電影少女

電影少女

ピュアな心を持つ者のみ訪れることができるレンタルビデオ店。そこで貸し出されたビデオテープから実体化するビデオガール。恋愛に悩むピュアな少年とビデオガールの交流をリアルに綴ったSFラブストーリー漫画。

正式名称
電影少女
作者
ジャンル
SF一般
 
恋愛一般
レーベル
集英社 / 集英社文庫 コミック版(集英社)
関連商品
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あらすじ

第1巻

弄内洋太はクラスメイトの早川もえみに告白しようとするが、彼女は洋太の幼なじみである新舞貴志が好きな事を知る。もえみは冗談交じりに貴志への思いを口にして、その場で洋太はふられてしまうが、洋太はその原因が自分にあると感じ、もえみのために涙を流す。自分も傷ついているにもかかわらず、他人のために涙を流す洋太の前に、ピュアな心の持ち主でないと見えないという、不思議なレンタルビデオショップ、GOKURAKUが現れる。そこで老人のGOKURAKU店長から受け取ったビデオを、壊れかけたビデオデッキに入れて再生したところ、洋太を慰めてあげると言いながらビデオガールの天野あいがブラウン管から飛び出して来る。(CHAPTER1「心の距離」)

テレビの画面から女の子が出て来た事に驚きつつも、優しく慰められる事を期待していた洋太に対して、あいは意外にも男っぽい性格の持ち主だった。壊れたデッキで再生したせいか、言葉遣いが乱暴になり、胸が小さくなってしまっていた。面食らう洋太だったが、自分を励まそうとして必死なあいの姿に、洋太は少しずつ心を許していく。(CHAPTER2「なにしようか?」)

冬休みが明けて新学期、洋太はもえみや貴志に顔を合わせる事を気まずく感じて、学校へ行く足が重かった。あいはそんな洋太を励ましながら自分も学校へ乗り込み、もえみや貴志と顔を合わせる。洋太の思いを知らないもえみは洋太に対して、失恋したものの、あきらめずに貴志への思いを貫き通すと宣言する。そしてそんなもえみを応援すると約束した洋太の事を、あいは陰ながら見守る。(CHAPTER3「おっぱい」)

洋太を励ますために、内緒で苦手な料理を作っていたあいだったが、洋太へのお礼に料理を作ると、もえみが家を訪れる。あいは自分の作った料理を隠し、洋太はもえみの作った料理に舌鼓を打つ。お腹がいっぱいで動けない洋太に代わってもえみを送ったあいだったが、帰宅すると洋太があいの作った料理を食べている事に心を打たれる。さらに自分のために服を買ってくれた事を知り、嬉しさのあまり胸が苦しくなってしまう。(CHAPTER4「お世話になってるあの人に」)

洋太が買ってくれた服に大喜びのあいは、その記念として、新しい服を着て洋太とデートする。しかし、あいを再生中のビデオデッキの様子がおかしく、熱を持ってしまっていた。そのせいか、あいはデートの途中に体調がおかしくなってしまう。高熱を出して倒れてしまったあいは、せっかくの記念日が台無しになってしまうと、調子が悪い事を隠してわざとおどけていた。ふざけていたと勘違いした洋太は腹を立てるが、やがてあいが無理をしていた事に気づく。雪で熱くなった身体を冷やして元に戻ったあいは、びしょびしょになってしまう。それでもあいは洋太からもらった服を決して脱ごうとせず、洋太はあいの一途さに心を打たれる。(CHAPTER5「ヨータがくれた服を着て初めてデートした記念日」)

貴志の誕生日プレゼントに手編みのマフラーを用意したもえみは、事あるごとに洋太に恋の相談をする。もえみへの思いを秘めた洋太はそのたびに心が痛むが、もえみの恋を応援する。手編みのマフラーは重すぎるかと心配したもえみのために、洋太は別のプレゼントを選びなおそうと提案し、いっしょに買い物に行く。楽しく過ごす中、ますますもえみへの思いをつのらせる洋太だったが、気持ちを打ち明ける事はできないでいた。結局もえみはマフラーを貴志に渡すが、貴志はもえみが洋太と付き合っているものと勘違いして拒絶してしまう。(CHAPTER6「告白Part①」)

もえみから告白された貴志は、告白の返事は今夜電話で伝えると言って、その場を立ち去る。貴志は、洋太がもえみの事をずっと一途に好きだった事を知っていたのだ。それなのにもえみの恋を応援している洋太に対して、呆れながらも熱い気持ちが胸にこみ上げていた。その夜、もえみは電話を待つ緊張に耐えられず、相談しようと洋太に電話を掛けるが、彼がその電話に出る事はなかった。そんな中、貴志は、もえみに付き合いをOKする電話を掛ける。(CHAPTER7「告白Part②」)

ショックのあまり学校を4日間も休んで落ち込んでいた洋太は、かつて幼い頃に目指した絵本作家になろうと一念発起し、コンテストに応募する作品を描き始める。前向きに立ち直った洋太の姿に喜んだあいは、洋太に頼まれて絵本作りの材料であるイラストボードを買いに行く。しかし、あいを再生しているビデオデッキがオーバーヒートして、あいの調子が悪くなってしまう。出かけたまま帰って来ないあいを心配して、洋太は部屋を飛び出すと、デート中だったもえみと貴志にばったり遭遇してしまう。(CHAPTER8「よみがえる夢」)

第2巻

新舞貴志とデートをする早川もえみに対して、ドキドキする気持ちを抑えられない弄内洋太に、貴志は「悔しかったらもえみを取ってみろ」と宣言する。そして洋太は天野あいを探す事を再開すると、裏路地にこげたイラストボードを残したまま、あいは忽然と姿を消していた。そんな中、あいの創造主である男、ローレックが、GOKURAKUの不良品である、あいを回収しようとしていた。(CHAPTER9「愛のゆくえ」)

GOKURAKU店長の説得で、男はあいと話をする。ビデオガールの役目は、男性を慰める事が目的で作られたにもかかわらず、あいは嫉妬や甘えの感情を洋太に対して抱いてしまっていた。それ以外にも身体の不具合も生じてしまっている事を理由に、ローレックはあいを回収する事を決定したのだ。あいはGOKURAKU店長にかけ合い、洋太のもとに戻りたいという気持ちを訴える。店長は、ここで流れている時間は外の世界での1週間分にあたり、洋太はもうとっくにあいの事をあきらめているはずだと告げる。しかし実際の洋太は、1週間経ってもあきらめずにあいを探し続け、疲労困憊していたのだ。その姿を見て、あいと店長は驚愕する。一方、あいを探して家に戻って来た洋太は、家に灯りがともっている事に喜ぶ。しかしそこにいたのはもえみの姿で、洋太はがっかりする。しかし、もえみの後ろから姿を現したあいの姿を見て、喜びのあまりあいを強く抱きしめる。(CHAPTER10「消える!」)

洋太のもとに戻るために、あいは洋太にも話してはいけない厳しい条件を呑まなくてはいけなかった。洋太への想いを断ち切り、洋太がもえみとの恋を成就するために応援をするのがその条件で、そのためにはあいが洋太から精神的に離れる必要があった。洋太への思いを無理に抑え込んだあいの態度はそっけなくなり、洋太は寂しさを感じていた。1週間ぶりに学校へ登校した洋太は、絵の勉強をするために美術部に入部する。しかしそこにいた少年、空山高夫は、スケベで卑怯な性格でありながら、表面上は奥手のふりをする二面性の持ち主だった。(CHAPTER11「ヨータばなれ」)

洋太への思いを抑え込まないと消滅させられてしまう約束のあいは、わざと洋太に対して冷たい態度を取る。ある日曜日、洋太は貴志に頼まれて、もえみにデートのキャンセルを伝えに行く。ヒマなら付き合ってほしいというもえみの誘いを断れず、洋太は代わりにデートをする事になるが、そこであいと高夫がデートしているところにバッタリ遭遇してしまう。あいは高夫からチカンされた事を知らず、高夫が助けてくれたものと勘違いし、お礼のデートに付き合っているのだった。真実を知る洋太は高夫の企みを阻止しようとするが、あいは洋太の言う事を聞かず、高夫についていく。(CHAPTER12「オレの事キライ」)

あいは洋太の引き留めるのも聞かず、誘われるがままに高夫の家に行ってしまう。何とかしたいと思う洋太だったが、もえみを置いてけぼりにするわけにいかない。もえみは洋太の家にやって来て、最近洋太の様子がおかしい事を心配していると告げる。一方の高夫は純情を装い、あいの警戒心をなくして、あいの身体を手に入れようと画策していた。(CHAPTER13「家にて…」)

高夫に強引に迫られたあいは、高夫を平手打ちしたあと、優しく拒絶する。高夫の家を出たあいは、喫茶店から洋太の家に伝言を残す。一方洋太はもえみを送っている途中で、あいが喫茶店にいる姿を見かけたが、そのままもえみを送り届ける。あいの前に再び高夫が現れ、あいの事を本気で好きになってしまったと告げる。そして洋太は、もえみと別れて急いで喫茶店に向うが、そこにあいの姿はなかった。(CHAPTER14「好きだ」)

洋太は一晩中あいを待っていたが、結局あいは戻って来なかった。心配する洋太だったが、もえみが貴志と付き合っている事に嫉妬した女生徒達から、もえみが嫌がらせを受けている事を知る。しかしもえみは、貴志には心配をかけまいと黙って耐えていたのだ。放課後、高夫が洋太の前に現れ、あいと結ばれたと言って洋太を挑発する。怒りのあまり、洋太は高夫を殴ってしまう。その頃、もえみは貴志に対して、自分の事が本当に好きなのかどうかを尋ねる。(CHAPTER15「心がツライ」)

もえみの問いに貴志は、逆にもえみが自分ではなく洋太の事を好きなのではないかと尋ねる。もえみは洋太にその事を打ち明けつつも、やはり自分は貴志の事が大好きなのだという気持ちを再確認する。打ちのめされた洋太を、あいが満面の笑みで迎える。あいの口から、高夫とはなにもなかった事を聞き、安堵する洋太だったが、そこに洋太が退学になったという知らせが届く。(CHAPTER16「最後のやさしさ」)

実は高夫はPTA会長の息子であり、洋太に対して厳しい処分を決定したのだった。洋太は退学になった事をあいには伝えず、久しぶりに二人の楽しい時間を過ごす。次の日、登校した洋太は退学ではなく停学処分になった事、しかしそのせいでテストを受ける事ができなくなるため、留年になってしまう事を告げられる。洋太はそれを甘んじて受け入れ、あいのもとへと帰るが、あいは洋太の前から消える覚悟をしていた。洋太への気持ちを抑える事ができず、洋太の恋を応援する事もできないあいは、覚悟を決めて洋太への思いを打ち明ける。(CHAPTER17「哀しいふたり」)

第3巻

弄内洋太への思いを告げたとたんに、天野あいは身体が透き通り、ビデオデッキの中に吸い込まれてしまう。あいの消えた画面を叩きながら慟哭する洋太の前にGOKURAKU店長が現れ、あいを取り戻すチャンスをくれる。洋太がテレビの画面を通して連れて来られた世界は、洋太の心の中の恋愛観念を具現化した世界だった。洋太はあいを取り戻すためにガラスの階段をひたすらのぼり、途中に現れた幻惑を退け、体中を傷だらけにしながら頂上にたどり着く。そこには巨大な機械に拘束されたあいが、洋太の助けを待っていた。(CHAPTER18「ガラスの階段」)

