闇の逃亡医

闇の逃亡医

大学病院での患者殺害事件の濡れ衣を着せられた天才外科医・渡望が、逃亡劇を繰り広げながら事件の真相へと迫っていくサスペンス。原作は高山紀芳。

正式名称
闇の逃亡医
ふりがな
やみのとうぼうい
原作者
高山紀芳
作者
ジャンル
サスペンス
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概要・あらすじ

東都大付属病院ではガン患者ばかり4人の容態が急変し、死亡する事故が続けて起きていた。五条を中心とする第一内科の五条一派は、ガンの特効薬「キロイド」が近く完成すると吹聴しており、その臨床実験を行って患者を死なせたのではないかとの噂が立つ。同じく第一内科に勤める倉石誠は、キロイドを盗み出し、事態を公表しようと計画するが、その途中で命を落としてしまう。

倉石の親友の渡望は、彼の遺志を継ぎ、真実を突き止めるために調査を開始する。

登場人物・キャラクター

渡 望 (わたり のぞむ)

東都大付属病院第一外科所属で、天才外科医と名高い青年。正義感が強く真面目な性格で、看護師の秋川小夜子に好意を持たれている。聖冴子の盲腸の執刀をしたことから、冴子にも好意を持たれるようになる。親友の倉石誠の死の真相と、キロイドについて捜索を始めた途端、ガン患者を金銭目的で殺した連続殺人の犯人に仕立てられ、警察から追われる身となってしまう。

倉石 誠 (くらいし まこと)

東都大付属病院第一内科所属の内科医。渡望の同僚で学生時代からの親友。大柄な男性で、いつも看護師に冗談ばかり言っている明るい性格。ガン患者連続死の真相究明のためにキロイドを盗み出すが、御茶ノ水駅の線路に突き落とされ轢死する。検死結果はノイローゼによる投身自殺とされたが、死ぬ前に渡にキロイドのありかを示唆した手紙を出していた。

聖 冴子 (ひじり さえこ)

製薬会社「聖製薬」の令嬢で、東都大付属病院でも噂になるほどの美人。聖会長の孫娘で、新堂春樹の婚約者。渡望に盲腸の手術をしてもらったことから彼に好意を持ち、渡が殺人犯に仕立て上げられた後も潔白を信じ続けている。

五条 (ごじょう)

東都大付属病院第一内科教授。医学部長を務め、ガン臨床医学の権威としても知られている壮年男性。眼鏡をかけ、口髭を生やしたどっしりと威厳のある風貌をしている。製薬会社「聖製薬」と組んで、画期的な抗ガン剤「キロイド」を完成させ、東都大学学長の座を狙っている。佐伯や上岡など、五条一派を束ねる存在。

佐伯 (さえき)

東都大付属病院第一内科助教授で五条一派。白髪で痩せた初老の男性。上から物を言う傲慢な性格で、医局講習会で驚異的な抗ガン剤が近く開発されるだろうと講義した際、倉石誠の質問に対してバカにしたような態度を取った。

上岡 (かみおか)

東都大学で講師を務める中年男性。五条一派の一員で、常に五条、佐伯と行動をともにしている。聖会長を交えた会談や、聖冴子の誕生日パーティーや結婚式などにも参加している。

監察医 (かんさつい)

首都監察医務院の監察医。がっしりとした体躯の壮年男性。轢死した倉石誠の検死を担当したのが縁で、渡望から相談を受けることになる。渡から渡された倉石の手紙のコピーを筆跡鑑定を兼ねて警察に送り、五条一派にキロイドがどこかに隠されていることを知られてしまう。渡が殺人容疑で逮捕された後は面会に訪れ、色々とヒントになることを教える。

聖会長 (ひじりかいちょう)

大手製薬会社「聖製薬」の会長で、聖冴子の祖父。坊主頭の恰幅のいい老人で、常に着物を着用し威厳がある。五条とともにキロイドを完成させ、膨大な利益を得ようとしており、そのためであれば人体実験や邪魔者を殺害することもいとわない。

新堂 春樹 (しんどう はるき)

東都大付属病院精神科医局主任で、「大日本医療器械」の御曹司。エリート中のエリートと言われている、痩身で眼鏡をかけた神経質そうな男性。聖冴子の婚約者で、冴子の盲腸を手術した渡望に敵愾心を持っている。渡が以前に頭痛の相談をしたことから、それを逆手に取って精神病患者に仕立て上げた。

秋川 小夜子 (あきがわ さよこ)

東都大付属病院第一外科の正看護師。若く可愛らしい女性。渡望に好意を持っており、渡と聖冴子の関係を疑っている。疲れた様子の渡に休暇の旅行を勧めた際に口にした「白い灯台」という言葉が、倉石誠の手紙に残されたキロイドの隠し場所を示す謎かけのヒントとなった。

多田 尚一 (ただ なおいち)

本郷署の警部。大柄でいかつく、額に大きな古傷がある男性。東都大付属病院にガン治療のため入院していた7才の娘が、渡望が執刀した後に突然死亡した。さらにそのショックで妻も自殺してしまったことから、渡を憎み彼を捕まえることに執念を燃やしている。本来、身内が被害者となった場合は捜査から外れるという規定があるが、職務違反を覚悟のうえでこの事件に関わっている。

