概要・あらすじ
世間を騒がす神出鬼没の大怪盗、アルセーヌ・ルパンは、ある時はパリの名家の当主、ジャン・ド・サルゾー=ヴァンドームの一人娘、アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームを妻に迎えると、新聞社に大々的に噓の告知をし、混乱に乗じてアンジェリックの保有する財産を奪おうと計画。またある時は、由緒ある黒真珠を保有するアンジロ伯爵夫人のもとに盗み目的で忍び込み、ルパンを出し抜いて黒真珠を奪った相手から、ガニマール警部に扮して黒真珠を奪い返したりと、常に盗みを繰り返していた。
そんな彼が泥棒になったきっかけとなったのは、「フロリアーニ騎士」と名乗ってドルー・スービーズ伯爵邸の有識者の集まるサロンに潜入し、実の母親であるアンリエット・ダンドレジーにかつてかけられた王妃の首飾り窃盗の嫌疑を晴らした一件だった。
この事件に際し、当時「ラウール・ダンドレジー」を名乗っていたルパンは、スービーズ伯爵邸で、のちに妻となる女性、クラリス・デティクに出会う。クラリスの面影が忘れられないルパンは後日、彼女の館を訪問し、その帰途でクラリスの父親であるデティグ男爵ら7人の貴族の男性に処刑されそうになっていた婦人、ジョゼフィーヌ・バルサモを救出。
以後、ルパンは彼女を「ジョジーヌ」と親しみを込めて呼んで夢中になるが、ジョゼフィーヌは100年も生きているという「カリオストロ伯爵夫人」を名乗り、盗賊団の首領を務める謎めいた人物でもあった。戦乱の歴史の中で失われてしまった、莫大な財宝に繋がる手がかりである七本枝の燭台の謎を追う彼女は、同じ財宝を狙うボーニャマンを筆頭に据えたデティグ男爵らの陰謀組織と幾度となく対決する。
当初はジョゼフィーヌを手助けしていたルパンだったが、目的のためなら人殺しもいとわない彼女の姿勢に嫌悪を抱き、のちに決別する。だがジョゼフィーヌは裏切りを許さず、ルパンとクラリスが結婚したことを見逃さずに、2人を殺そうと目論む。
登場人物・キャラクター
アルセーヌ・ルパン (あるせーぬるぱん)
怪盗といわれる男性。黒髪を、前髪が少し長めのミディアムヘアにまとめた、容姿に優れた青年。本名は「アルセーヌ・ラウール・ルパン」。王妃の首飾りの一件でドルー・スービーズ伯爵邸を訪問していた際は、「フロリアーニ騎士」を名乗っていた。クラリス・デティクとはそのスービーズ伯爵邸で初対面で恋に落ち、のちに結婚することとなる。 結婚前の独身時代には「オラス・ヴェルモン」と名乗っており、イボンヌとはその頃に知り合った。貴族だった母方の家柄を強調したい時には「ラウール・ダンドレジー」を名乗り、他にも「ロスタ」という名前で有名な奇術師に弟子入りしていた過去もあるなど、多くの名と、顔を使い分けている。泥棒を楽な仕事だと考えており、世間の人はなぜこの職を選ばないのか不思議に思っているほど。 一方で、人殺しだけは絶対にしないのがポリシーで、ジョゼフィーヌ・バルサモに惹かれて肉体関係にあった時にも、ジョゼフィーヌが目的のために人を殺すことも辞さないことを知ってからは、断固として協力を拒否した。紳士的でロマンチストで、財産目当てだったアンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームの人柄と瞳の美しさに本気で惚れかけるなど、純粋な一面も持っている。
クラリス・デティク (くらりすでてぃく)
デティグ男爵の娘。胸までの長さの波打つ豊かな金髪をハーフアップにした若い女性。悪い虫がつかないようにと大事に育てられている。朗らかでエネルギッシュな美しさを持ち、身分で人を判断しない公正な人物。王妃の首飾りの一件でドルー・スービーズ伯爵邸を訪問していた際、「フロリアーニ騎士」を名乗っていたアルセーヌ・ルパンに興味を抱き、のちに結婚することとなる。 父親が仕えているボーニャマンと敵対しているジョゼフィーヌ・バルサモに命を狙われるが、それは実は父親の立場とは関係なく、ルパンがジョゼフィーヌを振ってクラリスに走ったことで、ジョゼフィーヌの嫉妬を煽ったことが理由であった。