あいを取り戻そうとやって来た洋太に対して、ローレックはあいの身体を使って洋太の心の中に潜む恋愛の傷を思い出させる。小学生時代の初恋、中学生時代の一途な片思いが無残に砕け散った時の記憶を思い出した洋太は、恋愛のすべてを拒絶する。苦しむ洋太の姿を見て、あいは自分を支配する呪縛を精神力で乗り越え、洋太への攻撃を阻止する。洋太は過去の傷を守るよりも、あいを失う事が一番つらい事だと思い直し、死に物狂いであいを巨大な機械から救い出す。二人は元の世界へ戻るが、あいは意識を失ったまま目を覚まそうとしない。(CHAPTER19「失恋の電撃」)

GOKURAKU店長は命令違反だとわかりながらも、あいを店まで運んだ洋太のために、自らあいを元に戻す手助けをする。ただし、ビデオガールとしての宿命がある以上、いつかは再生終了となる事を止められない。すべてを覚悟のうえで、あいを取り戻したいと願う洋太の前に、肉体と意識を取り戻したあいが再び画面から飛び出し、二人はやっと再会する事ができた。しかしそれもつかの間、ローレックによってあいは連れ戻され、GOKURAKUそのものも忽然と姿を消してしまう。(CHAPTER20「再生」)

春になり、新学期が始まった。留年した洋太は、早川もえみ新舞貴志より1学年下になっていた。久しぶりに貴志と顔を合わせたもえみは、色々と考えた結果、貴志との付き合いを続ける事にした。登校して来た洋太の様子を見て、もえみと貴志は、洋太が見違えるように変化した事に気づく。そんな洋太に対して、新入生である仁崎伸子が声を掛ける。伸子は洋太の新しいクラスメイトで、なおかつ中学の時の後輩だった。同じ美術部に所属して以来、洋太に片思いをしており、彼を追って同じ高校に入学したと告白する。(CHAPTER21「センパイ」)

洋太はあいへの気持ちを心の中にくすぶらせつつも、もえみへの気持ちを断ち切る事もできず、さらに伸子のストレートな愛情表現に心を揺さぶられていた。一方、もえみは洋太に対して、真っ直ぐに気持ちを伝える伸子の事が心に引っかかっていた。そんな中、洋太の前に突然あいが姿を現す。あいは新入生として、洋太のクラスメイトになったのだが、洋太の事はまったく覚えていない様子だった。(CHAPTER22「いえない言葉」)

あいの記憶を呼び覚まそうとする洋太だったが、あいは洋太の事だけでなく、自分自身がビデオガールであった記憶すらなくしていた。あいを気にする洋太に、伸子は自分の気持ちをストレートに表現し続ける。しかし洋太は伸子の申し出を断り、あいへの気持ちを鎮めるためにも、絵を描く事に没頭する。一方のあいは、以前と変わらない奔放なキャラクターで男子生徒達の人気を集めていた。そして伸子は、髪をバッサリ切って洋太の前に現れ、前向きに片思いをし続ける覚悟を洋太に伝える。(CHAPTER23「悲しいおいかけっこ」)

あいの事を考えて悶々とする自分の気持ちを断ち切るためにも、伸子の誘いに乗って洋太はデートを楽しむ。天真爛漫で明るい伸子といっしょにいる事で、洋太の気持ちは和らいでいく。そんな中、二人はもえみと貴志がデートをしているところにバッタリ出くわしてしまう。伸子は、もえみがあまり楽しそうでない様子に気づき、もえみの気持ちは別のところに向いているのではないかと考えていた。その頃、貴志はこれまでもえみに対して冷たい態度を取り続けていた事を振り返り、これからはもえみを好きになる努力をしようと決心する。しかしそれは奇しくも、もえみが貴志に対して限界を感じた瞬間だった。(CHAPTER24「それぞれの決心」)

伸子とのデートの途中にあいの姿を見かけた洋太は、あいを追いかけたい衝動に駆られる。そんな洋太の様子を見て、伸子は切ない気持ちになる。伸子は声を掛けて来たあいに、洋太を託して自ら立ち去ってしまう。しかし偶然、出会ったもえみから、伸子が泣きながら駅へ向かっていた事を伝えられたあいは、伸子を連れ戻しに行く。そして洋太は、もえみから貴志と別れてしまった話を聞く。あいに連れ戻された伸子の顔を見て、洋太はあいへのつらい気持ちを忘れるために、あいともえみの前で伸子との交際宣言をする。(CHAPTER25「体を軽くして」)

洋太は伸子の笑顔には魅力を感じつつも、夢の中ではあいと結ばれており、まだ憂鬱な気持ちを抱えていた。クラスメイトの男子達と奔放に騒いでいるあいの事を気にしている洋太の姿を見て、伸子は少しやきもちを焼いていた。一方、あいも伸子と仲を深めていく洋太の様子を見て、自分の心が痛んでいる事に気づく。(CHAPTER26「気持ち深まる」)

第4巻

弄内洋太との思い出をすっかり忘れていた天野あいだが、洋太の夢を見るたびに胸が痛くなる自分に気づく。しかし記憶を呼び覚まそうとすると猛烈な頭痛に襲われてしまい、それ以上考える事ができなくなっていた。夢の中に出て来た洋太の部屋に行ってみたいと思ったあいは、洋太にその気持ちを伝えようとするが、つい照れてしまって言い出せない。あいが悩んでいるうちに、仁崎伸子が洋太の家に遊びに行く約束をしてしまう。がっかりしているあいの前に、ローレックが姿を現す。(CHAPTER27「記憶の断片」)

あいに接触したローレックは、あいが記憶をなくしている事に驚きつつも、不敵な笑みを浮かべていた。あいは自分の中にある断片的な記憶と、現実とのあいだに違和感を感じていた。そしてそれが、祖父と信じているGOKURAKU店長が、決してビデオを止めてはいけないと、何度も念を押す事に関係しているのではないかと考える。思い切ってビデオを止めてみようとするが、悪い予感がしてそれだけはどうしてもできない。その頃、伸子は洋太の家に遊びに来ていた。あいは古い記憶を頼りに洋太の家にたどり着くが、洋太が伸子と楽しく過ごしているのを見て心を痛める。(CHAPTER28「帰らない」)

夜になってあいは家に戻るが、ローレックが訪ねて来ている様子で、顔を合わせたくない思いから再び夜の町へ出かけてしまう。その頃、伸子は最初から洋太の家に泊まる覚悟で、食事を済ませて入浴していた。洋太は伸子を泊めるために、あいが出て行った思い出の部屋を片付ける。一方、あいは行き場をなくして夜の町をさまよう。そんな中、ローレックが頭に直接話し掛けて来て、あいが普通の人間ではないという事実を告げる。(CHAPTER29「ひとつ屋根の下」)

ローレックの遠隔操作により、あいは磁力を腕から放出させる。ショックを受けたあいは、洋太のもとへ向かう。一方、伸子は今夜洋太にすべてを捧げようと決意しており、緊張していた。洋太は、かつてあいが使っていた部屋に伸子を案内し、自分も入浴を済ませて部屋へと戻る。あいは雨に打たれながら洋太の家に戻るものの、ベルを押せない。一方の伸子と洋太は、お互いを意識したまま眠れずにいた。(CHAPTER30「長い夜」)

いっしょの布団に入りながら、洋太と伸子は固まったままお互いに触れ合えずにいた。しかし、洋太の伸ばした腕が伸子の身体に触れ、そこから二人はお互いを強く抱きしめる。そして伸子は自分からキスしてほしいとせがむ。これまで、夢や妄想の中だけの出来事だったキスを現実のものにした洋太は、もう自分を止められる気がしなかった。しかしそこに電話が掛かって来て、二人の行為は中断する。電話の相手はあいで、そのただならぬ様子に洋太は慌てる。(CHAPTER31「ごめん…」)

洋太の声を聞いてホッとするあいだったが、洋太が伸子といっしょにいる事を思い出し、二人の邪魔をしてはいけないと、あいは無理に元気なそぶりで電話を切る。洋太は伸子の前であいの事を心配しているそぶりを見せ、伸子もあいの事を探しに行こうと洋太を誘う。公衆電話の前で眠りこけているあいを見つけ、二人は声を掛ける。びしょびしょになったあいのために洋太がタオルを買いに行っているあいだに、伸子はあいに洋太を渡さないと、強い気持ちをぶつける。(CHAPTER32「キャンセル」)

あいに対して煮え切らない態度を取る洋太に、伸子は腹を立てていた。そんな伸子に片思いをしている松井直人は、洋太と伸子の仲が気まずくなっている様子を見て、今がチャンスとばかりに伸子へ告白する。一方、洋太の前にローレックが現れ、あいを消しに来たと告げる。洋太はその事をあいに知らせに行くが、あいは伸子のために洋太への気持ちを断ち切ろうと、洋太を平手打ちして冷たい態度を取る。(CHAPTER33「横恋慕」)

あいに平手打ちをされた洋太は、ローレックについての話ができないまま、あいに避けられ続けていた。あいの事を心配する洋太を、伸子が切ない気持ちで見つめていた。なんとかしたいと思う洋太は、あいを守るためにそばにいると宣言するが、それを伸子に聞かれてしまう。伸子はショックを受けて泣きながら走り去るが、直人はそんな伸子をここぞとばかりに慰める。(CHAPTER34「きみのそばに」)

あいとの誤解を解くために伸子と話をしようとする洋太に対して、伸子は洋太の気持ちを試そうとする。しかし洋太はそれに応えられず、伸子はますます意地を張ってしまう。直人は傷心の伸子に、再び告白して交際を迫る。伸子は直人に対してはっきりと交際を断るが、相変わらず洋太とは話をしようとしない。伸子とあいの二人から避けられ、落ち込んでいる洋太に優しく声を掛けて来たのは早川もえみだった。(CHAPTER35「勇気」)

伸子にフラれて傷心の直人は、誰もいない学校の視聴覚室でローレックからもらったビデオを見ていた。そこに映った少女の呼び掛けに答えようとしたが、そんな自分がばかばかしく感じてやめてしまう。一方、これまでの事をもえみに相談した洋太は、もえみからキスしてほしいと迫られてたじろぐ。直人はローレックにビデオから少女が出て来るように深く念じろと命令され、再びビデオを見る。その様子を見ていたあいは、テレビ画面の中から生身の女の子が出て来たのを見て衝撃を受ける。(CHAPTER36「やさしさ」)

第5巻

テレビの画面から飛び出して来た美少女の神尾まいに、なんでもしてあげると言われた松井直人は、まいの身体を触って服を脱がせ、欲求はどんどんエスカレートしていく。テレビから女の子が出て来たの事に衝撃を受けた天野あいは、自分もまた同じようにして生まれて来たのだと知り、ショックを受けてしまう。その頃、弄内洋太早川もえみからキスのおねだりをされて心が揺れるものの、そんな事はできないと正直に断る。実はもえみは、洋太の優しさと誠実さを確かめるためにわざと誘ったいたのだ。もえみは洋太の誠実さを知り、洋太と仁崎伸子の仲を取り持つ約束をする。(CHAPTER37「VIDEO・GIRL・MAI」)

