世界観
全体的な世界設定
本作の舞台は機械的な文明がそれほど発達していない中世ヨーロッパのような世界観がモデルとなっており、石造りの建物や深く広大な新緑の森、切り立った山々などが頻繁に描写されている。人々は貧富の差のはっきりした階級社会の中で生活しており。横暴な貴族が登場することも珍しくない。また、ある一神教の宗教が民衆から絶大な支持を得ているようで、そこの教会組織である法王庁が、この世界において絶大な権力を保有。物語が展開されているのはミッドランド王国がある広大な大陸が主となっているが、その周囲には外洋も広がっており、「幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章」では登場人物たちが軍艦に乗り、海上を冒険する姿が描かれている。
「現世」と「幽界」
作品世界には人間たちが住む現世(うつしよ)と、幽霊や異形の者たちが存在するいわゆるあの世に相当し、いくつかの層に分かれた幽界(かくりょ)、そして、幽界の深層のさらなる深みにあるという、すべての存在の根源である魂の世界・本質(イデア)の世界が存在。肉体を持つ人間は基本的に幽界に踏み入ることは不可能だが、幽界の比較的浅い層である狭間の領域は現世と重なっており、烙印を刻まれて使徒の生け贄にされた者や、幽界の精霊たちから力を借りて絶大な力を発揮する魔法使いなど、何らかの形で幽界に干渉した者はこの領域の住人となる。また、現世にまみれておらず信じる力が強い子供なども幽界に干渉しやすく、人に危害を加えない幽界の住人エルフなどが目撃される例も稀に発生しているようだ。
幽界のさらなる深層部には邪悪な怪物、獣鬼(トロール)や巨鬼(オーグル)などが無限に生み出される闇の領域や、現世で魔に関わった者たちが死んだ後に行き着く深淵などが存在。なお、ゴッドハンドはこの深淵を棲み家としている。詳しいことは未だに判明していないが、深淵のさらに深い場所にも何かが存在するようだ。
物語が進むと、ゴッドハンドとなったグリフィスが受肉して現世に転生し、クシャーン帝国の王・ガニシュカとの戦いに髑髏の騎士が干渉。このあまりにも非現実的な三つ巴の状況を経て、現世と幽界が融合し、ドラゴンやユニコーンなど、従前は想像上の生き物としか認識されていなかった生物が普通に闊歩する幻造世界(ファンタジア)と呼ばれる新たな世界が誕生した。
「ミッドランド王国」と「チューダー帝国」の「百年戦争」とその後
物語の主な舞台となるのは城塞都市ウィンダムを首都とするミッドランド王国である。ミッドランド王国はその東に位置するチューダー帝国と百年戦争と呼ばれる領土争いを繰り広げていた。また、ミッドランド王国の東に広がる山脈を遙か越えた先にはクシャーン帝国が存在。物語の序盤からそこの出身であるバーキラカと呼ばれる一族が登場し、暗躍している様が描かれるが、クシャーン帝国が台頭してくるのは千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章以降だ。
長く戦争が続くと必要になるのが兵士であり、それを生業とする傭兵たちが重宝される。主人公のガッツも傭兵として戦争に参戦。その傭兵集団のなかでも、伝説的存在になるのがのちにガッツが加わることになる鷹の団である。自分の国を持つことを夢見るグリフィスの下に集まった若者たちにより組織され、グリフィスの天才的な統率力と軍才により、各地で連戦連勝を続けている鷹の団。ミッドランド王国の重要要塞拠点であったドルドレイ城塞が奪われたことで、ミッドランド王国は劣勢を強いられていたが、ここに鷹の団が介入したことで、ドルドレイ城塞の奪還に成功する。これにより一気に形勢が逆転し、両国の間で休戦協定が結ばれ、百年戦争と呼ばれる戦いは終結するに至った。
だがその後、鷹の団は国家の敵となり、ミッドランドの国王は乱心したかのように逃げたグリフィスの捜索に固執。これによって国家の政情が不安定化し、心身ともに疲弊した王はやがて崩御してしまう。その混乱を突いてクシャーン帝国がミッドランド王国の侵略を開始。魔の軍団を率いるクシャーン帝国に為すがまま蹂躙されていたが、そこへ現れたのがグリフィスであった。組織内に使徒を編成した人魔混成の新生鷹の団がクシャーン帝国に戦いを挑み、巨大な使徒として降臨したクシャーン帝国の国王・ガニシュカを打倒。国を追われていたグリフィスは再び英雄となるのだった。
「ベヘリット」と「使徒」
人の顔が刻まれた卵のような物体・ベヘリットは物語のキーアイテムのひとつ。ある条件によりその力を発動させると、人知を超えた力を持つ異形の魔物使徒を統べる者ゴッド・ハンドが呼び出される。そして、使用者が自身の半身とも言える大切なものを生贄として捧げることで、降魔の儀という儀式が始まり、使用者を新たな使徒として転生させる。ベヘリットの中でも真紅の色を持つものは、別名覇王の卵と呼ばれ、蝕と呼ばれる降魔の儀により、新たなゴッドハンドが誕生する。劇中ではグリフィスが蝕を実行し、ガッツやキャスカら鷹の団の団員たちを生け贄として捧げることで5人目のゴッド・ハンド・フェムトへと転生した。また、ゴッド・ハンドに仇なす者として、骸骨のような形状の鎧を纏った髑髏の騎士が存在し、この髑髏の騎士の助力により、ガッツは蝕を生き延び、この因縁に決着をつけるために黒い剣士となりグリフィスの行方を求めることに。
作品構成
物語をひとつの大きなエピソードで区切っており、序章にあたる黒い剣士ではガッツが魔の者と戦う姿を、黄金時代では時間を過去に遡り、なぜそうなるに至ったのかが描かれている。その次の断罪篇 ロスト・チルドレンの章より、大エピソードを「~篇」、その中の小エピソードを「~章」と題してより細かく区切ることになり、2015年10月現在は幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章が連載中。単行本第15巻には、黄金時代の完結を記念して、1988年に三浦建太郎が本作のひな形として執筆した投稿作品『BERSERK THE PROTOTYPE』が収録された。また、第83話の「神との対話 深淵の神②」のみ、物語の根幹的なことが描かれていたためか、単行本では未収録となっている。
