和菓子を通して結ばれる家族の絆を描いたハートフルコメディ。舞台は、主人公・納野和(いりのなごむ)の実家である京都の和菓子屋「緑松」だ。東京で自由に暮らしていた和は、和菓子職人の父が入院したという知らせを受け、跡を継ぐ覚悟で10年ぶりに帰省する。しかし、父はすでに回復。その上、「自分が跡継ぎだ」と話す10歳の少女・雪平一果(ゆきひらいつか)ににらまれてしまった。和は、そのまま一果の父親役を任される。
御菓子司「緑松」は、京都で代々続く老舗の和菓子屋だ。茶房も併設されており、いつも多くの客で賑わっている。人気商品は、甘さ控えめのこしあんを使用した緑松特製の“薯蕷まんじゅう”。皮に練りこんであるよもぎの風味が豊かな逸品だ。その他にも、春の息吹を感じさせる生菓子“下萌”や、新年に欠かせない“花びら餅”など、四季折々の和菓子が次々と登場する。看板娘として働く一果は、父親に捨てられてしまったところを、和の両親に救われた居候。家業を継がずに「東京で一旗揚げるまでは帰らない」とバンド活動に打ち込んでいた和の代わりに、「将来は職人になって緑松を継ぎたい」と考えている。そんな彼女の成長を、和が明るく温かく見守っていく。
主人公・望月草太を中心とした和菓子職人の日常や、若手職人たちの恋愛模様を描いた4コマ漫画。舞台は、現代の京都をモチーフにしたと思われる“亰都”の“差我野”だ。草太は、製菓学校を卒業した後、思い出の味の店である老舗和菓子店「桜屋」にて、住み込みで修行させてもらえることになった。そこで、看板娘・桜葉牡丹に一目惚れ。恋にも和菓子職人修行にも真っ直ぐな日々がコメディタッチで綴られていく。2017年と2018年にドラマCD化。
草太は、基本的に甘いものが苦手だ。しかし、本当に美味しいあんこは大好物で、幼い頃に食べた葬式饅頭の美味しさが忘れられず、和菓子を専攻して職人を目指している。その思い出の饅頭を作っていた「桜屋」に縁故採用で就職をする。「桜屋」は、創業150年以上の歴史を持つ老舗で、他に店舗を構えず、身内のみで営業している小さな和菓子屋だ。作中には、伝統的なものから若手職人の試作品までさまざまな和菓子が登場する。「和菓子を食べる際はつい包餡を確認してしまう」「菓子のモチーフになっているので四季の草花にやけに詳しい」「年に4回コンクールがある」など、和菓子職人にまつわる豆知識も身につく本作。草太たちの恋心や、菓子職人としての成長を応援したくなる。
和菓子店に勤めることになった女性が、和菓子の奥深さや、客との出会いを通して成長していく人間ドラマ。主人公・梅本杏子は、食べることが大好きな18歳。進路を決められないまま高校を卒業した。ニート状態から脱したいと考え、たまたま通りかかった和菓子屋「みつ屋」でアルバイトをすることになる。しかし、和菓子の知識はゼロ。ベテランスタッフの接客を通じて、和菓子の歴史や由来について学んでいく。原作は、坂木司の同名小説。
舞台は、老舗の和菓子店「みつ屋」が東京百貨店のデパ地下に出店しているテナント店舗だ。特別な席を彩る美しい上生菓子や、普段のおやつにぴったりな大福やどら焼き、お煎餅や落雁、羊羹といった日持ちのする菓子まで幅広く取り扱っている。そのため、知識のない杏子は、お客様に商品説明するにも四苦八苦。一方、店長や同僚は、それぞれ個性的だが、和菓子に関しては全員がプロフェッショナルだ。杏子も少しずつ影響を受け、遊び心にあふれた和菓子の世界に魅せられていく。彼女の成長物語であると同時に、「みつ屋」を訪れる客たちの不思議な言動に隠された謎を解くというミステリー要素もあわせ持つ本作。和菓子がミステリーの鍵になるという異色の作品をじっくりと味わってほしい。
主人公が妖怪たちのために和菓子を作るファンタジー漫画。若竹忠国の祖父・若竹忠重は、和菓子職人で「わかたけ」という店を営んでいた。しかし、突如引退を宣言。19歳の誕生日を迎えたばかりの忠国を店主に指名し、世界一周旅行へと旅立ってしまう。味覚センスゼロの忠国が困り果てていると、彼の監督役だという不思議な男・久助がやって来て、和菓子作りを指南。その後、「わかたけ」が妖怪に人気の和菓子屋だという事実を知らされる。
わかたけの前店主・忠重には、妖怪などの存在を感じ取ることができる「見鬼の才」が備わっていた。若き日には、空腹で動けなくなってしまった天狗に味噌まんじゅうを振舞い、友情を築いたりもしたと言う。才能は、孫・忠国にも受け継がれた。しかし忠国は、和菓子の形は作れるものの、究極の味覚オンチという致命的な欠点があった。だが、監督役の久助から作り方を手取り足取り教わることで克服してゆく。雷獣の兄妹や天狗など、次々と訪れる妖怪たちの風変わりな注文に応じようと、新店主として奮闘する。
パティシエを目指していた主人公が、ひょんなことから江戸和菓子の職人を目指すことになる職人物語。「アンドーナツ」こと安藤奈津は、パティシエを目指して、専門学校で2年間西洋菓子を学んだが、就職活動に苦戦していた。そんな時、江戸和菓子店「満月堂」のベテラン職人・丸岡竹蔵と安田梅吉と運命的な出会いを果たし、就職先が決まるまでのアルバイトという条件で、住み込みで働くことに。食べた人を幸せにする美味しい菓子作りを目指す。
「満月堂」は、東京都台東区の浅草にある創業250年の歴史を持つ小さな老舗菓子舗だ。看板商品“満月堂饅頭”は、福井県の酒蔵から取り寄せた酒種を使用し、江戸時代から続く伝統の味を守り続けている。しかし、若旦那が急逝して高齢の職人しかいなくなってしまったため、その味を後世に残せなくなる危機に直面していた。救世主として迎え入れられた奈津は、竹蔵や梅吉、女将・月岡光子や浅草の人々に支えられながら、和菓子職人として成長を遂げていく。ストーリーが進むにつれ、奈津の生い立ちや出生にまつわる秘密なども明らかに。季節の和菓子の由来や特徴が詳細に描かれているだけでなく、茶の湯といった日本古来の文化にも触れることができる一作だ。