あいは、GOKURAKU店長に自分の出生の秘密を尋ね、自分が普通の人間ではない事、そしてビデオガールとしても不完全な事を知り、ショックを受ける。その頃、直人はまいへの肉欲に溺れていた。テスト期間中という事もあり、視聴覚室に誰も近寄らないのをいい事に、家にも帰らずに閉じこもったまま、一心不乱にまいと抱き合っていた。洋太はもえみに励まされ、伸子と話をしようとするが、やはり避けられてしまう。(CHAPTER38「愛」)

1週間ものあいだ、飲まず食わずでまいとの肉欲に溺れ続けた直人は、とうとう倒れて動けなくなってしまう。ローレックはまいを回収し、直人には記憶を消す薬を飲ませる。一方、洋太と伸子は仲直りをし、あいはそんな二人の邪魔をしない事を心に決める。そして視聴覚室から衰弱しきった直人が発見され、自殺未遂だと騒がれてしまう。その原因が自分にあると責任を感じた伸子は、直人の意識が戻るまで病院で付き添うと洋太に告げる。(CHAPTER39「あわないね…」)

ローレックの命令で、まいはあいの命を狙う。自分の持つ磁力をあいの胸に放出してあいの命を奪おうとするが、間一髪でGOKURAKU店長があいを助け、まいを退散させる。その頃、夏休みに入った洋太は伸子に会えない日々が続き、ひたすら絵を描いていた。そんな中、気晴らしに外出すると、お見舞いに行く途中の伸子にバッタリ出会う。久しぶりに会話した二人には、ぎこちない空気が流れ、お互いに対する遠慮から誤解が生じてしまい、不信感を募らせる。(CHAPTER40「うらはら」)

GOKURAKU店長があいを連れて洋太のもとを訪れる。これまでのいきさつを聞き、あいの寿命は残り1年もなく、それさえもローレックは無理やり消そうとしている事を知る。そして洋太は、あいと共に暮らし、あいを守る決意をする。洋太は、久しぶりのあいとの生活に懐かしい記憶がよみがえっていた。(CHAPTER41「昔のように」)

洋太はあいを連れてプールへやって来た。冬生まれのあいにとっては初めての夏で、プールのすべり台の楽しさに夢中になっていた。洋太はすべり台に対してあまりいい思い出がなく、苦手意識を持っていた。そこで洋太は伸子とバッタリ出くわす。友達と共に遊びに来ていたという伸子は、よそよそしい態度を取り、洋太の不誠実さをなじる。そこにあいが戻って来て、三人は顔を合わせてしまう。(CHAPTER42「すべり台」)

洋太とあいがプールでデートしていた事を知った伸子は、ショックを受けて涙を流して取り乱す。洋太は話し合おうとするが、伸子は最初から自分ではなくあいが好きだったのではないかと、洋太に指摘する。家に戻った洋太は、伸子と付き合いながらも、告白もせずに伸子のされるがままで、自分からは何もしていない事を反省する。伸子を愛おしいと思う気持ちと謝罪の気持ちを伝えようと、洋太は伸子の家に向かおうとするが、伸子も洋太の家を訪ねており、二人はすれ違う。そして伸子は、洋太の家にあいがいる事を知ってしまう。(CHAPTER43「すれちがい…」)

伸子と連絡が取れない洋太は、伸子の嫌いになったという言葉が本心だったのではないかと考える。一方の伸子も、洋太への気持ちを断ち切る事ができず迷っていた。伸子は洋太ともう一度話したいと考えて電話をするが、洋太はあい、もえみ、新舞貴志と共に、憂さ晴らしに海へ旅行へ行く計画を立て、その日のうちに出発してしまう。そして洋太の家の留守番電話には、伸子からのメッセージが残されていた。(CHAPTER44「まよい」)

洋太、あい、もえみ、貴志の四人は伊豆へやって来たが、貴志は部屋に残ったまま遊ぼうとしない。説得しようとする洋太に貴志は、洋太こそ伸子への気持ちを無理に抑え込もうとしているのではないかと指摘する。その頃、伸子は直人から再び告白されて、心が揺れていた。洋太が家の留守電に録音されたメッセージを聞くと、何度も電話を掛けて来た伸子の声が入っていた。洋太は急いで伸子のもとへ向かうが、あいはいつものように洋太を応援する事ができない自分の気持ちに気づくのだった。(CHAPTER45「わすれられる?」)

第6巻

仁崎伸子の待つ場所へ急いで向かう弄内洋太は、伸子と会って話せばすべての誤解が解け、元の鞘に収まると期待していた。しかし洋太が、その場所に着いた時には約束の時間から5時間が経過しており、伸子の姿はなかった。必死で探し回る洋太の前に伸子が現れ、5時間も待っていた事に洋太は驚く。しかし伸子の瞳には、既に引き返せない覚悟が宿っている事に気づく。(CHAPTER46「え!?…」)

伸子との恋が終わった事に打ちのめされた洋太は、陰鬱な気持ちで家に向う。しかも電車内では、おかしな女の山口夏美に無理やり席を譲らされ、洋太は不愉快な気持ちになっていた。真っ直ぐ家に帰る気になれず、イライラしながら街を歩いているうちにチンピラにからまれ、洋太はボコボコに殴られてしまう。そこに夏美が現れて、洋太を助けるのだった。(CHAPTER47「ちがうね!」)

伸子と別れたばかりの洋太に対して、自分もフラれたばかりだと告げる夏美に対して、洋太は不快感を抱く。行き場所がないという夏美は、勝手に洋太について来て、洋太の家の庭にテントを張ってしまう。家には伊豆から戻って来ていた天野あいが洋太を出迎え、伸子と別れて寂しい気持ちを抱える洋太を慰める。一方夏美も、洋太の前では明るい表情をしているが、失恋の悲しみを抱えていた。(CHAPTER48「フラれた者同士」)

夏美の涙を見てしまった洋太は、夏美が明るく振る舞いながらも実は苦しい気持ちを抱えていた事を知り、彼女への態度を改める。洋太の家を出て公園にテントを張るという、夏美を迎えに行った洋太は、夏美と話しているうちに彼女とは幼い頃に遊んだ仲で、知り合いだった事を知る。その頃、あいは洋太との約束を反故にされた事で不機嫌なまま外出し、そこで自分の命を狙う神尾まいと再び遭遇する。(CHAPTER49「温かい手」)

まいは以前よりも数段パワーアップしていた。あいは必死に逃げるが、高い身体能力を備え、磁力を自在に放出して攻撃して来るまいに手も足もでない。その頃、洋太と夏美は久しぶりの再会を懐かしんでいた。そして夏美は、ふられても簡単にはあきらめないと宣言し、洋太にもその勇気を与える。(CHAPTER50「襲撃」)

まいに追い詰められたあいは、自分の寿命が残り少ない事実を知らされ、必死でまいに抵抗しながら逃げまどう。しかしまいは圧倒的に強く、あいはなすすべもない。徐々にいたぶられ、あいはとうとうとどめを刺される寸前となる。その頃、洋太は伸子と偶然出会っていた。(CHAPTER51「ばったり」)

伸子と話をしようとした途端、あいが今わの際に洋太に助けを呼ぶ声が洋太の頭に響く。しかし駆けつけようとする洋太を夏美が引き留め、伸子と話をするように説得する。洋太は夏美にあいを助ける事を頼み、伸子を追いかける。その頃、あいはまいに命を奪われそうになっていた。夏美はあいを助けに行く途中、心臓を激しい痛みに襲われ、うずくまってしまう。(CHAPTER52「死の口づけ」)

お互いがこれ以上傷つかないためにも、未練を断ち切って別れようと告げる伸子に、洋太はもう一度だけ話したいと言い残し、あいのもとへ駆けつける。一方、夏美もあいのもとへたどり着くが、まいがあいを殺そうとしている場面を見て衝撃を受ける。夏美に目撃されたまいは、夏美の口を封じるためにその命を奪おうとする。夏美は高い身体能力を持っているが、心臓の持病のせいで長く戦う事ができないでいた。あいと夏美が絶体絶命になる中、洋太が姿を現す。(CHAPTER53「命をあきらめないで」)

あいを助けに来た洋太の姿を見て、まいはあいの目の前で洋太を誘惑しようとする。しかし洋太はその誘惑に乗る事はなく、あいを助けるために自分が攻撃を受ける。愛の力を否定するまいは、容赦なくあいに攻撃を続ける。洋太はあいの盾になるために、あいに覆いかぶさるが、まいは二人もろとも葬り去ろうとする。洋太を助けるため、あいは無意識のまま巨大な磁力を放出して、まいを倒す。その一部始終を見ていたローレックは、あいの持つ力を認め、あいに興味を示す。(CHAPTER54「あいの磁力」)

第7巻

ローレックから弄内洋太と愛を結ぶ事ができたら、人間にするという条件を出された天野あいは、洋太に対してこれまで抑えていた気持ちを爆発させる。しかしローレックの条件をまったく知らない洋太は、ビデオガールであるあいはいつか消えてしまうという事情から、あいの事を女性として意識する事を避けていた。買い物の帰りに、洋太は早川もえみが泣いている姿を見て動揺する。(CHAPTER55「奇蹟の条件」)

無理に明るく振る舞うもえみに対して、洋太は涙の理由を尋ねる。不実な新舞貴志に傷つけられたもえみの話を聞き、憤慨した洋太はもえみを連れて貴志のもとへ向かう。もえみから褒められて天にも昇るほど浮かれた洋太は、もえみの貴志への思いを聞いて叩きのめされる。そして、もえみの言葉に極端なまでに反応してしまう自分の心に気づいた洋太は、もえみに対して貴志との付き合いをやめるように助言する。(CHAPTER56「イメージ」)

貴志はもえみを連れて立ち去り、洋太は家に戻る。しかし貴志は洋太の家を訪ね、もえみと本気で向き合おうと考えている事を打ち明ける。貴志が本気になった事で、もえみとの可能性が完全に失われてしまったと考える洋太は、激しく動揺する。そして、胸に残る痛みはかつてもえみの事を好きだった時の残留思念なのだと自分に言い聞かせる。(CHAPTER57「気持ちタイムトリップ」)

かつてもえみに片思いをしていた頃に繰り返し見た夢で目覚めた洋太は、自分の気持ちを図りかねていた。そんな洋太に対して、あいは自分の気持ちを受け入れてもらおうとするが、ローレックとの契約の中には、人間になれる条件を洋太に打ち明けると無効になるとあり、事情を話さないままでいた。一方、もえみは悪天候の中、貴志との約束の場所に行くが、そこにはもえみの知らない二人の男がおり、もえみに襲い掛かる。(CHAPTER58「嵐」)

悪天候でバンドの練習が中止になったのを、貴志がもえみに伝えていない事を知った洋太は、貴志の制止を振り切ってもえみを探しに行く。あいはもえみのために必死になっている洋太を見て心を痛める。その頃、もえみは見知らぬ男達に襲われ、必死に抵抗していた。服を破られ、無理やり性行為に及ぼうとする男達から逃げるもえみは、転倒して気を失ってしまう。そこへ洋太が駆けつけると、男達は逃げながら貴志もグルであるかのような言葉を残していく。(CHAPTER59「疑惑」)

