あらすじ
ドッグトレーナー
佐村未祐は2か月ほど前、同棲していた彼女、谷田部優子から置き手紙一つで突然ふられてしまう。その後、再び姿を現した優子は、この子を自分の代わりにして寂しさを紛らわせてという言葉と共に、1匹のトイプードル、サンジュを未祐に押し付け、また音信不通になってしまう。あまりにも一方的な状況に途方に暮れる未祐だったが、里親のあてもなく、保健所に連れて行くのは可哀想(かわいそう)だと考え、サンジュの面倒を見ることにした。しかし、状況を理解できないサンジュは未祐を嚙んだり、一日中暴れて吠(ほ)え続けるなど、ペット可のマンションであるにもかかわらず周囲からのクレームがあとを絶たず、このまま改善されなければ出て行ってもらうと、大家からも釘を刺されてしまう。未祐はとりあえずサンジュを散歩に連れて行き、運動させることでストレスを発散させようとするものの、首輪とリードを装着するだけですでに1時間が経過していた。やっとの思いで外に連れ出すも、サンジュは興奮しすぎてリードを極限まで引っ張って走り出し、制御不能の状態となる。鼻息荒く暴れ回るサンジュに振り回されヘトヘトになった未祐は、散歩の途中でスタンダードプードルのウルソンを連れた丹羽眞一郎と出会う。そこで未祐は自分たちとは対照的に、落ち着いた様子で飼い主とアイコンタクトを取り、言葉一つで指示に従うウルソンの姿を目の当たりにする。そしてクールに指示を出す眞一郎の姿に未祐が見とれていると、サンジュがさらに暴れ出す。未祐は暴れるサンジュを制止しようとリードを強く引っ張り、何度となくサンジュの首を絞めると、とうとうサンジュの首輪が抜けて逃げ出してしまう。一目散に走った先にはトラックが見え、絶体絶命の状況に未祐が思わず目をつぶった次の瞬間、眞一郎がパチンと指を鳴らすと、サンジュはピタリと止まって振り返る。そして、眞一郎は「おいで」と優しく声をかけただけでサンジュを自分のもとに呼び寄せ、抱き上げるのだった。眞一郎が華麗に犬をあやつる様子に感動した未祐は、嬉々として眞一郎のもとに駆け寄るが、その瞬間、眞一郎は人が変わったように冷たい表情になり、犬を殺すつもりかと強く叱責されてしまう。自分の犬への接し方に間違いがあったことに気づいた未祐は、無理を言って眞一郎に頼み込み、サンジュに対しての正しい接し方を教えてもらうことにした。そこで眞一郎がプロのドッグトレーナーであることを知るが、一通りレクチャーされたあと、出張トレーニングの料金を請求されるが、未祐はすぐに金を用意することができなかった。眞一郎の神業に惚れ込んだ未祐は、彼の提案に従い、眞一郎のもとで働いて返すことを決意する。そして、ドッグトレーニング「Proud Dog」のスタッフとして働きながら、サンジュとのトレーニングを行いながら信頼関係を構築していくことを決める。
去勢手術
ある日佐村未祐は、丹羽眞一郎からそろそろサンジュが去勢手術を受けるべき時期に差し掛かっていることを指摘される。未祐は、サンジュの足のあいだに睾丸(こうがん)が見えなかったため、去勢手術を済ませているものと思い込んでいたのだ。しかし、眞一郎の見立てによれば、生後2か月程度で体内から降りて来るはずの睾丸のうち、一つが鼠蹊(そけい)部に引っかかっており、もう一つはおそらくお腹の中で留まっている状態の停留睾丸であるようだった。そして何より、サンジュの年齢はまだ生後10か月前後であるという事実を知り、未祐は驚きを隠せない。サンジュは一般的なトイプードルという犬種にしては体格が大きい方で、健康診断を受けた時にも指摘されなかったため、未祐はサンジュがもう大人だと思い込んでいたのだ。生後10か月といえば、そろそろ去勢手術を考えなければならない時期にあたる。眞一郎は、未去勢のオスがどういう状態にあるかを未祐に詳しく説明し、今現在サンジュがトレーニングに集中できない原因が、そこにあるかもしれないと説明する。未祐は話を聞いて理解はしたものの、そもそもどうして去勢が必要なのか、そこが釈然としなかった。健康体にメスを入れてまで行うべきなのか、これは人間のエゴではないのかと考える未祐に、眞一郎は犬の本能について語り、去勢手術を受けないことで起こりうる影響について多方面から説明。手術を強制はしないと言いつつも、睾丸を体内に遺したままだと腫瘍化しやすいことなど、必要な情報をすべて与え、判断を未祐に任せた。その後、眞一郎は腕のいい獣医を紹介すると告げて、停留睾丸の腫瘍化について心配していた未祐を、「のすけペットクリニック」の獣医師、久宝鈴之介の病院へと連れていく。そこで未祐は、改めてサンジュが停留睾丸であるとの診断を受け、去勢手術の方法などについて鈴之介から詳しく話を聞く。さらに手術を行うことで起こり得るリスクについて知ることになり、手術を受けても死のリスクを伴い、手術をしなくても睾丸の腫瘍化による死の危険性と向き合う必要があることを知って動揺する。そして未祐はいつのまにか、自分にとってサンジュがどれだけ大きくかけがえのない存在になっていたかを実感することになる。
優子
ある日、ドッグトレーニング「Proud Dog」を訪れたのは、佐村未祐を捨て、サンジュを押し付けて姿を消したはずの谷田部優子だった。優子は、あまりにも強烈な香水の香りをぷんぷんと匂わせていたため、サンジュもウルソンもくしゃみが止まらない状態になり、丹羽眞一郎に店から出て行けと叱責されていた。その騒ぎを聞きつけた未祐が姿を現し、優子との再会を果たす。優子は思いがけない未祐との再会を喜んで抱き付き、トレーニングは未祐から受けると言い放つ。眞一郎も、このまま店に留まられるよりはましとばかりに、見習いトレーナーの未祐に通常の半額で優子を指導させることに決め、二人を早々に店から追い出す。未祐は、自分とサンジュを捨てた身勝手な優子に憤りを覚えていたが、優子の傍らには小さなバッグに入れられたマイクロティーカッププードル、ティアラの姿があった。ティアラは首輪もリードも付けられていない状態で、犬用ではないふつうのかばんに、まるでぬいぐるみのように入れられていた。未祐には腑に落ちないことがたくさんあったが、すべてのみ込んだうえで優子に話しかけ、ティアラのことについて聞く。するとティアラは生後5か月で、購入して3か月になるという。優子はサンジュを未祐のもとに捨てたのち、すぐにティアラを購入したことになる。未祐は優子に、眞一郎が怒って追い出そうとした理由や、優子がハイヒールを履いていること、そしてティアラを人間用のバッグに入れていることなどを指摘する。そのすべてが犬にとってよくないことだと言い聞かせるが、優子にとって犬はSNSで自慢するための道具でしかないため、どんな言葉も今の優子には届くことはなかった。未祐は怒りでキレてしまいそうな自分をぐっと抑え込み、トレーナーとしての自分を試してみようと、仏のように見守る姿勢で優子とのトレーニングを続けることを決意。しかし、その後に訪れた優子の家は犬と生活できるような環境ではなく、足の踏み場のないほどの汚部屋だった。さらに優子がティアラに求めているのは、写真を撮るあいだだけじっとしていてくれればいいという身勝手なものだった。また、優子がサンジュを捨てた理由が、体が大きくなりすぎたことや、言うことを聞かないことにあったことを知る。そして立派に成長したサンジュを見て、大きくて恥ずかしいと優子が笑ったことで、未祐はとうとう怒りを爆発させる。
犬好き同士
