Marieの奏でる音楽

文明崩壊後の世界で、人々はお互いに手を取り合い、協力しながら生きていた。練り上げられた世界観を丁寧な描写で鮮やかに描き、神と宗教、そして人間と愛についても言及したファンタジー作品。「月刊コミックバーズ」2000年1月号から2001年10月号にかけて不定期に連載された。

概要・あらすじ

マリィと呼ばれる巨大なからくり人形に見守られながら、争いのない穏やかな日々を謳歌する世界。そんな平和な世界で、工房の町に暮らす青年のカイだけは、マリィから流れてくる音楽を聞くことができた。どうして自分だけがそんな能力を持っているのか、不思議に思っていたカイだったが、幼なじみであるピピの誕生日当日、マリィが奏でる音楽に共鳴するかのように、周囲の機械が突如として爆発したことに気づく。

これをきっかけに、カイは自分たちの世界の成り立ち、そしてマリィの本当の役割について知ることとなり、1つの重大な決断を迫られる。

登場人物・キャラクター

カイ (カイ)

工房の町「ギル」で水脈や鉱脈調査の仕事をしている青年。年齢は18歳。黒髪のおかっぱのヘアスタイルと両の掌にある痣が特徴。幼い頃に父親と一緒に鉱山で働いたことがあり、石などの鉱物を眺めることが好き。8歳からギルで暮らすようになり、ピピとはその頃からの幼なじみである。10歳の時に海で溺れ、15日間にわたって行方不明となったが、奇跡的に生還。 それ以来、人並み外れた聴力を有するようになり、集中すれば島中の音を聞き分けられる。その聴力によって世界で唯一、マリィの奏でる音楽を聞き取ることができる。ある時を境に、自分がマリィに性的欲求を抱いていることに気付く。

ピピ (ピピ)

工房の町「ギル」で暮らしている女性。後ろに流した茶髪をショートカットにしている。年齢は18歳。カイの幼なじみ。感情豊かで快活な性格をしており、よくカイやトットと遊んでいる。男性人気が高く、18歳の誕生日には、ダムルを含めた合計9人にプロポーズされた。しかし、カイへの恋愛感情から断った。カイがマリィに性的欲求を抱いていることを知ってショックを受け、自分に足りないものは何かを考えた。 その結果、父親のガジジに頼んで、飛行機械「鳥」を開発してもらう。

ガジジ (ガジジ)

工房の町「ギル」のからくり職人。もじゃもじゃの髪の毛と口ひげに、丸縁眼鏡をかけた男性。工房随一の腕前といわれ、数々の発明品を手掛けている。娘のピピを大切にしており、毎年誕生日には、何らかの発明品をプレゼントしている。ピピからの要望もあって、18歳の誕生日には飛行機械「鳥」をプレゼントする。それがカイを振り向かせるためのものだと知り、真剣な面持ちで、カイのことを諦めるよう諭す。

ママ (ママ)

工房の町「ギル」で暮らしている女性。長い黒髪と穏やかな微笑みが特徴。ピピの母親で、機織りが得意。ピピとは恋愛相談をされるほど親子仲が良いが、夫であるガジジと同様に、カイとの結婚には反対している。18歳の時にガジジにプロポーズし、もし断られてもまた来年も告白する、という一途な宣言をした。

トット (トット)

工房の町「ギル」で暮らす職人の青年。年齢は18歳。パーマ頭で丸縁眼鏡をかけ、顔にそばかすがある。カイやピピと仲が良く、小さい頃からよく一緒に遊んでいる。新しく工房にやって来たマルを連れ、「ギル」の町中を丁寧に案内するなど、面倒見の良い性格。またダムルがピピを振り向かせるために、自動機械人形を開発しようとしていることを知ると、快く手伝いを引き受けるなど友情にも厚い。 独自の発想で掘削機を改良したり、ダムルからの依頼にあっさり答えて見せたりと、非常に手先が器用。

クロド (クロド)

工房の町「ギル」で暮らす職人の男性。トットの父親。禿げ上がった頭で、糸のように細い目にゴーグルをかけている。「夢写機」と呼ばれるカメラのような機械を持っており、記念写真を撮影することが好き。ピピに対して非常に甘く、よくトットに睨まれている。

