暗号に隠された誰かの想いを紐解く、優しさ溢れる探偵漫画。千董生紺一郎(ちとせこんいちろう)は、暗号解読を専門とする探偵だ。彼は幼なじみ兼助手の少女・モモとともに、暗号解読事務所を営んでいる。どんな難解な暗号も、愛用のルービックキューブを解きながら華麗に解読してしまう紺一郎。そんな彼の噂を聞きつけて、今日も暗号解読事務所には謎めいた暗号に頭を悩ませる依頼人がやってくる。紺一郎は依頼人と持ち込まれた暗号を通じて、様々な人の想いに触れていく。
探偵、暗号という言葉に、血なまぐさい凄惨な事件やダイイングメッセージ、謎めいた脅迫状などを連想する人は多いだろう。しかし本作では、探偵漫画でおなじみの不穏な事件は起こらない。物語は、主人公である紺一郎の元に暗号解読の依頼が舞い込むことで動き出す。暗号は家族が遺したものだったり、かつての恋人に送るものだったり、金庫の暗証番号だったりと様々だ。共通しているのは、どの暗号にも誰かに対する強い想いと思いやりが込められているということ。紺一郎に暗号解読を依頼し、込められた想いを知った依頼人たちは、皆清々しい表情で明日への一歩を踏み出していく。謎が解き明かされたあと、読者が依頼人と同じように穏やかな気持ちになれる、優しい暗号専門ミステリーだ。
事件の詳細を迷宮入りにするエキセントリックな探偵を描いた、ミステリーギャグ漫画。主人公の池々郷(いけいけごう)は、運で事件を解決してきた探偵だ。犯人は捕まり事件は解決するものの、肝心の動機やアリバイ、トリックなどは一切見破れず、詳細は迷宮入りになってしまう。今日も池々は難事件の現場に赴き、破綻した論理と当てずっぽうでますます現場を混乱させ、最終的に力技で事件解決へと持っていく。終わりよければ全てよし。抱腹絶倒間違いなしのとんでも探偵漫画、ここに開幕。
探偵といえば、論理的思考と卓越した推理力が必要とされる仕事だ。しかし本作の探偵、池々はそれらをまったく持っていない。ではどうやって事件を解決するのかというと、当てずっぽうだ。思いついたことを言って、周囲の反応を窺う。はずれているようなら誤魔化して、当たっているようなら話を進める。それを繰り返して、犯人を暴こうとするのだ。しかし運良く犯人がわかっても、トリックや犯行動機はスルーしてしまうため、実際は謎のほとんどが解明されない。それなのに何も問題にならないのは、他のキャラクターたちもまた池々に負けず劣らずズレているからである。ありとあらゆる言い回しで事件を解決したフリをする池々と、見事に誤魔化される周囲のやり取りに、読者は込み上げる笑いを抑えきれないだろう。
日本各地の葬式で起こる事件を解決していく葬式ミステリー漫画。主人公の百舌(もず)一郎、通称モズは、葬式や風習を研究している民俗学教授だ。彼は日本各地の葬式に赴いては、そこで起こる不可解な事件を自らの知識を駆使して解決してきた。葬式があるところに、モズがいる。いつしか彼には葬式探偵という異名がつき、様々な依頼が舞い込むようになっていた。モズはとある事件で知り合った助手の原田都(みやこ)とともに、今日も葬式絡みの謎めいた事件に挑んでいく。
日本には古来、各地に独自の葬式文化がある。多種多様な葬式というものに魅入られているのが、本作の主人公であり探偵役であるモズだ。モズは探偵業を営んでいるわけではない。上陽(じょうよう)大学で民俗学を研究しているただの教授にすぎないのだが、何故か副業で探偵をしているという噂が広まっており、持ち込まれる依頼に辟易していた。しかしその依頼が、地方の葬式に関わることであれば話は別。無気力そうなモズの瞳に生気が宿り、どんな辺境の地にも進んで赴いて事件に携わるのである。モズは赴いた先で起こる不可解な事件を、自身の頭に入っている風習やしきたりを鍵として解決に導いていく。本作は、数々の事件を通して人を弔うことの意味を考えさせられる、珍しい探偵漫画だ。
霊感体質の女性が、動物とコミュニケーションを取りながら謎を解いていくホラーサスペンス漫画。主人公の水町立夏(みずまちりっか)は、大学生になったばかり。彼女は霊が視えたり、動物と話ができたりする特異体質の持ち主だった。そのため幼少期から周囲に奇異の目で見られ、寂しい思いをしてきた。そんな彼女の前に、同じような特異体質を持つ探偵、高倉佑志(ゆうじ)が現れた。立夏は高倉とともに動物が関わる様々な事件に巻き込まれ、協力してそれらを解決していくことになる。
本作では、霊が視え動物と話すことができるという特異体質を持つ立夏と高倉が、謎めいた事件に巻き込まれ、その解決のために奮闘する。2人が事件に巻き込まれるきっかけとなるのが、事件に関係している動物の存在だ。様々な動物の霊が立夏たちの前に現れ、事件についての何かを訴えかけてくる。また忘れてはいけないのが、立夏をサポートする3匹の動物である。猫のルリ、犬のシキ、そしてカラスのクロハ。彼らは立夏と会話をすることができ、立夏が幼い頃から彼女を守ってきた頼もしい存在だ。高倉も彼らと会話することが可能で、事件解決のために度々連携する。事件発覚も事件解決も動物がいなくては始まらない、動物好きは要注目の探偵漫画である。
冷蔵庫を覗いて事件の真相を解明する女性の活躍を描いたミステリー・ドラマ。主人公のレイコこと蔵前怜子(くらまえれいこ)は、料理の腕を活かしたケータリングサービスを営んでいる。そんな彼女の趣味は、他人の家の冷蔵庫を覗き見ること。レイコは冷蔵庫の中身を見ることで、持ち主の性格や嗜好を読み解くことができるのだ。レイコはこの特殊なプロファイリング能力を活かして、ある事件で知り合ったちょっと頼りない刑事、リョウこと真名部涼とともに、様々な事件の解決に挑んでいく。
レイコが冷蔵庫プロファイリングに目覚めたのは、付き合っていた恋人に浮気をされ別れたことがきっかけだった。辛党であるはずの彼の冷蔵庫に入っていたスイーツ。奥に押し込まれたレイコの料理。レイコは冷蔵庫の中に浮気の痕跡があったことに別れ話のあと気づき、もっと恋人の家の冷蔵庫をよく観察しておくべきだったと後悔した。その経験が冷蔵庫を覗く趣味に繋がり、やがてプロファイリング能力へと進化したのである。そんなレイコの冷蔵庫プロファイリングに目をつけたリョウは、レイコに「冷蔵庫探偵になればいい」と告げ、以降2人は冷蔵庫を巡る数々の事件に遭遇することになる。冷蔵庫の中身がどのように事件と関わってくるのか、レイコと同じように推理しながら読んでみよう。