概要・あらすじ
父親の三回忌の法要から1週間後、今度は母親の早川恭子が急な病で入院することになった早川家。長男の早川律は、恭子から本当の病名を知らされ、愕然とする。そして病院からの帰り道、道端で途方に暮れていた律の前に、倉科夕子が通りかかる。律にずっと憧れていた夕子は、彼と話すきっかけを作ろうとアルバイト先のうどん屋でもらった「かつぶし」を手渡すのだった。
その「かつぶし」から、早川家の食卓は少しずつ変化していく。
登場人物・キャラクター
早川 律 (はやかわ りつ)
学校きってのプリンスとして、多くの女子生徒たちの憧れの的となっている高校3年生の男子。小柄な男子が多い早川の血筋にあってただ1人、高身長に加えて類まれな美貌を持つため、親戚一同からは「早川一族の至宝」と評されている。亡くなった父親に代わり、長男として家族を支えている。母親の早川恭子が病床についたことから弟の早川調と妹の早川奏においしい食事を食べさせようと自炊を開始した。 学校にいる間も常に夕食の献立について思案中であり、料理の腕前は日を追うごとに上達している。
早川 調 (はやかわ しらべ)
早川律の弟で、中学1年生の男の子。体が小さいことを気にして、毎日牛乳を1リットル飲んでいる。バスケットボール部に所属しているが、夏休みの間に互角の実力を持つ同級生に身長を抜かれてしまった。妹の早川奏とよくケンカをするが、母親が不在時には兄の律とも協力し、3人でおいしい料理を作る。花村深雪と付き合っているが、バスケットボール部の仲間にはその事実を隠している。
早川 奏 (はやかわ かなで)
早川律の妹で、アイドルを志望する小学6年生の女の子。週3日のダンスレッスンを熱心にこなし、家では積極的に律の料理を手伝っている。アイドルのようなかわいらしい容姿で学校でもひときわ目立つ存在だが、性格は気取ったところのないごく普通の女の子。従姉でバレリーナの鈴井環に憧れている。
倉科 夕子 (くらしな ゆうこ)
早川律が高校1年の時に同じクラスだった女子生徒で、漫画研究部に所属している。律の写真を自分の携帯電話の待ち受け画面に設定するほど憧れているが、なかなか自分の想いを打ち明けることができない。実は、律を主人公に見立てた少女漫画をこっそりと執筆中。そんな雲の上の存在だった律に、アルバイト先のうどん屋で削った「かつぶし」をあげたことがきっかけとなり、急接近することになる。
若月 優 (わかつき すぐる)
全国にチェーン店がある「マハラジャカリー」の創始者を父親に持つ、早川律と同じ3年A組の男子生徒。2年生までは熱心に勉強していたが、3年生になって「会社を継ぐ」という自分の将来が見えてしまい、やる気を失っている。そんな裕福な生活のなかで虚無感にとらわれていた心を、律の手料理によって満たされる。
大河内 明徳 (おおこうち あきのり)
早川律と同じ3年A組の大柄な男子生徒。兄弟姉妹が多く、一家は近所から「大河内部屋」と呼ばれているほど。外見も中身も律とはまったく違うタイプだが、律が本音で話せる大切な友人の1人。早川恭子の退院後、律がある一件で不安定な状態に陥った際にもともに過ごして支えた。
鈴井 環 (すずい たまき)
早川恭子の弟の娘で、早川律の従妹にあたる女性。高校1年生の時にロンドンへバレエ留学をしており、その後、バレリーナとして活躍していたが、腰を痛めて踊れなくなったため日本に帰国した。子供の頃から母親である鈴井みつ子に律と比較されて育ったせいか、やや性格がきついところがある。
鈴井 みつ子 (すずい みつこ)
早川恭子の弟の妻。家族のために自分の進路を変更しようとした早川律のことを気にかけ、うっかり余計なことまで話してしまう。そのことで恭子に叱咤され、責任を感じるようになる。母親としては厳しい面があり、娘の鈴井環に対して神経質なところがある。
早川 恭子 (はやかわ きょうこ)
