虚構推理

虚構推理

城平京の同名小説のコミカライズ作品。ゆるふわ系ながらに肉食女子である岩永琴子と、山羊のようなぼんやりとした雰囲気を持つ桜川九郎。そんな二人が虚構の推理を武器に、都市伝説にまつわる猟奇事件に挑む姿を描いた怪奇ミステリー。「少年マガジンR」2015年1号から掲載の作品。

正式名称
虚構推理
ふりがな
きょこうすいり
原作者
城平 京
漫画
ジャンル
推理・ミステリー
レーベル
講談社コミックス月刊マガジン(講談社)
巻数
既刊21巻
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あらすじ

二人の出会い(第1巻)

裕福な家の生まれである岩永琴子は、幼い頃に負った傷が原因で病院通いを余儀なくされていたが、15歳になったある日、親戚のお見舞いのため病院を訪れていた大学生の桜川九郎と運命の出会いを果たす。琴子は九郎の笑顔に一目惚れするものの、九郎の彼女、弓原紗季の存在を知り、恋を諦める事となった。それから2年。相変わらず病院通いを続けていた琴子は、九郎が恋人と別れたという噂話を耳にする。恋を諦めきれずにいた琴子は九郎に告白するが、琴子はそこで、九郎が彼女と別れる原因にもなった奇妙な話を聞く事になった。

九郎の正体(第1巻)

桜川九郎岩永琴子に、河童に出会った際に、彼女である弓原紗季を見捨てて逃げたのだと語った。だが琴子は、九郎が河童から逃げ出したのではなく、実際は河童の方が九郎を見て逃げ出したのだ、という真実に気づく。自らを妖怪達に知恵を貸す「知恵の神」と名乗る琴子は、九郎が妖怪よりもおぞましい何かである事を見抜いたのである。そんな琴子に、九郎は自らが妖怪の肉を食らった、人間でも妖怪でもない存在だと語るのだった。

鋼人七瀬、出現(第1巻)

桜川九郎が自らの正体を語って2年と半年後。とある都市で「鋼人七瀬」と呼ばれる都市伝説が、まことしやかに噂されていた。非業の死を遂げたアイドル、七瀬かりんの亡霊が夜な夜な徘徊し、鉄骨を振り回して暴れているのだという。その話はよくある都市伝説の一つとされていたが、実際にその鋼人七瀬が目撃された事を発端とした交通事故が発生。交通課の女性警察官として働いていた弓原紗季は、鋼人七瀬が起こしたとされる事件現場を見て、いち早く事件の異常性に気づく。そして同僚の刑事、寺田徳之助と話している内に、かつての恋人、九郎を思い出した紗季は、この事件にも九郎と同じく超常の存在が絡んでいる事を確信する。そんな中、紗季は鋼人七瀬の存在を追っていた岩永琴子と偶然の出会いを果たす事になる。

侵食する都市伝説(第2巻~第4巻)

岩永琴子弓原紗季は、共通の知人である桜川九郎とも合流を果たす。そして琴子は、鋼人七瀬の正体が、インターネットを通じて拡散した人の想像力が、肉を得て形となった「想像力の怪物」であると見抜く。しかしそれは同時に、鋼人七瀬が力では倒す事のできない存在だと認める事でもあった。鋼人七瀬を倒すためには、噂そのものを否定する必要があり、そのためには七瀬かりんにまつわる真実が必要だと悟った琴子は、紗季に警察の情報を提供してもらうよう協力を要請する。妖怪と警察、二つの面から捜査する事で琴子は着実に真実に近づいて行くものの、一夜明けた朝、鋼人七瀬によって初の殺人事件が起きた事が知らされる。

合理的な虚構(第4巻)

鋼人七瀬に殺されたのは、弓原紗季の同僚である寺田徳之助であった。現実に事件が起きた事で、鋼人七瀬の都市伝説はさらに勢いを増して拡散していく。より強大になった噂話を否定するために、岩永琴子は、鋼人七瀬など最初から存在しなかった、そして寺田は都市伝説ではなく人に殺されたのだと、合理的な虚構を組み立て始める。そんな中、桜川九郎の協力を得た琴子はついに四つの解決策を見出す。そして一行は鋼人七瀬との戦いへと向かうのだった。

