サッカー選手として注目されていたものの、人間関係に疲れスポーツから遠ざかっていた主人公が、カバディと出会いその魅力にのめり込んでいく青春スポーツ漫画。宵越竜哉(よいごしたつや)は雑誌で特集されるほどの有名選手だったが、周囲との軋轢もあり高校入学をきっかけにスポーツから遠ざかってしまう。部活動の勧誘を躱しながら動画配信者として活動していたある日、「カバディ部」の畦道相馬(あぜみちそうま)から強引な勧誘を受け、不本意ながら見学へと赴くのだった。2021年4月にテレビアニメ化。
作品冒頭、竜哉自身が「ネタスポーツ」と評していたが、「カバディ」というスポーツはルールが不思議なスポーツである。「カバディ、カバディ」と連呼しながら相手陣地に攻めていく。インパクトが特大であるからこそ、奇抜な部分だけが注目されがちだ。しかし、カバディはネタスポーツではない。圧倒的な耐久力と筋力、知略を必要とする総合競技なのである。コートを攻守に分け、陣地を攻め守ることで点数を獲得する、人の身体のみを使用するシンプルな競技だからこそ、格闘技のような激しさを感じることができるだろう。竜哉は監督やチームメイトとの軋轢などがあり、好きだったサッカーから遠ざかった。好きだったことを嫌いになることは辛いこと。だが、新たな情熱は人間を再生させていく。
テレビで見た選手に憧れてバレーボールを始めた主人公と、天才セッターがチームメイトとなり、反発しながらも頂点を目指していく青春スポーツ漫画。日向翔陽(ひなたしょうよう)は身長が高くなくても活躍する選手をテレビで見たことから、バレーボールを始める。集めた仲間と共に大会に出場するが、ライバル校のセッター影山飛雄(とびお)から過ごしてきた時間を否定されてしまう。影山に勝つため、憧れの烏野高校へ進学した翔陽は、そこで影山と再会するのだった。2014年にテレビアニメ化ほか、メディアミクス多数。
スポーツは体格で左右されてしまうことが多い。中でもバレーボールは高身長の選手が活躍する競技。小柄でも活躍する選手は存在するが、人一倍の才能と努力が必要だ。体格に恵まれないために悔しい思いをする場面も多いだろう。翔陽はテレビで「小さな巨人」と紹介されていた高校バレー選手に憧れて、中学生でバレーボールを始めた。部活動ではあるが部員はおらず、大会に出るにも経験がある同級生や友人たちに声をかけてやっとメンバーをそろえるという状態。けして恵まれた環境ではなかった翔陽が競技を続けてこられたのは、好きだからという気持ちが大きいのだろう。高校に上がり、仲間やライバルと共に切磋琢磨していく。主人公の成長を見るのも楽しみだが、第一に仲間ができて良かったと微笑ましくなってしまう。
いじめられっこだった主人公がサッカーの天才と出会い、初心者ながらサッカー名門校で仲間と共に成長していく青春サッカー漫画。柄本(つかもと)つくしは幼馴染の橘小百合と同じ聖蹟(せいせき)高校への進学が決まる。報告に行った矢先、不良に絡まれたつくしだったが、風間陣(かざまじん)に助けられる。同じ年で知り合いが多くマイペースな陣に興味をひかれたつくしは、フットボール仲間を探しているという陣に、つくしは自分が参加すると約束するのだった。2016年7月よりテレビアニメが放送された。
つくしはまったくスポーツをしてこなかったが、進学した高校はサッカーの名門校だった。陣との出会いをきっかけに、サッカー部に入部することになる。部活動で初めて本格的にスポーツをする人も多いだろう。サッカーは今や国民的スポーツのひとつで、ジュニアのクラブチームも多く、競技開始年齢が比較的早い。しかし、高校で始めたからといって、成長できないわけではない。ひたむきにボールを追いかけるつくしの姿は、チームメイトにもよい影響を与える。読者も勇気をもらえるだろう。
やりたいことも才能もなく「何もない」自分を変えたいと思っていた主人公が社交ダンスと出会ったことで魅力に取りつかれ、のめり込んでいく青春ダンススポーツ漫画。中学生の富士田多々良(たたら)は将来の夢も特になく、「何もない」自分に焦りを感じていた。進路を決めかねていた多々良はある日不良グループに絡まれていたところを、プロダンサーの千石要(かなめ)に助けられる。千石の競技映像を見た多々良は、踊る姿に憧れを抱くのだった。2017年7月よりテレビアニメが放送された。
社交ダンスというと、正装して優雅に踊る姿を想像してしまう。本作で登場するのはスポーツ競技として確立された競技ダンスだ。フロアで正装した男女が踊るのだが、種目や曲が決められており審査員が採点し順位を決定する。音楽表現や動きの無駄のなさ、バランスといった身体の動きなどをみて採点する。多々良が競技ダンスと出合うきっかけとなった千石の競技映像は自信にあふれとても華やかだ。こうなりたい、と思った多々良の努力する姿勢は目を見張るものがある。何もないわけではないのだと、彼自身が気が付くことだろう。
几帳面な生活を送る主人公が、運動をしようとテニススクールに通い始めたことからテニスの奥深さにひかれ、選手として成長していく熱血テニス漫画。丸尾栄一郎はとても几帳面な性格。成績優秀でオール「A」をとり続けていることから「エーちゃん」と呼ばれていた。ある日、母親からテニススクールを勧められた栄一郎は、無料体験に訪れる。そこには学年一の美少女といわれる鷹崎奈津(たかさきなつ)が、真剣にテニスに打ち込む姿があるのだった。2014年4月よりテレビアニメが放送された。
丸尾栄一郎は秀才である。成績はオール「A」、きっちりと几帳面に書かれたノートは同級生が頼りにし、教師からも期待される栄一郎であるが、彼にも弱点があった。運動をしていないのである。文武両道は理想ではあるが、実践していくのは難しい。栄一郎が完璧主義者であるならば、スポーツにも同様に打ち込んでいただろう。実際のところ、テニスを始めた理由は運動不足の解消である。作中でも「定年後のオッサン」かと揶揄されるが、人生2周目かというくらい目的意識がはっきりしている。そんな、自分の考えが明確で行動指針にできる栄一郎を突如襲ったのがテニスだ。理想の人生からは逸れることになるが、これもまた運命なのだろう。変態とまで言われた生真面目な性質が、テニスにも発揮されていく。