日、自分と仲がいいことが原因で和紗が同級生の女子たちから妬まれ、和紗が孤立していることを知る。これにすぐ気づいてやれなかったことを悔いており、そのため高校生になってからは、和紗と距離を置いていた。しかし、和紗に自慰行為を目撃されたことがきっかけで和紗との関係が大きく変わり、和紗との関係を案じて近づいてきた菅原新菜に対しても、複雑な感情を抱くようになる。性に対してはこれまであまり深く考えたことがなく、やや古風な考え方の持ち主。そのため女性が性欲を抱いたり、性的な話をするという発想がなかった。その後、この考え方を新菜に大きく変えられることになる。身長は176センチで、血液型はO型。好きな電車は「こうや花鉄道」と「天空」。

山岸 知明 (やまぎし ともあき)

小野寺和紗の高校で国語教師を務める若い男性。文芸部の顧問を務めている。好きな飲み物に由来する「ミロ」のハンドルネームでアダルトチャットをしている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪で、この髪型と痩せた体型、そして眼鏡をかけていることもあり、陰気で近寄りがたい印象を与える。さらに山岸知明自身も積極的に周囲とかかわろうとしていないため、和紗たち文芸部員ともあまり親しくなかった。しかし、アダルトチャット仲間の「ひとと」が、実は未成年であり、しかも自分の生徒である本郷ひと葉であることが判明し、これをネタにひと葉に脅されるようになってしまう。結果、ひと葉の命令で文芸部顧問となった。だが、ひと葉以外は山岸知明との関係や、知明のハンドルネームを知らないため、ひと葉が適当にこじつけた理由から「ミロ先生」と呼ばれることになる。ひと葉のことは、実際に会うまで若い女性だとは思っておらず、あくまでアダルトな会話を楽しむ仲間だととらえていた。しかし、正体を知られたことにより、心身共にひと葉に振り回されることになる。子供の頃は身体が弱く、強くて健康的なものにあこがれる傾向が強い。そのため、ふくよかで明るい印象の同僚、富多笑美にひそかに思いを寄せている。

三枝 久 (さえぐさ ひさし)

児童劇団「そよかぜ」で演出家を務める中年男性。菅原新菜が「そよかぜ」に所属していた頃の指導者でもある。白髪短髪に眼鏡をかけ、顎ひげを生やしている。おしゃれで気難しく、近寄りがたい印象を与える。かつて不審者に狙われがちな新菜のために、ストーカー撃退シナリオを執筆したことがある。これには、股間がかゆいという性病を連想させるセリフがあるため、このシナリオを読んだ小野寺和紗からは、ひそかに「股の人」と呼ばれている。著名な演出家として知られているが、幼い少女の成長速度や行動が予測できないところに強い魅力を感じるロリータコンプレックスである。そのため、劇団では気に入った少女を熱心に育てては、成長すれば飽きて、また別の少女を育てるという行為を繰り返している。新菜が子供の頃は新菜に夢中で、彼女に新菜の魅力は少女らしい儚さ、危うさであり、それは成長すればやがて失われるものであるという考えを植え付けた。高校生になった新菜には特に関心を持っていなかったが、今度は新菜の方から三枝久に近づき、恋愛に悩んでいると打ち明けたことから、再び彼女に興味を抱く。身長は175センチで、血液型はA型。好きな演目は『エリザベート』。

杉本 悟 (すぎもと さとる)

小野寺和紗とは別の高校に通う1年生の男子。須藤百々子と同じ予備校に通っている。癖のある短髪で、人懐っこい雰囲気を漂わせている。そのため、一見親しみやすい印象を与えるが、性格は子供っぽく思い込みが激しい。百々子とは小学生の頃のクラスメイトだったが、引っ越しが多い家庭であったためにすぐに転校してしまい、ほとんど話したことはなかった。しかし、周囲になじめなくても堂々としている百々子に、ひそかにあこがれを抱いていた。そのため高校1年生のある日、偶然予備校で百々子に再会したのをきっかけに、積極的にアプローチするようになる。だが、悪気はないが馴れ馴れしく、人との距離感を見誤りがちなところがあり、百々子がこれに辟易していることには気づいていない。また、ちょっとしたことを大げさにとらえがちで、見栄っ張りでもある。そのため、再会後いっしょに出かけた程度の関係の百々子を恋人だと思い込み、友人たちに吹聴してしまう。身長は166センチで、血液型はA型。好きな芸能人は長濱ねる。