音羽みのりは、愛犬に対する考え方の違いから、7年間付き合った彼氏と別れて2年が経っていた。そんなある日、スマートフォンが壊れ、買い替えのために訪れた携帯ショップでの待ち時間、みのりは結婚できないことについて嘆いていた。一般的に、独身で犬を飼うと婚期を逃すというジンクスがあり、同僚からそれを理由に結婚できないのではと言われたことに全力で反論していた際に、思いがけず担当スタッフの出浦翔吾と意見が一致する。互いに自分と愛犬の関係性について語り合っていると、そこを偶然通りがかった佐村未祐から、犬好き同士なのだから付き合えばいいと言葉をかけられる。これがきっかけで、みのりと翔吾の交際が始まり、初デートで結婚を前提に同棲することが決まる。その後、とんとん拍子で新居も見つかり、2か月後にはみのりの飼い犬、ちよりと、翔吾の飼い犬、大吾を含めた二人と2匹での暮らしが始まった。だが、いっしょに暮らし始めてすぐに、互いの犬への接し方に大きな違和感を抱き始める。みのりはちよりをきちんとしつけ、日常的に指示に従って行動させるようにしており、夜はハウスで寝るようにしつけていた。一方の翔吾は、散歩中に人がいないのを確認して大吾をノーリードで放すなど、大吾を自由にさせてやりたいあまりに、特にしつけが必要だとは思っていなかった。そのため、みのりは大吾が決められた場所で排尿できないことや、夜人と同じベッドで眠ることに疑問を感じるようになる。しつけについて考えようともしない翔吾のことを相談するために、みのりはドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れるが、丹羽眞一郎からは、当事者が来なければ相談には乗れないと言われてしまう。その直後、みのりが犬のしつけや結婚観について検索していたことが翔吾に見つかり、けんかに発展する。そして翔吾から、みのりとちよりの関係が軍隊みたいだと言われたことが決定打となり、二人は破局を迎えることになった。それから2週間、みのりは一人になった寂しさに耐えながらも、ちよりと散歩をしていると、遠くから犬が激しく吠える声と翔吾の声が聞こえてくる。みのりといっしょにいた未祐が声の方へ向かうと、そこには大型犬に襲われる大吾の姿があった。駆け付けた眞一郎によって2匹は引き離され、久宝鈴之介のもとへと連れて行かれることになるが、翔吾はそこで初めて自分が主張する、大吾を自由にすることが間違っていることに気づかされる。
律佳の過去
ある日、リュウタのシャンプーをするため、犬の美容室「フォンテーヌ」を訪れていた東山絵麻は、泉律佳に犬は飼っているのかと尋ねる。すると律佳は、悲しそうに目を伏せながら、おもむろに「RISARA」と書かれた一冊のアルバムを差し出す。リサラは、律佳が小学1年生の時にブリーダーのもとから泉家にやって来たショータイプのトイプードル。両親が離婚し、一人っ子だった律佳にとって、リサラは妹のような存在だった。当時トリマーだった律佳の祖母や母親にトリミングされ、セットしてもらってドッグショーにも出陳しており、律佳にとっては自慢の妹だった。リサラが10歳の頃、丹羽眞一郎のもとにやって来たウルソンともなかよくなり、ウルソンにとっては犬社会のすべてを教えるよき先輩となった。特に大きな病気をすることなく、14歳になったリサラと共に平穏な毎日を過ごしていた律佳だったが、病に伏していた祖母の入院が決まり、それに伴って母親も引っ越すことが決まった。祖母の代わりに律佳が母親と二人で切り盛りしてきたフォンテーヌを、たった一人で続けていくことは難しいと、一度は店を手放すことも考えたが、律佳は自分で続けていくことを決意。リサラの存在と、眞一郎からの応援があれば頑張っていけると意気込む。しかし、それまで母親と二人でこなしていたことを、一人でやっていくのは想像以上に大変なことだった。律佳は次第に疲弊していく中、最初はいっしょに出勤していたリサラも、かまってやることができなくなり、自宅で留守番させることが増えていた。忙しすぎて戦場のような日々を過ごす中で、律佳は少しずつストレスを溜め込んでいた。仕事への意欲を失い、手のかかるリサラのトリミングもしなくなり、憂さ晴らしのため夜な夜な好きだったバンドのライブや飲酒に出歩くようになる。ちょうどその頃、律佳を心配した眞一郎が家を訪れると、そこにはたった1匹で留守番するボサボサの毛並みのリサラの姿を見て、眞一郎はリサラの異変に気づく。その後、帰宅した律佳は眞一郎からブラッシングくらいしてやれと言われ、逆ギレしてしまう。さらにリサラの水を飲む回数が多いことを指摘され、「のすけペットクリニック」の久宝鈴之介に診てもらうと、リサラがクッシング症候群であることが判明する。
サンジュ
佐村未祐は、これまでドッグトレーナー見習いとしてさまざまなケースに向き合って来たことから、「のすけペットクリニック」のパピークラスのほかに、ドッグトレーニング「Proud Dog」の初心者コースも任されるようになった。これまで険悪だったサンジュとの関係性も、最近ではめっきりよくなり、未祐はむしろ面倒に感じるほどサンジュに愛されていることを実感するようになる。サンジュは未祐のパートナー犬として、生徒たちのよき見本となっていたが、そんなサンジュの頑張りを当たり前に感じるようになっていた未祐は、徐々にサンジュを適当に扱ってしまっていた。それがきっかけで、サンジュは少しずつ未祐に不満を訴えかけ始めるが、そんなサンジュの変化に気づかず、緩慢なサンジュに未祐が苛立(いらだ)ちをあらわにした結果、サンジュは未祐の言うことを聞かなくなってしまう。前の暴れ犬に戻ってしまったサンジュを制御することができなくなってしまった未祐は、サンジュを連れて出勤することもできなくなり、生徒たちや丹羽眞一郎、泉律佳にはサンジュを休ませたいと、適当な理由でごまかしながらやり過ごそうとするが、眞一郎からサンジュを連れて出勤するようにうながされてしまう。仕方なく、言うことを聞かないサンジュを連れて出勤し、ドッグトレーニングに参加しようとするが、そこで無理強いしようとした未祐はサンジュに嚙みつかれ、流血する事件が発生してしまう。とうとうごまかせなくなった未祐は眞一郎に現状を打ち明けるが、心当たりがないことを訴えかける。すると眞一郎からサンジュは当分預かるから、原因がわかるまで出勤しなくていいと突き放されてしまう。未祐は一人になって初めて冷静に考え始める。実は未祐はもともと母との関係に悩まされており、5歳年下の弟、早来の面倒や、家事に至るまで、子供の頃から母に頼まれ事をされる日々を送っていた。自立してからも、浪費の激しい母から給料の一部を家に入れるように強要され、実家への入金は当たり前の状況。このままでは家族に奉仕する以外なんの価値もない人間だと思われているようでつらくなり、早くに実家を出たかったが、家族が自分を頼る体質はまったく変わることのないまま現在に至った。考えるうちに未祐は、母からの「それくらいできるでしょ?」という一番嫌悪感を抱いていた言葉を、自分も同じようにサンジュに対して投げかけていたことに気づく。そして、改めて自分にとってサンジュが、いつのまにかかけがえのないパートナーになっていたことを認識する。
テレビアニメ
登場人物・キャラクター
佐村 未祐 (さむら みゆ) 主人公
困っている人を見ると放っておけない性格の男性。年齢は23歳。同棲生活を送っていた谷田部優子から、ある日突然置き手紙ひとつでふられてしまう。その際、優子から自分の代わりにして欲しいと、犬のサンジュを押し... 関連ページ:佐村 未祐
サンジュ
佐村未祐の飼い犬。犬種はトイプードルで、年齢は生後10か月程度のオス。トイプードルにしては、体のサイズが大きい。停留睾丸であることが発覚し、開腹による去勢手術が行われた。最初はペットショップで谷田部優子に購入され、「プリンス」と名づけられたが、思いのほか大きくなったという身勝手な理由で捨てられた。ある日突然、未祐のもとに引き渡され、状況を理解できないまま未祐との生活を始めることとなった。家では一日中吠え続け、散歩に出れば興奮しすぎて制御不能となる。何かと大声で怒る未祐に対しては嚙みつくこともあり、未祐との関係は最悪の状態だった。しかしこれは未祐の接し方に問題があり、丹羽眞一郎によって指導されたことにより、改めて未祐との信頼関係を構築し、だんだんと意思疎通が図れるようになっていく。
丹羽 眞一郎 (にわ しんいちろう)