2021年、作者三浦が急逝し、これにより完結が危ぶまれたが、三浦よりストーリーの相談を受けていた漫画家の森恒二の監修のもと三浦の弟子が所属する「スタジオ我画」が制作を担当し2022年6月より連載が再開された。
あらすじ
黒い剣士(1~3巻)
黒ずくめの甲冑を纏い、身の丈を超す鉄塊のような大剣を背負った隻腕隻眼の戦士ガッツ。彼の首筋に刻まれた烙印が疼き血を流すとき、異形の化け物たちが現れ、人々を喰らい殺す地獄絵図が繰り広げられる。狂気の笑みを浮かべながらその光景を見るガッツは、嵐を巻き起こすような動きで大剣を振り回し、化け物たちを次々と撃滅していくのだった。
あるとき、盗賊に捕らわれていたところをガッツの気まぐれによって助けられたエルフのパックは、ガッツの心の内に潜む、怒りとも悲しみともつかないどす黒い心を感じとり、ガッツと行動をともにすることを決める。そしてふたりはある町にたどり着くが、そこでは伯爵と呼ばれる領主の指示で、異端審問委員会による悲惨極まりない魔女狩りが繰り広げられていた。そして、ガッツは村の中で伯爵により凄惨な目に遭わされたある医者と出会い、自分の仇を討ってもらうよう頼まれると同時に、ひとつの世界の扉を開く鍵・ベヘリットを見せられる。ガッツと伯爵が壮絶な戦いを繰り広げる中、偶然にも血を浴びたベヘリットが悲鳴を上げ、同時に開く異世界の扉。そして、魔を統べる5人のゴッド・ハンドが降臨する。そのなかのひとり、漆黒の鷹を象った鎧を纏ったような姿をした者に向かい、ガッツは悲痛な声で叫んだ。「グリフィス!」と。
黄金時代(3~14巻)
物語はガッツ誕生まで遡る。とある戦場の跡地、母親の骸の下で血と羊水の中にて産声を上げたガッツは、ある傭兵団の団員ガンビーノに拾われ、戦士として鍛え上げられ成長していった。だが、育ての親であるガンビーノが戦いで片足を失って乱心し、ガッツに剣を向ける。追いつめられたガッツは、怒りとも悲しみともつかぬ表情のままガンビーノの喉に剣を突き立て、傭兵団から逃走するのだった。
それから4年の月日が流れ、ガッツはとある戦場にいた。身の丈に合わぬ剣を豪快に振り回し、砦を守る巨漢の騎士の頭を叩き割るガッツ。そんなガッツの姿を敵方の砦から見ていたのが、傭兵団鷹の団のグリフィスであった。ガッツのことを気に入ったグリフィスは、鷹の団入団をかけて1対1の勝負を挑み、ガッツを打ち負かす。こうして半ば無理矢理な形で鷹の団に入団することになったガッツだったが、最初は同世代の若者たちと馴染めず、ギスギスとした関係のまま戦いに赴くこととなる。だが、ひとつの勝利を経たのちに、覇王の卵と呼ばれる深紅のベヘリットを見せながら、自分の国を持つという夢を少年のような眼差しで語るグリフィスに心動かされ、ガッツは鷹の団を自分の居場所にすることを決めるのだった。
それからさらに3年の月日が流れる。切り込み隊長の肩書きを得たガッツは、鷹の団の中核を担う男になっていた。そして、グリフィスは鷹の団をミッドランド王国の一軍とする。その後、不吉な予言めいたことを語る異形の戦士・不死のゾッドとの死闘を生き延び、権謀術数渦巻く宮中を潜り抜け、順調にその地位を盤石なものとしていくグリフィス。ガッツもまた数々の戦場で武功を重ねていき、グリフィスを挟んで言い争うことの多かった鷹の団紅一点、千人隊長のキャスカとも戦いを通じて心を通じ合わせ、さらにキャスカを救うため、百人斬りという偉業を達成する。そして、重要攻略対象のドルドレイ要塞を鷹の団が陥落させた後、ガッツは心に決めていたことを実行に移すのだった。ある晩餐会の夜、グリフィスが王女シャルロットに語っていた「自分にとっての友とは、自分自身の夢に向けて生きる者」という言葉。それを聞き、グリフィスの夢に埋もれるのではなく、彼の横に並びたいと願っていたことに気が付いたガッツは、鷹の団を出奔する。止めようとするグリフィスと、出会ったあの日のように一騎討ちを行って打ち勝ち、ガッツは自分自身の道を歩み出すのだった。
ガッツを失った喪失感か、それともガッツに敗北した事への屈辱か、放心状態となったグリフィスは、王女シャルロットの寝室に潜り込んで彼女を姦淫。それが国王に発覚し、グリフィスは囚われの身となり、鷹の団は逆賊の汚名を着せられミッドランド王国を追われてしまう。
それから1年の時が経過。キャスカが鷹の団の臨時の団長となり、グリフィス救出を試みようとするものの、迫る追っ手と戦うだけで精一杯の状況が続いていた。その状況を知り、鷹の団のもとに駆けつけたガッツ。疲れ切ったキャスカの心の叫びを聞き、彼女を支えようとするガッツにとってキャスカもまた大切な人だと気が付く。そして結ばれようとするふたりだったが、その瞬間、ガッツの脳裏によぎったのは自身が父親と慕っていたガンビーノを殺害した過去。キャスカもまたそんなガッツの心の慟哭を知り、まるで傷を舐め合うようにようやくふたりは結ばれるのだった。
シャルロットの協力を得て、なんとかグリフィスの救出に成功するが、1年にわたる凄惨極まりない拷問により、グリフィスは廃人同然の姿と化していた。それでも再起を信じ、国王が差し向けた異形の姿の追っ手と戦う鷹の団。そして、ついにその時が訪れる。すべてを失い絶望するグリフィスが自害しようとしたその手には、拷問中に失ったと思われた覇王の卵が握られていた。そこにグリフィスの血が注がれ、死の狂宴・蝕が始まる。
断罪篇 ロスト・チルドレンの章(14~16巻)
