悪の組織の見習い少年と、彼に振り回される女子高校生の受難を描いたドタバタラブコメディ。キョーコこと渡恭子は、貧乳であることを除けばごくごく普通の高校一年生。ある朝キョーコが目覚めると、全身を鎖でしばられている状態だった。おまけに、そばにはマントを纏いガスマスクを被った不審な少年が佇んでいた。今から改造術式を始めるとうそぶく少年は、初めて会う従兄弟・阿久野(あくの)ジローだった。
危うくキョーコはジローに改造されそうになるも、ジローの姉・エーコに助けられ難を逃れる。実は、二人の実家は悪の組織「キルゼムオール」であり、世界征服を狙っていたという。しかし正義の味方に滅ぼされ、両親は逃亡したため残った姉弟が彼女の家に居候することに。駄賃がわりに彼女の貧乳を改造すると息巻くジローにキョーコはブチ切れ、不穏な同居生活がスタートする。世間知らずの彼にキョーコは「社会に適合できたら好きにしてもいい」と条件を突きつけ、同じ高校に通いドタバタなスクールライフを送ってゆく。本作は、粗野なジローのマッドサイエンストぶりに振り回されるキョーコがとにかく不憫で面白い。そんな中でも、徐々に意識し合う二人の恋の行方にも要注目だ。
乙女ゲームの世界に転生したミリオタ女子が、持ち前の知識と根性で自らの運命を切りひらく異世界サバイバルファンタジー。あるミリタリーオタクの文系女子大学生は、気がつくと4歳児アストリッド・ゾフィー・フォン・オルデンブルクとして転生を遂げていた。しかも、その世界は彼女が前世でプレイしていた乙女ゲーム「流れ星に願いを込めて」であることに気づく。悪役キャラ・アストリッドの過酷な運命を知る彼女は、生き残るためにとある一大決心をする。
アストリッドはゲームの中ではいわば「悪役令嬢」だ。ヒロインをいじめることが役割で、どのルートを辿っても最後は「破滅(バッドエンド)」を迎える運命にある。そこでアストリッドは前世で得た現代兵器の知識を駆使し、魔法と剣の世界に殴り込みをかけることを決意。ゲームの舞台となる魔道学園に入学を果たすが、シナリオの運命には抗えず接触を避けていた「攻略対象」の男子生徒が次々と現れる。受難にも負けずアストリッドは魔力で武器を生成したり、冒険者ギルドで腕試しをしたりとサバイバルライフを送ってゆく。アストリッドは乙女ゲームにありがちな悪役令嬢だが、ポジティブかつパワフルで好感が持てる。彼女が切り開く未来がどんな結末をもたらすか、今後の展開が楽しみな作品だ。
図らずも「悪役」になってしまった男子高校生が、彼女候補の美少女とその彼女の幼なじみの男子との三角関係に翻弄される受難ラブコメディ。主人公・夜城帝(やしろみかど)は、頭脳明晰かつ大企業・夜城HDの御曹司というハイスペック男子だ。しかし、中学時代は地味さとガリ勉が祟り「モブキャラ」扱いされ、クラスの中でも目立たない存在だった。夜城は危機感をおぼえ、理想の彼女に巡り合うべく一念発起して高校デビューを果たす。しかし、その選択が彼の受難の始まりだった。
変貌を遂げた夜城は、高級外車で登校するなど入学時から注目を浴びることに成功する。彼女候補として彼が目をつけたのは、女優の娘である元子役の高梨若菜(たかなしわかな)だ。しかし、クールビューティーで何を考えているかわからない若菜の言動に夜城は振り回される。おまけに若菜には幼なじみの同級生・東雲奏多(しののめかなた)がいることが発覚。また、その言動のイメージから他の生徒たちにヒロインの恋路を邪魔する「悪役王子」と言われてしまい、夜城はショックを受けるのだった。本作は、頑張れば頑張るほど悪役化してしまう夜城が哀愁たっぷりだ。天然キャラでどこか憎めない若菜と奏多の二人にどう絡んでいくか、三角関係の行方にも注目したい。
転生後のソシャゲの世界で「推し」たちを守るべく悪役令嬢が暗躍する異世界奮闘ストーリー。勇者リヒトが聖女ユリアの持つ聖剣の主となり、諸悪の根源である魔神と闘うソーシャルRPG「エモシオンファンタジー」。ゲームに登場する侯爵令嬢エルディア・ユクレールは、悪事を働いていたことがバレてリヒトたちから糾弾されていた。「悪徳姫」との誹りを受け恍惚の表情を浮かべるエルディアだが、実は彼女の正体はソシャゲ好きのアラサー女性が転生した姿だった。
ゲームと課金に人生を注いでいた彼女は、グッズの下敷きになったことがきっかけでエルディアに転生した。物語の行く末を全て知っていた彼女は、エルディアになり切ることを決意する。リヒトやユリアをはじめとする「推し」たちが結束し、魔神と闘う力をつけるにはエルディアという絶対悪が必要と考えたからだ。無事に悪役として追放されるエルディアだが、ひとつだけ運命を変えてしまう。敵となるはずの「最推し」アルバート・ベネットが、とあるきっかけで彼女の従者になってしまったのだ。追放後もアルバートは離れようとせず、二人は共にゲームの世界を旅してゆく。本作は、推しを輝かせるべく悪に徹するエルディアがいじらしく共感をおぼえる。忠誠を誓うアルバートとの恋愛も胸キュン要素たっぷりだ。
女子高生と悪役レスラーのピュアでアンバランスな恋を描いたラブストーリー。17歳の女子高校生・蓮見百花(はすみももか)はプロレスファンのいわゆる「プ女」だ。男性の裸を見慣れていることと大人びた容姿から経験豊富に見えるが、実は彼氏いない歴=年齢の奥手女子だ。そんな彼女の推しは、巨漢の悪役・久我謙光(くがよしみつ)だ。女性人気がない久我はSNSでメッセージをくれる女性とのやりとりを楽しみにしていたが、なんと彼女こそが百花本人だった。
SNSでほっこりとしたやり取りをしていた二人だが、百花が写真付きのファンレターを送ったことで急接近する。試合の出待ちで初めて会うことになるが、彼女を女子高生と知らず久我は思わずキスをしてしまう。その後電話で改めてお互いの気持ちを確認するが、彼女が高校生と知った久我は距離を置こうとする。しかし、その態度を百花に叱られたことがきっかけで久我は結婚を決意、本格交際に発展するが彼女の父親の反対などさまざまな障害が立ちはだかるのだった。一見いかめしい顔立ちだが、久我はペットのウサギを溺愛するといった一面のある心優しき好青年だ。そんな彼に百花は不器用ながらもまっすぐな思いを向け、一歩ずつ前に進む二人に心温まる。