事件の裏に潜むもの(第4巻)

鋼人七瀬との決戦に向かう中、弓原紗季岩永琴子桜川九郎の言動に違和感を感じていた。そして二人は、今回の事件の裏に行方不明になった九郎のいとこ、桜川六花の存在がある事を確信する。琴子と紗季は鋼人七瀬という存在を通して、九郎と同じ力を持つ六花と対決する事に緊張感を覚えるのだった。

4つの解決策(第5巻~第6巻)

鋼人七瀬を倒すための作戦は、桜川九郎が鋼人七瀬の凶行を抑えているあいだに、岩永琴子がネットを通じて議論し、鋼人七瀬など存在しないと聴衆を納得させるというものであった。都市伝説を否定するため、虚構を武器に戦い始めた琴子は、寺田徳之助を殺した犯人は弓原紗季であるという説や、七瀬かりんが入れ替わっている説などを唱え、都市伝説の内容を少しずつ上書きして聴衆の認識を変えて行く。そして琴子が唱えた四つ目の解決策によって、鋼人七瀬の存在はついに聴衆達に否定され、鋼人七瀬の都市伝説に終止符が打たれる事になる。

二人の日常(第7巻)

鋼人七瀬の事件が終わり、桜川九郎岩永琴子は元の日常へと戻った。琴子はいつものように九郎に熱烈なアピールをしつつも、つれない態度を取られ続けていたが、そんな彼女のもとに、妖怪達の新しい悩みが舞い込む。夜も眠れないと言う湖のヌシの悩みや、夫に殺された妻の幽霊の恨みの言葉など、琴子の日常は相も変わらず奇奇怪怪としている。

登場人物・キャラクター

岩永 琴子 (いわなが ことこ)

ゆるふわ系の美少女。年齢は19歳だが、外見は幼く、中学生くらいにしか見えない。使用人がいるほどの裕福な家の出で、立ち振る舞いは洗練されている。しかし下世話な言動が多く、育ちがいいのか悪いのか、よく分からないところがある。11歳の頃に妖怪達の願いを受け入れ、「知恵の神」となるために右目と左足を捧げており、現在は義眼と義足を使って生活している。 普段ステッキを使っているのもこのためであり、足と目の健康診断のため、週一回の病院通いを義務づけられている。足と目を失った代わりに、一般人には見えないものを見て触れる能力を手にしており、岩永琴子本人は悪い取引ではないと、前向きに受け入れている。義足に負担がかかるため階段の上り下りなどは苦手だが、基本的な身体能力は高く、50メートルを9秒台で走る事が可能。 恋愛に関しては積極的を通り越した肉食系。特に桜川九郎に対しての執着が強く、スキあらば押し倒して既成事実を作ろうと目論んでいるが、大概冷たくあしらわれている。常人離れした頭の回転の速さと、よく回る弁舌の才能を持ち、それらを駆使して妖怪達の悩みを解決していく。 妖怪達からは「おひいさま」として慕われており、彼らの悩みを聞く代わりに、情報収集や小間使いなど、簡単な願い事を聞いてもらっている。

桜川 九郎 (さくらがわ くろう)

大学院生の青年。年齢は24歳。一見平凡な容姿だが、強い生命力を感じさせる男性で、岩永琴子と弓原紗季から、そろって「山羊のような人」と評されている。実は「人魚」と「件」という二匹の妖怪を食らった事で、人とも妖怪ともいえない存在となっている。一つ年上の紗季とは結婚を前提とした付き合いをしていたが、その異常性を知られたため別れる事となった。 妖怪からは二種類の妖怪が混ざり合った醜悪な姿として見えるため、桜川九郎の存在そのものが生理的な嫌悪や恐怖の対象となっている。またその血肉は毒そのものであり、九郎の肉を食らった妖怪は瞬時に絶命している。この事がさらに妖怪から恐れられる原因となっていたが、妖怪のよき理解者である琴子といっしょに行動するうちに、妖怪達の態度は徐々に軟化していった。 琴子に好意を寄せられているが、九郎自身の好みは年上の女性であり、琴子からの積極的なアプローチには辟易している。ただし、有事の際には琴子を危険から遠ざけたり、また彼女の機転を信じていたりと、確かな信頼関係で結ばれており、本心では琴子の事を本当に大切に思っている。

