鬼丸大将

鬼丸大将

日本に漂着したローマ人を父親に持つ少年の鬼丸が、親を殺した仇である権力者の藤原良範を討つべく、都の政府までも敵に回した戦いに飛び込んでいく時代活劇。「少年キング」1969年1月1日号から1969年6月29日号にかけて掲載された作品。

正式名称
鬼丸大将
ふりがな
おにまるたいしょう
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
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概要・あらすじ

時は平安時代。京都の人々の間で、比良の山に住みついた3匹の鬼の噂が流れていた。実は鬼の正体は、日本に漂着したローマ人とその妻子だった。彼らは都の住民たちとあまりに違う姿ゆえ、山に隠れ住んでいた。そこを、栄達出世のために功名を欲する藤原良範渡辺綱により、捕らえられてしまう。子供の鬼丸だけは逃げ出したものの、夫婦は磔の刑に処されることとなった。

それを止めようと、刑場に現れた鬼丸は再び捕らえられる。しかし、鬼丸が人々の言うような鬼ではないと見抜いた相馬小二郎は、密かに手を差し伸べて鬼丸の脱出を助ける。小二郎は、異形ゆえに忌み嫌われる鬼丸に、罪人の血を引く一族と蔑まれてきた自らを重ね、救わなければならない使命を感じていた。

やがて2人は友情を結び、鬼丸は親の仇を取るため、小二郎は奪われた領地を取り戻して新しい国を造るため、互いに手を取り合って、都の政府との戦いに挑む。

登場人物・キャラクター

鬼丸 (おにまる)

ローマ人の父親と、日本人の母親の間に生まれた男の子。都の人々とは姿かたちが違うため、両親とともに比良の山奥に隠れ住んでいた。やんちゃな性格で、しばしば人里に下りて暴れたりするが、病気の母親のために、山を3つ越えて薬草を取ってくるなど、親思いの一面もある。成長してからは、普通の人間の倍近い身の丈と怪力を持ち、屈強な肉体に不屈の精神を宿して、親の仇である藤原良範の命を狙う。 その反面、どこか純粋さを残しており、良範の娘でありながら自分を助けてくれた藤原春菜に、淡い想いを抱いている。陰ながら自分を助けてくれていた相馬小二郎の存在を知り、友となってからは、相馬領再興を願う小二郎とともに、都の政府を敵に回して最後まで戦う、と誓い合う。

相馬 小二郎 (そうま こじろう)

常陸相馬領を治めていた相馬一族の跡取り。父親の相馬良将(そうまよしまさ)が生きていた頃に、お上によって領地を取り上げられていた。左大臣の藤原仲平にとりなしを願い出て、領地を戻してもらおうと京都にやって来た。しかし地領の担当官が藤原良範だったため、領地は返されず、流刑者の一族と侮辱されてしまう。同じ赤い血が流れる同じ人間のはずなのに、何故ここまで貶められるのかと怒り嘆き、いつの日か必ず領地を取り戻し、自分の国を造ることを誓う。 姿かたちが違うだけで鬼と呼ばれ、命を狙われる鬼丸に自分と似たものを感じ、何かと手助けをするうちに友情を結ぶ。

パーちゃん

鬼丸の父親。もともとはローマの軍人だった。戦争で負けてサラセン人の捕虜となり、奴隷として次から次へと売られながら、シルクロードを渡って東へ連れてこられた。船に乗せられた時に隙を見て海へ飛び込み、日本へたどり着いた。比良の山奥にローマ風の岩屋を建て、妻のぬいと息子の鬼丸と一緒に暮らしていた。鬼の討伐と銘打つ藤原良範一行に襲われて捕らえられてしまい、抵抗もむなしく処刑されてしまう。

マーちゃん

鬼丸の母親。もともとは里に住む「ぬい」という名の娘だった。パーちゃんにさらわれ、夫婦となった。今では夫も子供も深く愛している。穏やかで優しい性格だが芯は強く、藤原良範に生け捕りにされた夫と鬼丸を助けるため、牛に毒草を食わせて暴れさせ、刑場に乱入させた。島流しにされる直前でだいだら坊に助けられ、以降は鬼丸を陰ながら見守り続けている。

藤原 良範 (ふじわら よしのり)

宮廷で力を持つ貴族。さらなる出世を目指して、都を騒がす鬼を退治して英雄になろうと目論む。鬼丸一家の住む比良の山奥に、都一の弓の達人と名高い渡辺綱を伴って現れ、鬼丸と父親を捕縛した。鬼丸を騙しておびき寄せて殺そうと企んだり、家の再興を嘆願するために訪れた相馬小二郎を、流刑者の一族と侮辱して追い返したりと、狡猾で残忍な性格。 あちこちの武将と謀って、折あらば政府を覆そうという陰謀を練っており、その秘密を知った鬼丸と小二郎を始末しようと兵を送る。