早川律、早川調、早川奏の母親。夫を亡くした後、病気のために入院を余儀なくされ、しばらく家を留守にしていた。料理が上手で、家族のために作った数々の手料理のレシピをノートに細かく書きとめていた。退院後も点滴治療を続けており、子供たちには病名を「潰瘍」と告げている。いつも明るく、どんな苦難もしっかりとした心で受け止める芯の強い女性。
斎木 智 (さいき さとし)
早川律の同級生で、律と同じ国立大学に進学した男子。高校時代は、同じクラスでありながら律とほとんど交流がなかったが、大学でともにシネマ研究会に入り、「幕末料理人」という自主制作映画を通して親しくなる。それまでは、美形で女子に人気がある律のことを「リア充」と勝手に思い込み、偏見を持っていた。女性に対しては奥手だが、とても惚れっぽい性格。
森江 あさみ (もりえ あさみ)
早川律が中学2年生の時に好きだった女の子で、律の父親が入院していた病院の屋上で出会った。重い心臓の病気に侵され、完治することなく、帰らぬ人となってしまう。律の父親とも仲が良く、律とある約束を交わしていたが、果たされることはなかった。
花村 深雪 (はなむら みゆき)
早川調の同級生の女の子。小学校の卒業式の日、3年生の時からずっと好きだった調に自ら告白した。念願叶って調と付き合うことになるが、調とは別のT女学院中等部に進学した。自分の存在をバスケットボール部の仲間に公表してくれない調に対して、不安を抱いている。
水谷 カオル (みずたに かおる)
早川律と同じ大学で、シネマ研究会に所属する男性。斎木智が女性と間違えて思わず一目惚れしかけたほど可憐な乙女のような容姿をしているが、人前で髭を剃ったり、足の水虫を平気で話題にするなど、非常に自由奔放な性格。自主映画制作時にはその顔の広さを活かし、あっさりと大人数を集める。
片桐 俊 (かたぎり しゅん)
青山アートスクールデザイン学科マンガ専攻科に通う20歳の男性。倉科夕子が同校に進学した際に出会い、密かに夕子に想いを寄せるようになる。入学前は看板屋に勤めていたため、非常に高い画力を持っている。
吉田 浩太 (よしだ こうた)
早川奏のクラスメイトで、野球部に所属している男子生徒。いつも余計な一言で奏を怒らせているが、それは奏のことが好きだからである。一見するとお調子者だが、家では率先して家事をこなし、弟たちの面倒も見るしっかり者。家族や友人のことで思い悩む奏に対し、いつも彼女を一回り成長させるような的確なアドバイスを送る。
三浦 美由 (みうら みゆ)
早川奏のクラスメイトで、バトントワラー部に所属している女子生徒。読者モデルの友達がいる。とても明るく活発で、学校でも目立つグループにいたが、小さな嘘をついてしまったことをきっかけに、クラスでいじめの対象となってしまう。
雨宮 真也 (あまみや まや)
クラブで働いている女性。若くして子供を産んだが、さまざまな事情により育てられなかったために子供を手放した過去を持つ。現在は前夫との間にできた雨宮路加と2人で暮らしている。かつては熱心に路加の世話をしていたが、幼稚園受験に失敗してから育児放棄をするようになってしまった。ある事情から、早川家の人々と深く関わりを持つ。
雨宮 路加 (あまみや るか)
思いがけない事情で、早川律と知り合う6歳の男の子。母親の雨宮真也と2人で暮らしているが、日中は1人で家に放置されていた。自分に対してまったく興味を持たない真也を恨むことなく、むしろ働きづめの真也をけなげに心配している。
結城 徹平 (ゆうき てっぺい)
芸歴6年のピン芸人の男性。クラブから不動産会社に転職した雨宮真也のことを好きになり、客を装って近づく。芸人のかたわら、居酒屋でアルバイトもしているが、暇があればパチンコに通い続ける生活を送っている。大の子供好きで、雨宮路加ともたちまち仲良くなった。
文名 (ふみな)
