あらすじ
闇の必殺仕事人トランプス(第1巻〜第2巻)
良家の子女が通う水玉学園には、金額次第で何でも解決してくれる闇の仕事人が存在する。安全確実、秘密厳守、正体不明と噂されるその仕事人の名は「トランプス」。その一員である鬼の風紀委員長・遠山イチは、掲示板に貼られたスペードのキングのカードを回収し、生徒会長の桜井光國と共に今日も依頼を達成するために動き出す。期末試験の主要5教科オール100点を取らせてほしいという水天宮カオリ、実家の古文書の謎を解き代々伝わる宝を見つけてほしいと願う武田正純、トランプスに挑戦しようと自ら作成した「ビックリハウス」に誘い込む藤吉ミチルなど、「トランプス」は日々さまざまな依頼をこなしていく。そんなある日、「トランプス」のメンバーは藤吉家の別荘で催されるパーティーに招待されるが、そこで一行を待ち受けていたのは逃亡中の極悪犯一味で、ミチルが別荘で捕らわれの身となってしまう。このピンチに際し、「トランプス」のメンバーはそれぞれミチルの救出に動き出す。
フランス編(第2巻)
水玉学園高等部では、各学年の成績優秀者10人がフランスにキリスト教の勉強をするために行く予定になっていた。「トランプス」のメンバーである遠山イチ、桜井光國、花房形見の三人は、当然のように選出されフランスへと旅立つ。そこで彼らは、たまたまフランスに買い物に来ていた藤吉ミチルとミチルの母と出会う。さらに、空港で黒服の男達に襲われそうになっているミシェルデュポンをイチが助けた事により、「トランプス」はデュポン家の宝を巡る事件に巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
遠山 イチ (とおやま いち)
水玉学園高等部2年C組に在籍する女子。年齢は17歳。身長は168センチ、体重は45キロ。趣味は寝る事と泳ぐ事で、特技は早着替え。好物はスイカと水。学校では風紀委員を束ね、「鬼の風鬼委員長」と呼ばれるほど規則に厳しく厳粛に学校生活を送っている一方で、いとこで幼なじみの桜井光國らと組み「トランプス」として活動している。 眼鏡をかけショートカットの髪型で、ポーカーフェイスでクールな印象の持ち主。そのため周りの生徒には近寄りがたい印象を与えるが、女子からは絶大な人気を博している。「トランプス」では代表を務めており、依頼者との交渉役を担当するほか、主に荒事をはじめとした肉体労働を任されている。崩れ落ちる岩を飛び移りながら崖を登るなど驚異的な身体能力の持ち主で、ワインの詰まった棚をひっくり返すほどの怪力を誇り、ケンカも強い。 また、無免許ながら車の運転もうまい。さらにピッキングを得意としており、ドアはもちろん金庫も破る事ができる。堅実な性格のしっかり者で、依頼者との金額の交渉も抜け目がない。実は密かに光國に思いを寄せているが、光國には気づかれていない。 一方で、同じクラスの武田正純に好意を寄せられているが、こちらは完全にスルーしている。なお、「トランプス」としての活動を行っているのは、父親が家の金やイチの学費を使い込んでおり、その穴埋めをするためである。実は酒に弱く、飲むとすぐに記憶がなくなる。
桜井 光國 (さくらい みつくに)
水玉学園高等部に通う2年生の男子。年齢は17歳。身長は175センチ、体重は58キロ。学校では生徒会長を務め、試験勉強をしなくてもオール100点を取れるほど頭脳明晰。また、眼鏡をかけた知的なイケメン然とした風貌のため、女子からの人気が高い。状況把握能力が高く、「トランプス」では頭脳労働を担当しており、作戦立案はもっぱら桜井光國の仕事である。 ハッキングから暗号解読までこなすが体力は人並みなため、「トランプス」の活動においては前線で働く遠山イチのサポートに回る。ちなみにイチはいとこで幼なじみだが、学校では「生徒会長」、仕事の時は「ボス」と呼ばせている。女性に弱く美しいものが好きで、中等部の水天宮カオリの事を神聖視している。 実は飛行機が怖く、カナヅチで、胃腸も弱く、幽霊が怖いなど、弱点が多い。さらにマザコンで母親からは「みーくん」と呼ばれており、その事でよくイチにからかわれている。
藤吉 ミチル (ふじよし みちる)