ドッグトレーニング「Proud Dog」で、代表を務めるドッグトレーナーの男性。幼い頃から犬が大好きだった。初めて飼ったのは「クマ」という名の犬で、不慮の事故で亡くしたことをきっかけに、ドッグトレーナーを目指すようになった。泉律佳と幼なじみで、高校時代は進学費用を貯めるため、泉家が営む犬の美容室「フォンテーヌ」でアルバイトをしていたこともあった。律佳や久宝鈴之介とは、総合動物専門学校ACLの同期であり、丹羽眞一郎はドッグトレーナー専科、律佳はトリマー専科、鈴之介は動物看護専科で、現在も親しい関係を築いている。専門学校で講師を務めていた藤原誠二と出会い、彼に自らが求めていた理想のドッグトレーナー像を見出した。誠二を父親のように慕い、卒業後は誠二が営む藤原愛犬訓練所で働き始めたが、7年が経過したある日、トレーニング中の「マロ」の犬舎を掃除しようとして襲われ、それを止めようとした誠二がマロに体罰を振るったことで、考え方に決定的な違いが生じた。それが大きな溝となり、眞一郎は訓練所を飛び出し、絶縁状態となって現在に至る。その遺恨は今も残っており、誠二には強い嫌悪感を抱いている。根は優しいが愛想がないため、周囲からは怖がられることが多い。犬に対する愛情が深い反面、人間とのコミュニケーションを取ることは苦手。ドッグトレーナーとして非常に有能で、犬の生態について詳しく理解しているため、指を鳴らすだけで犬を制止させることができる。ある日、愛犬のウルソンと散歩中に道路に飛び出しそうになったサンジュを間一髪で救ったことがきっかけで、佐村未祐と出会った。その際、サンジュへの接し方を間違い、コントロールできない状態の未祐に犬との接し方を教えたため、トレーニング料金を請求した。払えないなら店で働いて返すようにと、未祐に3日の猶予を与えた。その後、未祐がProud Dogで働くことを決めたため、共に店を運営することになった。未祐のことは、アシスタントとして未熟ではあると考えているものの、彼がドッグトレーナーになることを決意してからは弟子としてかわいがるようになる。そして、観察眼が鋭く、自分にないものを持っている未祐のことを、自分にとっても店にとっても欠かせない存在と認識するようになっていく。
ウルソン
丹羽眞一郎のパートナー犬。犬種はスタンダードプードルのオス。眞一郎の仕事を手伝うようになってから約8年になる。温和でおとなし性格で、犬にも人にも友好的に接する。泉律佳にトリミングしてもらっているので、いつも毛並みは美しく整っている。仕事上の先輩として接するようにと眞一郎が指示しているため、佐村未祐からは先輩として扱われている。子犬だった頃にトイレの失敗が続いた時期があり、当時まだ駆け出しのトレーナーだった眞一郎の苛立ちを敏感に感じ取った結果、排せつを拒絶して膀胱炎になったことがある。その後、眞一郎が接し方を改めたことで改善されたものの、現在も排せつ後は失敗していなくてもしょんぼりした様子を見せている。しかし、事情を知った未祐の大胆な褒め方がいい影響を与え、次第に自信を取り戻していく。
泉 律佳 (いずみ りつか)
犬の美容室「フォンテーヌ」を営んでいるトリマーの女性。母親も祖母もトリマーとして働いていた。もともとフォンテーヌは祖母が営んでいた店だったが、病に冒されて店を畳もうとした祖母から引き継ぐことを決めた。丹羽眞一郎とは家が近所の幼なじみで、2軒となりにあるドッグトレーニング「Proud Dog」の大家でもある。また、眞一郎や久宝鈴之介とは、総合動物専門学校ACLの同期で、泉律佳はトリマー専科、眞一郎はドッグトレーナー専科、鈴之介は動物看護専科で、現在も親しい関係を築いている。気は強いが根は優しい性格で、内心眞一郎のことを心配している。愛犬のリサラは、律佳が小学校4年生の時にやって来たトイプードルで、一人っ子だった自分にとって妹のような存在だった。母親や祖母にトリミングされ、ドッグショーにも出陳していた自慢の愛犬だったが、リサラが14歳の時にクッシング症候群であることが判明。懸命な治療が続けられたが、約1年後に亡くなる。ちょうどその頃、フォンテーヌを祖母から引き継いだ時期で、忙しさのあまり仕事に楽しさを見出せなくなっていた。溜め込んだストレスを解消しようと、夜な夜なライブに行ったり友達と酒を飲みに行ったりしたことで、リサラを1匹で留守番させることも多くなり、リサラの異変に気づくのが遅れてしまった。自責の念に駆られ、一時は自分を見失いかけるが、眞一郎からの言葉に勇気づけられ、最期までリサラと共に過ごすことができた。今でもリサラを失った悲しみは深く、新たな犬を飼えないでいるが、シニア犬のウルソンのフォローに徹することを決めている。
リサラ
泉律佳が飼っていた犬。ショータイプのトイプードルで、ホワイトの毛色をしている。律佳が小学校4年生の時に、ブリーダーから泉家にやって来て、律佳からは妹のようにかわいがられていた。当時トリマーだった律佳の母親や、祖母によりトリミングされ、セットしてもらってドッグショーにも出陳されていた。10歳の頃に、丹羽眞一郎のもとにやって来たウルソンとなかよくなり、まだ子犬だったウルソンに先輩犬として犬社会のマナーを教え込んだ。14歳までは病気もなく元気に過ごしていたが、その後多飲多尿から、「のすけペットクリニック」で久宝鈴之介の診察を受けたところ、肩のあたりに左右対称の脱毛が見つかり、検査の結果副腎皮質機能亢進症・クッシング症候群であることが判明した。原因は脳下垂体にできた腫瘍で、懸命な治療が続けられたが、約1年後に亡くなる。
江口 (えぐち)
レオの飼い主の女性。ドッグトレーニング「Proud Dog」の無料相談会にレオと共に参加した。レオの気が強すぎることに困っており、散歩中にほかの犬を見ると必ず吠えてケンカを売るため、散歩仲間を作りたいと思っているが、まったくできないでいる。レオの性格を改善させるため、丹羽眞一郎に相談を持ち掛けた。だが眞一郎からは、自分がダメな犬だと思い込んでいるだけで、本当にダメな犬はいないと諭され、正しい対処の仕方を教えてもらった。その後、問題の本質を知った江口は、自分が変わることを決意。お試しトレーニングを経て、レオと共にトレーニングに通うことになった。その後、広永とは散歩仲間となったが、同じProud Dogの生徒としてトレーニングを始めてからは、何かとマウントを取られがちなことに傷ついている。
レオ
江口の飼い犬。犬種はミニチュアシュナウザー。江口に連れられ、ドッグトレーニング「Proud Dog」の無料相談会に参加した。ほかの犬を見ると必ず吠えてケンカをするため、いつも江口に抱っこされている。丹羽眞一郎が診断した結果、実はレオはもともと怖がりな性格で、また吠えるかもという江口の緊張が伝わってレオの警戒心をあおり、頼りにならない飼い主の代わりに自分が何とかしないとという気持ちを起こさせた結果、つねに周りを威嚇する癖がついたことが判明した。その後は江口と共にProud Dogの生徒となってトレーニングを続けている。
三宅 郁子 (みやけ いくこ)
リコシェの飼い主の女性。散歩中に自転車やバイク、車が通るとリコシェがその場をぐるぐると回り始めるため、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。散歩は朝夕2回でそれぞれ15分から30分程度行っているが、それを2倍にするように丹羽眞一郎から指示され、自分の負担が増えることを理由に返事に躊躇(ちゅうちょ)した。さらに、家族と共にカウンセリングを受けるように求められたが、時間が合わないことを理由にそれも断ろうとした。基本的に、リコシェの世話はすべて自分一人で担っている。リコシェをかわいがっているが、奏音やお父さんが自分勝手にかわいがるだけで、しつけや身の回りの世話に関していっさい協力しようとしないことに苛立ちを覚えている。三宅郁子自身も、リコシェの毛がソファにつくことを嫌がったり、玄関のスリッパをそろえて置くことにこだわるなど神経質なところがあるが、リコシェに餌をやる時にフードボウルを投げて置いたり、散歩後に足をふかずに家に入れたりと、どこかちぐはぐな行動が見受けられる。それは、以前リコシェに嚙まれた経験があり、どこかでリコシェを恐れているから。その後、再びリコシェに嚙まれ、大ケガを負ったことがきっかけで、奏音やお父さんのリコシェに対する気持ちも変化し、自分たちの手でリコシェを幸せにすべく、家族一丸となってしつけ教室に参加することを決めた。それからは、散歩も三人で分担して行うようになり、少しずつではあるが着実にリコシェとの生活も変化を見せ始める。
奏音 (かのん)
三宅郁子の娘で高校1年生。夜はリコシェといっしょに眠るなど、リコシェをかわいがっている。しかし、身の回りの世話すべてを郁子に丸投げし、散歩は郁子が担当だからといっさい協力しようとはしない。ドッグトレーナーの佐村未祐が、若くてイケメンであることを知ると、とたんに態度を変えて連絡先を交換したがった。その後、未祐から頼まれて家庭の日常の様子を撮影した。ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに家族で来るように求められるが、面倒くさいという理由で拒否し続けていた。郁子がリコシェを怒るたびに、リコシェがかわいそうだと撫(な)でやり、都合よくかわいがっている。しかし郁子がリコシェに嚙まれ、大ケガを負ったことがきっかけで、リコシェに対する気持ちが変化し、自分たちの手でリコシェを幸せにすべく、Proud Dogのしつけ教室に参加することを決めた。
