大正時代を舞台に、花村紅緒と許嫁である伊集院忍の波乱に満ちた恋愛模様を描いたロマンティックコメディ。主人公の花村紅緒は、跡無女学館に通う17歳の女学生。彼女は、旧来の価値観に囚われない、自由かつ進歩的な女性「ハイカラさん」を自認する少女だ。そんな彼女に、祖父の代から決められた許嫁がいたことが発覚する。しかも、相手はなんと公家の跡取りで、容姿端麗な陸軍少尉だった。
本作で関東大震災が描かれるのは、物語のクライマックス。花村紅緒は、とある事情から伊集院忍と別れ、かねてから彼女に想いを寄せていた上司の青江冬星と結婚を決意する。しかし、冬星自身が紅緒の忍への想いを知っていただけに彼女のその決断に当惑し、また、忍も紅緒への想いを断ち切れずにいた。様々な想いが交錯する中で結婚式が執り行われるが、その途中で関東大震災が発生する。ようやく自分の本心と向き合った忍は、紅緒が結婚式を挙げている教会へと急ぎ向かう。一方の紅緒は、教会の倒壊に巻きこまれ孤立していた。そんな状況下で彼女の心に浮かんだのは、一目だけでも忍に逢いたいという想い。極限の状況下で、2人は本当に愛する相手が誰なのかを知る。
無気力で厭世的な青年と明るく世話好きな少女の交流を描いた、大正ロマンの香りが漂う人情物語。主人公の志磨珠彦は、交通事故によって右手の自由と父からの期待を失い、千葉の田舎で隠居生活を強いられていた。17歳にして人生に絶望していた珠彦だったが、彼の元に世話係を兼ねた許嫁として、14歳の少女の立花夕月がやってくる。そして、夕月の人柄に触れるうち、頑なに閉ざされていた珠彦の心が徐々にほぐれていく。
志磨珠彦の誕生日は9月1日。即ち、彼は自分の誕生日に関東大震災を経験する。大震災の前日、珠彦は千葉の田舎にいたが、許嫁の立花夕月は親友に会うため東京へ出かけていた。そして物語は震災当日を迎える。立っていることも出来ない激しい地震が襲ってくる。ようやく揺れが収まったところで珠彦が外に出ると、目の前に広がっていたのは惨憺たる光景だった。壊した家の下敷きになった人々、また火災も発生していた。そんな中、彼の心によぎったのは、東京にいる夕月のこと。彼は、夕月を探しに東京へ向かうことを決意する。
姿形、性別をも変幻自在に操る不思議な少年が、様々な人間の「生」と「死」を見守るヒューマンドラマ。主人公の外見は、10代半ばに見える金髪碧眼の美少年だ。相手の認識を自在に操ることが可能で、見る者次第でその姿形や声までも変化する。超常の力を備え、永遠の命を持つ彼は、人間とは異なる別の「何か」だ。彼は自分の興味の赴くまま様々な時代と地域に現れ、「人間とは何か」を問い続ける。
本作で関東大震災を扱っているのは、第22話『ムメキクと周平』だ。雪国の片田舎に暮らすムメキクと周平は、幼い頃に不思議な少年と出会う。少年は彼らに予言めいた言葉を残す。「君たちはずっとこの村に暮らし、2人で幸せになるんだ」と。少年の言葉を受け、ムメキクは周平を異性として意識し、将来は夫婦になると信じるようになる。しかし、ムメキクはお世辞にも身器量良しとは言えない容姿の少女。一方の周平は、飛び級で市内の高校に通う村一番の秀才に成長する。やがて周平はムメキクに目もくれず、村を出て東京の大学に進学。それでも諦めきれないムメキクは彼を追って東京を訪れるが、2人は関東大震災に見舞われる。
荒俣宏の同名小説のコミカライズ作品。平将門の怨霊によって帝都壊滅を画策する魔人加藤こと加藤保憲と、彼に対抗する人々の戦いを描くオカルト伝奇ファンタジー。時は明治44年。霊的に安定した帝都構築を目指す極秘の国家プロジェクト「東京改造計画」は、その仕上げ段階に入っていた。そんな中、謎多き軍人の加藤保憲中尉は、神田明神にある平将門の首塚で怪しげな儀式を行っていた。
本作においての関東大震災は、帝都壊滅を目論む加藤保憲によって起こされたものとされている。満州にある大連と東京は竜脈で繋がっており、大連での出来事は東京に大きな影響を与える。そこで加藤は軍務に便乗して大連に渡り、周到に準備を積み重ねてきた。そして、密かに帰国した加藤は帝都壊滅計画の仕上げにかかる。その計画を察知した幸田露伴は、将門の巫女と共に加藤を迎えつが、関東大震災は発生してしまい帝都は壊滅的な被害を受ける。ただし、加藤の思惑通り「地竜」を目覚めさせることは叶わなかった。そこで加藤は、第二の計画を発動すべく雌伏の時を過ごす。そんな加藤が再び姿を現すとき、彼の正体と真の目的が明らかとなる。
ゼロ戦の開発者である設計技師にスポットを当て、航空機の進歩と大空への情熱を描いた物語。主人公の堀越二郎は、東京帝国大学工学部航空学科を首席で卒業し、三菱の設計技師となった秀才だ。彼は欧州と米国への赴任を経て、最先端の航空技術を習得。そして後のゼロ戦となる十二試艦上戦闘機を設計する。2013年劇場版アニメ化。
本作は堀越二朗の半生を軸に、第一次大戦後、急速に発展した航空機の変遷を描いている。本作を元にした映画では、関東大震災の最中、二朗が後に妻となる菜穂子と出逢い、彼女を助けるシーンが描かれている。しかし、これは映画オリジナルのエピソードで、漫画では関東大震災については第1話目でさらりと触れる程度に留まっている。漫画では、菜穂子との出逢いはまったく別の形だ。九式単戦設計の推薦を受けた二朗は、リフレッシュのために軽井沢を訪れる。そして、散歩中に彼は風景画を描いている少女の姿を目にする。これが二朗と菜穂子との出逢いだ。菜穂子の存在は二朗に活力を与え、その結果、彼は九式単戦の新たな着想を得る。