水玉学園初等部に通う3年生の男子。年齢は8歳。身長は131センチ、体重は22キロ。自分の「作品」として家一軒を作れるほどの発明の天才で、「子ども発明クラブ」の日本支部代表を務め、発明工作コンクールでは多数の入選を果たした実績を持つ。一方で、授業中に機械いじりをしてはクラスメイトを使って実験をするため、周囲からは超問題児として扱われている。 学園中に盗聴器を仕掛けており、それがきっかけで知った「トランプス」に興味を持ち挑戦したが、桜井光國の策略の前に敗北。その後は「トランプス」に加入し、メカニックを担当するようになる。これにより「トランプス」は大掛かりな仕掛けを運用できるようになり、光國の作戦の幅が大きく広がる事となった。 また、閃光弾や爆弾も作成可能なため、これを活用して前線で活動する遠山イチの援護をする事もある。ミチルの母とフランスまで気軽にショッピングに行くほど家は金持ち。身長が足りないため足が届くように自分で運転席を改造したスープラを乗り回している。外面のいいぶりっ子だが、基本的には生意気な性格で、人の目がない時には年上相手でも敬語は使わず呼び捨てにする。 のちに水玉学園初等部5年生の江戸川華代という少女に恋をし、男らしく成長していく。
花房 形見 (はなぶさ かたみ)
水玉学園高等部の1年A組に在籍する人物。年齢は16歳。身長は172センチ、体重は49キロ。学年トップの成績でスポーツ万能、明るく活発な性格で男女共に人気がある。見た目は完全に女子だが実際は男子。学校での印象とは裏腹にかなり遊んでおり、歌舞伎町や六本木などに詳しくホステスやゲイボーイ達にも顔が効く。父親・花房業造を憎んでおり、父親の野望を阻止するために「トランプス」に依頼を持ち込んだ。 ちなみに母親は花房形見を産んですぐ亡くなっており、それが「形見」という名前の由来となっている。事件解決後は「トランプス」に加入し、夜の街の人脈を活かして情報収集を担当する。行動力があり、実行班として遠山イチと共に前線で活動する事もある。 性的嗜好はゲイで、自分の本当の性別を隠して男子と付き合っている。しかし、キスから先に関係が進むと性別がバレてしまうため、形見の方から別れを切り出すという事を繰り返しており、恋愛関係が長続きしない事に悩んでいる。ちなみに水玉学園で開催されるミスコンでは、優勝候補筆頭として注目を集めている。
花房 業造 (はなぶさ ごうぞう)
花房形見の父親。形見とは似ておらず醜い外見をしている。PTAの金と人脈目当てに水玉学園の理事長の座を狙い、前理事長を退任に追い込んだ。豪邸に住んでいるが妻とは死別しており、家族は形見のみ。非常に欲深い性格で、資産家である花房家に財産目当てで婿入りしたほど。また、多くの愛人を作り毎晩取っ替え引っ替えするほど女癖が悪い。 時には自宅に愛人を連れて来る事もあり、形見には嫌悪されている。愛人の一人に銀座でホステスをしている「まどか」という女性がおり、脱税の金の流れを記した帳簿の半分を持たせるほど信頼している。
水天宮 カオリ (すいてんぐう かおり)
水玉学園中等部の3年C組に在籍する女子。周囲から「学園のアイドル」「中等部のプリンセス」と評されるほどかわいい外見をしており、桜井光國も水天宮カオリのファンの一人である。アイドルとしてデビューする事が決まっているが、それに大反対している両親に「期末試験主要5教科ですべて100点を取る事」をアイドルになる条件として出され、「トランプス」に対策を依頼した。 したたかな性格で、遠山イチの出す指示の意図を読み取り、的確に前フリをこなして見せるなど頭の回転も早い。この時の「トランプス」のミッション中、光國に好意を抱くが、イチの光國への思いを知ってあきらめる事となった。アイドルデビューしてからは水玉学園から転校したが、ストーカーに脅迫を受けた際、再度「トランプス」に依頼を持ち込み解決を求める。 なお、カオリ自身は精神的にタフで、脅迫されても特に動じてはいない。
武田 正純 (たけだ まさずみ)
水玉学園高等部の2年C組に在籍する男子で、遠山イチのクラスメイト。長髪でノリが軽く、非常にチャラい性格をしている。女たらしとして有名だが、それでも女子からの人気はそこそこ高い。喫煙をはじめとする校則違反の常習者で、教師達に目をつけられている。一方で意外と情報通なところがあり、イチが「トランプス」のメンバーである事も知っている。 通学のため現在は実家から離れて暮らしているが、父親が会社を経営しており、田舎にある実家はかなりの豪邸。そのため、何かあると金で解決しようとするお坊ちゃん気質なところがある。実家の蔵で、武田家に代々伝わるお宝の古文書を見つけ、その解読を「トランプス」に依頼した。以前からイチに興味を持っており、これをきっかけに友人として距離を縮め、次第に思いを寄せるようになっていく。 その後は積極的にアタックするが、ことごとく玉砕している。イケメン好きで桜井光國の事を気に入っている祖母がいる。
ミチルの母 (みちるのはは)