お父さん (おとうさん)
三宅郁子の夫で、奏音の父親。リコシェをかわいがっているが、餌や散歩などの身の回りの世話をすべて郁子に丸投げし、いっさい協力しようとしていない。それどころか、しつけに対して細かいことを言う郁子を煙たがり、リコシェが欲しがれば自分が食べているものを与えることもある。基本的に都合よくかわいがるだけで、しつけには非協力的な姿勢を取っている。しかし郁子がリコシェに嚙まれ、大ケガを負ったことがきっかけで、リコシェに対する気持ちが変化し、自分たちの手でリコシェを幸せにすべく、ドッグトレーニング「Proud Dog」でしつけ教室に参加することを決めた。
リコシェ
三宅郁子の飼い犬。犬種はボーダーコリー。散歩中に自転車やバイク、車が通ると咄嗟(とっさ)にそれを追いかけようとして、その場をぐるぐると回り始める。その勢いはすさまじく、車両に轢(ひ)かれる心配もあるため、郁子は辞めさせようとしているが直らない。また、足裏の肉球をなめる癖がある。散歩は郁子が朝夕2回でそれぞれ15分から30分程度行っている。フレンドリー性格で、人間が大好き。嬉しさのあまり飛びついて離れないこともあるが、実は家族みんながそれぞれ違う指示を出すことでストレスが溜まり、つねに不安で混乱している。さらに散歩が足りないことによる運動不足でもストレスが溜まっており、ぐるぐる回ったりなめたりする行動はストレスが原因であることが判明した。その後、しつけに迷走する郁子に嚙みつき、ケガを負わせることになった。これがきっかけで、これまでにも郁子に嚙みついたことがあったことが明らかになり、改めてきちんとしたしつけが必要であることが丹羽眞一郎から家族に伝えられ、奏音やお父さんも参加してドッグトレーニング「Proud Dog」でトレーニングが行われることになった。
久宝 鈴之介 (くぼう すずのすけ)
「のすけペットクリニック」の院長を務める男性。丹羽眞一郎や泉律佳とは大学卒業後に入学した総合動物専門学校ACLの同期で、久宝鈴之介は動物看護専科、眞一郎はドッグトレーナー専科、律佳はトリマー専科で、現在も親しい関係を築いている。佐村未祐がサンジュの去勢手術について相談に訪れた際には、未祐が不安を抱いていることを知ったうえで、手術のリスクについて丁寧に説明した。その後、手術を受けることを決めた未祐に対して、摘出したサンジュの睾丸を嬉々として見せたり、自分の飼っている犬の睾丸は歴代ホルマリン漬けにして部屋に飾っていることを明かすなど、少々常識を逸脱した変態チックな性格を垣間見せた。
小塚 (こづか)
ココの飼い主の女性。年齢は35歳で、最近離婚したばかり。もともとは専業主婦だったため、ココと離れることはなく、どこへ行くにもココといっしょだった。しかし離婚したことで、引っ越しして仕事を始めたため生活環境が一変した。自分が出勤したあと、ココが一日中吠え続けていることを知り、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。実は問題を抱えているのはココではなく、小塚自身だった。だがココに依存しすぎているため、ココと離れることに不安を感じ、ココが留守番に慣れようとしていたにもかかわらず、そのチャンスをことごとく潰していた。何かにつけて「可哀想で」を連発し、ココを理由に仕事も辞めてしまった。カウンセリングでは、丹羽眞一郎の指示を聞こうとしなかったため、一時的に見放されそうになるが、佐村未祐に助けられ、トレーニングを受けられることになった。その後、ココではなく自分に問題がある事実を受け入れ、未祐の手を借りながらココと離れることに慣れる努力を始める。その後、トレーニングを乗り越えたココと共に、Proud Dogで新たなトレーニングを受けながら前向きな生活を始めることになる。
ココ
小塚の飼い犬。犬種はミニチュアダックスフントで、年齢は5歳のメス。小塚の離婚により、引っ越しすることとなる。もともとどこへ行くにも飼い主といっしょで、留守番の経験もなかったが、生活環境が一変したことで留守番をすることになった。しかし、留守番の時に部屋を荒らし、一日中吠え続けた末に声が枯れてしまったため、小塚と共にドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。しかし丹羽眞一郎の診断で、分離不安を助長する原因は小塚にあるとして、ココと離れるトレーニングを行った結果、ココはすんなりと留守番に慣れることができた。
藤原 誠二 (ふじわら せいじ)
藤原愛犬訓練所の所長を務める男性。丹羽眞一郎のドッグトレーニングの師匠でもある。「犬は悪くない。問題は常に人間側にある」「犬を変えたかったら人を変えろ」「体罰はダメだ絶対に」が口癖。以前、総合動物専門学校ACLでの講師を頼まれ、眞一郎と出会った。眞一郎が卒業後は藤原誠二自身の営む訓練所で雇い、いっしょに働いていた。眞一郎からは「ジジイ」と呼ばれ、父親のように慕われていた。それから7年が経過した時、眞一郎がトレーニング中だったマロに襲われるが、マロを振りはらおうとしなかったため、眞一郎を助けるためにマロを殴ってしまう。それ以来、手に負えない犬をしつけるには体罰も必要という訓練方針に変え、お金のためにどんな凶暴な犬も引き受けるというスタンスに変更した。体罰を容認するようになってからは、それに賛同できない眞一郎との関係が悪化。最終的に眞一郎が訓練所から出て行くことになり、それ以降断絶状態が続いている。実は、訓練方針の変更に踏み切った裏には、眞一郎に自立をうながしたいとの思いがあり、自分からそのきっかけを作りたいという思惑があった。現在も体罰を利用してのしつけは続けており、世間からの厳しい批判の的にもなっている。しかし最終目的は、犬と飼い主の幸せのためということに変わりはなく、実際に手が付けられない状態の犬を改善させ、飼い主と共に幸せになった例は少なくない。
角田 澄代 (かどた すみよ)
ジーニーと久美の飼い主の女性。若い頃はバレーボールの選手だった経験があり、中田久美と同じリーグでプレイしたこともある。彼女のように聡明で凛(りん)とした女性に育って欲しいという願いを込め、飼い犬に「久美」と名づけた。子供は独立して夫は単身赴任中のため、愛犬2匹と生活を送っている。明るくポジティブな性格で、大型犬の久美を片手で軽々と抱き上げてしまうほどパワフルで元気いっぱい。久美の散歩と称してランニングするのが日課となっている。ある日、ランニングがてらに飛び込みでドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。ふだんはおとなしい久美が、インターホンや車の音を聞くと吠え始めることに悩んでいる。丹羽眞一郎から、問題解決のために散歩の時間を増やすことを提案され、1日10キロのランニングを目標に散歩に行くことにした。しかし散歩を増やして以来、久美の状態がさらに悪化。今度は自分がちょっと立ち上がったり寝返りをうったりしただけで吠えたり、まとわりつくようになったため、再び眞一郎のもとを訪れた。眞一郎の診断の結果、久美の問題行動の原因がジーニーにあることがわかり、ジーニーの生活や接し方について見直しを行うことになった。その後、問題はおおよそ解決したが、ジーニーと久美と共にProud Dogでトレーニングを受けている。
ジーニー
角田澄代の飼い犬。犬種はチワワで、年齢は5歳のオス。角田家の先住犬で、久美が子犬だった頃から共に過ごしていた。角田のことが好きすぎて、ひそかに久美が角田から嫌われるような行動をするように仕向けていた。久美がインターホンや車の音を聞くと吠え始めることも、ジーニーからの指示で行なっていた。もともと犬種的に一人の人間に執着するタイプで、角田を独占したい気持ちが強く、角田の夫にすら敵意を向けることがある。当初は久美を追い出すつもりだったが、体格差もあって力技が通用せず、仕方なく手下として扱うことにしていた。チワワは散歩が不要というペットショップスタッフの言葉をうのみにした角田が、ジーニーを散歩に連れて行かず、いつも久美だけを散歩に連れて行くため、留守番中に寂しい思いをした結果、さらに久美との関係をこじらせてしまった。しかし、丹羽眞一郎からのアドバイスを受けて散歩を始め、ジーニーに社会性を身につけ直すためのトレーニングを開始した。その後ドッグトレーニング「Proud Dog」の生徒としてトレーニングに参加することになり、さまざまな犬との関係構築に向けて奮闘中。