蝕より2年の月日が流れ、ガッツとパックは森で盗賊に拐かされたジルという少女を救う。だが、パックの姿を見たジルは「霧の谷のエルフ」とつぶやき、恐怖の顔を浮かべるのだった。そして、ジルを村まで連れ帰ったふたりだったが、パックの姿を見た村人たちはジルと同様に怯え、霧の谷のエルフを殺せと囃し立て、ガッツに襲いかかってくる。これを退けてガッツが村はずれの風車小屋で休んでいると、霧の谷のエルフと思わしき手のひら程の大きさの光の集団が村を襲っていた。急ぎ村へと向かったガッツがこれを大剣で叩きつぶし撃破するが、そのエルフと思わしきものの正体は、人間の子供が魔物に変化した姿だと判明。そして、ひとりだけ人間の子供程度の大きさを持つその集団の首領とおぼしきエルフは、ジルが過去に姉と慕っていたが数年前に村を出て行った少女ロシーヌであった。ロシーヌに霧の谷に来て自分たちの仲間になるよう誘われ悩むジル。そこへパックが駆けつけ、思いとどまるよう説得するが、ジルの脳裏に浮かぶのは暴力をふるう父、野盗や戦争に怯える日々。エルフたちが善良な妖精ではなく魔物であり、残虐なことを平気で行うことを見ているに関わらず、村に戻っても何の希望も見えないジルは、恐怖に震えながらもエルフの孵化場で繭に包まれようとしていた。だが、そこへ鬼の形相のガッツが出現。孵化場に火を放ち、ロシーヌに剣を向けるのだった。
断罪篇 縛鎖の章(16~17巻)
エルフとの死闘に精根尽き果てたガッツは、黒い剣士の行方を捜索していた法王庁の聖鉄鎖騎士団に遭遇し、捕縛されてしまう。団長のファルネーゼの尋問に対し、神を嘲る言葉で返すガッツ。憤るファルネーゼはガッツを力の限り鞭打った上で牢に入れて放置するが、そこへガッツを狙う魔物たちが襲来してきた。パックが牢の鍵を盗んだことでその場を切り抜けたガッツは、自責の念に捕らわれて自らを鞭打つファルネーゼを拉致し逃亡。だが、道中にも魔物たちの襲撃は続き、その光景を見たファルネーゼは自身の立場を忘れて恐怖に震える。そして長い夜が明け、疲れ切ったガッツの元へと近寄るファルネーゼ。低級の魔物に心を支配された彼女は、心の奥底に眠る淫らな姿を見せ、自らをガッツの剣で引き裂こうとする。パックが魔物を撃退したことで我に返ったファルネーゼは、羞恥心と自身の名誉を傷つけられたことに泣き叫び、ようやくひとり追いついた聖鉄鎖騎士団の紋章官セルピコに「ガッツを殺せ」と命令。どこか飄々としたセルピコはそれは無理だと断るが、隙を突いて剣を抜きガッツに向けて一閃させ、ただ者ではないところをかいま見せるのであった。
断罪篇 生誕祭の章(17~21巻)
ともに蝕を生き延びたものの衝撃のあまり心を失ったキャスカ。自身と同じ烙印が刻まれたキャスカをガッツは知り合いの鍛冶師・ゴドーに預けていた。しかしガッツが久しぶりにゴドーのもとを訪れると、キャスカが行方不明だということを知らされる。ガッツは、彼女を捜すために少ない手がかりを頼りにアルビオン寺院へ。その道中、クシャーンの斥候部隊に襲われていた泥棒の少年イシドロを救ったガッツ。すると、剣士として身を立てたいという野望を胸に秘めたイシドロは、人間離れしたガッツの強さに憧れを抱き、勝手にあとをついてくるようになる。同じ頃、聖鉄鎖騎士団も黒い剣士捜索の任務を外され、アルビオン寺院へと赴いていた。盲目的に神を信じ、邪教徒と見なした者や禁を破った者に過酷な罰を与える異端審問官のモズグスを、ファルネーゼは畏怖とも敬愛ともつかぬ眼差しで見つめ、異教徒狩りの任を全うしていた。
一方、心を失ったキャスカは貧民窟の娼婦たちのまとめ役であるルカが保護。だが、邪教徒たちのシンボル的存在として担ぎ上げられ、儀式を行っている洞窟に拉致されてしまう。異様な空間の中、キャスカに刻まれた烙印が疼き、魔物たちが集結。そこへ聖鉄鎖騎士団が乱入し大混乱となるが、ガッツも洞窟に到着し、キャスカをイシドロに預けて剣を振るう。任されたイシドロも奮戦し、キャスカを安全な場所へ連れて行こうとするが、洞窟の出口にいた聖鉄鎖騎士団に見つかり、キャスカは捕らえられてしまう。断罪の塔にてモズグスの取り調べを受けるキャスカ。拷問器具の中に入れられ、彼女の命に危険が迫ったその瞬間、魔物たちがキャスカの周囲に大量に押し寄せ、モズグスとその配下の拷問執行人に取り憑く。そしてガッツがようやく断罪の塔へとたどり着くと、異形の姿へと変化したモズグスがキャスカを魔女と断定し、神の名の下の正義を実行すべく、火炙りにしようとしていた。
千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 聖魔戦記の章(22~27巻)
キャスカを無事に救出し、ゴドーの仕事場に戻ったガッツを待っていたのは自分たち鷹の団を生け贄に捧げたグリフィスその人。ゾッドを従え、昔と変わらぬ夢を語るグリフィスに対し、ガッツは怒りの刃を向ける。この激戦のなかでゴドーの仕事場が破壊され、キャスカが安心して生きられる場所が失われてしまう。そこでパックの提案によりガッツはパックの故郷であるエルフヘルムに行くことを決定。そんなガッツのもとに旅の同行を請うために現れたのが、断罪の塔の一件により世の中の真実を知りたいと願うようになったファルネーゼとその従者セルピコ、そしてガッツの技を盗みたいイシドロだった。キャスカの世話をしてもらうため同行を了承し、新たな仲間を加えたガッツの次なる旅が始まる。一方、ゾッドとともに飛び去ったグリフィスの元には、神託により導かれたという異形の戦士たちが終結しつつあった。
ガッツ一行は、ある森の中で獣鬼に襲われている村を救うため、魔女を捜している老人に出会う。老人とともに行動していると、彼らの眼前に大木でできた館・霊樹の館が出現。そこの主である魔術師・フローラはすべての事情を察しており、村を救うために一番弟子のシールケをガッツたちとともに村に向かわせる。その後、獣鬼との壮絶な戦いを終わらせて森に戻ったガッツたちだったが、グリフィス配下の使徒・グルンベルトの襲撃により霊樹の館は炎に包まれていた。そしてグルンベルトが発した鷹の団という言葉に激昂したガッツは、グルンベルトに剣を向ける。だが、その絶大な力の前にまるで歯が立たない。自分の居場所を失いつつあるシールケも混乱していたが、愛に満ちたフローラの最後の言葉を聞き平静さを取り戻し、ガッツに狂戦士の甲冑を与える。それを装備したガッツは、その名の通り我を忘れて戦い続ける狂戦士のように、傷ついた身体も一切顧みずに剣を振るうのだった。