渡辺 綱 (わたなべの つな)

都一の弓の達人で、剣豪でもある。藤原良範とともに、比良の山奥へ鬼丸一家を討伐しにやって来た武将。良範に従ってはいるが、義に篤い実直な人物で、良範の卑劣な行いを諫めることもある。鬼丸一家を捕らえ、父親の処刑を見届けた後は、彼らは鬼ではなく人間だと悟り、鬼丸と小二郎たちが率いる軍と対峙した時には、降伏を勧めた。

藤原 春菜 (ふじわら はるな)

藤原良範の娘。良範に捕らえられた鬼丸が逃亡し、羅生門に立てこもった時に偶然通りかかり、鬼丸にさらわれて人質となった。鬼丸と接するうちに心を通わせるようになり、羅生門からの脱出に力を貸す。父親を慕っているものの、鬼丸にも心惹かれ、思い悩んだ末に、父親との別離を決意。鬼丸と良範の軍勢の最終決戦の折には、鬼丸の砦に身を寄せて、ともに戦おうとした。

弥平太 (やへいた)

相馬小二郎の部下。相馬一族に先代から仕えている老人。先代からの悲願である、お上に取り上げられた領地を取り戻すために、小二郎とともに都を訪れている。本来の目的から外れて、しばしば暴走しがちな小二郎を諫める役割を担う。

藤原 仲平 (ふじわら なかひら)

都の左大臣。相馬小二郎と弥平太が、領地を戻してもらえるよう、相馬領を担当する地領の担当官にとりなしを頼んだ相手。担当官が小二郎と因縁のある藤原良範だったため、結果的に交渉は決裂することとなった。取り次ぎの見返りとして金品を要求しておきながら、失意にくれる小二郎と弥平太を放置して逃げ出す矮小な人物。

藤原 知範 (ふじわら とものり)

藤原良範の遠縁の親戚。良範の娘の藤原春菜の許嫁でもあり、立身出世に野心を持っている。そのため、自ら志願して鬼丸の父親と母親の処刑執行役に、名乗りを上げた。処刑場に秘かに潜り込んでいた相馬小二郎に邪魔をされ、さらに親の敵を討つべく乗り込んできた鬼丸と直接対決をする。

マコモ

流人一族の娘。みちのくの里に伝わる妖術を使う。相馬小二郎に惚れており、なにかと手助けをする。相馬領へ向かう鬼丸と小二郎とともに旅をしていた。流人の村に帰ると、侍たちに村は焼かれ、一族は皆殺しにされていた。彼らの仇を取るため、鬼丸と小二郎に武器を提供し、都の軍勢を迎え撃つ砦の建設を手伝う。

アブアボ

鬼と呼ばれる漂流民。葛城山の山中に隠れ住んでいた。かつて乗っていた船が難破し、日本に流れ着いていた。体が大きく、ブーメランを得意としている。鬼丸が相馬小二郎とともに相馬領へ向かう旅の途中で出会う。日本で生まれ育った鬼丸とは言葉が通じず、絵やジェスチャーでコミュニケーションを取っていた。鬼丸には心を開いたが、小二郎に対しては強い敵意を示して襲いかかったため、鬼丸と戦わざるを得なくなった。

アブー

だいだら坊が率いる軍団の1人。だいだら坊を訪ねて来た鬼丸を捕らえ、処刑しようとした。その後、だいだら坊の命令で鬼丸の仲間になり、藤原良範が送った軍勢との戦いに挑む。しかし、鬼丸と相馬小二郎の率いる軍が劣勢と見るや、裏切って良範側に寝返ろうとした。

だいだら坊 (だいだらぼう)

ならず者たちの軍団を率いる男性。富士山の近辺に根城を構えている。「ばけものの親玉」と評される。見た目は粗暴だが、情に厚い人物。秘かにマーちゃんをかくまっており、訪ねてきた鬼丸を、仲間になるよう誘う。だいだら坊もまた、遠い国から流されて日本にたどり着いた過去を持ち、故郷に置いてきた妻子とは10年も会っていない。 別れた妻と生き写しの鬼丸の母親に魅かれ、妻になってほしいと頼む。都の軍勢と戦う鬼丸に、母親のことを託されるが、鬼丸に加勢してともに砦に立てこもることを選ぶ。

丹沢砦の大将 (たんざわとりでのたいしょう)

都の勢力が届く一番東の果てにある丹沢の砦を治める男性。冷酷な性格で、藤原良範が送った書類を届けた使いを、知らぬ間に書類を盗み読まれていた咎で打ち首にした。政府を覆すという良範の陰謀に加担する一味でもあり、同志の署名を集めた連判状を保管している。良範の命により鬼丸と相馬小二郎を亡き者にしようと、さまざまな罠をめぐらす。

書誌情報

鬼丸大将 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

(2011-07-12発行、 978-4063738414)

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