ジョゼフィーヌ・バルサモ (じょぜふぃーぬばるさも)
美しい若い女性。長い黒髪を優雅に結い上げている。湖に沈められそうになっていたところを、アルセーヌ・ルパンに救出され、知り合う。以降、ルパンには「ジョジーヌ」の愛称で呼ばれている。自身の先祖に王妃の首飾りを巡って失脚したカリオストロ伯爵がいるので、ドルー・スービーズ伯爵邸で起きた首飾り盗難事件に興味を抱いていた。 独自の推理で、ルパンがかつて王妃の首飾りを所有者から盗み出したと見抜いており、以前から興味を持っていた。実は盗賊団の首領であり、「カリオストロ伯爵夫人」を名乗り、100年も生きているとうそぶいている。熱烈に愛を告白するルパンを最初は拒絶していたものの、決して裏切らないことを条件に愛を受け入れた。その後、盗みをはじめとした悪事のノウハウをルパンに伝授したが、ルパンの潔癖さ、正義感からやがて対立し、決別を言い渡されることとなった。 以降は宣言通り、裏切ったルパンと、ルパンの妻となったクラリス・デティクへの復讐の機会を窺っている。
ジャン・ド・サルゾー=ヴァンドーム
名家の当主の初老の男性。短髪を後ろに流し、片眼鏡をかけて口ひげを蓄えたブルボン王家にも縁の深い家系を誇りに思っている。一人娘のアンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームが、結婚もせず本ばかり読んでいることを心配している。結婚を強く勧めているが、ジャン・ド・サルゾー=ヴァンドーム自身はあくまで候補を選ぶに留め、最終的には娘の意志も尊重しようとする娘想いなところもある。
アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドーム
読書が趣味の女性で、年齢は33歳。不美人で社交性もないと、自分を卑下して客観的に捉えているが、心根の優しい女性で、侍女たちからも好かれている。自分との結婚騒動を世間に喧伝したアルセーヌ・ルパンを、半ば物語の中の主人公のように思っていた。ルパンのこの行動は、アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームが受け継ぐ予定だった莫大な資産を盗もうとしたものであったが、アンジェリック自身はルパンの結婚の申し入れと、まめに届けられたルピナスの花の贈り物に胸をときめかせ、ルパンに対し実際に好意を抱いていた。 そのため、計略が明るみに出て殺されそうになったルパンを逃がすために力を貸す。
ポール・ド・ミュシー (ぽーるどみゅしー)
アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームのいとこ。ふくよかな体形の若い男性。彼女の父親であるジャン・ド・サルゾー=ヴァンドームの眼鏡にかなう立派な貴族の家の出自。アルセーヌ・ルパンが新聞を使ってアンジェリックとの結婚宣言を出した際、ジャンがルパンよりも先にアンジェリックと結婚させようと探し出した婿候補の1人。 だが家柄はともかく太り過ぎで、ジャンにも、娘の結婚相手としての魅力には難があると思われている。
ジャック・ダンボワーズ (じゃっくだんぼわーず)
アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームのいとこ。髪を左右非対称に分けて後ろに流した、困り眉の若い男性。彼女の父親であるジャン・ド・サルゾー=ヴァンドームの眼鏡にかなう立派な貴族の家の出自。アルセーヌ・ルパンが新聞を使ってアンジェリックとの結婚宣言を出した際、ジャンがルパンよりも先にアンジェリックと結婚させようと探し出した婿候補の1人。 だが、家柄はともかく内気な性格のため、ジャンにも、娘の結婚相手としての魅力には難があると思われていた。実は本人はルパンに閉じ込められており、ジャンの財産を乗っ取る計画を実行するため、ルパンが成り代わっていた。アンジェリックとジャンはその入れ替わりに気付かず、3人の婿候補の中から彼を選び、ルパンが扮するジャック・ダンボワーズと挙式することとなった。 しかしジャック本人は自力で脱出し、ルパンの計画をジャンに伝え、ルパンを殺して醜聞をもみ消そうと画策。内気と思われていたが、実際はルパンの裏をかく強さを持つ行動力のある人物。しかし、騒動に巻き込まれたアンジェリックには、興味も労りも見せないドライな面がある。