千年帝国の鷹(ミレニアム・ファルコン)篇 鷹都(ファルコニア)の章(27~35巻)
幼き魔女・シールケとその友人であるエルフのイバレラを新たに仲間に加え、旅を再開したガッツは、エルフヘルムへの行路の起点となる海岸へたどり着く。その夜、決意を固めたファルネーゼは、魔道こそこの世の理の手掛かりがあるのだろうとシールケに弟子入りを願い、魔術師の道を歩もうとしていた。そして、エルフヘルムへの海路を確保するため、一行は貿易都市ヴリタニスへ。そこで船の調達に苦戦するが、ファルネーゼの手引きにより彼女の兄マニフィコの親友であるロデリックの助力を得て、軍船・シーホース号に乗船できることとなる。だが、街に入り込んだクシャーン帝国の妖獣兵団、そして使徒でありながらグリフィスにあらがうクシャーン帝国の王・ガニシュカまでもが降臨し、ガッツたちの行く手を阻む。巨大な霞のような身体に加え、強烈な電撃を放つガニシュカには狂戦士の甲冑を纏ったガッツさえも苦戦を強いられ、危機的状況に追い込まれるが、そこへゾッドが飛来。一時共闘することにしたガッツはゾッドの背に乗ると、猛スピードで宙を舞い、ガニシュカの霞の身体を切り裂いた。こうして危機を乗り切った一行はシーホース号に乗り、大海原へと漕ぎ出す。
それから時を置かずして、すでにヴリタニスを包囲していたクシャーン帝国の大軍団の侵攻が始まった。集結していた法王庁教圏の混成軍がこれにあたるが、一方的に蹂躙され為す術がない。そこへ現れたのがグリフィス率いる新生鷹の団。グリフィスの元に集結した使徒たちの力でクシャーン軍の勢いを削ぎ、グリフィスがガニシュカの前に立つ。使徒の習性なのか、ガニシュカはゴッド・ハンドのひとりであったグリフィスに膝を屈し、両者は決戦の舞台をミッドランド王都と決め軍を引いた。そしてグリフィスは、法王庁教圏の混成軍の有力者たちを前に、保護していた王女シャルロット、さらには法王を紹介し、鷹の団が名実ともにミッドランドの正規軍であることを認めさせる。
決戦を控えガニシュカは、グリフィスに膝を屈した屈辱に身を焦がしていた。そして、自身を使徒であるという軛から解き放つべく、外法に手を出し再転生を行う。そこに誕生したのは、天を突かんばかりの巨大な魔獣。魔界そのものともいえるその異様な存在は、敵味方問わず蹂躙しながら突き進み、グリフィスの元へと向かう。
幻造世界(ファンタジア)篇 妖精島の章(35巻~)
グリフィスとガニシュカの戦いに髑髏の騎士が介入し、喚び水の剣が振り下ろされたことで異次元の扉は開かれ、新世界・幻造世界(ファンタジア)が始まった。それは海上を旅するガッツたちにも影響を与え、魔物を乗せた幽霊船と遭遇。激しい海戦となり、傷ついたシーホース号はとある島に立ち寄る。そこでイシドロが出会ったのは、村八分にされながらも腐らずに生きる少女・イスマ。そして、ガッツたちが島を探索するうちに、やがてそこが海上で遭遇した海の魔物の根源である海神の本拠地であることが発覚する。海神との激しい戦いへと発展し、混乱の最中イシドロが海に落下してしまう。イスマがそれを救うために海に飛び込むと海からの声が彼女に届き、人魚としての真の姿を覚醒させるのだった。
メディアミックス
TVアニメ
1997年10月7日から1998年3月31日まで『剣風伝奇ベルセルク』というタイトルで放送された。原作の黒い剣士の一部と黄金時代のエピソードをアニメ化している。2022年10月よりアニメ化第2作『ベルセルク 黄金時代篇』放映。
TVゲーム
ドリームキャスト用ソフトとして『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ ファルコン)篇 喪失花の章』(1999年)とプレイステーション2用ソフトとして『ベルセルク 千年帝国の鷹(ミレニアム・ ファルコン)篇 聖魔戦記の章』(2004年)が発売されている。ドリームキャスト版は原作者の三浦建太郎がシナリオを担当。ボイスを担当した声優はいずれもテレビアニメ版に準拠としている。
トレーディングカードゲーム
2004年から2005年にかけて第4弾まで展開された。販売元は株式会社コナミ。
劇場版
『ベルセルク・サーガプロジェクト』として「黄金時代」を以下の3部作に分けて公開された。スタッフ、キャストはテレビアニメ版から一新されている。
映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』(2012年2月4日公開)
映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅱ ドルドレイ攻略』(2012年6月23日公開)
映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨』(2013年2月1日公開)
ソーシャルゲーム
2013年に株式会社フィールズがGREEにて『ベルセルク~快進撃!怒涛の傭兵団~』を提供。2014年6月サービス終了。
評価・受賞歴
緻密な絵と密度の濃い深みのある物語から、日本におけるダークファンタジーの代表作と言える作品となっており、後述のテレビアニメ版が放送されたことで、海外での知名度も非常に高い。絶大な人気を得ているが、不定期連載という形を取っているために休載が非常に多く、なかなか物語が進まない。アンケートで「完結を見たい漫画」という題材になると、必ずと言ってよいほど上位に入り、ファンだけでなく作者自身も完結できるのか不安のコメントを残しているほどである。