結城徹平の追っかけファンをしている女性で、歯科医院に勤務する歯科技工士。両親を早くに亡くし、祖父母に育てられた。安定した収入があるため、結城徹平のステージのチケットノルマを自ら引き受けたり、食料や高価な日本酒を徹平に貢ぎ続けていた。徹平が雨宮真也との結婚を意識したことで、他のファンたちは音信不通にされてしまったが、文名だけは以降も徹平とつながっている。
星野 (ほしの)
早川奏のクラスメイトで、三浦美由のボーイフレンドになる男子生徒。小太りで細い目にかけた眼鏡が特徴的だが、クラスの女子生徒たちに陰口を叩かれていた美由を全力で守るなど内面はとても男らしく、吉田浩太にも一目置かれている存在。美由との会話はほぼスマートフォンでの会話アプリを介してのみだが、本人は幸せな様子。
水無月 寧音子 (みなつき ねねこ)
花村深雪と同じT女学院中等部に通う女子生徒。興味本位で深雪のボーイフレンドの早川調に会い、ある思惑を抱いて彼に近づこうとする。校則で禁止されている原付の免許をわざわざ取得し、調のアルバイト先のガソリンスタンドにも押しかける。
芹沢 玲也 (せりざわ れいや)
バリスタをやっている気障な男性。花村深雪がアルバイト先の「おしゃれなカフェ」で知り合う。お嬢様育ちのかわいらしい深雪を気に入り、何度もデートに誘うが、毎回断られ続けている。年上の立場から、時には深雪に的確なアドバイスを送ることもある。
小日向 はる菜 (こひなた はるな)
早川律が大学3年生の時、律に憧れてシネマ研究会に新入部員として入部してきた1年生の女性。シネマ研究会のメンバーたちを唸らせるほどの料理上手。律の中学時代の初恋の相手である森江あさみに似ており、そのことが律を苦しめることになる。
荒吐 さくら (あらばき さくら)
コンビニエンスストアでアルバイトをしていた斎木智を好きになった、18歳の女子高生。見た目も中身も典型的なギャル系の女子で、地味な斎木とはまったくタイプが異なるが、マイペースなところが意外にも斎木と合っている。
泉野 ほとり (せいの ほとり)
高校に進学した早川奏がダンス部で出会う1年B組の女子生徒。プロのダンサーを目指しているだけあって実力も相当なもので、奏や他の部員たちの目を釘付けにした。有名な振付師の土屋奈月が主宰する「NATSUKI TSUCHIYA DANCE STUDIO」に通っている。
書誌情報
銀のスプーン 17巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2011-02-10発行、 978-4063760231)
第2巻
(2011-06-13発行、 978-4063760750)
第3巻
(2011-12-13発行、 978-4063761702)
第4巻
(2012-04-13発行、 978-4063766219)
第5巻
(2012-09-13発行、 978-4063766905)
第6巻
(2013-01-11発行、 978-4063767667)
第7巻
(2013-06-13発行、 978-4063768411)
第8巻
(2013-12-13発行、 978-4063769166)
第9巻
(2014-04-11発行、 978-4063769623)
第10巻
(2014-09-12発行、 978-4063770612)
第11巻
(2015-04-13発行、 978-4063771435)
第12巻
(2015-06-12発行、 978-4063772067)
第13巻
(2015-12-11発行、 978-4063773644)
第14巻
(2016-05-13発行、 978-4063774603)
第15巻
(2016-10-13発行、 978-4063930504)
第16巻
(2017-04-13発行、 978-4063931761)
第17巻
(2017-11-13発行、 978-4065104538)