ちはやふる、百人一首への招待3218 Pt.

訳「夜が明け始めた薄明の頃、有明の月かと見間違うほどに吉野の里に白雪が降り積もっていることですよ」
第三十一首、坂上是則の歌。
寒い冬の雪の朝、キラキラと輝く吉野の里に積もった雪を有明の月にたとえ詠んだとされている。
坂上是則は坂上田村麻呂の末裔として知られ、三十六歌仙のひとりにも選ばれる歌の名人。現在でも非常に高く評価され、人気が高い歌人だ。

訳「あなたのお気持ちはわかりませんが、故郷の奈良では梅の花が昔と変わらず咲き匂っています」
第三十五首、「古今集」の撰者のひとりでもある紀貫之の歌。
この歌はさまざまな解釈がされていて、新都から旧都、ふるさとを思う歌とも考えられるし、男女のことを歌った歌とも考えられている。多様に解釈できるところが名人たる所以なのか、どちらにしても風雅な歌として高い評価がされている。

訳「風が激しいので、岩にあたる波だけが砕けるように、私だけが思い悩んでいるこのごろです」
第四十八首、源重之の歌。
恋の歌が多い百人一首の中でも、高い評価を得る恋歌。
「岩」がただの風景としてではなく、相手の冷えた感情や心が閉ざされた様子を効果的に醸し出している。「くだけて」を波と心とに上手く掛け、見事に呼応させている。

訳「あなたの来ない夜を、嘆きつつ一人で明かす夜がどれだけ長いものか。門を開けてとおっしゃるあなたには理解できないでしょう」
第五十三首、「蜻蛉日記」の作者でもある右大将道綱母の歌。
正妻ではない身で夫の愛を独り占めしようとしてもそれはできない、そんな夜がどれだけ長いだろうかと想像させるなんとも悲しい歌だ。

百人一首には、素敵な歌がたくさんあるので、どんどん紹介していきたいと思う。