ジュゴンに育てられた双子の少年たちを巡る海洋ファンタジー冒険漫画。女子中学生・安藤琉花は、夏休み初日、ハンドボール部の練習中にラフプレーでチームメイトにケガをさせてしまい、監督から部活への出入禁止を申し渡されてしまった。自分の居場所をなくしやりきれない気持ちになる中、ふと「東京の海に行ってみたい」と思い立ち、電車で汐留に向かう。そこで、海中を自由に泳ぎ回る不思議な少年に出会った。2019年6月にアニメ映画化。
琉花が出会った少年の名は「海」。10年前、ジュゴンと一緒にフィリピンの沖合にいたところを保護された。海中で育ったためか皮膚が異常に乾燥しやすく、陸に上がると身体に火傷を負ったような状態になる。海洋科学者ジム・キューザックが保護者となり、同時期に同じ状態で保護された少年・空と共に、血の繋がりはないものの双子として育った。ジムが、空から「自分たちのルーツを調べて欲しい」と頼まれ、琉花の父が勤める江ノ倉水族館へやって来たため、琉花と海が再会。彼女は、双子から「自分たちと同じ匂いがする」と言われ、研究者たちと一緒に海に出る。海&空のルーツと、彼女が幼い頃に水族館で見た「海の幽霊」の謎が、未知なる世界への扉を開く。
15世紀初め、主人公・鄭和(ていわ)が、大船団を率いて航海に挑む海洋冒険ロマン。舞台は、中国の明国。太祖・洪武帝(こうぶてい)亡き後、直系の孫にあたる建文帝(けんぶんてい)が即位する。しかし、不満を抱いた叔父・朱棣(しゅてい)が反乱を起こし、建文帝を追い出すことに成功。永楽帝(えいらくてい)として即位を果たした。朱棣は、巨船団を率いた前人未到の大航海を果たすことで己の威厳を示そうとする。
タイトルとなっている「海帝」とは、人類史上初の遠洋航海に果敢に挑み、「海の皇帝」と呼ばれた鄭和のことだ。彼は、中国の明王朝時代に実在した非常に有能な人物で、高い地位にあった。作中では、永楽帝の勅命を受けて巨船団を率いることになる。しかし実は、その船には、永楽帝が血眼になって捜索している建文帝とその子どもたちが匿われていた。西域の色目人の末裔で、長い睫毛とマリンブルーの瞳を持つ鄭和は宦官。去勢して子孫を残せない身体ゆえに命に対する思いが人一倍強かった。そのため、彼らをはるか海の彼方に逃がすことを決意する。目指すは、まだ見ぬ南方諸国。鄭和と仲間たちによる、いまだかつてない壮大な海洋アドベンチャーが始まる。
女子高校生たちが、ダイビング部での活動を通じて成長していく日常系学園コメディ。大木双葉は、伊豆にある美ヶ丘高校への進学をきっかけに東京から引っ越してきた16歳の女子高生。通学に使用するスクーターの走行練習中に、海の家「海女人屋」の女店主・小日向きのと知り合い、伊豆の海の魅力を教えてもらう。その後、きのの孫で、同じ高校に通う小日向光とも知り合い、ダイビング部に勧誘される。2016年と2018年にテレビアニメ化。
「てこ」こと双葉は、引っ込み思案な性格だ。一方、「ぴかり」こと光は、スキューバーダイビングが趣味で、祖母・きのが経営する海の家の手伝いを幼い頃からしている活発な女の子。正反対に思える2人だが、お互い不器用な性格だと分かり、親友となる。光からダイビング部に誘われた双葉は、「でっけえ楽しい世界が無限に広がっているぞ」というきのの言葉にも触発され、入部を決意。ダイビングの器材を身に着けて初めて海中に潜った際に失敗し、一時はダイビングに背を向けてしまうが、光の励ましもあり、気弱な自分を乗り越えて成長していく。2人を中心とするダイビング部員たちが海で和気あいあいと活動する様子は、まさに「日常ときどきダイビング。」のキャッチコピー通りだ。
あたり一面が水で覆い尽くされた世界を、バスタブに乗って漂流する兄弟を描いているサバイバル系コメディ。物語が始まるのは、高校生の春生が17歳のバースディを迎えた朝だ。彼が目覚めると、世界が水没していた。春生は、水が自宅の2階まで侵入していたため、大嫌いな引きこもりの兄・夏生を仕方なく連れて何とか脱出することに成功。移動する手段がなく絶体絶命のピンチとなるが、目の前に流れてきたバスタブに乗り込み、水没した世界へと漕ぎ出す。
春生は、大嫌いな引きこもりの兄と共に、バスタブの船で大海原をさまようことになった。しかし、広い海には恐ろしい人食いサメがうようよと泳いでおり、溺れかけている人間たちに次々と襲い掛かって来る。途中、友人を見殺しにした春生たちは、両親と再会を果たした。しかし、2人を乗せてしまうとバスタブが沈んでしまうため、人食いサメに襲われる両親を目の前にしてもなすすべがない。さらに悪いことに、水中に投げ出されパニックになった人々が助けを求め、春生たちのバスタブに一斉に乗り込もうとする。作者・櫻井稔文が語っているように、異常気象に見舞われている現代人にとって「地球水没」の物語はもはやファンタジーではないのかもしれない。
主人公が、祖父の遺品を通じて知った幻の島の謎を探るファンタジー系アドベンチャー漫画。御蔵みくらは、離島で、祖父のブライアン・アメリアと共に空輸業を営んでいる小型飛行機の女性パイロットだ。急死した祖父の葬儀後、思い出の残る部屋で脱力感に苛まれていたところ、「ミクラへ」と書かれた古いノートの束と小包を見つける。小包の宛先は「太平洋在エレキテ島」という聞いたことのない島だ。祖父のノートには、エレキテ島についての考察や目撃情報などが30年にわたって書き綴られていた。
みくらは、祖父が遺したノートから、太平洋上をさまよう「エレキテ島」の存在を知った。島の人々に尋ねてみると、「それは蜃気楼島だ」と言う。「いつもは海しか見えない窓に突然現れて朝方には消えた」「海図にない島に接岸したら翌朝跡形もなく消えていた」といったエピソードを聞いて興味を抱いたみくら。ある時、祖父のノートを読み解いていたところ、彼が亡くなった後も記述が続いていることに気付く。そこには「7月2日 エレキテ島に出発」と書かれており、今日がその当日だ。みくらは、居てもたってもいられなくなり、地元漁師の協力の元、愛猫・エンデバーと共に、レーダーにも映らない幻の島・エレキテ島へと出発する。フロンティア精神にあふれる作品だ。