とある目的のために宇宙を旅する貴族と従者ロボットの日々を描くSFトラベル。果てしなく広い宇宙で、惑星スパロウランドを治めている男爵のミハルコは、主にお金の計算など経理を担当している従者ロボットのランパチカと共に様々な惑星を巡る旅をしていた。旅の目的は、世界中の騎士が憧れている理想の乙女・アースライト姫といつか出会うこと。だがミハルコの正義感が強いせいで、行く先々で様々なトラブルに巻き込まれることになる。
身分の高い高貴な者が銀河に浮かぶ惑星を治めており、騎士や商人など誰でも自由に宇宙旅行を楽しめる世界。主人公のミハルコは、銀河大帝コスモス一世を先祖とする古い血統を持つ上流貴族で、惑星スパロウランドを治めているが、万年金欠の貧乏貴族だ。宿泊代さえ払えない始末で、仕方なく皿洗いをするなどして小銭を稼ぎながら旅をしている。そんなミハルコのお供をするのは、従者ロボットのランパチカ。年代物のために壊れがちで、語尾も独特だが、ミハルコから手荒い扱いを受けても忠誠心を失わない健気なロボットだ。道中で吟遊詩人のノンシャランも仲間に加わり、理想の乙女・アースライト姫を探し求める夢追い人のミハルコたちのロマン溢れる銀河旅行は続いていく。
謎めいた物体を追い求めて世界を飛び回る個性的なスパイの活躍を描いた4コマコメディ。ペルツォフカは、世界の安定を揺るがすと言われている「渦巻く幻燈」を奪取する指令を受け、日本へやってきたスパイ。最初に向かった聖カシヤーン女学園で、探していた「渦巻く幻燈」はあと一歩のところで理事長に持ち去られてしまう。その後、現地協力員のアーニャの力を借りつつ、アメリカ、中国と舞台を変えながら指令を達成するために世界を渡り歩くことになる。
本作では、とある寒い国からボスの指令を受けて謎めいた「渦巻く幻燈」を探しているスパイのペルツォフカの活躍が描かれる。スパイにとって潜入捜査は基本。ペルツォフカは変装が得意で、全寮制の女子高へすら、女装して違和感なく溶け込めるほど変装スキルが高く、度胸もある。しかし、「渦巻く幻燈」を探しながら「幻燈」と語呂が似ている「ケント紙」など、他の別のモノに惑わされ、本物はなかなか見つからない。それでも何故か他者を惹きつける人たらしのペルツォフカは、都合が悪くなると人に限らずあらゆるものを誘いベッドインするなどしてピンチを切り抜けていく。深く意味を考える隙を読者に与えないままテンポよく進むシュールな展開が面白い。
長期間にわたり戦闘が続いている戦地での軍隊の日常や政治を描くミリタリー漫画。マルチナ・M・マヤコフスカヤは、「紙の兵隊」と呼ばれる兵站(へいたん)軍に所属している女性の少尉。兵站軍は主にデスクワークを担当しており、戦闘に直接関わっている軍人たちからは蔑視されていた。前線に近いアゲゾコ要塞の補給廠 管理部第二中隊に配属となるが、兵站軍の仕事に誇りを持っているマルチナは自分の信念を貫き、不正に馴染んでいた周囲を少しずつ変えていくのだった。
主人公のマルチナが住む大公国は帝国と手を組んで共和国と争いを続けている。マルチナは正義感や責任感が強く、不正を見つけた際には例え相手の立場が上だろうと正さずにはいられない。配属先のアゲゾコは同盟軍の占領下ではあるものの、共和国側の反発が根強く残っており、テロも頻発している危険な区域。非日常であるはずの戦争も、長引けば日常となり、不正になびく者も増えていく。そんな中でも己の信念を曲げず、ひるまずに歩み続けるマルチナの姿は頼もしく勇ましい。効果音を温かみのある手描きの書体で表現するなど柔らかな演出と、展開が進んでいくにつれて重くなっていくストーリーの、ユーモアセンスとシリアスさとが絶妙なバランスで共存している。
従軍女性たちから見た戦場や戦争の体験を描いたオムニバス形式の戦争漫画。第二次世界大戦中の「独ソ戦争」において、ソ連軍には自ら志願して従軍した女性が100万人以上いた。本作では、洗濯部隊、狙撃兵、軍医など、様々な形で戦争に関わった女性の心に刻まれた体験や想いが描かれている。原作は、ジャーナリストのスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチが独ソ戦に従軍した女性の内500人以上に取材を行い、その思いをまとめたノンフィクション作品。
本作は速水螺旋人が監修している。ソビエト連邦やロシアに詳しい速水螺旋人が監修を行うことで、当時のソビエト連邦の風景や、女性たちが使っていた日用品など、日常風景の細かな部分が作中で生き生きと描かれている。戦時中、兵隊の洗濯物を洗う洗濯部隊では、特殊な石鹸によって爪が抜け落ち、洗濯物の重さで脱腸になる者も多い重労働だったが、その功績を認められることは簡単なことではなかった。戦争の中で大切なものを失いそうになる怖さや、それでも誇りを失わない強さ。本作で描かれる「女が語る戦争」は、従軍女性が実際に体験し、時が流れても決して忘れられない光景や過酷な状況、心に刻まれた感情や感覚の記憶だ。「戦争」そのものについて様々な角度から改めて考えてみる機会を与えてくれる一冊といえるだろう。