本作に登場する最初のレシピ。吸水させたご飯の入った釜に、昆布を一切れ入れて酒と醤油で薄めに味付けする。さらに1合につき一切れの塩鮭、ささがきにしたごぼう、ほぐしたまいたけを入れて炊飯。炊き上がったら塩鮭と昆布を取り出して細かくし、たっぷりのいりごまと一緒に釜に戻して完成となる。ごぼうは、アクはうまみの素なのであえて水にさらさないのがポイント。
「そこそこの収入で人間らしい暮らし」を好み、スーパーを回って少しでも安価な食材を探すのがルーティーンとなっているシロさんは、帰宅途中で安く売られていたまいたけやごぼうを発見し、炊き込みご飯を作ることを思いつく。帰宅したシロさんは炊き込みご飯、味噌汁、卵とたけのことザーサイの中華風炒めなどを手際よく完成させ、「仕事で案件をひとつキレイに落着させたくらいの充実感」を味わっていたのだが、一緒に住んでいるケンジがコンビニで定価のハーゲンダッツを買ってくるという浪費をしてしまい、小言をぶつけるのだった。
年末に実家に帰省したシロさんが母親と作った料理。戻した切り干し大根とにんじんの千切り、細切りの油揚げをごま油で炒める。そこに切り干し大根の戻し汁、酒と醤油、だしパックなどを入れ、照りが出るまで完全に煮汁を飛ばす。味が濃くなるため、醤油はかなり少なめに入れるのがポイント。
息子がゲイであることを嘆く母を敬遠し、実家への帰省を避けがちなシロさん。大晦日に実家に帰った彼は、昨年までとは違った穏やかな雰囲気の両親に迎えられる。その態度をシロさんがいぶかしむ中、母の久栄が元旦の昼食をトンカツにしようと提案。シロさんと久栄は一緒に台所に立ち、トンカツや味噌汁、切り干し大根の煮物、スパゲティサラダなどをこしらえる。すべて食べ切ることはできないながらも両親との団らんの昼食を終えたシロさんだったが、突然久栄から、来年の正月には彼氏であるケンジを連れてくることを切り出されてしまい、このために静かな雰囲気をつくっていたことに気づく。結局父と母の迫力に押し切られ、ケンジを実家に連れてくる約束をしてしまうのだった。
夏休み中のシロさんとケンジが近所の商店街で買ったきゅうりを使ったレシピ。きゅうり全体をまず麺棒などで叩いてひびを入れ、四等分に切って縦にも四つ割りにする。フライパンで豆板醤をゴマ油で炒め、醤油、酢、砂糖、おろしにんにくを入れてきゅうりとあえる。フライパンから別の容器に移して冷蔵庫で冷やして完成。
商店街できゅうりやナス、ピーマンなどを買い込んだ2人は、途中で喫茶店に寄って休憩するなどのんびりした時間を過ごす。夕食時、それまでは近所で2人一緒に行動するのを嫌っていたシロさんがなぜ買い物に誘ってくれたのかと疑問を口にするケンジに、シロさんは「なんとなく。いい加減何かもういいかなーと思って」と心境の変化を明かしたのだった。
シロさんが、ケンジを連れて正月に筧家を訪れた時にシロさんが作った料理。かぶの葉は刻み、じゃこはフライパンでカリカリになるまで炒める。フライパンにかぶの葉を入れて酒と醤油で味付けしたら水分がなくなるまで炒り、最後に白炒りごまを振って完成。
ケンジは、この時がシロさんの両親との初めての対面だった。初めはおせちを食べながら会話をしていた4人だったが、なんとなく漂い続ける気まずい雰囲気に耐えられず、久栄がおせち以外の温かい食べ物を作ろうとシロさんに提案。シロさんは久栄と一緒に、鶏のから揚げやかぶの葉のじゃこ炒めなどを作ることになった。料理を待つ間にシロさんの父・悟朗(ごろう)と話していたケンジは、シロさんが弁護士になった理由の一つには、両親への親孝行の気持ちがあったのではないかと考えを打ち明けるのだった。
シロさんが近所のスーパーで知り合い、仲良くなった主婦の富永佳代子(とみなが かよこ)の家で行われた食事会で作った料理。包丁で身をこそげた生のとうもろこしを天ぷら粉にまぶし、さらに水で溶いた天ぷら粉をつける。それをスプーンで油に入れ、低温と中温の火加減で表と裏で3分ずつ揚げて完成。
食事会は、シロさんとケンジが佳代子に招待されたことがきっかけで行われた。ケンジはこの時、富永夫妻と初の対面を果たした。ケンジが佳代子の夫と談笑している間、シロさんと佳代子は夏野菜の天ぷら、たこめし、わかめときゅうりの酢の物、しじみの味噌汁などを作る。食事会は和やかなうちに終わったが、帰宅途中、シロさんとケンジはお互いに自分のことを富永夫妻に話しすぎていると責め合い、久しぶりのケンカに発展するのだった。