あらすじ
第1巻
雪に覆われた北国の寒村である子沢村では、ダム建設によってとある牧場が消失。その牧場主の夫婦は失意のうちに他界し、あとには一人息子の少年・立太が残された。村内最大規模である吉岡牧場の主人は、立太が隠し持つ莫大な賠償金を目当てに、彼を養子にして大金を独り占めしようと企んでいた。さらにダム建設も、もともとはその主人がライバルの牧場を潰すために画策したものであった。それを知った立太は飼犬のチョビを連れて一人で村を出ようとするが、大金に目がくらんだ村人達は立太を追跡。逃げる立太は崖から足を滑らせ転落し、滝つぼに呑み込まれてしまう。それから数か月が経ち、立太は滝の下流にある村にチョビと共に姿を現す。しかし、立太は転落により重傷を負い、過去の記憶を喪失していた。あてのない放浪の旅に出た立太は、その後に知り合ったこじきのおっさんと組んで恐喝まがいの行為を繰り返していく。それから数年が経ち成長した立太は、成犬となったチョビと共に東京のど真ん中に姿を現す。
第2巻
東京に現れた立太は、暴行や窃盗を繰り返すなど傍若無人の限りを尽くし、ついには警察から指名手配されてしまう。そんな中、警察に追跡されていた立太はトラックで非常線を突破するが、その際に警官を殉職させるという重罪を犯す。なおも逃走を続ける中、立太は警官に銃で撃たれて負傷し、トラックごと崖下に転落してしまう。重症を負った立太は、偶然通りかかった幼なじみの梅子に救われ、病院に運び込まれ手当てを受けるが、病院ごと警官に包囲され、絶体絶命の危機に陥る。その際に過去の記憶を取り戻した立太は、病院の患者達を人質にして包囲を脱出し、バスで故郷の子沢村へと向かうのだった。そうと悟った牧村刑事ら警察は子沢村に先回りするが、そこで彼らが見たものは、金の亡者となった村人達の醜くあさましい狂態と、廃墟のようになった村の変わり果てた姿だった。そして、故郷の地で最期を迎えようと覚悟した立太は、意外な行動に出る。
登場人物・キャラクター
立太 (りった)
子沢村で生まれ育つ。ダム建設の陰謀に巻き込まれ、実家の牧場は沈められ、両親も亡くしてしまう。ダム建設にともない国から大金を支給されるも、欲にまみれた村人たちに常に狙われる事になる。愛犬チョビと村を出ようとするが、その途中で滝に落ち、記憶喪失になってしまう。
梅子 (うめこ)
主人公の立太に想いを寄せる少女。村の人々が立太のお金でおかしくなってきた事に気づき、立太に村を出る事を勧める。数年後、記憶喪失になり街で暴走していた立太に再会し、警察からかくまう事になる。
チョビ
主人公・立太の愛犬。立太とともに子沢村を出るが、途中で記憶喪失になった立太に野良犬だと思われ、ひどい仕打ちを受けてしまう。自分を忘れてしまった立太に、新たに名前を付けてもらい、死ぬ直前まで一緒に行動した。
こじきのおっさん
主人公・立太の恩人。街に流れ着き、記憶を失くして放浪していた立太を見つけ、こじきとしての商売方法や生き方を徹底的に教えた。
武 (たけ)
主人公・立太が出会ったトラックの運転手。立太に車を盗まれたあげく、事故を起こされ他の車ともども破壊されてしまう。数年後東京で再会するが、その時も立太の犯罪に巻き込まれてしまう。
政 (まさ)
武の相棒のトラック運転手。立太にトラックを壊された武とともに、車の弁償代を稼ぐはめになった。借金を返した直後、東京で立太と再会し、武とともに犯罪に巻き込まれてしまう。
牧村刑事 (まきむらけいじ)
トラックで暴走する主人公・立太を止めようとするが、事故に巻き込まれ重傷を負う。既に死傷者を出した立太を捕えようと、病院を抜け出し捜査を続ける。立太をかくまった梅子の後を追って、子沢村にたどり着き、村人たちの異様な様子にショックを受ける。
中村 (なかむら)
主人公・立太に人質にされた医師。逃走中に大怪我を負った立太の治療を梅子に頼まれる。警察に通報しようとするも二人に威嚇され、治療を終えたあと人質として子沢村まで同行することになってしまう。
裕介 (ゆうすけ)
主人公・立太と敵対する少年。子沢村の吉岡牧場の息子。立太が大金を手にしたのが許せず、いつもケンカを吹っ掛ける。
子沢村 (こさわむら)
主人公の立太が生まれ育った北国の村。立太の実家の牧場地にダムが建設され、立太が大金を手にした途端、村人たちが欲の塊になってしまう。立太が村を出た後も、大人たちは残された大金を求めて仕事もせず、醜い争いばかりするようになり、殺人まで起こるようになってしまう。