初期は月刊誌・アニマルハウスにて連載していたが、リニューアル創刊された隔週誌・ヤングアニマルに移動。その時期に連載されていた若者たちの夢を描きながらも、彼らが残酷な未来へと向かっていく黄金時代が評判となり、1997年よりその黄金時代が『剣風伝奇ベルセルク』としてTVアニメ化。残酷描写は多少マイルドになっているものの、原作をほぼ忠実に再現した野心的な作品で、放送時間が深夜だったにも関わらず大きな話題となり、その人気を不動のものにした。
登場人物・キャラクター
ガッツ
長身で筋骨隆々とした隻眼隻腕の剣士。失った左腕には大砲の仕掛けがある義手とボウガンを装備。武器として自身の身長ほどの鉄塊としか表現しようのない大剣・ドラゴンころしを使用し、膂力に任せた一撃で眼前の敵を粉砕する。黒い鎧を身に纏っており、その異様な風貌から黒い剣士とも呼ばれている。 かつては傭兵集団・鷹の団の切り込み隊長として名を馳せた剣士だったが、ライバルでもあり友でもあった鷹の団団長のグリフィスに儀式・蝕の生贄・贄として捧げられ、首筋にその印である烙印が刻まれた。蝕では団員のほとんどが使徒と呼ばれる怪物に食い殺され、ガッツ自身も右目と左腕を失う大怪我を負う。 しかし乱入してきた髑髏の剣士に助けられて蝕から生還。しかしそれからは夜な夜な襲い来る使徒や死霊といった怪物たちと戦い続ける日々を送ることとなる。その胸中にあるのは使徒を統べる者・ゴッドハンドのフェムトと化したグリフィスへの復讐だったが、同じく蝕を生き延びながらも心を閉ざして幼児退行してしまったキャスカを怪物たちが侵入できない安住の地・妖精(エルフ)の国・エルフヘルムへ届けるために復讐を断念。 新たな仲間たちを得て長き旅を続けている。
グリフィス
傭兵集団・鷹の団の団長。幼き日に夢見た自身の国を得るという夢を叶えるために鷹の団を結成した。大国・ミッドランド王国に肩入れし、隣国のチューダー帝国との百年戦争で休戦協定を結ばせるほどに活躍。貴族となり、戦争終結後には白鳳将軍の名を与えられるほどに順調にその地位を固めていった。 だが、自分の右腕とも言えたガッツが鷹の団から去ったことで心を乱し、ミッドランド王国の王女・シャルロット・ベアトリックス・マリー・ルホディ・ウインダムの寝室に侵入。それが露見して捕らえられ、凄惨な拷問の果てに二度と剣を握れない身体となる。夢潰えたと思った時に所有していた真紅のベヘリットが発動。 グリフィスの救出に加わったガッツを含む鷹の団の団員たちを生贄・贄として捧げ、怪物・使徒を統べる者・ゴッドハンドのフェムトとして転生した。さらに完璧な世界の卵により受肉し、人の姿として現世に降臨。使徒の戦士たちを中心とした新生鷹の団を結成する。 シャルロットを取り込んでミッドランド王国の王家直属の軍となり、さらに作品中で広く信仰されている宗教の教会組織・法王庁の法王までも迎え入れ、人々の信任を得ることに成功。クシャーン帝国の大帝ガニシュカを撃破したのちに、ユートピアの如き城塞都市・ファルコニアを創り上げる。
キャスカ
傭兵集団・鷹の団の団員。グリフィスを敬愛しており、グリフィスが何かと気にかけるガッツに対して敵意を剥き出しにしていた。しかしある戦場でガッツに助けられたことで、互いの背を預けられるほどの関係となり、やがて心も身体も結ばれた。だが、グリフィスが起こした蝕の生贄・贄として捧げられ、怪物・使徒たちに加えてゴッド・ハンドのフェムトとして転生したグリフィスにまで身体を蹂躙されて心を壊し、記憶を失い幼児退行してしまう。 ガッツとともに蝕からは逃げ切ったものの、胸には贄の印である烙印が刻まれており、夜な夜な使徒や死霊たちに狙われる身となる。 そこで、かつて妖精(エルフ)が住んでいたとされ、怪物たちが手出しできない鍛冶職人・ゴドーの鉱道に監禁状態で匿われていたが脱走。作品中で広く信仰されている宗教の教会組織・法王庁管轄の断罪の塔で魔女として処刑されそうなところをガッツに救出されたが、ゴドーの鉱道が新生鷹の団のゾッドに破壊されてしまったため、ガッツに連れられて、妖精達が住まう安住の地・エルフヘルムを目指すこととなった。 だが、ガッツを恐怖の対象として見るようになってしまったため、旅の道中ではガッツの仲間となった女性・ファルネーゼ・ド・ヴァンディミオンが世話をしている。
パック
『ベルセルク』に登場する妖精。人の手のひらに乗れるほどの大きさの背に羽根を生やした少年型の妖精。軽い性格のお調子者で、その場を拍子抜けさせるような言動が多い。鱗粉には傷を癒やす力があり、さらには全身を光らせて目眩ましをする能力なども持つ。ガッツに懐いており、最初の頃はガッツも邪険に扱っていたのだが、薬箱代わりにはなるとして旅に同行することを了承した。 普段はガッツの鞄の中に住んでおり、一緒に入っているベヘリットを「ベッチー」と呼び、同居人扱いしている。
ファルネーゼ・ド・ヴァンディミオン
莫大な財力を持ち、作品中で広く信仰されている宗教の教会組織・法王庁に対して大きな影響力を持つヴァンディミオン家の女性。黒い剣士ことガッツの捕縛を命じられた法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の団長でもある。盲目的に神を信じていたが、その心の奥では歪んだ形の欲望に囚われており、似た境遇のセルピコに心を寄せていた。 ガッツと使徒の戦いに巻き込まれることで自身の矮小さを知り、世の中の真実と生き抜く術を学ぶために僧籍を抜け、セルピコとともにガッツの旅に同行することとなる。その旅でキャスカの世話をしていくうちに、今まで自分が虐げてきた弱い者たちを守るという気持ちが芽生えていき少しずつ心を強くしていく。 そして、旅の仲間となった魔法使い・シールケが見せる魔術の偉大な力に感動。シールケの弟子となり、魔女見習いの道を歩み始める。
セルピコ
