鬼才「ジョージ秋山」作品よ永遠に!オススメ漫画5選72 Pt.

鬼才と名高い漫画家「ジョージ秋山」が2020年5月12日に77歳で死去した。数多くの、そして幅広い作品を生み出した漫画家であり、その作品に通底する心理描写の巧みな「エグさ」は天下一品であった。今回はそんな作者の傑作を紹介する。

作成日時:2020-09-15 10:00 執筆者:マンガペディア公式

鬼才「ジョージ秋山」作品よ永遠に!オススメ漫画5選

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『ザ・ムーン』

『ザ・ムーン』

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少年少女と巨大ロボットがともに正義のために戦うロボットSF漫画。大富豪の魔魔男爵がつくり上げた巨大ロボット「ザ・ムーン」。悪を憎む男爵が新しい世界の神として、つくり上げたロボットである。サンスウ、カテイカといった奇妙な名を持つ純真な9人の少年少女が心を合わせることで操ることができる。少年少女らはムーンとともに日本を襲う悪の結社「連合正義軍」、「ケンネル星人」などと、正義のために戦うのであった。

同時代の人気ロボット漫画である永井豪の『マジンガーZ』などとともにロボット漫画の黎明期を成した本作。少年漫画ではあるがやはり、鬼才と呼ばれる作者の手によるもの、一筋縄ではいかない作品だ。正義とは、命とは何かなどといった重いテーマをストレートに読者に投げかけてくる。また後述する作者の漫画『デロリンマン』のキャラクター「オロカメン」が、いわゆるスターシステムにより、「正義」の名のもとに日本に水爆を投下しようとする「連合正義軍」として登場するのも意味深で考えさせられる。なお、後に本作の設定を下敷きとしたロボットSF漫画『ぼくらの』が鬼頭莫宏により描かれ、大ヒットした。『ぼくらの』1巻の初版の帯には作者が推薦文をよせている。


『アシュラ』

『アシュラ』

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平安時代末期を舞台に、少年の壮絶な生を描いたヒューマンドラマ。飢饉で人々が次々と死んでいく中、一人の妊娠した女が人肉を食べて生き延びた。その後、産み落とされた子は「アシュラ」と名付けられる。空腹に耐えかねた母に焼いて食べられそうになるアシュラであったが、落雷により助かり、彼もまたときに人肉をむさぼりながら生きていく。その後、人狩りにあったアシュラは、同様の境遇の子どもたちと出会い、人間らしさを身につけていくのであった。2012年にアニメ映画化。

人肉を食す女の姿が描かれる本作は、すさまじいインパクトを読者に与える。こうした凄惨な描写が多いため、掲載誌は有害図書指定され、当時社会問題とさえなった問題作である。だが、読み進めていくと凄惨な描写そのものが本筋ではなく、根源的な生とは、人間らしさとは何かといった深いテーマの作品であることが分かる。アシュラの成長とともに生じる、してしまったことへの苦悩も克明に描き出している。当初、心情豊かな少年向けギャグ漫画を得意としていた作者の評価を一変させた作品だ。『銭ゲバ』や『浮浪雲』と並ぶ作者の代表作の一つであり、「鬼才」と呼ばれる作者のパブリックイメージを形作った作品でもある。読者を選ぶ作品ではあるが、読み継がれていくべき傑作だ。


『花のよたろう』

『花のよたろう』

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主人公の少年の日常を描いたドタバタギャグ。大工の次男坊である主人公・よたろう。勉強の苦手な彼であるが、明るく曲がったことが大嫌い。家族仲はよいとはいえず、級友にもからかわれているよたろうではあるが、彼はめげずに日々を送っている。そんなよたろうが、メグミちゃん、タア坊、ハトコ、サンダース、河上君など個性的なキャラたちとともに家や学校などでときに笑い、またときには泣き、ドタバタな日常を繰り広げる学園ギャグ漫画だ。

連載当初『よたろう』のタイトルで開始された本作。序盤は純粋なギャグ漫画の体裁で進む本作であるが、途中より学園ドラマの様相を呈していき、改題された経緯を持つ。その後は友情や正義をめぐる話、思春期特有の悩みなどが濃厚に描かれるようになるため、大人の世界にも色々あるように、子どもの世界にも色々あるということを思い起こさせる作品だ。なにしろ鬼才として知られる作者である。子どもをターゲットとしたギャグ漫画でも、一筋縄ではいかないのはさすが。他の作品にも通底する「人間」をリアルに表現する手腕が本作にも生かされている。その作者の手による子どもと大人それぞれの心情といったものが豊かに描き出される。子どもの視点がみずみずしく描かれた良作ギャグ漫画である。


『デロリンマン』

『デロリンマン』

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奇怪な風貌の主人公が、「愛」と「正義」のため戦う悲喜劇ギャグ漫画。主人公・平三四郎は自殺未遂によって容貌を損ない、その結果奇怪な風体のデロリンマンとなる。愛と正義をうたい、善意の行動を続けるデロリンマンであったが、何の力も持たず外見も奇怪であるため、世間からは嘲笑され、空回りを続ける。風貌が変わってしまったため、妻子からも自分が三四郎と信じてもらえず拒絶されるデロリンマン。しかし彼はめげず「愛」と「正義」を説き続けるのであった。

本作は、デロリンマンと名乗り、「愛」と「正義」を説く三四郎の独り相撲が悲しくも滑稽なギャグ漫画だ。同時に、自らを「神」とし、「魂のふるさと」を自称するデロリンマンの悲しい物語でもある。妻子にも三四郎であると信じてもらえず、周囲からも嫌悪され、子どもたちまで彼を嘲笑う。それでも彼は戦うのであったが、誰も彼を受け入れようとはしない。そして、そんな彼を「愚か者」と断罪し、「力」と「外見」こそ正義と主張する「オロカメン」が登場するなど、物語は悲喜劇の様相を増していく。ギャグ漫画でありながら、悲劇を得意とする作者の哲学が非常に出た作品である。なお本作は初回連載時と、同名リメイク作があり、話の筋が異なるため、前者は『元祖デロリンマン』としばしば呼ばれる。


『銭ゲバ』

『銭ゲバ』

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極貧の中育った少年が金のために人を殺め、長じて金の亡者となり果てていくピカレスクロマン。蒲郡風太郎(がまごおりふうたろう)は、極度の貧困のため、病弱の母が治療を受けられずに亡くなる。そのことから、世の中は「金」であると思い込み、殺人を犯し故郷を離れる。上京し、金のために殺人を繰り返しながら、風太郎は地位を築いていくのであった。外伝的作品に『銭ゲバの娘プーコ』、『銭豚』がある。1970年に実写映画化。2009年にテレビドラマ化された。

風太郎の父はDVを繰り返したあげく、女とともに蒸発した最低の男。父とは対照的に、心優しいが病弱な母が風太郎の心のよりどころであった。だが、その母を治療費が払えず病気で失ったことがきっかけで、風太郎は金に対し異様な執着を示すようになる。ことあるごとに、金のための殺人を繰り返し、社会での地位を得ていく風太郎。彼は社長に上り詰め、はては政界にまで進出する。だがそれとは裏腹に彼は「銭ゲバ」と呼ばれ、蔑まれることとなる。金が全てと豪語する風太郎だが、心の底では金に代えられない平凡な幸せを求め続けているのであった。そして、金も地位も手に入った風太郎が最後に望むのは死という選択肢であった。金に翻弄された男の悲哀の物語である。多作な作者の代表作に数えられる名作だ。


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