久美 (くみ)
角田澄代の飼い犬。犬種はダルメシアンで、年齢は1歳のメス。子犬の頃から先輩犬のジーニーに教育されたため、全面的にジーニーに従うスタンスを取っている。ふだんはおとなしく、知らない人には興味もない様子ながら、インターホンや車の音を聞いて吠え始めるとなかなか治まらない。吠える声で受話器の音も聞こえないほどで、来訪者に嚙みつくことはないが、玄関を開ければ飛びついてしまう。これを問題視した角田と共に、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。丹羽眞一郎からの提案で、もともと散歩は1日1回、走ったりしながら15分から30分程度行っていたが、1日10キロ程度のジョギングに変更した。これである程度問題は改善されると思われたが、さらに悪化することになった。眞一郎が診断した結果、すべての問題行動がジーニーからの指示で行われていることが判明。ジーニーが角田に執着するあまり、久美が角田に嫌われるように仕向けて指示していたもので、ジーニーからの指示がなければ問題行動は起こさないことがわかった。その後は角田とジーニーと共に、Proud Dogの生徒としてトレーニングに参加することになる。
浅沼 朱里 (あさぬま あかり)
はなの飼い主。双子の女児「真芽」と「夢徠」の母親。はなが餌を部屋のあちこちに隠してしまう癖があり、このままでは娘たちの手前、衛生上よくないと考えてドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。つねに終わらない家事と、2歳の真芽と夢徠の保育園の送り迎え、夫と娘たちの弁当作りをパート勤めを行いながらこなしており、精神的に余裕のない状況が続いている。もともとはなは夫婦にとっての長女という気持ちで迎えた犬だったが、まったく言うことを聞かないはなに苛立ち、いつしか日常のストレスの矛先を向けるようになってしまう。カウンセリングの際、丹羽眞一郎から提案された内容に不服があり、その後Proud Dogに顔を出さなくなるが、はなが餌をまったく食べなくなったため、心配して「のすけペットクリニック」の久宝鈴之介のもとを訪れた際に、偶然にも眞一郎と佐村未祐に遭遇してしまう。バツが悪い状況ではあったが、はなの体調不良は大声で怒鳴り散らす浅沼朱里自身のせいだと指摘され、はなを再び眞一郎に託すことに決め、はなとの信頼関係再構築に向けて動き出す。
はな
浅沼朱里の飼い犬。犬種はヨークシャーテリアで、年齢は3歳のメス。餌を部屋のあちこちに隠してしまう癖があり、浅沼と共にドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。もともと子犬の頃から餌を食べなかったため、浅沼からフードを投げてもらったり、隠したフードを見つけながら食べたりと、ゲーム感覚で餌をもらうことが日常となっていた。その名残で、餌を食べる時はフードボウルを大きく散らかしたり、餌を至る所に隠しに行ったりする習慣が残っている。しかし、浅沼家に双子の女児「真芽」と「夢徠」が誕生したことで生活は一変。忙しさで余裕のなくなった浅沼から、それらの行為についてとがめられるようになり、大声で怒鳴られたりするようになった。それが原因となり、餌を食べると怒られると思い込んで、食べること自体を拒絶するようになってしまった。「のすけペットクリニック」の久宝鈴之介に診察してもらい、体に異常が見られないことが判明したのち、丹羽眞一郎と佐村未祐に託されることになった。未祐の優しさと型破りな接し方が功を奏し、餌を口にするようになった。その後、浅沼もむやみに怒ることをやめ、はなの行動をある程度許容するようになったため、状況は次第に改善していく。
谷田部 優子 (やたべ ゆうこ)
佐村未祐の元彼女で、ティアラの飼い主。もともと未祐とは、当時交際していた男性と路上で口論になり、泣いていた際に声をかけられて出会った。その際、行くところがないからと未祐の家に居座り、いっしょに暮らすようになった。その時はバーに勤めており、未祐に仕事を辞めさせ、同じバーで働くように勧めた。しかし、ある日突然未祐に別れを告げる置き手紙を残し、未祐の家から出て行ってしまう。その直後、再び未祐の前に姿を現し、これで寂しさを紛らわせてと、サンジュを押し付けて姿を消した。その後、ペットショップで見つけたティアラに一目ぼれして購入。かわいらしくポージングさせて撮影したティアラの写真をSNSに投稿し、注目を浴びることで心を満たしている。そんな中、ティアラがおとなしく撮影させてくれないことから、トレーニング教室を探していた際に、偶然見つけたドッグトレーニング「Proud Dog」を訪れ、そこで未祐と5か月ぶりの再会を果たした。しかし香水の香りが強すぎて、犬に悪影響を及ぼすということで、丹羽眞一郎から退店を求められた。眞一郎の言葉に腹を立て、谷田部優子自身に悪いところがあることなどまったく考えもしない。犬を飼うことへの意識が低く、自己中心的な考えの持ち主で、犬を思いやる必要があることなど知る由もなかった。サンジュを未祐に押し付けた理由も、体が大きすぎるという身勝手なもので、ティアラには首輪もリードも付けず、ふつうのバッグに入れて連れ回していた。大きくならないように食事制限を行うなど、自分の見栄えのことしか考えていなかった。だが、未祐から親身になって対応された結果、犬と暮らすことへの意識が大きく変わった。実は未祐と別れた時にIT系のお金持ち男性と交際しており、ティアラを100万円で購入してくれたのも彼だった。しかし、言うことをまったく聞かないティアラにきつくあたる優子の様子に、子供ができてもそんな風に接するんだろうと言われ、一方的に別れを告げられる。自分の考えを改めたのち、ジャージ姿にノーメイクでProud Dogに姿を現し、未祐に復縁をせまった。その後、ティアラと共に健全な社会性を身につけるトレーニングを始めることになった。
ティアラ
谷田部優子の飼い犬。犬種はマイクロティーカッププードルで、年齢は5か月のメス。ティーカッププードルよりもさらに体が小さく、ペットショップで100万円で販売されていた。この月齢にしては小さく痩せすぎており、いつも口元から舌が出ている状態。SNSに投稿する写真を撮るために、ティーカップに入れられたり、小ささを保つために食事制限をさせられたりしている。散歩はさせられることはなく、外出時はふつうのバッグに入れられ、ノーリードで連れ回されている。その状態で一日中出歩くこともあり、バッグにいるあいだはつま先立ちの状態で、つねに無理な体勢を強いられている。基本的におとなしい性格ながら、優子に遊んでもらうことはなかった。飼い主以外の人間や、ほかの犬との接点もないため、攻撃性はないが社会性に欠けている。優子と共にドッグトレーニング「Proud Dog」を訪れたことがきっかけで、優子の意識が変化したため、遊びや散歩など、犬として健全な社会性を身につけるトレーニングを始めた。
敷島 (しきしま)
しずの飼い主の女性。しずが毛玉だらけで異臭を放っているため、犬の美容室「フォンテーヌ」を訪れ、泉律佳にトリミングを依頼した。トリミングの時は手が付けられない状況になるため、心配しながらの来訪だったが、律佳が丁寧に対応してくれたため事なきを得る。その後、ドッグトレーニングを提案されたため、ドッグトレーニング「Proud Dog」でカウンセリングを受けることにした。異臭を放つしずを嫌がることなくきちんと接してくれた丹羽眞一郎、佐村未祐を信頼し、しずを任せることにした。その後、しずに肛門嚢炎(のうえん)が発覚し、久宝鈴之介の「のすけペットクリニック」に通院することになった。自分が犬のことに関して不勉強だったことを実感し、涙を流した。しずのトレーニングを即決し、病院の診察もきちんと受け、しずのことを日頃から大事にしていることがうかがえる。
しず
敷島の飼い犬。犬種はシーズーで、毛玉や汚れがひどく、悪臭を放っている。トリミングのために敷島に連れられ、犬の美容室「フォンテーヌ」を訪れた。ふだんは人懐っこい性格で、友好的な態度ながら、トリミングの時だけは手が付けられなくなる。その原因は、トリミング台で嫌な思いをしたことがあるから。それに気づいた泉律佳からの提案で、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングを受けることになった。丹羽眞一郎のおかげでトリミング台でのトラウマは解消された。その後、悪臭の根源である肛門嚢炎が発覚。久宝鈴之介の「のすけペットクリニック」で診察を受け、しばらく通院することになった。