黒い剣士ことガッツの捕縛を命じられた、法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の紋章官。幼い頃に雪の中に倒れていたところをファルネーゼ・ド・ヴァンディミオンに拾われ、彼女の小間使いとして仕えるようになる。自分と同じ歪んだ孤独を心に抱えていることから、ファルネーゼとは互いに身を寄せ合うような歪な関係性を保ちながら成長した。 普段は飄々としており、やる気のなさ気な雰囲気を出しているが、実はキレ者の実力者。戦闘ではレイピアを操り、身軽な動きから鋭い突きを繰り出す。また、奸計にも優れており、ファルネーゼに悪い影響を及ぼすと、幾度かガッツとも剣を交えたが、その戦い慣れした姿にガッツも驚愕したほどであった。 のちにファルネーゼとともにガッツの旅に同行することを決める。ファルネーゼが命を落とすようなことがあれば、ガッツを殺すと告げているが、旅の中でファルネーゼの心が強くなっているのを見て、その変化を喜ばしく思いながらも、自分がそうできないことに腹立たしさを感じている。
アザン
法王庁直属の聖鉄鎖騎士団の副団長。両端に複数のスパイクがついた長い棍棒を振り回して戦う。騎士道精神に溢れた高潔な人物で、数々の武名を轟かせている豪傑。ガッツも刃を交えた際に、鉄棍鬼アザンとしてその名に心当たりがあるほどであった。戦いに慣れていない貴族揃いの聖鉄鎖騎士団団員のお守役として奮戦。 断罪の塔での騒動ののちに聖鉄鎖騎士団の団長であるファルネーゼやセルピコとは別れたが、その後、騒動の責任を取らされて法王庁から追い出され、ヴリタニスの街で彼らと再会した。さらに、ロデリック・オブ・シュタウフェンの船・シーホース号にも迷いこむ形で同乗することになり、ガッツたちの旅の仲間となった。 本人はバツが悪いのか兜を被って素性を隠し黒髭の騎士を名乗るが、他の者たちには完全にバレている。
イシドロ
クシャーンの斥候部隊に襲われていたところをガッツに助けられた少年。剣一本での成り上がりを夢見ており、技を盗むためにガッツを追った。剣技はまだ未熟だが投石の腕前は一流で、百発百中の技の冴えを見せる。断罪の塔での騒動後にガッツとは一時的に離れてしまったが、ファルネーゼ、セルピコとともに追いかけ、正式に旅の連れとなり、剣術の基礎を教えてもらうことに。 そして、ガッツのアドバイスに従って自らの剣技を鍛え上げ、自分ならではの戦い方を身につけていく。実は鷹の団切り込み隊長時代のガッツが憧れの剣士なのだが、名前がうろ覚えなため、本人はそのガッツとともにいることを知らないでいる。
シールケ
ある森の結界内に存在する霊樹の館に住む魔女・フローラの弟子。ゆったりとしたローブを纏いつばの広いとんがり帽子を被った、まさに絵本の中から抜け出た魔法使いのような姿をした少女で、ある小さな村を荒らす獣鬼(トロル)を退治するためにガッツたちとともに戦った。その戦いの直後に霊樹の館が新生鷹の団に襲われて焼失し、ガッツの旅に同行することとなる。 本人はまだ修行中というが、天使や精霊の力を借りて、奇跡の如き凄まじい魔法を使用。ただし、魔法を使うには詠唱や祈りなどの段取りが必要で、その間はまったくの無防備となる。また、防御用の光の障壁を張る魔法は、人の世ではない幽界(かくりよ)の者に対してしか効果が無いため、たとえば落ちている武器や瓦礫などを障壁の外から投げられると、防御の意味を成さなくなってしまう。 また、自身の意識をガッツの意識と同一化することで狂戦士の甲冑を纏って暴走したガッツの意識を取り戻させることが可能。蝕で刻まれた生贄・贄の烙印に護符を施して効果を薄めることなどができる。
イバレラ
『ベルセルク』に登場する妖精。人の手のひらに乗れるほどの大きさの背に羽根を生やした少女型の妖精。パックとは同族で、その羽根が鱗粉には傷を癒す効果がある。お目付け役的な立場としてシールケに懐いており、彼女の魔法のサポートも行う。非常に口が悪く高飛車なところがあり、パックやイシドロのことをいつも小馬鹿にしている。
ロデリック・オブ・シュタウフェン
法王庁教圏に属するイース国の王族。イース海軍の艦長でもあり、外洋の世界を制する者こそ勝利者になれるという考えを持つ勇敢な男。ヴリタニスの街を訪れた際に友人のマニフィコから紹介される形で、マニフィコの妹であるファルネーゼの許嫁となった。舞踏会の席上で敵国クシャーンの幼獣兵が乱入する騒ぎが起こり、それを鎮めたガッツたち一行を自らの船・シーホース号に乗せることを決意する。 海戦の腕前は一流で、海賊である髭骸骨が率いる3隻の海賊船を相手にシーホース号1隻で一方的に蹂躙するほどの活躍を見せた。
マニフィコ
ガッツ一行と行動をともにするファルネーゼの兄。ガッツたちが必要としている船を調達する代わりに、友人で王族のロデリックの許嫁になるようファルネーゼに指示した。権威欲は強いが父親から軽んじられており、ロデリックとともに外洋に目を向け、次代の勝利者への野望に燃えている。 ロデリックとファルネーゼの婚約を舞踏会で大々的に発表しようとしたが、敵国クシャーンの幼獣兵が乱入する騒ぎが起こり失敗。この騒動で糾弾されるのを恐れて、ロデリックの誘いに乗り、シーホース号に乗船。ガッツ一行と旅をすることとなった。
イスマ
ガッツ一行が乗ったロデリックの船・シーホース号が立ち寄った小島に住んでいる少女。本人は信じていなかったが、人間と人魚(メロウ)のハーフと言い伝えられていたために漁村の人々から忌み嫌われ、村から離れた場所でひとりで漁をしながら生活していた。村八分の目に遭いながらも明るく前向きな性格をしており、イシドロが語る冒険譚に心を踊らせる。 ガッツ一行と島に生息する怪物・海神との戦いを通じて、自身の人魚としての名前を知り、魚の尻尾や鰓を持つ人魚として覚醒。海中で母親とも再会し、仲間の人魚たちとともに不思議な力のある歌で海神との戦いをサポートした。その後、シーホース号に乗船し、ガッツの旅の仲間として同行。 仲間の人魚たちがエルフヘルムへの道案内をすることとなった。
ジュドー