マル (マル)

刈り込んだ短髪で、がっしりとした体格の青年。最近になってトットやクロドと同じ工房で働き始めた職人見習い。年齢は17歳。以前は鉱山夫として働いていたが、肉体労働よりも頭脳労働のほうが向いている、と父親に言われたため、工房の町「ギル」にやって来た。指が太く、手先が不器用なことを気にしており、単純に父親から厄介払いされただけなのではとも考えている。 以前からカイに憧れており、初めて会話した時は、頬を赤くして興奮していた。

ダムル (ダムル)

工房の町「ギル」で暮らす探求者の1人。坊主頭にスラリとした長身と引き締まった身体を持つ青年。まっすぐな性格で努力を惜しまないため、周囲からの信頼も厚い。以前からピピが好きで、他の女性からのプロポーズをすべてを断りながら、ピピが18歳になるのを待っていた。ピピの誕生日には、トットやマルに手伝ってもらいながら、プロポーズのための自動機械式人形を見事に完成させた。

グウル (グウル)

工房の町「ギル」で暮らすからくり楽器職人。仮面のように滑らかな顔の男性で、額には文様が刻まれている。神官としての顔もあり、夜になると礼拝堂にある「音楽の間」で音楽を奏でながら、眠れない人や、心に疑問を持つ人たちの相談相手となっている。人間の能力の限界を知ることが、神への信仰に繋がると考えている。過去の技術の発掘に熱心なため、探求者の1人に数えられている。 カイがマリィに性的欲求を恥じて相談すると、それもまた1つの信仰の在り方だと優しく説いた。

マリィ (マリィ)

女性型の超巨大機械。ピリトの地を含めた世界中の島々の上空を回遊している。ゆったりとした美しくも悲しげなメロディーを奏でているとされるが、実際にそれを耳にしているのはカイだけである。遥かな古代、争いの絶えなかった人類が、平和のために生み出したものともいわれ、そのメロディーには人々の感情を穏やかにする効果がある。 またマリィを信仰の対象とする宗教が世界中にあり、信者は年に一度、巡礼の地「タッド」で新年を迎えることが習わしとなっている。ただしその信仰の方法は各地方で異なっており、それぞれの信仰の在り方を説いたものが、マリィの書として島ごとに伝わっている。

集団・組織

探究者 (タンキュウシャ)

工房の町「ギル」で、機械の発明や生産のほか、技術の探求にも努める人々の呼称。町の地下深くに眠っている古代の遺跡や遺物を発掘・調査して知識を学ぶので、地下の番人とも呼ばれる。発掘や調査には危険がつきまとうため、町の人々から尊敬されている。集めた遺物や知識は探求書庫に保管され、さらに詳細な研究が行われる。

礼者 (レイジャ)

巡礼の地「タッド」で暮らす人々の呼称。黒いローブに全身を包み、網目がかった素材で目元だけを覗かせている。人生のすべてをマリィへの信仰に捧げる、という境地に至った人々の集まり。出身地や年齢、性別を問われないが、一度礼者となれば、タッドに永住することとなる。また年末には、礼拝に集まる世界各地の人々の世話をする必要があるため、何十か国もの言語を習得している。

場所

ピリトの地 (ピリトノチ)

工房の町「ギル」を中心に栄える鉱山の多い土地。夏が短いという特徴があるものの、四季の変化がある。年に一度、18歳以上の女子の誕生日にのみ、結婚を前提とした告白が出来るという風習があり、男女ともに意中の相手に特技をアピールする儀式がある。告白が成就するか否かは、女子が用意する模様付きの卵を、女子が合意のもとで男子に手渡せるかどうかで判定する。 そのため、結婚の意思がない場合は事前に卵を割って、家の前に飾っておくという決まりがある。

ギル (ギル)

ピリトの地にいる半数の人々が住む町。カイやピピたちも暮らしている。技術家や発明家が多いため、工房の町として名高い。周囲の町と生産物を物々交換して生活を成立させている。全体的に坂道が多く、死角が多いため、町に不慣れな人間は迷子になりやすい。しかし、やわらかい曲線の建物が多いため、カイは迷子になったとしても心地が良い町だ、と評している。