音羽 みのり (おとわ みのり)
ちよりの飼い主。マッサージ店に勤務する女性で、年齢は27歳。「オレと犬のどっちが大事」と聞かれたことが原因で7年間付き合った男性と2年前に別れた。スマートフォンが壊れ、買い替えのために訪れた携帯ショップで出浦翔吾と知り合った。独身で犬を飼うと婚期を逃すというジンクスを嘆いていた際に、翔吾から共感を得た。互いに犬好きという共通点があることがわかり、通りがかった佐村未祐からも、犬好き同士で付き合えばいいと言われ、翔吾との交際が決まり、とんとん拍子で結婚を前提に同棲することになった。だが、いっしょに暮らすようになって、互いに犬への接し方に大きな違いがあることに気づいた。音羽みのり自身はちよりにきちんとしつけを行い、自らの指示に従って行動できるようにしていた。一方の翔吾は、飼い犬の大吾を自由にさせてやりたい思いが強く、散歩中も人の気配がないのを確認してノーリードで放すこともあり、しつけを重要視していない様子だった。大吾がおもらしや、同じベッドで眠ることに違和感を感じ、翔吾に相談するも聞く耳を持たなかったため、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。しかし相談対象が同居人とその飼い犬ということで、本人たちを連れて来るように言われ、結局何をすることもできなかった。その後、犬との関係性に対して翔吾と意見が食い違ったことが原因で、翔吾とケンカになって破局を迎えた。だが、翔吾の主張するとおり自由にしすぎたことが原因で大吾がケガを負ってしまい、それがきっかけで翔吾が犬のしつけについて考えを改めることとなった。翔吾から謝罪され、その後復縁した。
ちより
音羽みのりの飼い犬。犬種はパピヨンで、年齢は2歳のメス。みのりからは、きちんと指示に従うようにしつけられており、夜寝る時は自分のハウスの中と決めている。だが、みのりが出浦翔吾と同棲を始めたことで、生活が一変する。翔吾から夜いっしょのベッドで寝ないのはかわいそうと言われたことがきっかけで、みのりと翔吾、大吾と同じベッドで眠るようになり、翔吾の甘やかしが原因でわがままに振る舞うようになる。
出浦 翔吾 (いでうら しょうご)
大吾の飼い主。携帯ショップに勤める男性で、年齢は26歳。スマートフォンの買い替えのため訪れた音羽みのりと知り合った。独身で犬を飼うと婚期を逃すというジンクスを嘆いていた彼女の言葉に、大きく賛同したことがきっかけで、互いに犬好きであることが判明した。その時、通りすがった佐村未祐から、犬好き同士で付き合えばいいと言われ、みのりとの交際が決まり、とんとん拍子で結婚を前提に同棲することになった。だが、いっしょに暮らし始めて、互いに犬への接し方に大きな違いがあることに気づいた。出浦翔吾自身は大吾を自由にさせてやりたい思いが強く、散歩中も周囲に人がいないことを確認してノーリードで放すこともあり、特にしつけの必要性も感じていなかった。一方のみのりは、ちよりをきちんとしつけており、その関係は人間が犬を服従させているようなイメージを持った。しつけは叩(たた)いて言うことを聞かせるものという印象を持っていたため、そんなみのりとちよりの関係に嫌悪感を抱いた。犬との関係性について意見が食い違ったことが原因で、みのりとケンカになって破局を迎えた。しかしその後、大吾をノーリードで走らせていたことでほかの犬とケンカとなり、大吾がケガを負ってしまう。それをきっかけにしつけについての考えを改め、ドッグトレーニング「Proud Dog」でトレーニングを行うことを決意。自分の考えが間違っていたことをみのりに謝罪し、交際を再開させた。
大吾 (だいご)
出浦翔吾の飼い犬。犬種はコーギーで、年齢は1歳のオス。犬にも人にも友好的な性格で警戒心がまったくない。翔吾からきちんとしつけを受けていないため、よくも悪くも自由に振る舞っている。翔吾が音羽みのりと同棲を始めたことで生活環境が一変した。もともと家でのトイレは失敗も多く、家具に向けて排尿してしまうことも少なくなかった。散歩ではノーリードで放され、走り回って自由を満喫しており、夜はみのりと翔吾、ちよりと同じ布団の真ん中で我が物顔で眠っている。そんなある日、ノーリードで走り回っていた時に散歩中のほかの犬とケンカになり、嚙まれてけがを負ってしまう。これをきっかけに、しつけの重要性に気づいた翔吾により、ドッグトレーニング「Proud Dog」でトレーニングを受けることになった。
加藤 (かとう)
ロッキーの飼い主。息子の岳広が亡くなってからというもの、ロッキーが仏壇の前から動かなくなり、1年近くそのままの状態が続いている。そのため、心配になった加藤がドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れ、丹羽眞一郎に出張トレーニングを申し込んだ。高齢であるロッキーの体を心配しており、ロッキーには以前のように元気に振る舞って欲しいと思っている。妻のお母さんからは、ロッキーのトレーニングを反対されているため、お母さんが仕事でいない日に眞一郎に自宅に来てもらい、ロッキーのトレーニングを行うことを決めた。
岳広 (たけひろ)
加藤とお母さんの息子。小さい頃から犬が大好きで、8歳の誕生日にロッキーを迎えた。それ以来、ロッキーと共にドッグスポーツにも挑戦し、大会で賞を獲るほどに息がぴったり合ったコンビだった。ロッキーがケガをした時には、どのくらい痛いのかわかってやれないと泣いたこともあり、犬の気持ちが知りたいという思いから、動物行動学を勉強できる大学の進学を目指していた。念願叶(かな)って志望の大学に合格した矢先、不慮の事故で他界する。
お母さん (おかあさん)
ロッキーの飼い主で、岳広の母親。岳広が不慮の事故で他界したことで、深い悲しみを抱いている。岳広が亡くなって以来、ロッキーが仏壇の前から動かなくなったことを、自分の代わりに悲しんでくれていると解釈している。ロッキーが寝たきりで仏壇前にいる状態が1年近くになっているのにもかかわらず、ロッキーの体を心配することもなく、仏壇の前にいることを褒め続け、おやつをあげている。そんな中、丹羽眞一郎が、夫の加藤の依頼によってロッキーの出張トレーニングに来たことを知るや激昂し、岳広の傍にいたがっているロッキーに無理をさせるなと言い放ち、トレーニングだけでなく眞一郎の来訪をも拒絶した。しかし、自分の悲しみをロッキーに押し付けているだけだと眞一郎から指摘され、自分のしていたことの間違いに気づく。それからは岳広の代わりに、自分たちがロッキーを幸せにしてやろうと強く決意することとなった。
ロッキー
加藤の飼い犬。犬種はゴールデンレトリバーで、年齢は11歳。岳広が事故で他界して以来、仏壇の前から動かなくなってしまう。もともと岳広とは強い信頼関係で結ばれており、共にドッグスポーツにも挑戦し、大会で賞を獲るほどに息がぴったり合ったコンビだった。加藤やお母さんからは、岳広を失った悲しみで仏壇前から動かなくなったと思われているが、実際は仏壇の前にいるとお母さんから褒められ、ご褒美をもらえるからだった。1年近く仏壇前で寝たきりの状態でいるため、足腰の筋肉は落ち、四肢はなめ続けていることで変色し、タコのような床ずれもできている。ドッグトレーニング「Proud Dog」の丹羽眞一郎が出張トレーニングに訪れるようになってからは、眞一郎を見ると自分から立ち上がるようになり、加藤からの指示にも反応を示すようになった。
広永 (ひろなが)