傭兵集団・鷹の団の団員。投げナイフの達人で、百発百中の腕前を誇る。入団直後の刺々しいガッツにも気さくに話しかけるなど、かなりの良識人。1番になることができないために2番手に甘んじ、誰かの夢をサポートするということに自分の道を見出していた。グリフィスが起こした蝕の生贄となり、密かな想い人であるキャスカを逃がすために死んだ。
ピピン
傭兵集団・鷹の団の団員。団員一の巨漢で、先端にスパイクの付いたメイスを振り回して戦う。あまり表情を崩さない寡黙な男だが、他人のことを思いやる優しさを持ち、仲間の危機に対しては声を荒らげることもあった。グリフィスが起こした蝕の生贄となり死亡した。
リッケルト
傭兵集団・鷹の団の団員。まだ幼さを残す小柄な少年で、戦場で雄々しい姿を見せるガッツを尊敬していた。負傷して戦列を離れていたために蝕から逃れ、鷹の団の中では、ガッツとキャスカ以外で唯一の生き残りとなった。その後ガッツとは旧知の鍛冶職人・ゴドーの仕事場で働くようになり、ガッツが使用する義手やボウガンなどを作成。 復讐の旅に出たガッツに頼まれ、ゴドーの娘・エリカとともに心を失ったキャスカの世話をする。さらに時が経ち、転生したグリフィスと再会。ガッツから鷹の団に何が起こったのかを聞き、ガッツの旅に同行するか悩んだが、エリカのために残る決断を下した。
コルカス
傭兵集団・鷹の団の団員。ある戦いでガッツが得た報奨金を奪おうと襲撃し、結果的にガッツが鷹の団に入団するきっかけを作った。団長のグリフィスを特別視していたため、横に並ぼうとするガッツを快く思わず何かときつく当たり、結局最後までガッツとはウマが合うことはなかった。 グリフィスが起こした蝕の生贄・贄となり死亡。
ゴドー
人里離れた鉱道で鍛冶職人を営んでいる老人。鷹の団を抜けたガッツを世話していた。偏屈だが気骨にあふれており、若い頃にはドラゴンを撃ち殺せるような剣を献上しろという国王からの布令に対して、様式美にこだわる貴族の発注に対しての批判的な回答として巨大な鉄塊のような大剣・ドラゴンころしを作った。 だが、領主の怒りを買い、危うく縛り首にされるところだったという。
エリカ
鍛冶職人・ゴドーの娘。実の子ではなく戦災孤児を拾って娘として育てられた。天真爛漫な少女で、ゴドーの仕事を見学するのが好き。蝕を生き延びたガッツ、キャスカ、そして蝕に巻き込まれなかったリッケルトを匿い、復讐の旅に出たガッツの代わりにキャスカの世話をすることとなる。 その間にリッケルトと良い関係を築いた。
シャルロット・ベアトリックス・マリー・ルホディ・ウインダム
世間知らずの箱入り娘として育った大国ミッドランドの王女にして第1王位継承者。鷹の団の団長であるグリフィスを慕っており、夜這いをかけられた際に受け入れる。だが、それが露見して嫉妬する父親から歪んだ愛情を向けられるようになり、さらにグリフィスが捕らえられ監禁されたことで、完全に殻に閉じこもってしまう。 父親が崩御したのちに、敵国クシャーンの大帝・ガニシュカに捕らえられていたが、グリフィスが奪還。新生鷹の団に迎え入れられ、グリフィスの正式な婚約者となった。
髑髏の騎士 (どくろのきし)
人骨を象った鎧を身に纏った剣士。騎乗する馬も同様に骸骨をあしらった馬具を身につけており、威風堂々かつ不気味な佇まいを見せる。1000年にわたってゴッド・ハンドに仇なしてきた者で、体内に収めた複数のベヘリットにより喚び水の剣を鍛え上げ、それを対ゴッド・ハンドへの切り札としている。 ガッツの前に度々現れ、キャスカとともに蝕から逃したり、異次元からの脱出に手を貸したりなど、窮地の際に手を貸した。また、ゾッドとは長年にわたる宿敵であり、幾度と無く刃を交え激戦を繰り広げている。霊樹の館に住む魔女・フローラとも詳細は不明であるが、旧知の間柄であるという。
使徒 (しと)
『ベルセルク』に登場する魔物。人間がベヘリットを発動させて降魔の儀を行うことで、神話や英雄譚に出てくるような怪物に転生した姿。異常な怪力を持つ戦士や浮遊能力を持つ者、口から炎の息を吐くものなど、その姿や能力は様々だが、元になった人間の特色を引き継ぎつつ、それを大きく向上させるような力を持つ姿に転生することが多いようだ。 また、人間を通称・使徒もどきという怪物に変える力を持つ。人間だった頃の姿に変化することができ、記憶も引き継いでいるため、普段は人間社会に紛れて生活している。
ゴッド・ハンド
『ベルセルク』に登場する魔物。人の世ではない幽界(かくりよ)の深き底にある深淵の底の方に住まう、すべての使徒を統べる者たちで、使徒たちは彼らのことを守護天使と呼ぶ。長と思わしき黒いマント姿のボイド、妖艶な女性の姿をしたスラン、宙を舞いながら戯けたことを語るユービック、虫のような姿で寡黙なコンラッド、そして闇の鷹・フェムトの5人で構成。 一定の周期で覇王の卵と呼ばれる真紅のベヘリットに選ばれた者が転生するということ以外はほぼ不明という謎多き存在で、幽界を研究する者たちにとっては、解き明かすべき謎のひとつとされている。時折、何らかの魔の要因を媒体として、人々が住まう世界である現世(うつしよ)に出現する。
ゾッド
『ベルセルク』に登場する魔物。不死のゾッドの異名を持つ斬馬刀を操る巨漢の剣士で、殺戮の場に現れるとして傭兵たちの間では有名人であった。その正体は使徒で、巨大な2本の角を持つ翼の生えた雄牛のような、悪魔じみた姿に変化する。鷹の団時代のガッツやグリフィスと戦い、蝕を予言した。ゴッド・ハンドとなり、のちに人の世に転生したグリフィスとの戦いで角を1本切断され、新生鷹の団に加入。 宿敵と認めたガッツとは正面からの戦いを求める騎士道精神的な考えを持つ潔い男だが、使徒としての本能も忘れておらず、主であるグリフィスに刃を向けることは許さない。ガニシュカとの戦いではガッツを背に乗せて共闘した。
シラット