天城 駿 (あまぎ しゅん)

小野寺和紗と同じ高校に通う3年生の男子。曾根崎り香と十条園絵のクラスメイト。爽やかで明るい印象を与えるが、物おじしない性格で、自分の価値観をはっきり持っている。そのため、周囲からは地味で目立たないと思われている、り香の魅力にいち早く気づき、ひそかに関心を抱いていた。そんなある日、クラスメイトと言い争いになったり香をフォローしたのがきっかけで、り香との距離を縮めていく。おおらかで細かいことをあまり気にしないため、り香にキツい言動をされたりしてもあまり気にせず、すんなり受け止めてしまう。さらに、ストレートな愛情表現をするため、無意識のうちにり香を動揺させることが多い。身長は170センチで、血液型はB型。好きな食べ物は焼肉と昆布巻きとみかん。

十条 園絵 (じゅうじょう そのえ)

小野寺和紗と同じ高校に通う3年生の女子。曾根崎り香と天城駿のクラスメイト。色黒で金色の巻き髪ロングヘアで、派手なメイクにピアスと、非常に目立つ容姿をしている。そのため、軽薄な人物と勘違いされやすいが、性格は素直で人懐っこい。また、性に関してもおおらかで、気に入った男性であればすぐに身体を触らせたり、セックスの相性で交際を決めたりするなど、独特の恋愛観を持っている。ある日、り香にこの性質を知られて一方的に軽蔑されて嫌味を言われる。しかし、持ち前の柔軟性のある思考で、香に関心を持って次第に親しくなっていく。身長は160センチで、血液型はO型。好きな本は佐野洋子の『100万回生きたねこ』とアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』。

浅田 恵美 (あさだ えみ)

小野寺和紗と同じ高校の1年A組に在籍する女子。典元泉と菅原新菜のクラスメイト。内巻きボブヘアで八重歯が特徴のセクシーで小悪魔的な美少女。浅田恵美も自らの美貌を自覚しており、気の強い自信家でもある。そのため、気に入らない相手に対しては非常に攻撃的となり、言動も乱暴で意地悪だが、気になる相手に対しては猫をかぶってかわいらしく振る舞うなど、裏表が激しい。泉に思いを寄せており、自分であれば彼を手に入れるのは容易であると考えていた。しかし、マイペースで恋愛感情に疎い泉には相手にされず、腹を立てる。そこで、泉の幼なじみである和紗や泉と親しい新菜に嫌味を言ったり、泉といるところを邪魔したりするなど、攻撃的な態度を取る。

富多 笑美 (とみた えみ)

小野寺和紗の高校で国語教師を務める若い女性。内巻きセミロングヘアにぽっちゃりとした体型の、全体的におっとりとした雰囲気を漂わせている。裕福な家庭で育ったお嬢様特有の屈託のなさと知性があり、同僚の山岸知明からひそかに思いを寄せられている。

えり香 (えりか)

モデルの若い女性。長身のロングヘアで、曾根崎り香と容姿が似ている。しかし、り香よりもセクシーで挑発的な印象を与える。主にファッション誌で活躍しているが、風邪薬のCMなどにも出演している。天城駿もえり香のファンであり、り香が地味な容姿をしていた頃から、えり香とり香の容姿が似ていることに気づいていた。

その他キーワード

えすいばつ

セックスを表す隠語。考案者は小野寺和紗。アルファベット「SEX」の「S」を「えす」、「E」を「い」、「X」を「ばつ」と読む。主に和紗の所属する文芸部の部員と、その周囲の生徒のみに通じる言葉で、文芸部の部活動中に生まれた。これは、曾根崎り香が性的な話をしたい時に、直接セックスという言葉を使うのははばかられるので、部員たちで隠語を考えようと提案したのがきっかけである。

クレジット

原作

書誌情報

荒ぶる季節の乙女どもよ。 8巻 講談社〈講談社コミックス〉

第1巻

(2017-04-07発行、 978-4063959055)

第2巻

(2017-08-09発行、 978-4065101087)

第3巻

(2017-12-08発行、 978-4065105467)

第4巻

(2018-04-09発行、 978-4065112038)

第5巻

(2018-08-09発行、 978-4065121825)

第6巻

(2018-12-07発行、 978-4065134801)

第7巻

(2019-07-09発行、 978-4065157237)

第8巻

(2019-10-09発行、 978-4065167892)

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