あんもの飼い主の女性。10年ほど前までは中学校で国語の教師を務めていたが、現在は非常勤講師として働いている。江口は、公園で犬を介してなかよくなった散歩仲間であり、公園ではリーダー的な存在。あんもに問題行動があるわけではないが、最近いい子になったレオを見て、あんももドッグトレーニング「Proud Dog」でトレーニングを受けることを決めた。初めは佐村未祐の担当クラスで、谷田部優子とティアラと共にトレーニングを受けることになった。しかし内容に物足りなさを感じ、レオができるならあんもにもできるはずと、レオと同じ丹羽眞一郎のクラスに編入することを一方的に決めたが、レオが得意でもあんもが苦手意識を持つものがあることが判明。レオと江口に対してライバル意識を強く持つようになり、自宅でも時間割を作ってトレーニングに励み、新たに別の教室にも通い始め、あんもに必要以上のトレーニングを強要し始める。「レオにできて、あんもにできないわけがない」が口癖になり、その言葉や態度が江口を傷つけることとなる。その後、ストレス行動を起こすようになったあんもに、手を嚙まれてしまう。それからは散歩中でも覇気がなく、威嚇するあんもを制止しようともしないため、周囲からも避けられるようになる。しかし、眞一郎からトレーニングをやりすぎていることを指摘され、我に返った。そしてドッグトレーニングが、犬と飼い主がいっしょに楽しむためのものであり、他人に自慢するためのものではないと諭され、あんもとのトレーニングの続け方を考え直すことができた。
あんも
広永の飼い犬。犬種はビションフリーゼで、年齢は2歳のメス。白くて丸くてお餅のような見た目と、「餅」という字は「あんも」とも読めることから、この名前が付けられた。子犬の頃から温和でおとなしい性格だが、定期的に家中を異常なほど走り回る、この犬種特有の癖であるビションブリッツが見られる。広永の上手な教え方のおかげで、きちんとしたしつけができている状態だが、広永の意向により、ドッグトレーニング「Proud Dog」でトレーニングを受けることになった。基本的になんでも器用にこなすことができるが、さまざまな障がい物の中で、トンネルだけはどうしてもくぐることができない。トンネルに苦手意識があることがわかると、自宅でもトレーニングが行われるようになり、トンネルくぐりだけの毎日を続けさせられた。さらに、Proud Dog以外の教室にも通うことになり、日々トレーニングに追われる生活を送るうちにストレスが溜まり、我を忘れたように暴れ回って広永に嚙みついた。それ以来、広永から指示されることもなくなり、散歩中でもほかの犬に向かって威嚇するようになった。広永はそれを反抗期ととらえたが、実際はそんなことはなく、指示を出されればきちんとそれに従うのだが、広永が指示することをやめてしまっただけだった。ドッグトレーニングがきっかけで、広永との関係が悪化しかけるも、トレーニングを行うことの意味を考え直した結果、再び信頼関係を構築し直すことができた。
小山田 (おやまだ)
リボンの飼い主の男性。定年退職を機に妻から離婚が言い渡されたため、現在はリボンと二人暮らし。妻のいない生活にはまだ慣れておらず、これまで妻に任せっぱなしだったリボンの世話もうまくできない状態。これまで仕事が忙しいことを理由に、リボンにかまってこなかった分、いっしょに遊んでやろうと張り切るが、それが空回りして、なかなかリボンとうまく遊ぶことができない。自分の指示も聞かなくなったため、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れた。だが、そこで丹羽眞一郎から言い渡されたのは、リボンの老化という現実だった。自分が思っていたよりもリボンが年老いていたことにショックを受け、リボンがいなくなってしまったら自分が一人ぼっちになってしまうと、焦燥感に苛まれるようになる。それ以来、リボンの健康維持のために散歩の距離を延ばしたり、坂道で負荷をかけるなど、無理な運動をさせるようになった。その結果、リボンが倒れ、拡張型心筋症を患っていることが判明。病気の発覚にさらなるショックを受けるが、久宝鈴之介と眞一郎の話を聞き、これからの時間を大切に過ごすことを心に決めた。
リボン
小山田の飼い犬。犬種はオールドイングリッシュシープドックで、年齢は12歳のメス。1年に1度の健康診断は欠かさず行っている。最近小山田の妻が離婚していなくなったため、身の回りの世話は小山田がしている。犬の美容室「フォンテーヌ」で毛を短くカットしてもらったのち、ドッグランに行ったが、いっしょに走ろうと小山田から誘われてもその場に留まり、走ることはなかった。お座りや、指示を聞くにも時間がかかることから、小山田に連れられてドッグトレーニング「Proud Dog」でカウンセリングを受けることになった。だが、すべての原因は肉体の老化にあると判断された。老化という言葉にショックを受けた小山田により、健康維持のために散歩の距離を延ばされたり、坂道で負荷をかけられるなど、無理な運動をさせられるようになった結果、老体に無理がかかり、散歩の途中で倒れてしまう。「のすけペットクリニック」での診察の結果、拡張型心筋症を患っていることが判明。完治はできない病気だが、生活に気を付けながら進行を遅らせる投薬治療に通うことになった。
東山 絵麻 (ひがしやま えま)
リュウタの飼い主の女性。総合動物専門学校ACLのトリミング専科1年生。トリマーになるため勉強中で、まじめな性格の頑張り屋。犬の美容室「フォンテーヌ」で、期間限定のアルバイトとして働きながら、泉律佳の指導も受けている。地方出身だが、あこがれのトリマー、小林のサロンで働くことを夢見て、その近くの学校を選び両親を説得した。そのため、現在は学校の寮で愛犬リュウタと共に生活中。もともとプードルが好きで、実家でもトイプードルを飼っているため、同じ犬種を飼う予定だったが、里親を募集していたジャックラッセルテリアのリュウタのかわいらしさに一目惚れし、リュウタを飼うことに決めた。しかし、かわいくて元気いっぱいで癒される一方で、リュウタが家中のものを片っ端から破壊することに悩んでいる。クッションや座椅子をはじめ、ケーブルやイヤホン、さまざまなリモコンやスマートフォンに至るまで、これまで破壊されたものは数知れず。その都度買い替えが必要となり、お金も底を尽きて途方に暮れている状態。この破壊行動以外はリュウタを天使のようにかわいいと思っている。悪いのはリュウタではなく、しつけができない自分であると考えて律佳に相談したところ、丹羽眞一郎を紹介されてドッグトレーニング「Proud Dog」でカウンセリングを受けることになった。ひとつひとつ問題行動の原因を探っていくことになるが、その最中に自分が食べ残したするめをリュウタが引き出しから漁って食べ、その後スニーカーの紐(ひも)を誤飲する事態が発生し、「のすけペットクリニック」で手術を受けることになった。すべては自分が悪いと自責の念に駆られるが、その後リュウタは無事退院することができた。破壊行動の原因が明らかになったところで、クレートでのハウストレーニングを開始。頭と体、両方を使うドッグスポーツ・フライボールを始めたことで、心地よい疲労感を得ることができるようになったため、夜はよく眠るようになり、破壊行動はほとんどなくなった。その後はリュウタと共に平穏な日常を送っている。
リュウタ
東山絵麻の飼い犬。犬種はジャックラッセルテリアで、年齢は1歳のオス。いつも元気いっぱいで、家中のものを片っ端から破壊するため、絵麻を悩ませている。これまでクッションや座椅子をはじめ、ケーブルやイヤホン、さまざまなリモコンやスマートフォンに至るまで、破壊しつくしたものは数知れない。ドッグトレーニング「Proud Dog」でカウンセリングを受けたのち、破壊行動の原因を探るために散歩の時間が増やされたが、特に効果が見られなかった。長時間の散歩ののち、ドッグランで2時間ほかの犬たちと遊び回ってもまだ足りないほどの体力が有り余っている。だが、どれだけ運動を増やしても破壊行動をやめることはなく、結局夜眠る時はケージに入れられるようになったが、そのケージも一晩で破壊してしまった。トレーニング方法をさらに変更し、部屋からものをなくす方法が試されることになった。しかし予想以上にリュウタの知能が高く、しまってあったするめを食い荒らし、スニーカーの紐を誤飲したため、手術を受けることになった。その後無事退院し、問題点が明らかになったところで、クレートでのハウストレーニングを開始。頭と体、両方を使うドッグスポーツ・フライボールを始めたことで、心地よい疲労感が得られるようになり、夜はクレートでよく眠るようになったため、破壊行動はほとんどなくなった。その後は絵麻と共に平穏な日常を送っている。
根岸 修斗 (ねぎし しゅうと)