貴志がもえみを襲わせようとした事実を受け止めきれない洋太は、男達に服を脱がされたまま気を失っているもえみを前に、激しく動揺する。どしゃ降りの中、もえみを背負って帰ろうとする洋太の前に、貴志が現れる。洋太は貴志をなじり、もえみを襲った男性達とグルなのかを問う。しかし貴志はその問いには答えようとせず、洋太はそれを肯定と捉える。その時、もえみは洋太の背中で一瞬だけ目を覚まし、貴志の姿を見て嬉しいと呟くのだった。(CHAPTER60「軽蔑」)

洋太は、気を失ったままのもえみを、あいに予約してもらったホテルに連れ帰える。もえみの気持ちを慮って、自分が助けた事実は伏せ、もえみが目を覚まさないうちに姿を消す。目覚めたもえみが貴志の事だけを気にしている様子に、あいは洋太の事を思って心を痛める。もえみは男に襲われた恐怖心に苦しみながらも、なにもなかったように、貴志との付き合いを続けようとする。(CHAPTER61「決意」)

あいは学校で貴志と対面し、もえみへの気持ちを問いただす。貴志の気持ちが中途半端なら、もえみを洋太に譲るように説得しようとしていたのだ。貴志は、あい自身の幸せよりも洋太の幸せを優先しようとする言動に驚く。その頃、学校をサボり続けていた洋太は一つの決意をしていた。(CHAPTER62「キミって娘は…」)

洋太はもえみに対する気持ちを抑える事をやめようと決意していた。そして、もえみに自分の気持ちを打ち明け、貴志から奪い取って自分の手で幸せにしようと考えていた。もえみに早朝電話を掛け、デートに誘った洋太は、学校をサボって待ち合わせ場所へ向かう。あいは貴志がグルなのかどうかの真相を確かめるべきだと洋太を止めるが、意固地になった洋太はそんなあいをも突き放す。そして洋太の前に、もえみがやって来る。(CHAPTER63「ヨータ・へん!」)

第8巻

早川もえみが学校をサボって待ち合わせ場所に来てくれた事で、弄内洋太には自信がよみがえっていた。洋太はもえみにふられた日をやり直すつもりで、かつて冬休みに共に訪れた遊園地へもえみを連れて行く。その頃、洋太の暴走を止めようと、天野あい新舞貴志は遊園地へ先回りするが、二人を見つける事ができないでいた。そんな中、もえみが男達に襲われた心の傷が癒えていない事を知り、貴志への怒りを新たにした洋太は、もえみを守るのは自分しかないと確信を強める。そして、もえみに自分の気持ちを打ち明けようとする。(CHAPTER64「あの日をたどって…」)

洋太がもえみに告白しようとする現場に駆け付けたあいは、洋太の告白を止めようとする。一方、貴志はもえみに対して、別れたいと告げる。その言葉が信じられないもえみは、貴志に問いかけるが、貴志はもえみを助けたのは自分ではなく洋太である事を伝え、もえみにはうんざりしていると言い放つ。ショックのあまり呆然として涙を流すもえみに対して、洋太は自分の思いを伝える。(CHAPTER65「うんざりだ」)

もえみに対して思いを告げた洋太だったが、もえみは貴志にふられたショックで、返事をするどころか、洋太の言葉を理解する事もできなかった。親友と彼女を同時に失い、自己嫌悪に陥る貴志を心配するあいは、なんとかして洋太の貴志への誤解を解きたいと考えていた。そしてもえみは、洋太に言われた言葉についてじっくり考える。これまで自分を思い続けてくれた洋太が、自分と貴志との恋を応援している時にどんな気持ちでいたのかに思いを巡らせ、もえみは洋太に好感を抱くのだった。(CHAPTER66「その時はどんな想いを…」)

あいが貴志の潔白を証明しようとしても、貴志自身はそれを否定しようとしなかったために、それが事実なのだと誤解してしまったもえみは、学校内でもその事が噂になっているという事実を知り、ショックを受けてしまう。女生徒達の陰湿な噂の的になり、もえみは学校でつらい立場に立たされる。一方、貴志はもえみを襲った人物に会いに行き、事の真偽を確かめていた。そしてもえみは洋太を呼び出し、これまで洋太を傷つけて来た事を詫び、そばにいてほしいと気持ちを伝える。(CHAPTER67「そばにいて…」)

もえみと付き合う事になった洋太は、このままいっしょにいたいともえみに甘えられるが、家にいるあいに気兼ねして、もえみと共にホテルに泊まる。しかし洋太はまだ心の傷が癒えていないもえみを気遣い、ダブルベッドで手をつないで眠る。一方、貴志はもえみを襲ったもう一人の男に会いに行き、ぶん殴ってしまう。(CHAPTER68「オレにしかられる」)

もえみを襲った男達に会いに行き、その経緯を聞きだした貴志は、直接ではないものの、自分にも責任があると感じていた。事の起こりは、もえみに下心を持った男達が、借金を盾にして貴志のバンド仲間を引き入れて仕組んだ事だった。もえみを大切にして来なかった事にも問題があると感じた貴志は、洋太ともえみに対して弁解するつもりはなかった。一方の洋太は、はっきりした別れ話をしていないままの仁崎伸子に会って、けじめをつけようと決意する。しかし久しぶりに顔を合わせた伸子は、すでに洋太との事を割り切っており、明るく発破をかけて洋太の背中を押す。(CHAPTER69「ケジメ」)

あいは、洋太ともえみのデートに付き添う計画を立てる。洋太ともえみがなかよくしている姿を見て、自分が描いたシナリオ通りである事に安堵し、それと同時に胸を痛める。あい自身が悪い事を企んでいると誤解する洋太に対し、もえみはあいの気持ちを理解していない洋太をこっそりと叱る。そんなもえみの心づかいを知ったあいは、これで洋太をあきらめる事ができると涙を流す。(CHAPTER70「あいのシナリオ」)

洋太ともえみの恋を祝福し、自分は妹役に徹すると決めたあいは、自分の身体に異変が起きている事に気づく。肉体の一部が消えそうになり、その時に失われていた昔の記憶が断片的に流れ込んで来ていた。洋太をあきらめるためにも、あいは昔の記憶がよみがえって来ない事を願っていた。一方、洋太は家に訪ねて来たもえみとなかよく話しているうちに、いいムードになり、もえみにキスしようとする。(CHAPTER71「記憶」)

あいがGOKURAKU店長のもとを訪ねると、彼もまたあいを再生しているデッキの様子がおかしい事に気づいていた。あいは、洋太ともえみの事を吹っ切ったのにもかかわらず、記憶がよみがえってまた苦しい思いをしたくないと訴える。GOKURAKU店長は、ビデオテープを巻き戻して、やり直す方法を提案するが、あいは人間のように生きたいと願い、それは拒否する。一方、洋太ともえみは二人きりの甘い休日を過ごし、初めてのキスをする。(CHAPTER72「キス」)

第9巻

弄内洋太はずっとあこがれていた早川もえみと相思相愛になるという夢を叶え、この幸せを失う事を想像して怖さを感じていた。一方、天野あいはビデオテープを巻き戻さずに、このまま寿命を迎える事を選び、過去の記憶がよみがえっても意志の力で乗り越えようと決意する。しかし、洋太ともえみがキスをした話を聞き、過去の記憶がよみがえって来るのを抑えきれなかった。意識がもうろうとしながら、洋太のもとへ駆けつけたあいは、洋太ともえみが抱き合っている場面を目撃してしまう。(CHAPTER73「怖い…」)

ソファの上でもえみと抱き合っていた洋太は、かつて自分がもえみに片思いをしていた頃の事を思い出す。あこがれだったもえみが自分の腕の中にいる事を改めて奇蹟のように感じながら、洋太はもえみの身体を求める。その様子を窓の外から見ていたあいは、激しい頭痛と共に昔の記憶がよみがえらせる。そして、かつて洋太と共有した大切な時間を忘れていた自分に驚愕する。(CHAPTER74「めざめる想い」)

洋太の求めに応じてすべてを捧げようと覚悟をしていたもえみは、男達に襲われた時の恐怖感がよみがえり、すんでのところで洋太のもとから逃げ帰ってしまった自分に落ち込んでいた。一方、あいは自分の記憶が戻った事を洋太に隠したまま、これまでどおりの態度を取っていた。しかしあいの様子が不自然な事から、洋太はあいの記憶が戻ったのではないかと疑うが、洋太もまたそれ以上深く追求しようとしなかった。あいは切ない気持ちを抱えたまま眠る事ができず、洋太が描いたイラストに色を塗ってみる。色塗りが苦手で絵本作りが行き詰っていた洋太は、そのあまりのうまさに感心してしまう。(CHAPTER75「イラストボード」)

洋太に懇願されて1日だけ絵本作りを手伝う事になったあいは、今後も継続的に手伝ってほしいという洋太の頼みを断る。本心はやりたい気持ちでいっぱいだったが、もえみに対する遠慮の気持ちから断ってしまったのだ。あいは洋太から離れるべきだと思いつつも、離れたくないという気持ちとの狭間で悩んでいた。一方、もえみは洋太にすべてを捧げるため、襲われた時の記憶を克服しようと努力していた。これまで肌を露出するのを避けて来たが、無理に肌をさらす事で男性からの視線に慣れようとしていたのだ。そんなもえみを愛おしく感じた洋太は、もえみを強く抱きしめる。それを見てしまったあいは、洋太とのつながりを残したい気持ちから、絵本作りを手伝う事を決める。(CHAPTER76「女の子の気持ち」)

洋太は毎日のもえみとのデートを早めに切り上げ、夜はあいと共に絵本作りに専念していた。コンテストの締め切りが迫る中、連日遅い時間まで作業をする二人は寝不足で、授業中は共に寝てばかりいた。もえみは洋太とあいのつながりに嫉妬心を抱くが、その気持ちを表わそうとはしなかった。そして洋太は、会えない時間を補うために休み時間はもえみと会ってフォローするが、彼女の本当の気持ちには気づかなかった。そんな洋太に対して、仁崎伸子はあいに絵本を手伝ってもらっている事を正直にもえみに打ち明けるべきと忠告するが、洋太は耳を貸さない。そんな中、休日に差し入れを持って来たもえみは、あいが絵本作りを手伝っている事を知る。(CHAPTER77「隠し事?」)

気まずくなったもえみと洋太は、それ以来ずっと会わないまま時間を過ごしていた。洋太はもえみに対してフォローすべきとわかっていながら、絵本が忙しい事を理由に先延ばしにしていたのだ。そしてもえみも、絵本作りの邪魔をしてはいけないと遠慮していたのだ。もえみは、留守番電話を購入して洋太とのすれ違いを生まないようにしていた。しかし、その電話に洋太からの連絡が来る事はなく、虚しさと寂しさがもえみの心を蝕んでいく。そんなもえみの様子を見かねたあいが、洋太にもえみに連絡をするように勧めるが、あいのうっかりミスで仕上がったはずの絵本原稿をダメにしてしまう。その騒ぎで、勇気を振り絞って電話して来たもえみからの連絡にも洋太は気づく事はなかった。(CHAPTER78「留守番電話Part①」)