藤吉ミチルの母親で、水玉学園のPTAのメンバーを務めている。過保護なところがあり、桜井光國にはそれがミチルを生意気にさせている原因だと指摘されている。気軽にフランスまでショッピングをしに行くほどの金持ちで、在仏日本大使ともつながりがある。山奥に別荘を持っており、招待客には当然のようにヘリコプターをチャーターするなど、ブルジョワ的な生活を送っている。 実は用意周到にして肝が座った人物で、身につけている指輪には毒が仕込んであり、不測の事態に対する準備は万全。別荘に逃亡中の極悪犯が迷い込み、ミチルを人質に取られた時も、花房形見と共に機転を利かして賊を無力化させた。余裕たっぷりで笑う時はつねに高笑いをし、初対面に近い人間に対しても不必要に不安をあおる事を言ったりする事から光國に「さすがミチルの母」と評されている。
ミシェル デュポン
ソルボンヌ大学に在籍するフランス人男性で、日本語も堪能。フランソワデュポンの兄であり、成人してからはデュポン家当主を務めており、大使館級のハイクラスなパーティを主催するほどの社会的地位を持つ。13歳の時に両親を交通事故で亡くし、遺産である城をホテルにして維持している。城の管理は叔母のジュスティーヌが務め、10年で四ツ星のホテルになった。 デュポン家に代々伝わるネックレスを所有しているが、それは実は「デュポン家の宝」の鍵になっており、謎の黒服達に狙われている。空港で黒服の男に襲撃された際に遠山イチに助けられた事をきっかけに、イチと桜井光國をディナーに招待し交友を深めるようになる。その際に「トランプス」の存在を知り、デュポン家の宝の捜索を依頼した。 ただ、活動内容を「闇の必殺仕事人」と説明されており、ミシェルデュポン自身は「トランプス」が何をする集団なのか、今一つ理解できていない。ブラコンであるフランソワに手を焼いているが、女性の扱いが非常にうまく、イチを口説く手際もスマートだった。その手腕は、花房形見をして「お見事」と言わしめるほど。 ちなみに、顔が眼鏡を外した光國にそっくり。
フランソワ デュポン
ミシェルデュポンの妹で、日本語は話せない。8歳の時に両親が交通事故で亡くなっている。オシャレで可愛いがブラコンで、ミシェルがディナーに招待した遠山イチに嫉妬し、イジワルをする。一方でミシェルに似ている桜井光國には淡い恋心を抱いている。子供っぽくワガママな性格で、態度が悪く場所も選ばず煙草を吸う。トランプスがデュポン家の宝を探索する現場に無理矢理同行したせいで、ミシェルを狙う黒服の男に拉致される事となる。
ジュスティーヌ
ミシェルデュポン、フランソワデュポンの叔母。日本語は話せない。ミシェル所有の城を改築したホテルの管理と経営を任されている。ミシェル、フランソワの親代りを務めながら、10年で城を四ツ星ホテルにまでしたように、経営センスがあり努力家でもある。デュポン家直系の夫とは死別しており、夫が亡くなる時にデュポン家の宝の事を聞かされずっと探していた。 ミシェルのネックレスが鍵になっている事に気づき、黒服の男達に強奪させようと目論む。また、ホテルの金を横領しており、ミシェルが大学を卒業すれば経営に携わり発覚してしまうため、大学卒業前に宝を回収しミシェルを暗殺するため画策している。
集団・組織
トランプス
水玉学園で活動している、秘密裏に事件を解決する集団。その存在自体は広く知られているが、一般的には正体不明とされている。メンバーは遠山イチ、桜井光國で構成され、のちに藤吉ミチル、花房形見の加入により四人となった。主なミーティング場所は水玉学園高等部の生徒会室で、形見やミチルの溜まり場となっている。 代表はイチが務めているが、光國が「ボス」と呼ばれていたりと、役職に深い意味はない。トランプのスペードのキングに名前と時間と場所を記入し、学校の掲示板に貼り付けておく事で依頼をするというシステム。依頼料は高額だが、「安全確実・秘密厳守」をモットーに、法律の範囲内なら何でもやってくれるという噂が立っている事もあり、依頼はあとを絶たない。 ちなみにトランプスの活動実態は、侵入、窃盗、ハッキング、脅迫、器物破損、美人局(つつもたせ)と手段を選ばず、完全に法に触れるレベル。
場所
水玉学園 (みずたまがくえん)
良家の子女が通うブルジョワ的な私立学校。初等部から高等部まであり、PTA名簿には政治家や実業家の名前がズラリと並んでいる。その人脈と金を狙い、花房形見の父親・花房業造が前理事長を追い出し、後釜に座ろうと企んでいた。ミッションスクールであるがゆえに学園のシンボルはマリア像で、成績優秀者はフランスに一定期間滞在してキリスト教を学ぶ行事がある。