弓原 紗季 (ゆみはら さき)

交通課に所属する女性警察官。さばさばとした性格の黒髪美人で、年齢は25歳。かつて桜川九郎と結婚を前提に付き合っており、独占欲を見せるほどの強い愛情を持っていたが、九郎の異常性を受け入れられずに破局を迎えた。この事は弓原紗季の中に深い傷を残しており、彼の異常性を見てからは、肉類を食べると気分が悪くなるほど。久しぶりに再会した九郎が、一目で気づくほど痩せてしまった。 鋼人七瀬の引き起こした交通事故の現場に残った痕跡から、九郎と同じく常識外の存在を感じ取り、以降は鋼人七瀬の事件にかかわっていく。この時、岩永琴子と知り合う事となった。同僚の寺田徳之助に好意を寄せられている事に気づいており、好みのタイプではないながらも彼の人柄を認め、過去を振り切るためにも、関係を前向きに考え始めていた。

桜川 六花 (さくらがわ りっか)

桜川九郎のいとこ。九郎より3歳年上。九郎の初恋の相手でもある。儚(はかな)い雰囲気を持つ色白の美女。病弱なため大学病院に長期入院しているが、入院中、何度も自殺未遂を行っている。鋼人七瀬事件の黒幕であり、「鋼人七瀬まとめサイト」を管理者として運営している。九郎と同じく「人魚」と「件」の肉を食らった事で、人とも妖怪ともいえない存在となっており、その能力と、運営しているサイトを利用して、鋼人七瀬を成長させていた。 ちなみに、鋼人七瀬の姿は六花の描いたイラストがモデルとなっている。桜川六花の最終目標は普通の人間に戻る事であり、その願いを叶えてくれる神を作る事を目的としている。都市伝説の具現化はそのための実験であり、鋼人七瀬が倒れたあとは、九郎達に再会を約束する言葉を残し、行方をくらませた。

寺田 徳之助 (てらだ とくのすけ)

弓原紗季の同僚の34歳の男性刑事。無骨な大男だが紳士的な人物で、署の女性達からの評価は高い。刑事としても優秀で、紗季の遭遇した鋼人七瀬による交通事故の異常性にも気づいていた。しかし、それを超常現象ではなく、大きな犯罪の前触れと思い込んで独自に捜査を進めた結果、初の鋼人七瀬による殺人事件の被害者になってしまう。 柔道五段でオリンピックの選手候補になったという経歴を持ち、これが結果的に鋼人七瀬の存在をより凶悪なものにするきっかけとなった。紗季に対して好意を抱いていたが、奥手でなかなか積極的になれずにいた。

七瀬 かりん (ななせ かりん)

新進気鋭の巨乳グラビアアイドル。「七瀬かりん」は芸名であり、本名は「七瀬春子」。17歳でデビューし、デビューして1年でドラマ「青春! 火吹き娘!」に出演し、同年代のアイドル達の中では頭一つ抜けた存在となった。しかしアイドルとして順調に成長していた19歳の時に、父親が不慮の事故で死亡。週刊誌がそれをおもしろおかしく取り上げたうえに、七瀬の活躍を妬ましく思っていた同業者に、複雑な家庭環境まで暴露されたため、芸能界に居場所を失ってしまう。 気丈に振る舞っていたものの本心は失意のどん底にあり、最期はマスコミの追求から逃れるために入り込んだ工事現場で、偶然倒れてきた鉄骨の下敷きになって事故死した。倒れてきた鉄骨から逃れる痕跡がなかったが、これは七瀬自身が逃亡生活に疲れ果て、自らの死を受け入れていたからであり、限りなく自殺に近い事故死だったとされている。 鉄骨の下敷きになった死体は顔が潰れており、これが顔のないグラビアアイドルの亡霊、鋼人七瀬のモデルとなった。

その他キーワード

知恵の神 (ちえのかみ)