アナトール・ド・カオルシ (あなとーるどかおるし)
アンジェリック・ド・サルゾー=ヴァンドームのいとこ。短い癖のある黒髪で、釣り目の若い男性。彼女の父親であるジャン・ド・サルゾー=ヴァンドームの眼鏡にかなう立派な貴族の家の出自。アルセーヌ・ルパンが新聞を使ってアンジェリックとの結婚宣言を出した際、ジャンがルパンよりも先にアンジェリックと結婚させようと探し出した婿候補の1人。 だが家柄はともかく性格が下品すぎ、ジャンにも、娘の結婚相手としては人柄に問題があると思われている。
アンジロ伯爵夫人 (あんじろはくしゃくふじん)
年老いた女性。若い頃は美しいプリマドンナで、さる国の皇帝の愛人だった過去がある。破産して質素な生活に身を落とした今も、その時に贈られた黒真珠を手放さず、大事に身に着けている。現在はパリのアパルトマンの6階に、付き人と料理番と召使いの3人だけを雇って暮らしている。ある時、アルセーヌ・ルパンは彼女の持つ黒真珠を狙って盗みに入ったが、その時はすでにビクトール・ダネーグルの手でアンジロ伯爵夫人は殺され、黒真珠は奪われた後だった。
ビクトール・ダネーグル (びくとーるだねーぐる)
アンジロ伯爵夫人の召使い。くせのあるミディアム丈の髪をセンター分けにした若い男性。伯爵夫人を殺して黒真珠を奪ったが、血痕の付いたお仕着せが証拠となり、警察に逮捕された。アルコール中毒の前科者で、人殺しはしてもおかしくないと思われている。伯爵夫人が殺害された夜は、寝室には彼女1人の状態で、扉には翌朝まで鍵がかかっており、合鍵は存在していないため証拠に欠け、無罪となった。 同じ黒真珠を狙っていたアルセーヌ・ルパンに、盗み出した黒真珠を買いたたかれ、だまし取られてしまう。
ガニマール警部 (がにまーるけいぶ)
警部の中年男性。髪型はスキンヘッドにし、口ひげを生やした強面。かつてアルセーヌ・ルパンを捕まえたこともあるが、まんまと脱走されてしまった経歴を持つ。単純に見えて単純でない事件、金持ちと宝石のあるところにはルパンが関わっていることが多いと目を付け、ルパン逮捕に並みならぬ執着を燃やしている。アンジロ伯爵夫人の保有していた黒真珠を、夫人を殺害したうえで奪ったビクトール・ダネーグルが証拠不十分で無罪となった後、ビクトールがガニマール警部に扮したルパンに追い詰められ、結局黒真珠はルパンの手に渡ることとなり、直接的ではないものの、ルパンに利用される形となった。
デジレ
ドルー・スービーズ伯爵の娘。個性的な結い上げ方の髪をした陽気な若い女性。寄宿学校時代の友人であるクラリス・デティクを屋敷に招いてともに過ごした際、クラリスを気に入り、ずっと逗留して欲しいと申し出ていた。だが父親のドルー・スービーズ伯爵がアルセーヌ・ルパンが扮する「フロリアーニ騎士」に王妃の首飾り事件についての顛末を語った際、事件の容疑者にされたアンリエット・ダンドレジー夫人とその息子に対して身分で差別するような発言をしたため、クラリスに人柄を疑われて、友情が破たんすることとなった。
ドルー・スービーズ伯爵 (どるーすーびーずはくしゃく)
由緒ある貴族の家の当主。黒髪をオールバックにし、八の字に整えた口ひげと豊かな顎ひげを生やした中年男性。歴史上の一大スキャンダルの引き金となったいわく付きの王妃の首飾りを家宝にしている。かつて、妻の修道院時代の友人で、身分の低い男性と結婚し、夫に先立たれ未亡人となったアンリエット・ダンドレジーとその男児を、邸内に住まわせていたことがある。 アンリエットの実直な人柄を信頼していたが、妻であるドルー・スービーズ伯爵夫人に圧倒されがちで、妻が友人であるはずのアンリエットに対して使用人のような扱いをしているのにも、異論も挟まずに過ごしていた。