暗殺集団・バーキラカの王子。はるか昔に権力闘争に敗れたため、奴隷にまで身を落としている。異形の武術の使い手で、刃のついた円形の投擲武器・チャクラムや、手甲型の刀といった奇妙な武器を扱う。一族の復興を悲願とし、クシャーン帝国の暗殺集団として暗躍していたが、ガニシュカとグリフィスの戦いの動向を見極めるべく、その立場を中立のものとした。 かつてガッツとも遭遇し、刃を交えたこともある。
モズグス
断罪の塔にて魔女や邪教徒を狩り裁判に掛ける、法王庁の異端審問官。信仰の名のもとに500人を悠に超える人々を凄惨な拷問に掛けて殺害しているため、多くの恨みを買っており、命を狙われることも珍しくない。普段は神を盲信している能面のような顔をした穏やかな男だが、怒ると鬼のような形相に変貌し暴力的になり、特に邪教徒や背教者に対しては容赦のない面を見せる。 また、人ではあるが異形の姿をしていたために他者から忌み嫌われていた者たちを迎え入れ、拷問執行人の任に就かせている。キャスカを魔女として処刑しようとするが、キャスカに惹かれるように死霊たちが集結し、大混乱となり、さらに使徒、完璧な世界の卵の手により岩のような肌と翼を持つ怪物に変えられてしまう。 キャスカを奪い返しに来たガッツと対決した。
完璧な世界の卵 (かんぺきなせかいのたまご)
『ベルセルク』に登場する魔物。法王庁管轄の断罪の塔の下にあるゴミ溜めで育った、誰にも知られず何者でもなかった者。ベヘリットを拾い、自身を囲む世界と引き換えに完全なる世界の孵化を望み、使徒となった。ベヘリットに足の生えたような他の使徒とは一線を画した奇妙な姿をしている。ガッツとキャスカに惹かれるように死霊たちが断罪の塔に多数押し寄せ、人々が阿鼻叫喚の大混乱を起こす中、満足気な笑みを浮かべて割れ、グリフィスを孵化した。
フローラ
霊樹の館に住む魔女。かなりの高齢で、自分の死期が近いのを悟り静かに暮らしている。近隣の村にすむ老人の頼みにより獣鬼(トロル)退治に弟子のシールケを派遣する。ガッツたちを霊樹の館に導き、人の世ではない幽界(かくりよ)やゴッド・ハンドについての情報を与えた。 新生鷹の団の襲撃を受けて炎の中でその余生を終えたが、ガッツの身に宿した護符の中に自身の意志を宿しており、シールケに対し己の道を探しなさいという言葉を残してから消滅。髑髏の剣士とは昔馴染みで、ガッツへの助力を願ったのも髑髏の剣士だったが、ふたりにどのような関わりがあったのかは謎である。
ガニシュカ
広大な土地を有するクシャーン帝国を恐怖で支配する王。ミッドランド王国の王が崩御した時を狙い、侵攻を開始。瞬く間にミッドランド王国の首都・ウィンダムを制圧した。その正体は使徒であり、霧のような姿になり、雷を操ることも可能。使徒を統べるものであるはずのゴッド・ハンド・グリフィスに牙を剥いて戦いを挑み、同じ者を敵とするガッツを配下として欲したこともあった。 だが、使徒であることの性なのか、グリフィスを前に膝を屈するという屈辱を受け、使徒を超えるための外法を使い再転生し、天を衝く巨木のような姿になった。
集団・組織
鷹の団 (たかのだん)
『ベルセルク』に登場する組織。物語の序盤から登場する傭兵団・鷹の団と、それが壊滅したのちに新たに編成された、ミッドランド王家直属の正規軍の新生鷹の団のふたつが存在する。前者はまだ人であった頃のグリフィスが、自身の国を手に入れるという野望のもとで作った。だが、その夢が潰えかけたグリフィスが、使徒として転生するために発動させた蝕の生贄・贄として捧げられ、ガッツ、キャスカ、リッケルトを除く団員は全滅。 後者は使徒として転生したのちに、ある要因で受肉して人の世である現世に現れたグリフィスが新たに結成。団員として使徒までも組み込まれた人魔混成の軍団として編成されており、ミッドランド王国王女のシャルロットを迎えることで、王家直属の軍となっている。
その他キーワード
ドラゴンころし
『ベルセルク』に登場する武器。ガッツが使用する刃の全長が身の丈ほどもある鉄塊のような大剣。ガッツとは旧知の鍛冶職人のゴドーが若い頃に打ち上げた。あまりにも巨大な武器のため、ガッツは背に袈裟懸けに背負って携帯。魔物たちを斬り続けたことで鍛え上げられ、禍々しい力を宿しつつある。
狂戦士の甲冑 (きょうせんしのかっちゅう)
『ベルセルク』に登場する防具。鉱精(ドワーフ)が作ったとされる禍々しい気を感じさせる漆黒の鎧兜。霊樹の館に保管してあり、魔女・フローラよりガッツに託された。荒ぶる気の流れに同調することで、甲冑を纏った者のあらゆる苦痛や恐怖を無くし、破壊衝動の赴くままに暴れさせる。さらに、怪我をした箇所には甲冑の内側から金属の歯が食い込みその部分を補助。 命と引き換えに鬼神の如き力を発揮させるという魔の防具である。使用者の内面に応じて兜の形状が変化するようで、ガッツの場合は、フェイスガード部に牙の生えた狼の頭部のようになった。
ベヘリット
人の顔が乱雑に配置された卵のような物体で、ある条件によりその力を発動させると使徒を統べる魔物・ゴッド・ハンドを呼び出す。そして、使用者が自身の半身とも言える大切なものを生贄として捧げることで、降魔の儀という儀式が始まり、使用者を新たな使徒として転生させる。ベヘリットの中でも真紅の色を持つものは、覇王の卵と呼ばれ、蝕と呼ばれる降魔の儀により、新たなゴッドハンドが誕生。 物語の中では、グリフィスが蝕を実行し、5人目のゴッド・ハンドとなる闇の鷹・フェムトへと転生した。なお、ベヘリットは持つべき者が定められており、必要なときに必ずその者の手にあるといわれている。
アニメ
書誌情報
ベルセルク 42巻 白泉社〈ヤングアニマルコミックス〉
第1巻
(1990-11-26発行、 978-4592135746)
第38巻
(2016-06-24発行、 978-4592144380)
第39巻
(2017-06-23発行、 978-4592144397)
第40巻
(2018-09-28発行、 978-4592144403)
第41巻
(2021-12-24発行、 978-4592166917)
第42巻
(2023-09-29発行、 978-4592166924)