猫と青年の食事を中心とした日常を描く癒し系グルメ漫画。菊川八郎は、ビール会社に勤めるサラリーマン。両親の長期間旅行中、飼っている猫を預かることになる。飼い猫・ツブは、1年前から「しゃべり病」という奇病にかかり、言葉と人間並みの知能を獲得し、料理もこなせるようになっていた。そんなツブのミッションは、八郎の食生活を正すこと。亡きおばあちゃんにも喜ばれていた得意料理「おかゆ」で、彼の食生活改善に取り組む。
ツブは、背中に海苔をべったりと貼り付けたような模様がある白黒猫。原因不明の「しゃべり病」にかかった時から、人間の言葉を話し、人間と同等の知能を持つようになった。喋る猫と初対面した人間たちは大いに驚くが、当事者である彼自身はあまり気にしていない様子だ。料理もできるツブの得意メニューは、かわいがってくれた亡きおばあちゃんにも褒められたおかゆ。残り物の海苔や干物などさまざまな食材と米をアレンジし、バリエーション豊かなおかゆを作っていく。八郎と会話する様子を見てもまるで人間のようだが、普段は四足歩行をし、猫舌なので味見ができないなど、やはり猫は猫。世話好きで少々口うるさいところもあるが、自分の使命に一生懸命なツブの作ったおかゆを食べてみたくなる。
猫が話すことが当たり前という設定のもと、猫の日常や妄想を描いている4コマギャグ漫画。ヒロインの「モコちゃん」こと桃山モモコや子猫の風助、オバケ猫の白べえ、世間の噂に敏感な三毛猫・姫蔵といったレギュラーキャラクターのほかにも、さまざまな猫が登場。ほんわかした会話や、時事ネタを一刀両断するシニカルなコメント、シュールなやりとりなどを繰り広げていく。2011年4〜10月までテレビアニメが放送された。
本作の猫たちはとにかくよく喋る。とはいえ、エサや毛づくろい、縄張りといったいかにも猫らしい話題は一切登場しない。食品の賞味期限や、今一番面白いお笑い芸人、対猫関係(?)についてなど、あたかも人間のような会話ばかりしている。彼らのお喋りには、現代社会に対する批評や風刺も少なくない。シニカルで鋭い内容ながら、「攻撃的すぎる」「尖りすぎだ」といった反感を覚えないのは、猫目線で猫が話しているという設定に心が和まされるからだろう。服を着ている猫も多く、中には、議員や会社を経営する者も。しかし、完全に擬人化されているわけではなく、バリエーション豊かな猫たちが登場する。シュールながらどこか癒される本作で、猫たちの上から目線な会話を堪能してほしい。
とある一軒家に住んでいる虎と猫のゆるふわな日常を描くショートコメディ。体の小さい猫が先輩で、猛獣の虎が後輩という間柄で、2匹はとても仲が良い。先輩は、猫の基本である「香箱座り」を決め、気持ち良さそうに目を閉じる姿が似合う、いかにも猫らしい三毛猫だ。虎は、先輩よりも数倍も大きい体格ながら、ふてぶてしい猫の先輩に憧れ、少しでも近づこうと、行動を真似するなど奮闘している。作者・卯月ようのTwitterで公開され話題となり、本格連載に至った。
虎は、体長200センチ前後にもなり、体重はゆうに100キロを超えるネコ科の猛獣だ。小さな猫が大きな虎に憧れるという設定ならば分かるが、関係性が真逆というのが本作の大きな特徴だろう。もちろん、猫も、愛らしいとはいえ肉食動物。丸く可愛らしい手の中には鋭い爪を隠しており牙もシャープで、狩りをする両者の仕草に共通する部分も多い。虎の後輩は、とにかく健気で一生懸命だ。対する猫の先輩には、虎を使って焼き魚を盗み食いしようとするなど悪いところもあるが、慕われているのは面倒見がよいからこそ。文字通りの凸凹コンビに癒される。
会話ができる猫と飼い主を中心とした日常を描くハートフルコメディ。猫のマオは、小説家をしているひよりの元で暮らしている人語を操る賢い猫。ほかの猫たちは、人間の言葉を理解してはいるが、会話をすることができないため、両者の橋渡し的な存在でもある。とはいえ、見た目も動作も猫らしいマオは、ひよりに構ってもらいたくて仕方がなく、ちょっかいを出してばかり。クールなひよりにうまくかわされることも多いが、めげずにアプローチする。
愛猫家ならば、誰でも一度は「飼っている猫と会話ができれば」と夢想したことがあるだろう。その点、マオは、「猫の言葉が分かればいいのに」という猫飼いたちの夢を叶えてくれる存在だ。しかし、会話ができることが必ずしも「良い」ことではないことが分かる。マオは人間並みに賢いので、ひよりにかまってもらおうとあの手この手を駆使。鳴きわめいたり、毒舌を吐いたりするほか、史実を引用して説得にかかってくることもある。仕事で忙しい時に、彼なりの知恵を絞った作戦を実行されたのでは、ひよりもたまらないというもの。「猫は日がな一日ぐーたら過ごしている」と思いがちだが、ひよりと会話ができるマオの日常は変化に富み、にぎやかだ。
猫が人の涙の匂いをキャッチし、心の中で泣いている人に寄り添う8コマ漫画。レギュラーキャラクターは、猫の遠藤平蔵と子猫の重郎で、舞台は特定されておらず、各話に登場する人物もそれぞれ異なる。平蔵は、「泣く子はいねが〜〜」と声をかけながら、街を夜な夜な徘徊。心の中で泣いている人の涙の匂いに気付くと、その人の元を訪ね、説教するわけでも恩着せがましくするわけでもなく話を聞く。時には、動物の悩みや痛みに寄り添うことも。作者・深谷かほるのTwitterで公開され話題となり、webコミック上で本格連載に至った。
平蔵はグレーの猫だ。頭には缶詰を乗せ、どてらを着て、二足歩行で町を徘徊している。彼がなぜ泣いている人に寄り添うようになったのかは分からない。心の涙をキャッチした彼はすぐさまその人の元へ駆けつけるが、相手に警戒されないのは、愛嬌のある姿をしているからだろう。辛い時に「心で泣いているだろう」と言われれば、ぽろりと本音を語りたくなってしまうもの。しかし、それを聞いた平蔵が具体的なアドバイスをすることはない。言動を斜め上に感じることもあるかもしれないが、それが平蔵流だ。とはいえ、彼だけが一方的に誰かを支えているわけでもなく、彼が誰かに助けられることもあるし、ご飯もよくもらっている。世の中は持ちつ持たれつ。誰かに胃袋を支えられている平蔵が、泣いている人の側に今宵もそっと寄り添う。