妖怪や幽霊といった、この世ならざるもの達の悩みを解決する、「交渉人」ともいうべき存在。岩永琴子が11歳の頃に、妖怪達の求めに応じてその座に就いた。その際、本来の「知恵の神」である一目一足の「クエビコ」にあやかり、琴子は右目と左足を神に捧げた。これにより琴子は、妖怪を見て触れる力を手にしている。少しでも知恵のある妖怪ならば、大蛇(おろち)や髑髏の凶悪な妖怪ですら「知恵の神」に敬意を示して力を貸す。

(くだん)

頭は人間、体は牛の妖怪。「人」と「牛」の特徴を合わせ持つため「件」と呼ばれる。生まれた瞬間、未来について予言して死ぬという特徴を持つ。桜川九郎の先祖である桜川家の当主は、「件」の力を利用して富を独占しようと考えた。当主は「件」の肉を利用してその力を手中におさめたが、同時に「件」の肉を食べた者はすぐに死んでしまう事が発覚。 そこで当主は、「件」と不老不死の「人魚」の肉を合わせて食わせる事で、無限に予言ができる人間を作り出そうと画策した。しかし二種類の妖怪の食い合わせに耐え切れる人間は現れず、狂気的な実験による犠牲者を加速度的に増やすばかりであった。時代を超え、その狂気の実験を受け継いだ九郎の祖母は、実験の果てに九郎と桜川六花という成功例を生み出した。

未来決定能力 (みらいけっていのうりょく)

「件」、または「件」を食べた者が得る能力。未来を知る「予知」ではなく、未来を観測し、決定させる能力である。使い方によっては、自らの求める未来を決定づける事も可能だが、可能性が0%に近い事象は決定づけられない、命の危険が身近にないと発動できないなど制限も多く、万能というには程遠い。ただし可能性が0%に近くとも、小さな事象を積み重ねれば実現できる範囲に届く可能性があり、桜川六花は何度も自殺未遂を重ねる事で、通常なら実体化するはずのない鋼人七瀬の存在を実体化するまでに育てた。

鋼人七瀬 (こうじんななせ)

人々の噂になっている都市伝説。桜川六花が運営する「鋼人七瀬まとめサイト」が中核となっている。内容は鉄骨の下敷きになって顔がつぶれて死んだ七瀬かりんの亡霊が、夜な夜な鉄骨を持って徘徊しているというもの。当初はただの都市伝説だったが、いつしかその噂話は確かな血肉を得るに至り、現実の怪奇として顕現する事となった。 このため鋼人七瀬という存在は力ずくで倒す事はできず、鋼人七瀬という噂話が広がれば広がるほど、さまざまな情報を取り込み、凶悪な存在へと変貌していく。ちなみに、かりんは鋼人七瀬のモデルになっただけであり、事件とはまったく無関係。

クレジット

原作

書誌情報

虚構推理 21巻 講談社〈講談社コミックス月刊マガジン〉

第1巻

(2015-10-16発行、 978-4063714913)

第2巻

(2015-11-17発行、 978-4063714968)

第3巻

(2016-04-15発行、 978-4063925180)

第4巻

(2016-08-17発行、 978-4063925371)

第5巻

(2016-12-16発行、 978-4063925593)

第6巻

(2017-06-16発行、 978-4063925906)

第7巻

(2017-12-15発行、 978-4065105979)

第8巻

(2018-04-17発行、 978-4065111864)

第9巻

(2018-10-17発行、 978-4065133170)

第10巻

(2019-04-17発行、 978-4065151778)

第11巻

(2019-10-17発行、 978-4065172445)

第12巻

(2020-03-17発行、 978-4065186534)

第13巻

(2020-08-17発行、 978-4065200919)

第14巻

(2020-12-17発行、 978-4065217894)

第15巻

(2021-05-17発行、 978-4065230558)

第16巻

(2021-12-16発行、 978-4065250372)

第17巻

(2022-05-17発行、 978-4065275566)

第18巻

(2022-11-16発行、 978-4065294666)

第19巻

(2023-05-17発行、 978-4065313879)

第20巻

(2023-11-16発行、 978-4065334195)

第21巻

(2024-05-16発行、 978-4065355541)

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