史実を元にした、中国の古典的神怪小説「封神演義」を原作とする歴史ファンタジー漫画。舞は紀元前11世紀、古代中国の殷王朝。第30代皇帝の紂王は、文武に優れた名君だった。ところが、妲己を娶ってから紂王は変わり始める。実は妲己は、邪心を持つ仙女だった。仙術で紂王を虜にした彼女は、己の欲望の赴くまま人民を苦しめる。仙人界の重鎮である元始天尊は、事態を収拾するため、一番弟子の太公望を人間界に送り込む。
本作に登場する忠臣は、殷王朝に仕える道士の聞仲。先々代の時代から殷王朝の大師(軍師)を務めてきた人物。殷王朝に絶対の忠誠を捧げる聞仲は、王朝のためとあらば、どんな相手に対しても一歩も引かない。ただし、彼の忠誠の対象は皇帝個人へではなく、王朝そのもの。そのため、王朝のためであれば皇帝にも遠慮なく諫言を行う。彼は歴代王子の教育係も務めており、現皇帝である紂王も頭の上がらない存在だ。また、聞仲は忠誠心だけでなく、道士としての戦闘力も折り紙付き。妲己、趙公明と並ぶ「金鰲(きんごう)三強」の一角で、スーパー宝貝(ぱおぺい=神器)の「禁鞭」を振るうその姿は、軍神さながらである。忠臣であり、道士としても有能な聞仲は、キーマンのひとりとして物語を大いに盛り上げる。
江戸時代中期に発生した「赤穂事件」がを題材の時代劇漫画。元禄14年(西暦1701年)、江戸城において赤穂藩藩主である浅野長矩が、将軍家の典礼を司る旗本の吉良義央(上野介)に対して刃傷沙汰を起こした。浅野には同情すべき理由があったが切腹を申しつけられ、一方の吉良は一切お咎めなしだった。この一件に不服を抱いた赤穂藩の元藩士(赤穂浪士)47名は、主の仇を討つべく、吉良義央の襲撃を企てる。
「忠臣」から、真っ先に思い浮かぶのは「忠臣蔵」の赤穂浪士という方は多いだろう。主君の無念を晴らす彼らの仇討ち劇は、「仮名手本忠臣蔵」として人形浄瑠や歌舞伎の人気演目となり、江戸時代から現代まで、様々な作品が創られている。物語の中心は、仇討ちを主導した大石内蔵助だ。普段は昼行灯と揶揄される呑気な男だが、優れた状況判断と知略を兼ね備えた傑物だ。赤穂藩の国家老を務めていた彼は、血気に逸る家臣たちを抑えつつ周到に準備を重ね、そして吉良たちの油断を誘い、見事仇討ちを成し遂げる。また、高田馬場の決闘で名を馳せた赤穂浪士随一の剣士、堀部安兵衛の活躍も見逃せない。
「三国志」の英傑の魂を宿す高校生たちによる、勢力争いを描いた異色の学園バトルアクション漫画。三国志で活躍した英雄たちの魂を封じた勾玉が、偶然日本に流れ着き、各地に広まった。その勾玉の所有者は戦いの衝動に突き動かされ、やがて彼らは「闘士」と呼ばれていく。主人公の女子高校生の孫策伯符は、そんな闘士のひとり。幼い頃から母の呉栄によって鍛えられた伯符は、闘士たちが群雄割拠する東京で天下統一を目指す。
本作には数多くの「忠臣」が登場する。物語の舞台となっている東京では、闘士たちは三国志における魏、呉、蜀にあたる3つの陣営に分れている。主人公である伯符が通う南陽学院が呉、曹操孟徳を頂点とする許昌学院が魏、劉備玄徳が頭首を務める成都学園が蜀にあたる。そして、それぞれの陣営に頭首を支える忠臣が存在している。ちなみに魂を宿すといっても、元となっている英雄と、闘士たちの容姿や性別は異なっている。性格も異なる面が見られるが、基本的な立場は同じ。忠臣の魂を宿す闘士は、やはり忠義に厚い。中でも関羽雲長は、忠臣の筆頭格だ。姿はプロポーション抜群の美女となっているが、劉備への忠誠は不変。それどころか、忠義を超えた恋愛感情を抱いている節もある。原作から大きく逸脱している設定も、この作品の見どころだ。
戦国時代を舞台に、武将たちのエピソードを大胆に脚色した4コマギャグ漫画。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった有名どころから、最上義光のように比較的マイナーな人物まで、数多くの戦国武将たちが登場する。タイトル通り、殿とその家臣による会話を中心に史実に基づくネタを膨らませ、漫才の掛け合いのような笑いを生みだしている。2009年7月にテレビアニメ化。
本作は数多くの戦国武将を扱った作品だけに、忠臣も数多く登場する。例えば、徳川家康の家臣である本多忠勝。忠勝は代々家康に仕えており、忠義に厚い家臣。忠勝は徳川家中でも一二を争う猛将で、鹿の角を象った兜がトレードマークだ。彼は、家康が今川家の人質だった幼少期から心酔していた。また、忠勝の父である正信も、息子に負けず劣らずの忠臣である。なんと彼は、家康への忠誠心が昂じて、その心を読む特殊能力に開眼してします。他に、豊臣秀吉と石田三成の関係も面白い。三成は秀吉の一番のお気に入りだが、その理由はお笑いの相方に最適だから。秀吉の意を汲み、絶妙なボケを連発する三成の忠臣ぶりは、見事としか言いようがない。
歴史上の偉人が集うアパートの管理人の、破天荒な日常を描くギャグ漫画。歴史に名高い偉人たちが、突如として現代の日本に出現。この事態に対応するため、政府は国営偉人居住施設「偉人館」を建設した。主人公の四条椿は、この偉人館の管理人だ。当初は偉人たちに敬意を抱いていた椿だが、傲慢で自己中心的な彼らに愛想を尽かし、今や暴力も辞さないドSな対応が定着している。そんな彼の日常は、まさにカオスそのものだ。
本作における忠臣は、なんと明智光秀。史実では本能寺の変で、主君である織田信長に謀反を起こした逆臣とされる人物だ。ところが本作の光秀は、信長が好きすぎて心を病んでしまった危険な忠臣として描かれている。信長は、敵対する比叡山の勢力を山ごと焼き討ちにしたことでも知られている。しかし、この残虐な行為は信長の意志ではなく、信長を想う光秀の暴走だった。笑顔で焼き討ちを報告する光秀に、信長は顔面蒼白。光秀の病みっぷりは止まることを知らず、ついには本能寺の変を起こしてしまう。現代においても、光秀の重すぎて危険な忠誠心は相変わらず。かくして信長は、不安な日々を過ごすことになる。