絵本コンテストの締め切りまで、あと数日なのにもかかわらず、仕上がった原稿をダメにしてしまった洋太とあいは、学校を休んで絵本作りに集中していた。学校で顔を合わせる事すらなくなったもえみは、不安に押しつぶされそうになっていた。今日こそ電話があるのではないかと期待しつつも、留守番電話にはなんの録音も残されておらず、留守のあいだに電話が来た形跡もない。そんな毎日を繰り返しているうちに、もえみの心はどんどんすり減っていく。二人の関係を心配したあいが、二人のデートを締め切り後にセッティングして、もえみに伝える。しかしその日になっても絵本作りは終わらず、洋太はデートをすっぽかしてしまう。もえみの中で、洋太との関係が終わったと感じた瞬間だった。しかし、朝方留守番電話に録音されていたのは、やっと仕上がった絵本原稿を見せるために、もえみの家の前で待っているという洋太からのメッセージだった。(CHAPTER79「留守番電話Part②」)

絵本が仕上がった事で、二人の仲を邪魔するべきではないと考えたあいは、洋太の家を出て行く覚悟を決めていた。しかし洋太から強く引き留められ、あいの心は揺れる。そして洋太は絵本コンテストの結果が掲載された雑誌を買うが、そこに洋太の名前はなかった。もし受賞したら、それを理由にあいを引き留められると考えていた洋太だったが、もはやあいを引き留める理由がなくなってしまう。(CHAPTER80「理由がない」)

洋太の家を出ていったあいの前に、ローレックが姿を現し、あいの再生時間が残り少ないという事実を伝える。真偽を確かめるためにGOKURAKU店長のところへ向かったあいは、自分の寿命が残り47日間である事を知る。一方、もえみはコンテストに落ちた洋太を気づかって元気づけていた。そして、もえみは洋太に対してすべてを捧げる覚悟をしていた事を伝える。洋太は家を出て行ってしまったあいに学校で会えた事を喜び、絵本コンテストの授賞式に招待された事を伝え、共に行こうと誘う。しかしあいは、心を鬼にしてもえみを誘うように強く勧める。(CHAPTER81「命の秒読み」)

第10巻

GOKURAKU店長が部屋を引き払う事になり、天野あいは泊まる家がなくなってしまう。あてもなく歩いていると、公園に放置されていた山口夏美のテントを見つけるが、そこに夏美の姿はなかった。通りかかった警察官から、夏美が入院していると聞き、あいはお見舞いに向う。夏美は自分が病気であるにもかかわらず、あいの事を心配する。一方、早川もえみが訪ねて来るのを待っていた弄内洋太のもとに、GOKURAKU店長が訪れ、あいのビデオテープが再生中のビデオデッキを持って来る。ビデオデッキを預かった洋太は、あいが出て行ってしまったものの、その分身を預かった事で安心する。(CHAPTER82「それは嫉妬で」)

もえみを伴って絵本コンテストの授賞式に出席した洋太は、自分が場違いである事に打ちのめされる。しかしそこで、洋太の作品に目をかけてくれた審査員の一人が声を掛けて来る。その男性から、絵本を出版する話を持ちかけられ、洋太は一気に舞い上がってしまう。そんな洋太にもえみは疎外感を感じて会場から立ち去る。その後、洋太はあいが公園のテントの前でローレックと話しているのを聞いてしまう。それは、あいが一人の男性と愛を結べば人間になれるという話だった。(CHAPTER83「チャンス」)

あいが人間になれるチャンスがありながら、それを自分に隠していたという事を知り、洋太は激しく動揺する。しかし、それに対してなにもできない自分を不甲斐なく思っていた。そんな中、絵本を出版できるチャンスがある事をあいに伝え、引き続きあいの協力を仰ぐ。そして、あいが絵本を手伝うために洋太の家を訪ねて来るが、もえみとかちあってしまう。遠慮して帰ろうとするあいに対して、もえみは決して洋太を渡さないと宣言する。(CHAPTER84「もう逃げない」)

あいを追い出した事を気にかける洋太は、もえみと夕飯の買い物に行く途中に、公園に寄ってあいのテントがある事を確かめる。あいの事を気にかける洋太に気づかないふりをしながら、もえみは自分の中の黒い心に罪の意識を感じていた。今夜は洋太の家に泊まると宣言したもえみだったが、まだ男達に襲われた過去が吹っ切れていなかった。しかしそれを克服するため、水着姿になって洋太の前に素肌をさらす。二人で風呂に入るものの、洋太の心にあいが住んでいる事に気づいているもえみは、わざと洋太がその気になるように挑発する。(CHAPTER85「雪のような人」)

風呂でもえみの身体に触れた洋太は、風呂をあがってからも悶々としていた。もえみは、洋太に借りた大きめの服の下に下着をつけずに現れ、洋太は欲望が抑えられなくなりそうな自分の心と必死に戦っていた。一方、あいは公園のテントを撤収してビルの隙間にテントを張り、冬の冷たい雨と寒さに震えていた。(CHAPTER86「限界Part①」)

もえみへの欲望が限界まで高まった洋太は、理性を失いそうになる。しかし、白昼夢に現れたあいの姿に我に返った洋太は、理性で自分の欲望を押しとどめる。夜も更け、二人は同じ布団に横になるが、眠れないでいた。もえみは、自分への欲望を必死で抑える理由は、洋太があいへの気持ちを断ち切れないからだと悟っていた。しかし、それはそれで洋太の誠実さを感じられたもえみは、自分の思わせぶりな行動に打算が混じっていた事を謝罪する。そして、少し積極的に洋太の身体に触れてみる。しかしそんなもえみに対して、まだ心の傷を抱えるもえみの気持ちが自然に癒えるのを待つと宣言し、洋太はもえみと身体の関係をまだ結ばない事を決心する。(CHAPTER87「限界Part②」)

二人は一線を超えないまま、いっしょのベッドで朝を迎える。何かを吹っ切り、少し前進した様子のもえみに対して、洋太はまだ自分の気持ちを割り切れずにいた。その頃、あいは寒空のテント生活で、トイレや風呂などの問題に直面していた。洋太は絵本の出版社との打ち合わせで、絵本作家としての可能性を大きく飛躍させる。しかし、その事を報告したい相手であるあいは、公園から姿を消しており、見つける事ができないでいた。あいは残り少ないお金の中から工面して銭湯へ行くが、帰り道に雨に降られ、転んで泥だらけになってしまう。人間になれないのに、肉体的な面倒さから逃れられない自分の不便さに悔し涙を流すあいの前に、新舞貴志が姿を現す。(CHAPTER88「人間じゃないのに」)

あいは、ビルの隙間にテントを張って生活をしている事を知っていた貴志から家に来るように誘われる。しかし、それを受ける事で、洋太ともえみの関係がこじれる事を心配し、やせ我慢をして貴志の誘いを断ってしまう。貴志はそれ以上は強要せずに、残されたあいは寒さと空腹で倒れてしまう。一方、洋太はあいを探して街中を歩きまわるが、見つける事ができないでいた。そしてあいはとうとう発熱して、意識を失ってしまう。(CHAPTER89「風邪」)

意識を取り戻したあいは、自分がどこにいるのかしばらくわからず、ぼんやりしていた。実は貴志が再びあいの様子を確かめに行き、気を失っているあいを保護したのだ。すっかり元気を取り戻したあいに対して、貴志はこのまま自分の家に滞在するように勧める。貴志は冷たく不愛想を装っているが、実はとても心の優しい人柄なのだという事を知り、あいは感謝の気持ちを伝える。一方洋太は、やっとあいのテントを見つけるものの、あいの姿を見つける事ができず、改めて足を運んだ時はテントすら消えてしまっていた。(CHAPTER90「クールな奴」)

第11巻

天野あいを見つける手がかりをすべて失った弄内洋太は、再燃するあいへの気持ちを無理に押し殺そうと、新しい作品に取り組んでいた。しかし思うような作品を描けずに、編集からダメ出しされてしまう。その頃、新舞貴志の家に住まわせてもらう事になったあいは、病気で入院している山口夏美のために、なんとかして清水浩司を連れて来ようと、彼が勤務している新宿のディスコを訪れる。(CHAPTER91「気持ち美人」)

夏美との約束を果たそうと、あいは浩司が働いているというディスコを訪れる。そこで浩司はダンサーとして絶大な人気を誇っていた。あいは必死で浩司に夏美の病状を伝えるが、浩司は耳を貸そうとしない。しかし夏美が死ぬかもしれないと聞かされた時の一瞬の表情を見て、あいは浩司がまだ夏美の事を思っている事を確信する。実は浩司は、ディスコのオーナーの娘に気に入られており、彼女の命令に背けない状況にあった。(CHAPTER92「苦しい顔」)

浩司を夏美のもとに連れて行くと決めたあいは、次の日もディスコへ向かうが、門前払いされてしまう。あいは裏口へ回り、仕事を終えて出て来た浩司のあとをつけて、彼の住むマンションまで尾行するが、結局話をする事はできなかった。浩司はディスコのオーナーの娘のワガママにうんざりしながらも、お金と今の立場を失わないために受け入れるしかないのだ。あいは深く落ち込み、帰路に着きながら、こんな時に洋太がそばにいてくれたらと思っていた。そしてその頃、洋太もまた、自分の描いた絵本原稿にダメ出しされ、自分にはあいが必要だという事を痛感する。そんな中、夏美はあいの説明を受けて、もう死にたいと口にする。そんな夏美に対してあいは叱咤し、かつて自分を慰めてくれた時の夏美自身の言葉を思い出させる。(CHAPTER93「言ったじゃない!」)

洋太は作品を描く事ができず、スランプに陥っていた。そして浩司と貴志は、かつて早川もえみが男達に襲われた事件をきっかけに知り合いになり、色んな事を屈託なく話せる仲になっていた。浩司のマンションの前で張り込みをするあいの前に、浩司と共に部屋から出て来た貴志が現れる。あいの再びの申し入れに、浩司は再び強く拒絶する。残念な報告を持って夏美の病室に向かったあいに対して、夏美はがっかりさせられるだけなら、期待させないでほしいと怒りをあらわにする。しかしそれは夏美が、あいが残り少ない時間をこれ以上自分のために使わないようにと気遣い、わざと怒った演技をしていたのだった。あいが去ったあと、夏美は病状が急変して危篤状態になる。その頃、編集から絵本を出版する話をなしにする、という連絡を受けて激しく落ち込む洋太の目の前に、夏美が現れる。(CHAPTER94「ダメな人間」)

夏美が危篤という知らせを受けて、あいは浩司のもとへ走り、病院へ来てくれるように伝える。浩司は動揺しながらも、大手事務所との契約直前という大事な時期に、オーナーの娘ともめるわけにはいかないと拒絶する。その頃、洋太のもとに現れた幻の夏美は、自分の気持ちに正直に生きる事を示唆する。病院のベッドの上で危篤状態に陥った夏美は、枕元のあいの呼び掛けに意識を取り戻し、残された時間で洋太とたくさん思い出を作ってほしいという遺言と、最後にあいに対して感謝の気持ちを伝える。そこへ浩司が病室に現れ、夏美に許しを乞い、夏美への愛を伝える。夏美は浩司に夢を追いかけろと応援し、幸せそうに微笑みながら息を引き取る。涙にくれるあいの前に、夏美の幻に導かれるようにしてやって来た洋太が現れる。(CHAPTER95「運命の瞬間」)

