あらすじ
孤独な魔女・アリアとリオの出会い
人間と友好的な関係を築きたいと願う魔女のアリアは、魔女の悪いイメージから人間に恐れられ、森の奥で一人ひっそりと暮らしていた。そんなある日、アリアは森の中で傷を負って倒れていた小型のドラゴンを保護する。最初はアリアを警戒していたドラゴンだったが、次第に心を開いていく。そんな中、ドラゴンはアリアからずっといっしょにいたいとの言葉を引き出し、主従関係を結ぶことに成功する。ドラゴンは人間の青年の姿になり、「リオ」という名の精霊として彼女に尽くすことを誓う。
アリア、リオ、ウィリアムの共同生活
リオの介入もあり、アリアは少しずつ人間との距離を縮めていた。そんなある日、騎士団長のウィリアム=バルト=アッヘンヴァルがアリアを訪ねて来る。ウィリアムは長年封印されていた凶悪なドラゴンが逃げ出したことを告げ、何か情報がないかとアリアのもとにやって来たのだ。アリアは、そのドラゴンがリオであることに気づき、自分と主従関係を結んでいると知られたら、リオ共々迫害されるのではないかと焦る。アリアはなんとかしてリオの正体を隠そうとするもののうまくいかず、ウィリアムたちにばれてしまう。するとアリアのことを大切に思うウィリアムは、自らが二人と共に住み、リオに危険性がないか確かめると言い出す。こうしてアリア、リオ、ウィリアムの共同生活がスタートするが、リオとウィリアムはたびたび険悪な雰囲気になってしまう。そんな中、村祭りが催されることになり、アリアが招待されるが、その祭りの最中にアリアとリオは奇妙な気配を感じる。
街に繰り出すアリア
アリアは生前の母親を悼むため、街で行われる行事に参加することになる。そんな中、アリアはひょんなことから街に住む貴族の娘、ロゼッタと出会う。するとロゼッタはアリアとリオを見て、お嬢様と従者が禁断の恋をしているのだとカンちがいをする。これまで恋心を知らなかったリオは、ロゼッタから聞いた「恋愛」や「恋人」というキーワードに興味を抱く。そしてリオは、アリアと恋人同士になりたいと言い出し、彼女は大いに戸惑う。そんな中、アリアは街で偶然にも父親と再会する。
魔女狩りとロゼッタの誘拐
街を訪れていたアリアとリオは、ロゼッタの住む屋敷で歓迎を受ける。そのお礼として、アリアとリオは最近街で目撃されているという不審者を探すのを手伝うことになる。その最中、アリアは偶然出会ったウィリアム=バルト=アッヘンヴァルから、かつて国が魔女狩りを行っており、なんの罪のない魔女を一方的に処刑していた事実を知らされる。その出来事が現在の魔女への差別につながり、魔女の復権を目指しているのがアリアの父親なのだと告げられ、彼女は困惑する。そんな中、別行動をしていたロゼッタが、何者かによって連れ去られたという情報がアリアのもとに入る。
登場人物・キャラクター
アリア
人里離れた森の奥に住んでいる少女。近くの村に住む人間からは「魔女」と呼ばれ恐れられている。しかし、亡くなった母親が妖術を使えない人間だったため、ふつうの魔女と比べるとわずかばかりの魔力しか持っていない。そのため高度な薬草の知識を積極的に学び、アリア自身の身分を隠して村人に薬を無償で提供している。ある時、森の中で傷を負って倒れていたドラゴンのリオを助けたことで知り合いになり、彼の策略によって強引に主従関係を結ばされてしまう。リオからすると「主」の立場であり、彼から献身的に尽くされているが、重すぎる愛を受け止めきれずにいる。見た目は人間の少女と変わらないが、魔女独特の赤い髪を持つ。基本的にやや控えめで優しい性格ながら、リオが自らに常識外れな言動を見せた時には、一時的に言葉使いが悪くなる。人間と共存しながら穏やかに暮らしたいと願っているが、リオに振り回されて叶(かな)わずにいる。
リオ
ドラゴンの精霊。性別は男性。傷を負って森に逃げ込んだ際に、魔女のアリアに助けられたことで知り合いになる。それがきっかけでアリアのことを気に入り、策略を巡らせて強引に彼女と主従関係を結ぶ。アリアからすると「従」の立場であり、彼女に対して献身的に尽くしているものの、重すぎる愛情が故に受け止めてもらえずにいる。基本的にアリアが幸せであればそれでいいと考えており、ほかの人間や事象は眼中にない。アリアと初めて会った際、両手で軽々と抱き上げるほどの大きさのドラゴンに化けていたが、主従関係を結んだあとは青年の姿になって暮らしている。ドラゴンとしては伝説レベルの強さを誇り、アリアよりも圧倒的に強い魔力を持つ。
ウィリアム=バルト=アッヘンヴァル
アリアが住む地域を守る騎士団に所属する青年。団長を務めている。高貴な雰囲気を漂わせた美男子で、王位継承順位は3位の身分。極度の方向音痴で、幼い頃に森に入り込み、アリアに助けてもらったことで知り合いになる。魔女として人間から恐れられているアリアに対しても、友人として対等に接している。ふだんは堂々とした振る舞いと温和で誠実な人物ながら、本来は打たれ弱くネガティブな思考の持ち主。王族かつ騎士団長であることから弱音を吐けず、日々ストレスを抱えている。感情の揺れ幅が大きく、すぐ死んで詫(わ)びようとする極端な思考を持つ。弱い自分をすべてさらけ出せるアリアのことを気に入っているが、彼女からは面倒くさいと距離を置かれている。リオとはアリアを巡るライバル関係にある。アリアからは「ウィル」と呼ばれている。
ユリル
アリアが住む地域を守る騎士団に所属する青年。ウィリアム=バルト=アッヘンヴァルの部下でもある。ウィリアムを介してアリアと知り合いになる。最初は恐ろしい魔女と噂(うわさ)されていたアリアに対して敵対心を抱いていたものの、次第に打ち解けていく。アリアが人間たちから悪さをするのではないかと疑われた際には、彼女を守ることもある。ウィリアムに対しては情けないところがあることも認めつつ、わが身を犠牲にしても国民を守ろうとする姿勢を尊敬している。
ロゼッタ
アリアが住む地域にある街で暮らす貴族の少女。街を訪れたアリアがひったくりに遭いそうになった際に、助けたことで知り合いになる。アリアが魔女であることは知らない。アリアとリオが主従関係にあると聞き、お嬢様と従者の許されざる恋愛なのだと勝手にカンちがいしている。正義感が強い性格で、思い込みが激しく一人で暴走してしまう悪癖を持つ。また、ウィリアム=バルト=アッヘンヴァルに恋心を抱いており、叶うことならば婚約したいと思っている。親しい者からは「ロゼ」と呼ばれている。
悪しき魔女 (あしきまじょ)
アリアが住む森近くの村祭りにやって来た魔女。儀式を行う際に捧げる生贄(いけにえ)を必要としており、村祭りの騒ぎに乗じて人間をさらおうと画策していた。以前からアリアの存在は知っていたような口ぶりながら、アリアはまったく記憶にない。見た目は成人した女性の容姿で、スタイル抜群。事件を起こしたあとにウィリアム=バルト=アッヘンヴァルら騎士団によって取り押さえられるが、何者かによって記憶を消されてしまう。