大正ロマンを味わいたいオススメ漫画５選38 Pt.

禰󠄀豆子は鬼に襲われたことが原因で、自らの肉体や精神も鬼と化していた。冨岡は禰󠄀豆子を殺そうとするが、禰󠄀豆子を必死に守ろうとする炭治郎を庇うといった、本来の鬼らしくないふるまいを見せる彼女を見てためらう。冨岡の計らいで、炭治郎は狭霧山に住む鬼殺隊の育手（そだて）である鱗滝左近次（うろこだきさこんじ）の下で剣術の修業に励むことに。2年後、修業を終えた炭治郎は鬼への復讐と禰󠄀豆子を元に戻すため鬼殺隊へ入隊し、更なる過酷な運命に巻き込まれてゆく。本作は、禰󠄀豆子との兄妹愛や鬼殺隊の仲間や隊を支える「柱」たちとの出会いと別れ、「呼吸」を駆使した迫力あるバトルシーンなど見応えたっぷりだ。ハイカラな大正時代の裏で繰り広げられる、連綿と続く壮絶な戦いに最後まで目が離せない。

幼い頃、ひょんなきっかけでありあと出会った夏王は密かな想いを抱いていたが、彼女が異母妹と知った途端冷淡な態度を取る。亜耶子もまた、自分を差し置いて音楽学校で頭角を現す彼女に嫉妬心からいじめを繰り返す。やっかみにもめげず持ち前の情熱で乗り越える彼女に、いつしか二人は心を開き、ありあはピアニストとして成長してゆく。そんな矢先、ありあの左手に異変が起こり、更に関東大震災や愛する恩人の死が彼女の人生に暗い影を落とすのであった。本作は、華やかな大正時代から戦争へ突き進む昭和の激動の時代を駆け抜けた女性の半生を音楽を通して描いている。ピアノを断念し、声楽を経て銀幕のスターとして輝くありあと、彼女を支える夏王との恋物語も壮大だ。

独身のレイは、社交界に参加するためのパートナーとして明に白羽の矢を立てる。ブローチのために明も快諾し、かりそめの花嫁修行が始まる中で少しずつ彼に対する恋心が芽生えてゆく明。しかし、そんな二人に早くも暗雲が立ち込める。明の父、連は政府が威信をかけて行った美術展で贋作を紛れ込ませた「滝川事件」の犯人として濡れ衣を着せられ、自殺に追い込まれた過去があった。レイが事件に絡んでいると知った明は不信感を募らせるが、彼の真意を知り信じることを決意し、事件の真相を知ろうと立ち上がる。本作は、贋作家の娘と公爵という身分違いの恋を二人が乗り越えてゆくさまが逞しく描かれている。アンティークや風俗の描写も丁寧であり、華麗な世界観に浸るのにもってこいだ。

信二郎は学生時代の恩師である作家・菊池大門の元を訪れようとするが、尋は嫌な予感がしてならない。尋は、信二郎の相棒である妖怪・ちまにこっそり彼に付いていくよう命じる。予感は的中し、菊池の妻は妖狐であり彼の生気を吸い取っていることが発覚。信二郎はちまと共に彼を救おうとするが、自分の命と引き換えの結婚であることを悟り断念。後に菊池の死を知り、悲嘆に暮れる彼を優しく励ます尋であった。その後も信二郎は自らを取り巻く妖怪や陰陽師たちと交流し、小説家として大きな一歩を踏み出してゆく。本作は、人間の下宿人が信二郎だけというのに加え、尋もまた化け狸という設定が面白い。ちまを始めとした妖怪たちも可愛らしく、ほのぼのとしたストーリーに心温まる。

立花夕月（ゆづき）と名乗る少女は、珠彦の父が金で買った「嫁」であった。メイドであれば暇を与えるところだが、夕月が借金の形と悟った珠彦はむげにもできず家に置くことに。甲斐甲斐しく世話を焼こうとする彼女を当初は敬遠していたが、その天真爛漫な笑顔に珠彦は徐々に心を開いてゆく。だが、関東大震災が起こり二人は一時離れ離れに。夕月と再会した珠彦は東京の惨状を目の当たりにしたことで、引きこもりから脱却すべく人生の大きな一歩を踏み出してゆく。本作は二人の恋模様がまったりとしたペースで描かれており、ほっこりとした読後感を与えてくれる。また、夕月のキャラクターは愛らしく、作中で癒やされること間違いなしだ。