夏美の死によって再会したあいと洋太は、それぞれが夏美を失った痛みを慰め合うように自然に抱きしめ合う。そして浩司は、夏美を失ったショックから立ち直れずにいた。病院をあとにしたあいと洋太だったが、あいはまた居場所を伝えないまま、連絡するとだけ言い残して姿を消す。次の日、浩司はあいの案内で最後に夏美がテント生活をしていた公園を訪ねる。そしてあいに、夏美の形見である帽子を渡す。浩司は岡山の故郷に帰る事に決めたが、夢を追いかけろという夏美の遺言を胸に刻んでいた。一方、あいの連絡先も聞かずに別れてしまった事を後悔していた洋太の前に、あいは夏美の遺言を守って洋太との思い出作りをするために現れる。(CHAPTER96「夏美の残したもの」)

洋太と思い出を作るという、夏美との約束を果たすつもりのあいは、洋太ともえみの仲を邪魔するつもりはいっさいなかった。そのためにも、洋太とのあいだに意識的に壁を作り、なかよくなり過ぎないように心掛けていた。しかし洋太はあいといっしょに過ごせる事が楽しくて仕方がなく、もえみから会いたいという電話が掛かって来ても、そっけない態度を取ってしまう。その後、もえみは両親から海外勤務が決まった事と、家族で引っ越す事を聞かされる。洋太と離れ離れになる事は耐えきれないと思ったもえみは、この事を伝えるために慌てて洋太のもとへ向かう。そこでもえみは、あいを駅まで送った洋太が、ふざけたあいに抱きつかれている姿を目撃してしまう。(CHAPTER97「ウソ」)

洋太とあいの仲のいい姿を見て凍りついたもえみは、洋太に対して暴言を吐く。もえみは、洋太が自分に内緒であいと会っていた事よりも、あいといる時の洋太が本当に楽しそうな様子に傷ついていたのだ。洋太ともえみは気まずい雰囲気のまま、次の日に会う約束をして別れる。そして次の日、洋太はもえみの希望で、正月の学校を訪れる。誰もいない教室で、もえみは洋太にキスしてほしいとせがむ。(CHAPTER98「夢のつづき」)

洋太とキスをしたもえみは、涙を流しながら洋太に抱きつき、服を脱ぎ始める。かつて洋太がもえみに片思いしていた頃、毎日のように見ていた夢そっくりなもえみの裸の姿に、洋太は慌てて目を背ける。もえみは必死で、洋太に自分のすべてを捧げたいという気持ちを伝え、洋太をつなぎとめようとする。しかし洋太は寿命が残り少ないあいのために、もえみと別れる事を決意していたのだ。あいが消えたあとは独りぼっちになっても構わないという覚悟で、洋太はもえみを突き放そうとしていた。しかし裸になって横たわるもえみを目の前にすると、洋太は決心が揺らいでしまう。(CHAPTER99「オレはもえみちゃんが好きです」)

第12巻

早川もえみの肉体を目の前にした弄内洋太は、そのまま理性を失いそうになるが、天野あいの姿が脳裏をよぎる。洋太はもえみに服を着せて、別れ話を始める。泣きながら別れたくないと懇願すろもえみに対して、洋太もまた涙を流しながらも、決心を変える事はなかった。もえみと別れたあと、洋太のもとを訪ねて来たあいに、洋太は恋人同士になろうと告白する。しかしあいは、洋太が自分への同情から言っているのだと気づき、それを強い口調で指摘する。そんな二人の前にもえみが現れる。もえみはバッサリと髪を切り、自らをあいに似せる事で洋太の心をつなぎとめようとする。(CHAPTER100「別離」)

どうすれば洋太の心をつなぎとめられるのかと、もえみは洋太に詰め寄る。二人が別れた事を知り、あいは慌てて二人の仲を取り持とうとする。そんなあいに対して、もえみはいい子ぶらずに自分の本音を言えと迫る。しかしあいは、二人が大好きである気持ちと、昔みんなでいっしょに楽しく過ごした頃に戻りたいと訴える。一方、GOKURAKU店長ローレックに命令されてある機械を作っていた。(CHAPTER101「昔に戻りたい」)

あいは、もえみと話がしたいと彼女を待ち続けていた。遅れてやって来たもえみは、あいに対して冷たい言葉を投げかける。しかし、夏美の形見の帽子をかぶって来たあいは、勇気を振り絞って自分がもえみの事を大好きだという気持ちを伝え、洋太のためにも元の優しいもえみに戻ってほしいと語る。もえみも、そんなあいを嫌いになりきれないという正直な気持ちを打ち明け、二人は仲直りする。そしてもえみは、自分がもうじき遠くへ行かなくてはいけない事、洋太があいと共に絵本を作りたいと思っている事を伝える。(CHAPTER102「キライになれない」)

あいの事情を聞いたもえみは、二人の絵本ができるまで待つと約束をして身を引く。あいは洋太のもとへ向かい、その事を伝えて自分が消えたあとはもえみのもとへ戻るように伝える。しかし洋太は、もえみへの気持ちがないわけではないが、もえみよりあいの事を大切に思っていると主張する。そんな洋太に対して、あいは洋太が抱いているのは同情だと指摘。そして、死ぬわけでも消滅させられるわけでもなく、ただレンタル期間が過ぎただけで、再びビデオガールとしてビデオの中に戻るだけだと洋太を説得する。次の日、洋太はもえみともう一度話して、絵本作りが終わったらもえみのもとに戻る約束をする。その頃、あいはローレックを呼び出して話をしていた。(CHAPTER103「信じろ」)

あいはローレックに対して、再生時間が過ぎても絵本を完成させるまで待っていてほしいと懇願する。その頃、洋太ともえみは絵本ができるまでの1か月間会わない約束を交わす。もえみは父親の仕事の都合で外国へ行かなければならない事を、洋太には打ち明けるつもりはなかった。そして、洋太が約束を守らないであろう事もわかっていた。ローレックに願いを聞き入れてもらい、喜んで帰って来たあいはちょうど帰宅した洋太と共に、洋太の父親からの手紙を受け取る。そこには、絵の勉強をしたいなら自分のもとに来いと書かれていた。その頃、ローレックに言われるままに作っていた機械が、どんなものなのかに気づいたGOKURAKU店長は、この機械が完成した事によってもたらされる事態に、強い危機感を感じていた。(CHAPTER104「ハッピーデー」)

洋太は画材を買いに、あいと共にかつて二人で歩いた懐かしい街を訪れる。思い出の店で二人でボーリングをし、あいは以前洋太に対して抱いていた甘い感情を思い出す。もえみを待たせている以上、遊んでいるヒマがあったら真剣に絵本に取り組むべきだと我に返るあいに対し、洋太はそわそわした様子で、家に戻ろうとしない。その後、強引に巨大迷路の中にあいを誘った洋太に対して、あいは怒りをあらわにするが、そこで洋太が内緒で用意していた服に気づく。それはかつて洋太があいに初めて買った服で、あいが既に記憶を取り戻している事を知っている、と洋太は告げる。そして、1年前のこの日にあいと出会った事から、今日をあいの誕生日であると決め、ケーキでお祝いをする。あいは嬉しさのあまり、涙を流してしまう。(CHAPTER105「うれし涙」)

誕生日を祝ってもらった事を、あいは本当に嬉しく感じていた。そして洋太に対して、昔の気持ちがよみがえるのとは別に、新しい感情が芽生えていた。その頃、もえみは洋太への気持ちをあきらめきれずにいた。洋太が再び自分のもとに戻るはずがないとわかっているつもりでも、ひょっとしたらという可能性に賭けずにはいられなかった。そのせいで、家族と共に外国に行く事を決めかねていた。一方、GOKURAKU店長はローレックの企みに気づき、それを上申するために役職であるバルテックに会いにいく。(CHAPTER106「気持ちの変化」)

GOKURAKU店長はバルテックに、現在起こっている事を説明する。一方あいは、洋太に対して抱き始めた新しい感情がなんなのかを図りかねていた。洋太の姿を見ているだけで、ドキドキが止まらないのだ。そこへ突然、もえみが訪ねて来て、あいは一瞬だけ態度が固くなってしまう。そしてその感情の正体は、強い嫉妬心だという事に気づく。一方、GOKURAKU店長が説明を終えた頃、ローレックが現れる。バルテックは、問題なのはローレックではなく、なにもわかっていないGOKURAKU店長の方だと言い放つ。(CHAPTER107「上の方」)

バルテックもまたローレックと同じく、愛などという感情をまったく信じていなかった。願いを聞き入れてもらえなかったGOKURAKU店長は、再びローレックの命令である機械を作らされていた。一方、洋太の家を訪ねたもえみは、洋太とあいの絵本作りを手伝うと言い出す。そこでもえみは、洋太が一番自然で明るい表情をするのは、あいと共にいる時だという事を改めて感じる。そして二人のあいだにある強い絆を感じ、それを認める勇気が必要なのだと自分に言い聞かせる。帰路に着くもえみを送っていった洋太の後ろ姿に、あいはこれまでになかった強い嫉妬心を感じていた。あいは自分がこれまで洋太に抱いていたものは愛で、新しく持った感情は恋なのだと気づく。そして、恋がこんなにも苦しい感情なのだという事を知る。(CHAPTER108「恋」)

第13巻

弄内洋太の前で感情的になってしまった事を後悔した天野あいは、洋太と顔を合わせる事が気まずくなり、洋太と会うのを避けていた。そこへGOKURAKU店長が洋太に連絡をして来る。そして、あいを人間にする代わりに、この先の人生をGOKURAKUを作った者達に狙われてしまうリスクを背負う覚悟があるのかを問う。即答できない洋太にGOKURAKU店長は装置を渡し、あいを人間にする覚悟ができたら、装置のボタンを押すように伝える。しかしそこにローレックが現れ、GOKURAKU店長を一瞬にして消してしまう。洋太は恐ろしさのあまり、固まってしまう。(CHAPTER109「命をかけられるか?」)

愛という言葉を信じていないローレックは一瞬だけ感情的になり、洋太も消そうとする。しかしそれは仕事の範疇ではないと思い直し、これ以上余計な事をすると消す、という忠告のみを残して立ち去る。あいが姿を見せない日が何日も続き、洋太は自分の手元に残された装置のボタンを押すかどうか迷っていた。勇気を出せない自分を情けなく感じていた洋太は、降り積もる真っ白な雪の中に飛び出していくと、玄関の外にはあいが待っており、微笑んでいた。その笑顔を見たとたん、洋太はたまらずにあいを抱きしめ、ポケットの中の装置のボタンを押す。(CHAPTER110「美しく白い雪とともに」)

洋太の合図を知り、GOKURAKU店長はあいを人間にするための装置を作動させる。清水浩司に誘われて岡山に行く事になった新舞貴志と別れ、彼の家を出たあいは、洋太の家に身を寄せる事になった。あいはローレックを呼び出し、再生時間が終わったあとの自分がどうなるのかを詳しく知る事となる。そしてローレックは、洋太以外の人物に記憶を消す薬を飲ませるように指示する。一方、洋太は早川もえみから、家族で海外へ移住する事を知らされ、別れを告げられる。(CHAPTER111「記憶を消す薬」)