礼拝堂 (レイハイドウ)

工房の町「ギル」の地下空洞にある広大な空間。コンサートホールのような造りになっており、正面の舞台にはマリィとその信徒を模した巨大なからくり人形が設置されている。その圧倒的な存在感は、そこにいるものに深い感動を与えるとされる。カイは初めてこの仕掛けを目にした時、思わず涙を流した。また奥には「音楽の間」と呼ばれる場所があり、そこではグウルが音楽を奏でながら、町の人々からの相談や悩みに応じている。

探求書庫 (タンキュウショコ)

工房の町「ギル」の地下にある図書館のような空間。探求者たちが持ち帰った古代の遺物を保管、研究するための施設。また町の工房で発明され、理論上は稼働するはずが動作しない機械なども保管、研究している。工房の数百年の歴史があるとされ、ギルの中でも非常に重要な場所。

タッド (タッド)

マリィへの信仰心を持った世界中の人々が、年に1回、年末になると訪れる巡礼の島。ピリトの地と同程度の面積だが、巡礼期間の10日間で数千万人が集うとされている。マリィへの信仰心からだけでなく、言語も文化も違う人々が大勢集まる。そこで発生するさまざまなトラブルに対応するため、礼者と呼ばれる特別な信者によって治められている。 初日の出では、すべての人々が太陽とともにマリィを仰ぎ見て、その信仰心を再確認することになっている。

市場 (イチバ)

工房の町「ギル」にある広場。太古の森が化石化してできた岩肌を利用している。バロの地やニアの地といった各地の島々から、物々交換によって運ばれてきた色とりどりの生産物が、いくつも並べられており、非常に華やかな場所。ピピは市場を訪れた時が一番幸せらしく、その理由を、人の優しさが並んでいるような気がするから、だと考えている。

バロの地 (バロノチ)

バロの木と呼ばれる複数の巨大な樹木が天高くそびえ立つ島。ピリトの地から北東にある。住人たちはその木から落ちてくる巨大な果実によって、周囲の島と物々交換を行っている。果実は乾燥させて中身を除き、住居や貯蔵庫として用いられる。他の島々と違って、具体的な生産活動を行っているわけではないので、島民は怠けている、と揶揄されることがある。 またバロの地に住む人々は、その果実を食すると甘美な気分になり、複数の人々と自由に性交渉を行うと言われている。

ニアの地 (ニアノチ)

ピリトの地から北にある、農業で生計を立てている島。男島と女島という2つの島に分かれており、住人は島を自由に行き来できる。しかし、結婚に関しては男島で男同士、女島で女同士がするという風習がある。そして年に一度中央にある小島で男女が子供を作り、生まれた子供は性別に応じて、それぞれの島の共有財産として大切に育てられる。

その他キーワード

マリィの書 (マリィノショ)

マリィの偉業や、その信仰の在り方を記した教典。文化圏によってマリィへの信仰方法に違いがあるため、島の数だけ教典も存在すると言われている。ピリトの地に伝わるものは「ピリトの書」と呼ばれ、「三賢者」と呼ばれるマリィの信奉者や、「森」と呼ばれる不思議な場所についての記述がある。また一部の地域では、マリィを獣や魔物、毒性のある巨大な花などに例えたものもあり、その解釈の多様さが窺える。

(トリ)

ピピがカイに振り向いてもらうため、ガジジに作ってもらった飛行機械。蒸気で圧力をコントロールし、羽を動かして飛行する。理論上は飛行可能だが、過去に誰も成功しなかったため、ガジジはピピが飛ぶことにぎりぎりまで反対していた。

自動機械人形 (ジドウキカイニンギョウ)

ピピの姿をした等身大のロボット。ダムルがピピの誕生日に、プロポーズするため完成させた。雷の力である「雷力」で頭部の「雷力式自動計算機械」を動かす。人間のように歩き、周囲の空間を認識することができる。かつて誰も成功したことのない仕組みであり、起動に成功した時は周囲を非常に驚かせた。しかしその直後、マリィから発せられた音に反応するようにして爆発した。

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