犬が大好きな小学5年生の男子。犬に関する知識を深めたいと、家にある犬の図鑑をボロボロになるまで読み込んでいる。また犬が大好きすぎて、近所中の飼い犬の名前と絵を記した犬分布図を作成している。散歩中の犬をつけ回し、こっそりと写真を撮ったりして飼い主に怒られたこともある。母親が犬を怖がるため、家では犬を飼えなかったが、自分の犬好きに根負けし、小さくておとなしいならという条件で犬を飼うことを許してくれた。ちょうど貰い手を募集する貼り紙を見つけ、飼い主を失くしたラテを引き取ることになったが、おびえるラテの気持ちに気づかなかったため、母親が嚙まれてしまう。問題を解決するため、ドッグトレーニング「Proud Dog」を訪れると、事情を知った丹羽眞一郎が、友達として協力を申し出てくれた。そのおかげで、眞一郎から犬のことについてたくさんのことを教えてもらい、それまでのラテとの接し方が間違っていたことを知った。ラテの気持ちを考えた結果、時間をかけてラテとの信頼関係を構築するため、ラテの方から自分の方に来てくれるのを待つことにした。その後、自分たちがラテの新しい家族であることを認めてもらうことができ、いっしょに散歩に出られるようになった。これがきっかけとなり、ドッグトレーナーになることを決意。目標は、眞一郎のようなかっこいいドッグトレーナーになると豪語した。
ラテ
根岸修斗の飼い犬。犬種はマルチーズとプードルの両親から生まれたいわゆるマルプー。もともとの飼い主はおばあさんだったが、おばあさんが他界したため、親族に引き取られ、新たな飼い主が探されることとなった。里親募集の貼り紙を通じて修斗の家にもらわれることになったが、根岸家になじむには時間が必要な状況だった。しかし、新しい家族がラテが怖がっていることを理解せずに接し続けた結果、修斗の母親を嚙んでしまう。その後、丹羽眞一郎からのアドバイスを受けた修斗が接し方を変えたことで、少しずつ信頼関係を築き始め、時間をかけて修斗たちが新しい家族になったことを理解した。
林 温之 (はやし はるゆき)
茶太郎の飼い主の男性。2年前にデビューした漫画家で、漫画のために地元から上京し、ボロボロのアパートを借りて生活している。漫画家としての初連載が決まった日、出版社からの帰り道に迷い犬だった茶太郎と出会った。家までついてきてしまったが、入居者が自分しかいないことと、初めて連れてきた友達だからと、大家さんから犬を飼う許しを得ることができ、それ以来茶太郎との共同生活を続けている。その後1年に及ぶ連載のあいだは、茶太郎が家族や兄弟、友達のすべての役をこなしてくれたおかげで、精神的に非常に助けられた。だが、それ以降ネームがまったく採用されなくなり、新しい連載が始められないまま現在に至る。口下手で感情表現が苦手だが、茶太郎にだけは何でも話すことができる。茶太郎をかわいがっており、茶太郎の顔を見ると頭の上に漫画の吹き出しが浮かんできて、茶太郎が本当にしゃべっているかのように見えるようになった。しかし、最近になって茶太郎の異変に気づき、動物病院で診察を受けると、耳が聞こえていないことが判明し、原因不明の難聴と診断された。茶太郎は次第に自分の声にも反応しなくなり、今まで見えていた吹き出しも見えなくなってしまう。茶太郎と意思の疎通が図れなくなるにつれて、絶望して落ち込むが、一番つらいのは茶太郎のはずと考えを改め、茶太郎と会話するために新しい策を考え始める。表情や手でのサインを加え、次第に関係は改善していく。茶太郎に笑顔が戻ると、再び茶太郎から吹き出しが見えるようになった。その後茶太郎ともっと通じ合うための方法が知りたいと、ドッグトレーニング「Proud Dog」のカウンセリングに訪れるが、丹羽眞一郎からは、聞こえない犬とのコミュニケーションに最も有効なのはハンドシグナルであり、これまで林温之がやってきたことがすべてであると聞かされ、改めて自分たちが最強のコンビであることを自覚することになった。
茶太郎 (ちゃたろう)
林温之の飼い犬。もともと迷い犬だったために犬種は不明だが、柴犬のような外見で、年齢は推定5歳くらいと思われる。ある日、路上で温之と出会い、そのままついて来たことでいっしょに住むことになった。迷い犬として警察に届けられたが、誰からの連絡もなく、預かり期間が過ぎるのを待って正式に温之に迎えられた。温和な性格ながら、ほかの犬にはかなり攻撃的になりがちで、散歩の時には犬に出会わない道を選択することが必要となっている。ここ数日、耳に違和感を感じ、掻くしぐさを頻繁にするようになった。その後、音に反応しなくなり、触れられたりすることに過度に反応し驚くようになった。動物病院で診察を受けた結果、耳が聞こえていないことが判明し、原因不明の難聴と診断された。温之との意思疎通も次第に図れなくなっていき、必要以上に怖がった結果、温之に嚙みつき、ケガをさせてしまう。だが、温之がめげずにコミュニケーションを取ろうとした結果、手でサインを出しながら表情で伝える方法を取り、再び意思疎通が図れるようになった。
早来 (さき)
佐村未祐の弟。年齢は未祐の5歳年下で、就職1年目の新社会人。最近車の運転免許を取ったばかりで、車が欲しいことを母に伝えたが、母から未祐に話が伝えられた結果、車購入に必要な半分のお金を未祐に出して貰うことになった。購入した新車が納車された時、未祐の自宅マンションまで車を見せに行ったが、その時、母が最近変な通販にはまってお金を使いすぎているから何か言ってやった方がいいよと、まるで他人事のように未祐に話し、すべてを未祐に丸投げした。小さい頃から自分の面倒を見てくれたのは未祐で、何でも未祐におんぶにだっこの状態で育てられた。
母 (はは)
佐村未祐、早来の母親。昔から浪費が激しく、浪費癖に疲れ果てた夫は、現在は母に対し無関心になっている。最近いかがわしい通販にはまり、美容液やサプリメントなどを買い漁(あさ)っており、湯水のようにお金を使っている。基本的に何でも未祐に頼っているところがあり、「それくらいできるでしょ?」が口癖。自分がパートで忙しいことを理由に、未祐がまだ子供の頃から、学校帰りに早来の保育園に迎えに行かせたり、夕飯を作らせたりと、弟の面倒から家事に至るまで未祐に頼み事ばかりしていた。未祐が働くようになってからは、その金をあてにするようになり、給料は毎月入れてもらうのが当たり前になっていた。その関係は現在も続いている。さらには何かと理由をつけては、多めに振り込んで欲しいとお金を余計に無心している。ある日未祐から、ドッグトレーナーになったから、お金は送れないと返事が来たため、あわてて、未祐の勤務先であるドッグトレーニング「Proud Dog」を訪れる。そこでは、未祐は小さい頃から器用で、なんでもできる子だったと得意げに語り、未祐の給料を上げてもらえないかと丹羽眞一郎に直談判した。ドッグトレーナーなんかに転職した理由がわからないと暴言を吐きながらも、未祐の働きに見合った報酬を支払ってもらいたいと、眞一郎に図々しくせまった。
場所
Proud Dog (ぷらうど どっぐ)
犬の訓練やカウンセリングを行う店。ドッグトレーナーの資格を持つ丹羽眞一郎が代表を務めている。ただし、ここ2か月ほど完全休業の状態が続いているため、家賃も3か月分ほど滞納している状態で、店舗の大家である泉律佳に支払いを待ってもらっている。2階建ての1階部分が店舗となっており、簡易キッチンとトイレ、シャワールームが完備されたスタッフルームが付いている。また、2階の部屋は丹羽の部屋で、ウルソンと生活を共にしている。新たなスタッフとして佐村未祐が来てからは、散らかったスタッフルームは整理整頓され、店舗には飼い主用のいすが用意されるなど、店として利用しやすい環境が整えられて営業が再開された。
書誌情報
DOG SIGNAL 12巻 KADOKAWA〈BRIDGE COMICS〉
第1巻
(2019-01-08発行、 978-4040654119)
第2巻
(2019-08-08発行、 978-4040640129)
第3巻
(2020-02-07発行、 978-4040643823)
第4巻
(2020-08-07発行、 978-4040648453)
第5巻
(2021-03-08発行、 978-4046802507)
第6巻
(2021-09-08発行、 978-4046807847)
第7巻
(2022-03-08発行、 978-4046812070)
第8巻
(2023-01-24発行、 978-4046820525)
第9巻
(2023-02-08発行、 978-4046821300)
第10巻
(2023-10-06発行、 978-4046826442)
第11巻
(2024-03-08発行、 978-4046831835)
第12巻
(2024-10-08発行、 978-4046842428)