洋太とあいは、残り少ない再生時間を共に過ごし、絵本作りに励んでいた。絵本のラストを描いてしまうと、あいが本当にいなくなってしまうのではないかと危惧し、洋太はまだラストを完成させていなかった。その頃、GOKURAKU店長は採取した洋太の記憶から、あいを人間にするためのヒントを得ようとしていた。そして再生終了の前夜、洋太とあいはいつも以上に楽しく過ごし、不安を吹っ切ろうとしていた。絵本は完成しなかったが、人間になれたら時間はいくらでもあると、洋太はわざと楽観的に振る舞う。そこへGOKURAKU店長からの連絡が入り、あいを人間にする装置が完成した事を知る。しかし、またそこにローレックが現れる。(CHAPTER112「再生終了前夜」)

GOKURAKU店長はローレックに捕まり、あいを人間にする装置の配線を外し、自分が依頼した機械を回収する。そしてGOKURAKU店長を拷問をかける。あいが人間になれるチャンスを失ったと知り、悔しさのあまり怒り狂う洋太だったが、あいを人間にするもう一つの方法を思い出す。そのために、あいと肉体でつながろうとする洋太に、あいはキスをしてほしいとせがむ。そして唇が合わさる一瞬前に、あいは洋太の口に自分に関する記憶を消す薬を入れる。その瞬間、洋太は頭が割れるほどの頭痛に襲われてしまう。(CHAPTER113「洋太記憶消滅」)

苦しみながら倒れる洋太を、あいは黙って見ているしかなかった。あいは洋太の家にあった自分の荷物をまとめ、出て行く支度をする。洋太が自分の事を忘れたのを確認し、あいは自ら自分のビデオテープを止めようとする。だがそこにローレックが現れ、実験を続けるために洋太の記憶を戻そうとする。しかし、あいは洋太ともえみとの未来を守るために、命を削って磁力を放出し、ローレックを足止めする。(CHAPTER114「あい消滅寸前」)

洋太は自分の力であいの事を思い出し、ローレックと対峙する。愛の存在を否定するローレックは、洋太の思いを聞いて感情的になり、我を忘れて洋太を殴る。しかし次の瞬間、自分の実験の続行を行使する。それは、あいのカウンターが消える寸前に、GOKURAKU店長の作った装置を作動させ、リセットした状態のあいを初めから再生しなおす事だった。あいは本来のビデオガールになり、男性の欲望を叶えるだけの、魂のない人形に戻ってしまう。洋太はそんなあいの姿を見て涙を流しながら、あいへの愛を伝える。その瞬間、あいは苦しみに悶え、再び洋太への愛と記憶を取り戻す。そんなあいを不良品として回収しようとしたローレックに対し、これ以上あいを弄ぶ事を許さないと、洋太はあいを再生しているビデオデッキごと床にたたきつけて壊してしまう。その瞬間、GOKURAKU店長の作った装置は、ローレックを消すというもう一つのシステムが作動する。ローレックは装置に吸い込まれ、そしてあいの肉体もまた光の粒になって消えていく。(CHAPTER115「別れのキス~あいが消えた日~」)

新しい季節がやって来た。もえみは両親と共に海外に行くのをやめ、日本でアルバイトをしながら一人暮らしを始めていた。仁崎伸子は、美術部の立て直しに尽力していた。貴志は岡山で、清水と共にプロのミュージシャンを目指して頑張っていた。そして洋太は、自分の夢に正面から向き合う事を決意し、一人で絵本を描き続けていた。そして絵本を完成させた洋太に、かつてあいが消えた時の光の粒が降り注ぐ。折しもその時、降りしきる桜の花びらを見ながら、もえみ、伸子、貴志はそれぞれあいへ思いを馳せていた。あいの魂が本当に消えようとしているのだと感じ、感謝の気持ちを抱いた洋太だったが、光の粒は集合し、あいの身体が形成される。あいと洋太は再会を喜び、涙を流して固く抱き合う。(LAST CHAPTER「みんなの想い」)

第14巻

高校2年生の田口広夢は、子供の頃に受けた心の傷が原因で、女の子に対して壁を作っていた。親友で小学生の時からの付き合いである刈川俊騎は、反対に女性にもてるタイプで、女性をとっかえひっかえしていたが、広夢の事を心から心配していた。広夢は将来漫画家になりたいと願い、絵の勉強のために絵画教室に通っていた。ある日、その教室に入って来た女の子の白川あゆみに一目惚れしてしまう。しかしあゆみに対して話し掛ける事すらできず、それどころかわざと避けるような態度を取ってしまう。そんな自分に不甲斐なさを感じながらも、本気で女の子を好きになって傷つくのを恐れ、広夢は自分の恋心を抑え込もうとする。(CHAPTER1「青天のへきれき」)

あゆみへの思いを断ち切ろうとする広夢だったが、親友の俊騎と、やはり小学生の時からの付き合いである小沢梢子に、あゆみの姿を描いたスケッチブックを見られてしまう。無理矢理、絵画教室について来た俊騎と梢子は、あゆみにバッタリ出くわしてしまう。そこで俊騎と梢子は、広夢に女性不信のトラウマを残した、小学生の時の初恋の相手にあゆみがそっくりだという事を知る。俊騎はトラウマを乗り越えるためにも、広夢とあゆみの仲を応援しようとするが、梢子はある理由のため反対する。それはあゆみに関する悪い噂で、俊騎は広夢のためにそれを秘密にしようとするが、広夢は校内でその噂を聞いてしまう。(CHAPTER2「及ばぬコイの滝登り」)

あゆみが誰とでもベッドを共にする女の子なのだという噂を聞き、広夢はショックを受ける。そしてあゆみの潔白を晴らすために、自分が彼女の事を詳しく知って、噂が噓だと証明しようと考える。こうなると、人の意見に耳を貸さずに暴走してしまうタイプの広夢は、あゆみの学校に乗り込み、部活動の途中だったあゆみの前に立ちはだかり、唐突にデートを申し込む。しかしその次の瞬間、広夢はかつてのトラウマを思い出してしまう。小学6年生の時、同じクラスの女の子に恋をしていた広夢は、大勢のクラスメイトの前で好きな女の子に告白をして、手ひどくふられるという目に遭っていたのだ。まったく同じ事をしてしまった自分に気づき、激しく後悔する広夢だったが、予想外にあゆみはデートをOKする。次の日曜日、あゆみとデートする広夢は、誰もいない絵画教室で彼女に対して噂の真偽を確かめようとする。しかしあゆみはそれを聞き、噂どおりに広夢に身体を提供しようとする。(CHAPTER3「人の噂も七十五日」)

広夢の前でパンツを脱ぎ、身体を提供しようとするあゆみに対して、広夢はショックと悔しさのあまり絶叫し、飛び出してしまう。雨の中、泣きながら帰って来た広夢を俊騎が出迎える。そんな二人の前に、突然光と共にビデオショップが現れる。ビデオショップは2軒現れ、1軒はGOKURAKU、もう1軒はNEO GOKURAKUの看板が掲げられていた。NEO GOKURAKUに入った二人は、そこにいたGOKURAKU店長に、心がピュアな人にだけ見えるビデオショップなのだと説明を受ける。(CHAPTER4「心ここにあらず」)

GOKURAKU店長の制止を振り切って、俊騎は試作品のビデオテープを強引に持って行ってしまう。一人暮らしをしている広夢の家で、さっそくビデオテープを再生してみると、そこに映し出された桃乃恋という女の子は、俊騎や広夢に向かって声を掛けて来る。そして、テレビ画面の中から飛び出し、現実の世界へ現れるのだった。激しく動揺し、現実が受け入れられない俊騎に対して、広夢はありのままの現実を受け入れる。恋は自分をビデオガールと名乗り、自分の役目は、傷ついた男の子達を慰めたり励ましたりする事だと伝える。エッチな事を強要しようとする俊騎の頼みを拒絶する恋は、広夢の傷ついた心を癒し、もう一度恋ができるように励ますのだった。(CHAPTER5「寝耳に水」)

広夢の家に居候する事になった恋だったが、俊騎もまた広夢の家にしばらく泊まる事を懇願し、三人の同居生活がスタートする。未だ女性に幻想を抱く広夢は、恋と同居して女性の生々しい姿を見る事を嫌がり、恋はそれをおかしな考え方だと一刀両断する。しかし素直な性格の恋は、自分が言い過ぎてしまった事を反省し、広夢もまたそんな恋の様子を見て、恋が健気ないい子なのだと気づく。しかし恋は広夢が女性に抱いている幻想から解放された方がいいと判断し、わざとガサツな態度を取ったり、広夢の前でおならをしたりする。あまりにも失礼な態度に怒った広夢は、恋を返却すると言い出す。(CHAPTER6「危急存亡の秋」)

広夢の家に、絵画教室の講師である弄内洋太から電話が掛かって来る。洋太は広夢が教室を休んでいる事を心配して電話を掛けて来たのだが、恋と俊騎が会話しているのを聞きとがめ、広夢に渡したいものがあると言って家にやって来る。洋太は恋を見て驚き、ビデオの中から出て来たという俊騎の話を真剣に聞き、そのビデオ屋に連れて行ってほしいと頼む。会員証を持って念じる広夢の前に、NEO GOKURAKUが現れる。しかし洋太にはその姿が見えなかった。広夢、俊騎、恋は店に入っていき、残された洋太のとなりにはGOKURAKU店長がいた。久しぶりの再会を喜んだ二人は、お互いが無事であった事を喜ぶ。GOKURAKU店長は洋太からあいが人間として元気に暮らしている事を聞き、涙を流す。そして広夢は、恋を返却するのではなく、長期滞在するために着替えがほしいとGOKURAKU店長に訴える。(CHAPTER7「百聞は一見にしかず」)

NEO GOKURAKUから出て来た恋に励ましの言葉を掛け、広夢にあゆみの落とし物を届けた洋太は、今はもう見る事ができないが、かつて広夢と同じくらいの年の頃には、あのビデオショップが見られた事を打ち明ける。家に戻った広夢と俊騎は、恋にこれまでのいきさつを伝える。あゆみの立場に立って考えた恋の意見は、女性心理に疎い広夢と俊騎にとっては貴重なものだった。恋の意見を聞き、広夢は洋太から預かった忘れ物を届けるという理由で、もう一度だけあゆみに連絡を取る事にする。まず最初に恋があゆみに、噂の真偽について直接尋ねたが、その雰囲気に耐えきれずに広夢が話に割り込んでしまう。しかしそんな広夢に対して誤解を強めてしまったあゆみは、噂は本当だと言い残して逃げてしまい、事態はさらに悪化してしまう。(CHAPTER8「火のない所に煙は立たず」)

あゆみが去ったあとにやって来たあゆみの友達の里子は、噂の真偽を確かめに来たという恋を平手打ちし、噂はでたらめだと言い放つ。しかしデタラメでよかったと微笑んだ恋に、里子は驚かされる。あゆみの行動の根拠がまったくわからない広夢と俊騎に対して、恋は、あゆみはひどい噂に苦しんでおり、広夢まで噂を信じているのだと勘違いしてヤケになったのではないか予想する。つまり、恋はあゆみが広夢にいい感情を持っていると思っていたのだ。恋はもう一度あゆみの友達に接触し、噂の真偽について詳しく尋ねる。彼女によると、実は噂を流したのはあゆみの元カレ、克也だった。戻って来た恋からその話を聞いた広夢は、過去に既に男と付き合った事のあるあゆみと、女性潔癖症の自分ではつりあわないと考え、怖気づいてしまう。しかしそんな広夢に腹を立てた恋は、俊騎に対して今すぐ自分を抱いてくれと詰め寄る。(CHAPTER9「さわらぬ神に祟りなし」)

