老舗和菓子屋で働く青年が、恋に修業に奮闘するラブコメディ。主人公・望月草太は和菓子の美しさに魅せられ、製菓学校で日々学んでいる。手先は器用で成績は悪くはないのだが、甘いものが苦手なため、和菓子を作っても試食するのに苦労している。就職を控え、幼い頃に親族の葬式でとある少年からもらった「桜屋」の葬式饅頭の美味しさが忘れられずにいた草太は、祖父の口利きで桜屋で住み込み修業をすることに。意気揚々と「亰都」に降り立った彼を待ち受けていたのは、運命の恋だった。
桜屋は亰都でも150年以上の歴史がある老舗和菓子屋だ。草太は店主の息子である桜葉萩(はぎ)と一緒に修業をすることになるが、大柄でどこか冷たい雰囲気の萩は彼を突き放す。そんな折、萩の妹で店の看板娘である桜葉牡丹が学校から帰宅する。幼い頃に草太に葬式饅頭をあげた少年が実は女の子で、この牡丹だと判明し、運命の恋だと色めきたつ彼であった。妹を守るべく草太に冷たく当たる萩や、老舗ならではの修業の厳しさにもめげず、草太は和菓子と牡丹へ情熱を傾けてゆく。草太は、空気も読まず牡丹に猛アタックしたり、思ったことが口に出てしまうため失礼な言動も多い。しかし、和菓子への思いは本物であり、恋のライバルの登場や修業を経て成長してゆくさまが微笑ましい。
広島の小さなお好み焼き屋を舞台に、看板娘である女子高生の恋と成長を描いたハートフルコメディ。主人公・玉名蘭(たまならん)はごく普通の女子高生だ。学校が終わればまっすぐ帰宅し、家族が経営するお好み焼き屋「たまな」の看板娘となり働いている。気が強くて不器用だが、そんな彼女を異常なまでに溺愛する父や、父を尻に敷き店を切り盛りするしっかり者の母、鈍感で天然な兄・寛(かん)ら愉快な家族に支えられ、今日も蘭は奮闘するのであった。
「たまな」には、たくさんの常連客がやってくる。その中でも、ちょっぴり口が悪いが根は優しい同級生の青木典正(あおきのりまさ)に蘭は密かな恋心を抱いていた。しかし、青木は彼女の親友でカフェの看板娘・八重樫小麦(やえがしこむぎ)を想っていたため、もどかしい関係が続いていた。蘭が告白するも進展せず、高校卒業を機に二人は離れ離れとなってしまう。その後、夏祭りの出店を寛と共に任された蘭は、帰省していた青木と偶然再会する。本作は、お好み焼き屋が織りなす人間模様が蘭の恋を中心にハートフルに描かれている。作者の出身県でもあることから、飛び交う広島弁もリアルに表現されており面白い。お好み焼きへのこだわりや広島東洋カープへの情熱など、広島県人の日常を垣間見ることのできる一冊だ。
ひょんなことから「魔女っ子」となってしまったOLの悲哀を描いたドタバタ4コマ漫画。主人公・道上帆南(みちがみはんな)はアラサーの独身OLだ。29歳の誕生日に、彼氏である鵜飼啓治(うかいけいじ)から「好きな子ができた」と言われフラれてしまう。悔しさからやけ酒を呷った帰り道、猫形のぬいぐるみが落ちているのを見つける。哀れに思った帆南は「お前も捨てられたの…?」と拾い上げたところ、いきなりぬいぐるみが動き出し、気づけば彼女は魔法少女に姿を変えていた。
ぬいぐるみの正体は、異世界であるPA(プライマリーエリア)からやってきた猫形の生き物・メイシンだった。婚約者が嫌で逃亡したPAの王子を捜しに現世界にやってきたという。メイシンは、ツインテールにアイドルのような格好をさせられた帆南を見て「ババァ」と言い放つなどかなり辛辣だ。しかしPA王の命により、王子を見つけるまで魔法を解くことが出来ず帆南は渋々魔女っ子として任務を手伝うことに。時にメイシンの暴言に耐え、時に啓治の前で惨めな思いをしながらも、帆南は王子捜しに奔走する。アラサー女子の等身大の悲哀が絶妙に描かれており、女子なら誰もが憧れた魔法少女のエッセンスが見事にマッチしている。ドロドロの愛憎劇さながらのストーリーにも注目したい。
産婦人科を舞台に、新米ナースと仲間たちの日常を描いた4コマギャグ漫画。「佐藤産婦人科医院」は築40年と古いが、建物の中はきれいで丁寧な診療が評判の病院だ。主人公・中井モモはそこに勤める新米ナースである。元気だけが取り柄で、注射を失敗したり寝坊したりとドジばかりだ。モモは、同期でしっかり者の和気日生(わけひなせ)や、バリバリと仕事をこなすが実は元ヤンの先輩ナース・関奈緒(せきなお)らに支えられ、さまざまな妊婦や赤ちゃんと向き合ってゆく。
ナースは意外と出会いに恵まれない職業である。日生は将来の家庭のことを妄想し、モモは彼氏いない歴22年だ。そんな矢先、病院にアルバイトで25歳の研修医がやってくるという。色めき立つ彼女たちの前に現れたのは、医院長の孫である京橋應二郎(きょうばしおうじろう)だった。メルヘンチックな夢を語り、命が誕生する度に感動し号泣する應二郎に引き気味のモモであったが、二人は少しずつ距離を縮めてゆく。本作は、産婦人科という特殊な空間で働くナースたちの人間模様がリアルに描かれている。私服が派手になりがちだったり、ナースキャップを外し忘れたまま帰宅したりなど、看護師あるあるのようなエピソードも満載だ。ナースとしても女性としても成長するモモと、ピュアな應二郎の恋にもほっこりさせられる。
何をやっても不幸に見舞われるOLと同僚たちのドタバタな日常を描いたオフィスラブコメディ。主人公・福沢幸花(こうか)は平凡なOLだ。しかし、その幸せそうな名前とは裏腹に、やることなすことすべて「不幸」となって降りかかる超不幸体質である。しっかり者だが激しいツッコミがたまにキズな亀山深紅(みく)や、冷静沈着で面倒見のいいメガネ美女・鶴見真白(ましろ)ら親切な同僚に助けられOL生活を満喫する幸花だが、最強の「破壊神」が彼女の前に現れる。
幸花の同僚である岩井恭介は、触れるものすべてを壊してしまうことから、「クラッシャー」「破壊神」と呼ばれている。コピー機を使っただけで壊してしまい、そばにいた幸花のせいだと言い放ち、罪をなすりつけることも。その後も岩井は仕事のデータを消去したり、備品や機械を壊したりとやりたい放題で、その度に幸花はとばっちりを食らう。凸凹コンビの二人だが、岩井が彼女に思いを寄せていることが判明。暴行まがいのツッコミを岩井に入れつつ密かに彼を思っていた亀山も含め、幸花は微妙な恋愛模様に巻き込まれる。人の不幸を笑ってはいけないとは言うものの、動いただけで生傷が絶えないほどのトラブルに遭う幸花が面白く、めげずに前を向く姿にも好感をおぼえるだろう。