ドルー・スービーズ伯爵夫人 (どるーすーびーずはくしゃくふじん)
結い上げた髪と煌びやかな装いが特徴的な中年の女性。アンリエット・ダンドレジーとは学生時代の友人で、身分の低い男性と結婚して夫に先立たれて未亡人となったアンリエットとその男児を邸内に住まわせていた。彼女の境遇に同情して屋敷に住まわせた、と世間には思わせていたが、実際は使用人のようにこき使っており、困っている友人を助けている、という名声を手に入れたいだけであった。 そんなうわべだけの友情をサロンに集っていた客たちの前で指摘され、面目を失うこととなる。
アンリエット・ダンドレジー (あんりえっとだんどれじー)
ドルー・スービーズ伯爵夫人の学生時代の友人。髪をきっちりと編み込んだ質素な装いの女性。夫を亡くし、男児を抱えて未亡人となったため、伯爵夫人を頼った。だが使用人として酷使され、王妃の首飾りの窃盗犯として疑われた経緯があり、居たたまれずに、追い出されるようにして屋敷を出ることとなった。この窃盗事件に関しては警察が何か月も捜査を重ねたが、その警察をして誠実で真面目な人柄と保証させたほどの善人。 なお、スービーズ伯爵邸を追い出された後、アンリエット・ダンドレジーが病床にあった6年間、彼女のもとには差出人不明の無記名の送金が幾度も繰り返された。
デティグ男爵 (でてぃぐだんしゃく)
クラリス・デティクの父親。くせ毛のミディアムヘアに、両頬を覆うくらいのもみあげが特徴的な中年の男性。アルセーヌ・ルパンが娘のクラリスに好意を寄せていると知り、家柄も財産もない彼から娘を遠ざけようと、クラリスの外出を厳しく制限し、デティグ男爵自身が外出する際には、目が届くよう常にともに連れ出した。ボーニャマンの結成した宝さがしの陰謀組織のメンバーで、いとこのベヌトら仲間の貴族の男性とともに、七本枝の燭台の謎の示す場所に隠された財宝を探している。
ダルコール大公 (だるこーるたいこう)
巻き毛のミディアムヘアで、両頬から顎にかけて髭を生やした年配の男性。七本枝の燭台の謎を解明するために作られた宝さがしの陰謀組織のメンバーの集まりの場で、敵対するジョゼフィーヌ・バルサモと24年前に会ったことがあると証言した。だが実は、ジョゼフィーヌは母親から悪事の手ほどきを受けており、ダルコール大公が会ったのは母親の方だった。
ボーニャマン
王党派活動家の弁護士。禿げ上がった広い額に、頭髪を後ろにぴったり撫でつけ、豊かな八の字型の髭を蓄えた中年の男性。広い人脈と豊かな財産を保有している。七本枝の燭台の謎を示す書簡を偶然入手し、その言葉が示すかつてのノルマンディ地方の教会の隠し資産の在処を探すために、宝探しの陰謀組識を結成した。
ベヌト
デティグ男爵のいとこ。ミディアムヘアの黒髪に顎まで覆う髭を生やした中年の男性。デティグ男爵と顔立ちが似ている。七本枝の燭台の謎を解明するために集まった貴族の宝探しの陰謀組織のメンバーの1人。
レオナ―ル
中年で体格の良い男性。ジョゼフィーヌ・バルサモの忠実なしもべのように振る舞っているが、実は彼女の父親で、ジョゼフィーヌの悪事の手助けをし続けている。情報を聞き出すために女性を鞭で打ちすえたりと、非道な振る舞いを繰り返すため、それを見たアルセーヌ・ルパンに敵意を抱かれることとなる。
ドリニー伯爵 (どりにーはくしゃく)
薄い髪をぴったりと後ろに撫でつけた中年の男性。妻のイボンヌの友人と不倫し、イボンヌと離婚を望んでいる。だが彼女との間にできた息子は、イボンヌの2人の叔父の財産の相続人となっているため、イボンヌだけを追い出そうと目論んでいる。カトリックでは離婚は認められないが、妻が夫を裏切った場合は特例で認められるため、イボンヌが身に付けている結婚指輪が本物でなく、彼女が作り直させたものだと知ったことをネタに妻を監禁し、強引に離婚の段取りを進めた。
イボンヌ