第15巻

田口広夢の抱く女性潔癖症をなくさせようと考えた桃乃恋は、これから刈川俊騎とセックスする事を宣言し、しばらく広夢を外に追い出す。パフォーマンスだと思った広夢は、絵画教室の弄内洋太のところへ足を運ぶ。そこで洋太は、何年も女性に対して心が動かなかった広夢が、やっと白川あゆみに対して惹かれたという気持ちをもっと大切にし、簡単にあきらめないよう勧めるのだった。一方、パフォーマンスではなく、広夢を救うために本気で肉体関係を持とうとする恋に対し、俊騎はその気持ちだけで充分だと優しく声を掛ける。次の日、恋はもう一度あゆみと会い、既に肉体経験がある事は決して恥ずかしい事ではなく、広夢に対して後ろめたい思いをする必要はないと伝える。(CHAPTER10「知らぬが仏」)

元カレである克也に対してまだ未練があるのかもしれない、というあゆみを応援するために、恋は里子に頼んで、二人きりで話すチャンスを作る。噂を流さないでほしいと伝えるあゆみに、克也はあゆみが浮気をした事がショックで、噂を流してしまったのだと言い訳する。あゆみは浮気などしておらず、誤解だったと知った二人に、恋はもう一度やり直す事を提案する。あゆみともう一度話をしようとやって来た広夢の目の前で、あゆみは克也ともう一度やり直す事を決める。ショックを受けた広夢は、そのきっかけを作った恋を責めるが、恋は広夢に、本当にあゆみが好きなら奪い取れと叱咤激励する。落ち込む広夢は、克也が友達に対して、あゆみの事などもう好きではない事、性欲処理のために付き合う事を話しているのを聞いてしまう。憤りを感じた広夢は克也に話がしたいと詰め寄り、翌日誰もいない工場跡に克也を呼び出す。(CHAPTER11「思い立ったが吉日」)

翌日、あゆみの部屋を訪ねた克也はあゆみの身体を求めたが、ひどい噂を流した克也に対して複雑な心境を抱えていたあゆみは拒絶する。そんなあゆみの様子を見て、克也は噂を流したのは一人に対してだけで、本当に広めたのは広夢だと噓をつく。克也はその噓の正当性を高めるために周到に準備をしていた。それは、広夢からだという噓の手紙をあゆみに渡し、あらかじめ広夢を呼び出してある場所へあゆみを向かわせる。そしてそこに、広夢の友達を装った男達を向かわせ、広夢の差し金だと偽ってあゆみを襲わせる、という作戦だった。広夢は罠にはめられた事に気づき、その場から逃げ出そうとするが、次の瞬間引き返し、あゆみを助けようとして男達からボコボコに殴られてしまう。到底叶わない相手に全力で立ち向かう広夢を見て、あゆみは完全に誤解を解く。恋から知らせを受けてやって来た俊騎が、男達をすべて倒し、隠れていた克也を引きずり出す。あゆみは真実と向き合い、克也の事を見限る。そして広夢に対して自分から交際を申し込む事を決意する。(CHAPTER12「雨ふって地かたまる」)

広夢とあゆみが付き合い始めてから、半年が経過していた。広夢はあゆみを楽しませるために、新しいデートスポットを開拓する事に余念がなく、あゆみが不安そうな顔をしている事にまったく気づいていなかった。あゆみの話をまったく聞こうとせず、いつも自分の事ばかりで精一杯で、それでいて自分は上手に恋愛をしているのだ、と勘違いをしていた。あゆみの誕生日に、あゆみからのリクエストを聞き逃し、怒られるのが怖くて聞き返せなかった広夢は、待ち合わせ場所がどこなのか必死に考える。そしてあゆみの誕生日当日、小沢梢子からどうしてもと誘われ、広夢はあゆみの家の近所の喫茶店で梢子の話を聞く。梢子は実は、広夢への恋心を伝えようとしていたのだった。そこへあゆみが現れ、広夢は驚いてしまう。広夢がちゃんと話を聞いていたのだと思ったあゆみだったが、そうではない事を知り、あゆみは泣きながら、今まで広夢がデートしていたのは誰だったのか、と広夢を責める。広夢は自分の何が悪かったのか、まだわからなかったが、恋の勧めに従ってあゆみの絵を描く事にする。これまでのデートで、どんな場所に行ってなにをしたかという記憶はあるものの、その時のあゆみの表情がまったく思い出せない広夢は、やっとあゆみの気持ちを理解する。そして半年前、付き合い始めた頃のあゆみの表情を思い出す。その頃はあゆみの事しか見ていなかった自分を思い出し、広夢はあゆみの絵を描く。でき上がった絵を恋から渡されたあゆみは、広夢の家にやって来て、最高のプレゼントのお礼を伝える。(CHAPTER13「馬の耳に念仏」)

ビデオガールとしての使命を終えた恋のもとに、翌日のクリスマスイブに再生終了を迎えるという手紙が届く。広夢はあゆみと、俊騎は梢子と遊びに行ってしまい、独りぼっちで寂しい時間を過ごす恋は、人のために働いても、時期が過ぎたら処分されてしまう、街に飾られた大きなクリスマスツリーに親近感を感じる。翌日のクリスマスイブ、最後の夜に恋は再びクリスマスツリーを見に行く。するとツリーの仕掛けが作動し、恋に対するサプライズのメッセージが浮かび上がる。実は広夢と俊騎が夜のうちに内緒で作ったものだった。恋は広夢と俊騎のそれぞれの恋の成就を喜び、光の粒になって冬の夜空に消えていく。(CHAPTER14「笑う門には福来たる」)

メディアミックス

TVドラマ

2018年1月より、テレビ東京系列にて『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』のタイトルでTVドラマ版が放送された。全12話。本作『電影少女』の続編的な位置づけで、ストーリーはTVドラマ版オリジナルの内容となっている。天野アイ役を西野七瀬、弄内翔役を野村周平が演じた。

登場人物・キャラクター

主人公

私立寛大高等学校に通う16歳。クラスメイトの早川もえみに好意を寄せているが、もえみからされた恋愛相談で、彼女が好きな相手が親友の新舞貴志だと知る。自分の失恋を押し隠し、もえみの恋愛成就に協力することと... 関連ページ:弄内 洋太

新舞 貴志

私立寛大高等学校に通う16歳。弄内洋太の幼馴染。バンドをやっているせいか洋太と違い女子に人気が高い。洋太の気持ちを汲んで、早川もえみと付き合うこととなる。

早川 もえみ

私立寛大高等学校に通う16歳。弄内洋太が好意を寄せるクラスメイト。しかし本人は新舞貴志に恋をしている。洋太の気持ちを知らず、自身の恋愛相談をする。後に貴志と付き合うが、貴志が自分に好意を持っていないと知り、それでも好きである自分に気付く。

GOKURAKU店長

ビデオレンタルショップGOKURAKUの店長。弄内洋太に天野あいを貸し出した。以降も洋太に同情的で、ローレックに逆らって、洋太の天野あい救出を手助けする。これが原因でGOKURAKUから追放されてしまう。

ビデオテープ『なぐさめてあげる?』から出現したビデオガール。優しくて清楚なはずだったが、ビデオデッキが壊れていた影響で、ボーイッシュな性格で出現した。弄内洋太をイイ男にして、早川もえみと交際できるよう... 関連ページ:天野 あい

ローレック

ビデオガールを生み出した張本人。ビデオガールは男たちにとっての天使でなくてはいけないとして、不良品である天野あいを回収に現れた。

空山 高夫

私立寛大高等学校美術部部員。この世で最高の美は女体と豪語している。入部しに来た弄内洋太が天野あいの関係に嫉妬して、あいを彼女にしようとアプローチする。PTA会長空山作三の息子で、親の威を借りて洋太を退学に追い込もうとした。

仁崎 伸子

私立寛大高等学校1年生。留年した弄内洋太のクラスメイト。中学の時に美術クラブの後輩で、洋太に木炭デッサンの描き方を教わっている。洋太に憧れて私立寛大高等学校に入学した。

松井 直人

私立寛大高等学校1年生。 弄内洋太のクラスメイト。洋太と仁崎伸子の関係が気まずくなったタイミングで伸子に告白する。ローレックの特例でGOKURAKUビデオをレンタルされる。神尾まいを呼び出したものの、資格のない者だったため、ローレックによって記憶を消される。

神尾 まい

ローレックが松井直人にレンタルしたビデオガール。ローレックの指示で不良品である天野あいを消去するため、襲撃を繰り返す。

山口 夏美

弄内洋太の幼馴染。男勝りな性格。喧嘩は強いが、幼いころから心臓が弱く長い時間激しい運動はできない。両親とは死別し、親類とは絶縁しているため身寄りがない。心臓病が悪化し、天野あい達に看取られて亡くなった。

志水 浩司

山口夏美の彼氏。夏美を助けるために、ディスコオーナーの娘に近づいた。天野あいと新舞貴志の説得で、夏美の死に際に立ち会うことができた。

場所

GOKURAKU

『電影少女』に登場する店。自分の方が傷ついていても、他人を想って涙するようなピュアな心の人間だけが見つけることのできるレンタルビデオショップ。

その他キーワード

ビデオガール

『電影少女』に登場する用語。GOKURAKUでレンタルされたビデオテープを再生すると、ブラウン管から出現する少女達を指す。再生時間は3か月と決まっている。借主にとって都合のよい存在で、借主の願いをなんでもかなえようとする。

書誌情報

電影少女 全15巻 集英社〈〉 完結

第1巻

(1997年4月発行、 978-4087827361)

第2巻

(1997年5月発行、 978-4087827378)

第3巻

(1997年6月発行、 978-4087827385)

第4巻

(1997年7月発行、 978-4087827392)

第5巻

(1997年9月発行、 978-4087827408)

第6巻

(1997年10月発行、 978-4087827415)

第7巻

(1997年11月発行、 978-4087827422)

第8巻

(1997年12月発行、 978-4087827439)

第9巻

(1998年1月発行、 978-4087827446)

第10巻

(1992年2月発行、 978-4088718101)

第11巻

(1992年5月発行、 978-4088717012)

第12巻

(1992年7月発行、 978-4088717029)

第13巻

(1992年9月発行、 978-4088717036)

第14巻

(1992年11月発行、 978-4088717043)

第15巻

(1993年3月発行、 978-4088717050)

電影少女 全9巻 〈集英社文庫 コミック版〉 完結

第1巻

(2003年1月発行、 978-4086180122)

第2巻

(2003年1月発行、 978-4086180139)

第3巻

(2003年3月発行、 978-4086180146)

第4巻

(2003年3月発行、 978-4086180153)

第5巻

(2003年4月発行、 978-4086180160)

第6巻

(2003年4月発行、 978-4086180177)

第7巻

(2003年5月発行、 978-4086180184)

第8巻

(2003年5月発行、 978-4086180191)

第9巻

(2003年5月発行、 978-4086180207)

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