車掌 (しゃしょう)

松本駅で働く中年駅員。貨物列車で逃亡してきた渡望を捕まえようとした際、線路に足が挟まり電車に轢かれそうになるが、渡に足首から先を切断してもらったことで一命を取り留めた。足首を処置する際、別の病巣があることを渡に見抜かれ、渡とともに松本外科病院に搬送される。ここで病気についての話を聞き、以降渡を信用するようになる。

松本外科病院の院長 (まつもとげかびょういんのいんちょう)

松本外科病院の院長。恰幅がよく頭が禿げている、眼鏡をかけた壮年男性。車掌が緊急搬送されてきた際に渡望も受け入れ、車掌の手術を行わせた。渡が車掌の病巣に気づいたことや手術の手際から、彼の医師としての腕を信用している。新堂春樹の情報操作により、報道では渡は重度の精神疾患とされていたが、そうでないことも見抜き、彼の逃亡に協力する。

関根 (せきね)

新潟県の直江津で置き薬の訪問販売会社「岩谷薬舗」に在籍していた初老の男性。倉石誠の叔父で、3年前にガンに冒されるも渡望の手術で助かった経緯がある。東京で亡くなる直前の倉石に会っており、そこで託された渡宛ての手紙を直江津から出し、キロイドの入った薬箱を燈台に隠すよう波瀬一平に頼んだ。渡と会う前に交通事故に遭い、糸魚川の病院で死亡している。

倉石誠のいとこ (くらいしまことのいとこ)

倉石誠のいとこで関根の息子。倉石誠と瓜二つで、最初は渡望にも倉石と間違われたほど。松本で危機に陥っていた渡を救い出し、関根がキロイドを波瀬一平に託したことを教える。

波瀬 一平 (はせ いっぺい)

置き薬の訪問販売会社「岩谷薬舗」で働いていた老人。現在はひどいアルコール中毒で、酒がないと何も思い出せない。生地市場近くの漁港で溺れていたところを渡望に助けられ、内科医院に入院した。関根に頼まれ、キロイドの入った薬箱を猿山岬の燈台に隠した。

3人組の男 (さんにんぐみのおとこ)

黒ずくめの服装に黒いサングラスをかけたの3人組の男性。五条一派の手先で、倉石誠をはじめキロイドに関わった数々の人を殺害している。逃亡中の渡望より先にキロイドを入手しようと奔走している。

生地の内科医 (いくじのないかい)

富山県黒部市生地にある内科医院の院長。中肉中背の男性で、眼鏡をかけている。生まれ育った土地に個人内科医院を開業したが、他の病院で断られた患者しか来ないことを悩んでいる。アル中の波瀬一平の治療も引き受けた。嵐の夜に難解な外科手術が必要な患者が運び込まれ、波瀬を訪ねて来た渡望に手術を任せる。

生地の内科医の妻 (いくじのないかいのつま)

生地の内科医の妻。痩身につり上がった眼鏡をかけたヒステリー気味な女性。開業にあたって自分の父親が出資したにも関わらず、ロクな患者が来ないといつも夫を叱責している。渡望が波瀬一平を訪ねて来た際には指名手配犯と気づき、警察に電話しようとした。

場所

東都大付属病院 (とうとだいふぞくびょういん)

本郷にある権威ある病院で、特にG病棟と呼ばれる病棟は有名人や金持ちが多いことで有名。五条、佐伯、倉石誠が第一内科に、渡望が第一外科に所属しており、秋川小夜子が正看護師として勤務している。

G病棟 (じーびょうとう)

東都大付属病院のガン病棟。内科G病棟と外科G病棟がある。別名「本郷マンション」とも呼ばれ、有名人や金持ちの患者しか入院できないことでも有名な病棟。この病棟でキロイドによる連続死亡事件が起きる。

松本外科病院 (まつもとげかびょういん)

長野県松本市にある病院で、渡望と車掌が搬送された。ここで渡は車掌の手術を行った。渡はここで割腹自殺に見えるほど自分で腹を傷付け、松本外科病院の院長が手術を行った。

内科医院 (ないかいいん)

富山県黒部市生地に最近開業したばかりの、他で断られた患者ばかりが運び込まれてくる病院。波瀬一平が入院したことにより、渡望もここを訪れることになる。

猿山岬の燈台 (さるやまみさきのとうだい)

能登半島の秘境と呼ばれる場所で、関根に頼まれた波瀬一平がここに薬箱を隠した。この薬箱の中に、倉石誠が関根に託したキロイドが入っている。

その他キーワード

キロイド

東都大付属病院第一内科の五条一派と製薬会社「聖製薬」の協力で開発された画期的な抗ガン剤。溶剤ではなく錠剤。投与の初期には目覚ましい効力を発揮するが強い副作用があり、のちに患者は苦しみながら死に至る。G病棟の患者を使った無許可の臨床実験によって、患者が4人が死亡するという事故を引き起こした。

ヒジリマイシンRG1 (ひじりまいしんあーるじーわん)

製薬会社「聖製薬」がキロイドを改良して作った抗ガン剤の正式名称。渡望の事件があり「キロイド」という名前が使えなくなったため、別名にして発表した。

クレジット

原作

高山紀芳

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