冴えない男子中学生が、自らの命を狙う呪術師らと戦い成長していくダークファンタジーバトル漫画。臆病な男子中学生の主人公・黒兎春瓶(くろうさしゅんぺい)は、格好良かった考古学者の祖父「アルシド・クローサー」に思いをはせ、自省する日々を送っていた。そんなある日、春瓶の元に謎の人形が届き、実は呪術師であった祖父の孫である彼に襲い掛かる。その時、春瓶を救ったのは祖父からのプレゼントであるクマのぬいぐるみ「ハイド」であった。
高名な呪術師であった祖父の血を引く春瓶の心臓を食せば、祖父の力が手に入るという噂により、春瓶は呪術師らから命を狙われることとなる。戦いの日々の中、仲間を得て成長していく春瓶が辿り着いたのは、噂を流した張本人「窓辺の男」の存在であった。その窓辺の男の手駒のひとつである呪術人形が、パンダのぬいぐるみの「パンチ」だ。呪術人形はコアと呼ばれる媒体を埋め込まれることで、操ることができる。パンチのコアは戦時中に家族を殺された呪術師の心臓であり、死んだ呪術師の恨みがパンチに人を襲わせているのだ。パンチは英国で5件の殺人を行ったのちに「切り裂きジャック」と呼ばれるようになった。パンチは圧倒的な力で春瓶やハイドらを追い詰めることとなる。個性的なキャラと呪術人形とが熱いバトルを繰り広げるダークファンタジーだ。
19世紀の大英帝国を舞台に、貴族の家に弟とともに引き取られた非凡な頭脳を持つ兄が、腐敗した英国を変えるべく壮大な計画を企てる、ピカレスクロマン推理漫画。弟のルイスとともに、貴族・モリアーティ家に引き取られた主人公・ウィリアム。その家の長男アルバートとともに、3人は屋敷に火を放ちモリアーティ家を乗っ取る。そして聡明な頭脳を持つウィリアムを中心に、彼らは社会を変えるべく暗躍することとなる。2019年にミュージカル化。
コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案に、ホームズの最大のライバルであり宿敵のモリアーティ教授を主人公とした本作。ホームズファンでなくとも楽しめるが、ファンであればなお楽しめる要素が満載である。ホームズシリーズの名作「緋色の研究」や「バスカヴィル家の犬」などを原案としつつ、本作ならではのアレンジを加えて描かれている。また本作では、英国最大の未解決事件である「切り裂きジャック」事件も取り扱っている。モリアーティ家の火事の後、3人が身を寄せていたロックウェル伯爵家の執事・ジャック・レンフィールドが、3人を訪れるのがその始まりだ。彼の戦時中の二つ名と同じ呼称の連続殺人鬼を始末したいというのが彼の願いであった。
19世紀末を舞台に、スパイと恐竜の生き残りというコンビが、「明日を救う」べく世界各地の事件に挑むSFスパイアクション漫画。絶滅せずに二足歩行に進化した恐竜が暗躍する世界が舞台で、主人公は元スパイのリリー・アプリコットと、その相棒の恐竜・オヴィラプトルのサバタ・ヴァンクリフ。リリーは任務中、サバタから秘密結社「イフの城」にスカウトされ、その目的である「明日を救う」を果たすため、世界各地で難事件を解決していく。続編に『ジャバウォッキー1914』がある。
独特の世界観がスタイリッシュな作画で痛快に描かれる本作。本作においても、リリーの故郷ロンドンを舞台に、「切り裂きジャック」の物語が展開される。そこで切り裂きジャックと目されるのは、鋭い鉤爪を持つヴェロキラプトルの「バニラス・ガイラ」。恐竜の居住区から彼の姿が消えた時期が事件と一致するという。リリーとサバタは、その真相を探るべく赴いた地である老婆と出会う。彼女は同じく事件を調査する英国情報部の工作員・フローレンス・ナイチンゲールであった。他にも、本作には実在の人物や事件が大胆なアレンジで登場する。例えば、「D・H(ドラゴン・ホース)」の異名を持つエージェント・坂本龍馬などがそうだ。良質なバディアクションが読みたいなら是非本作を手に取ってほしい。
平凡な女子高生が仲間とともに宇宙生物と戦う、バトルアクションSF漫画。主人公の女子高生・小椋(おぐら)しおは、台湾での修学旅行中に宇宙生物「進化侵略体」に襲撃される。取り残された友人を助けようと、引き返した彼女の前に現れたのは防衛組織「DOGOO(ドグー)」のエージェントであった。エージェントが戦いで負傷するという危機の中、しおは織田信長の「E遺伝子(イージーン)ホルダー」として覚醒する。2014年にテレビアニメ化。
偉人の魂を受け継ぎ戦うエージェントが「E遺伝子ホルダー」である。しおがE遺伝子ホルダー「ノブナガン」として覚醒するきっかけを作ったアダム・ミューアヘッドが、本作の「切り裂きジャック」だ。アダムは台湾での襲撃事件の際に、ナイフで進化侵略体と戦っていた。本作は作者初のSF怪獣アクションものである。作画は過去の作風を踏襲し、かつ進化を経たスタイリッシュなもので、白熱のバトルと重厚なストーリーが描かれる。『ジャバウォッキー』、『エリア51』などと並ぶ作者の代表作であり、新たな可能性を示した作品だ。
家族を人造人間(フランケンシュタイン)に殺された男が、復讐として全ての人造人間を殺すために旅をするゴシックSFアクション漫画。家族を人造人間に殺された主人公・ヒューリー=フラットライナー。彼は5年後に仇敵である人造人間を討ち果たすも、相打ちとなって死亡し、女医・Dr.ピーベリーの手で人造人間へと造りかえられる。ヒューリーは、自分の雇い主であるワイス卿が家族を奪った人造人間を造った張本人であると知ってワイス卿を討ちに行き、その死を経てロンドンへと旅立つ。
ヒューリーとDr.ピーベリーの向かったロンドンでは、「切り裂きジャック」による連続殺人事件が発生していた。警察は殺された5人の犠牲者を人造人間として甦らせ、証言を得ようとしていた。一方で、この事件の真犯人・人造人間のリッパー=ホッパーは、ヒューリーと対峙し当初は圧倒するも、覚醒したヒューリーに敗北する。そして「切り裂きジャック」として人々の記憶に残ることができたことに満足し、自爆するのであった。熱いバトルの中、どこか常に悲壮な雰囲気を行間に漂わせる本作。人造人間という人工の生命を描くことで、生と死をより克明に表現している。作者の代表作『るろうに剣心』、その後の『武装錬金』に続き、青年向けに場を移して描かれたダークファンタジーであり、新境地だ。