社会現象を起こしたグルメ漫画。東西新聞社のグータラ社員こと山岡士郎は、食に関してずば抜けた知識と舌を持っていた。彼は、優れた味覚を持つ同僚の栗田ゆう子と共に社のプロジェクト「究極のメニュー」の担当に抜擢される。だが、美食の芸術家で士郎の父である海原雄山が立ちはだかる。第32回小学館漫画賞青年一般部門受賞、1988年TVアニメ化。
究極のメニューの担当となった士郎とゆう子は、食に関する悩みや相談を受けることが多く、人間関係の問題を食で解決することも多々ある。単行本10巻に収録されている「おせちと花嫁」では、相撲部屋「島高部屋」の若き横綱の恋を陰ながら助けるエピーソードが描かれている。横綱の若吉葉はお手伝いの娘すみ子と恋仲であったが、島高部屋の親方は横綱に相応しい良家の令嬢との縁談を考えていた。そこで横綱の心をとらえる「おせち」を作った者が花嫁になることに。士郎たちは、派手さはないものの、手間と根気が必要な黒豆煮をすみ子に伝授し、これがきっかけで横綱とすみ子の結婚を親方も認める。
同性愛者の日常を料理と絡めて描かれる物語。弁護士の筧史朗は美容師の矢吹賢二と2人暮らし。お互いに家事を分担して生活する中、料理は史朗の担当だ。性のマイノリティーや仕事で悩むことがあっても、毎日の美味しい食卓が2人の心を繋いでいく。2019年TVドラマ化。
本作でおせちが登場するのは単行本の9巻。史朗はこれまで、ゲイであることが理由で両親と気まずくなり、距離を置く関係になっていた。しかし、賢二からの提案で親と和解し、正月に度々帰省するようになる。だが、両親が賢二を受け入れるのに時間がかかってしまい、その年の正月は賢二と2人で過ごすと決めた。史朗は本格的なおせちではなく、黒豆、紅白なます、関東風の雑煮といった2人が好きなものを用意することに。また、小豆から煮たおしるこも作る。小豆を煮ていると餡子の甘い香りがして味見をすると、小豆自体に甘みはないことに驚くなど、料理をする人の自然な目線で描かれている。
幼い娘と父親が料理を通じて絆を深める物語。高校教師の犬塚公平は半年前に妻を亡くし、幼稚園児の娘つむぎと2人暮らし。慌ただしい日々の中、食事は冷凍食品や外食に偏っていた。そんな時、料理屋の娘で生徒の飯田小鳥から食事を一緒にしようと誘われる。公平とつむぎは小鳥とご飯を作り、食事の楽しさを取り戻す。2016年TVアニメ化。
美味しそうなご飯と育児にまつわる人間ドラマが描かれる本作。最初は土鍋でご飯を炊くのが精一杯だった公平たちが、やがて様々な季節やシチュエーションにあわせた料理を作るようになり、単行本7巻ではおせち料理が登場する。正月に亡き妻の実家に行くことになった公平とつむぎは、小鳥のアドバイスの元、大みそかに「栗きんとん」を作りお土産として持っていくことに。公平が練った餡を一生懸命裏ごししていくつむぎ。あら熱が取れたら完成なのだが、つむぎは待ち切れず味見を求めてしまう。また、この栗きんとんを含め、作中に登場した料理のレシピを纏めた『甘々と稲妻 つむぎと作るおうちごはん』(講談社)も発行されている。
若き棋士の成長と彼を取り巻く人々を描いた人間ドラマ。幼い頃に事故で家族を全て喪った少年の桐山零。彼は将棋士の内弟子として育ち、史上五人目の中学生棋士になる。そんな彼は深い孤独を抱えていたが、三日月町に住む川本三姉妹との交流で心癒されていく。2016年TVアニメ化、第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞他、多数受賞。
孤独だった零は、ひょんなことから川本家の三姉妹と共に夕食をとるようになる。料理上手な長女のあかり、育ち盛りの中学生のひなた、幼稚園児のモモたちと楽しく食卓を囲むシーンが度々描かれる。そんな川本家のおせちが単行本の3巻に登場。紅白かまぼこの代わりに赤白のボールはんぺんでお団子にしたもの、豆に暮らせるようにポークビーンズ、祖父の長寿を願ってミニハンバーグで作った亀、金運が上がるように金色のきんとん、フランクフルトを鯛にしてみたりと、子どもが好きな具がたくさん入ったおせちに仕上がっている。
名門料理学校で主人公がライバルたちと鎬を削るグルメバトル漫画。名門料理学校「遠月学園」に入学した幸平創真は、大衆食堂「ゆきひら」の跡取り息子。持ち前の発想力と幼い頃から店に立ち続けてきた経験を持つ創真が、「食戟」と呼ばれる料理勝負で実力を発揮し、学園内で頭角を現していく。2015年TVアニメ化。
主人公の創真が、ライバルたちや審査員をうならせる料理バトル「食戟」が見どころの本作。和洋中様々な料理が登場する本作にも「おせち」が登場する回がある。それは最終章となる若手料理人のコンテストBLUE編の第二の試練に登場した「季節外れの必殺おせち」だ。コンビニにある食材を使い、一皿100ドル以上の価値がある料理を作ることになった創真が供したのは「おせち」。通常は仕込みに長い時間を要するが、加熱や調味が加わったコンビニ食材ゆえ、その場で造り上げることが可能になった。しかも、どのメニューから食べても次のメニューが食べたくなる工夫が施されている。この予想外のメニューで、創真は厳しい審査員の合格をもぎ取る。