若い女性で、髪をふわりと柔らかく結ってまとめ上げている。まだ就学前の幼い息子がいる。過去、アルセーヌ・ルパンが別名の「オラス・ヴェルモン」を名乗っていた時に、好意を寄せていた女性。お互い独身だった時にルパンに求婚されたが、当時ドリニー伯爵との婚約話が進んでいたため、イボンヌはルパンの申し出を断った。だが、結婚して数年で伯爵は浮気するようになり、イボンヌの宝石を売り払うなど、彼女に対して辛く当たるようになった。 辛い日々の慰めにと、うっかりなくしてしまった結婚指輪の代わりに、結婚指輪にそっくりな指輪を作らせ、その際に裏に「オラス・ヴェルモン」の名を刻んだ。クラリス・デティクとルパンが結婚したことを知らずに、これを投函すればいつでも駆けつけます、と手渡されていたヴェルモンの名刺を、夫に監禁された時に、紙飛行機にして窓から飛ばして助けを求めた。
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王妃の首飾り (おうひのくびかざり)
ドルー・スービーズ伯爵家に伝わる自慢の首飾り。元々国王ルイ15世の愛人であるデュ・バリー夫人に贈るため作られた。ルイ15世が急逝したために、買い手を求めた宝石商が、ルイ16世の正妃であるマリー・アントワネットに購入を依頼した品。当時フランスは財政難だったため、王妃にも購入を断られた。 日頃から王妃と親しいと言いふらして金儲けをしていたジャンヌ・ド・ヴァロアが、王妃の代理で購入すれば、王妃が宰相にしてくれると、ロアン・スービーズ大司教を唆して金を立替えさせた。だが、宝石商から王妃の首飾りを預かって逃走したジャンヌは、座金から高価なダイヤを外して売りさばいてしまった。のちに取り戻された座金だけが、ロアン・スービーズ大司教の甥のガストン・ド=ドルー・スービーズの手に戻った。 彼は売り飛ばされたダイヤのいくつかを買い戻したうえで、手に入らなかった分は、価値は劣るものの同じ大きさのダイヤで埋めて首飾りを復元した。それから1世紀にわたり、ドルー・スービーズ伯爵家の家宝となっている。ちなみに、作られた当初は、現在の価格で約30億円の価値のある首飾りだった。
七本枝の燭台 (ななほんえだのしょくだい)
莫大な財宝の隠し場所を示す言葉。ノルマンディ地方の司祭が、1世紀前に教会の共同財産としてため込んだ金を、宝石に変えて保管していた。その隠し場所を示すヒントとして受け継がれていた。宝石にまつわるエピソードは、大革命時代の恐怖政治で処刑された教会の司祭が、その死の前夜に、王政復古を望む派閥のものが受け取りにくるまで預かって欲しい、と少年に後を託したことから始まる。 だが、待ち合わせに指定された20年後、指定された七本枝の燭台の前に受け取り手は現れず、それから55年も待ったが、受け渡しは実行されないままとなった。自身も老いたため、時の枢機卿に秘密ごと後を託そうとしたが、使いの者も戦争に巻き込まれて役割を果たせず死亡。以降、宝石は手つかずで眠っている。 ジョゼフィーヌ・バルサモは、祖先の「カリオストロ伯爵」からこの秘密の言葉を受け継いでおり、ボーニャマンは偶然入手した古い書簡から、財宝に繋がる七本枝の燭台の存在を知った。
クレジット
- 原案
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モーリス・ルブラン
書誌情報
VSルパン 7巻 小学館〈フラワーコミックス α〉
第1巻
(2014-04-10発行、 978-4091361103)
第2巻
(2015-07-10発行、 978-4091374332)
第3巻
(2016-10-07発行、 978-4091386816)
第4巻
(2019-08-09発行、 978-4098705405)
第5巻
(2021-04-09発行、 978-4098712953)
第6巻
(2022-07-08発行、 978-4098717118)
第7巻
(2023-10-10発行、 978-4098723621)