広島と思われる地方の鉄工所で働く溶接工たちの日々をコメディタッチで描く『とろける鉄工所』。この作品の主人公・北さんが勤める鉄工所の社長は、まさに絵に描いたような中小企業の社長。無茶な納期の仕事をいっぱいとってきて、社員に残業や休日出勤を強います。また就業中ケガをしても労災を使わないよう暗に言い含めるなど、なかなかブラックな社長っぷりを発揮。しかし、毎年の社員旅行を生き甲斐にしたり、身内に不幸があった時は温情を示したりと、人情家の面も時折見せます。一般の人がイメージする中小企業の社長さん像を体現するようなキャラクターといえるでしょう。
中国人のお嫁さんとの愉快な日常をつづる『中国嫁日記』。作者はマンガ家の他、フィギュア制作会社の社長もやっておられます。しかし、金銭管理がゆるかったため、パートナー的な社員に使い込みされたことを作中で明かします。その結果、けっこうな負債をかかえてしまい、ベストセラー作家にも関わらずほぼ無一文に。そこからがんばって漫画を描き、フィギュアを制作・販売して巻き返しをはかっていく姿はまさに涙なしでは読めません。もちろんそのガンバリを支えるのは中国嫁の月(ゆえ)さんなのです。
大阪のマチ金融で働く灰原を主人公とした『ナニワ金融道』。この作品には、資金繰りに困った数多くの中小企業の社長が登場します。そんな社長さんの中でも名前のえげつさで特に有名なのが「肉欲棒太郎」社長。肉欲社長は肉欲企画という不動産業(実体は地上げ屋)を経営していましたが、風俗ビルの建設に失敗し夜逃げしてしまいます。しかし、その後、広島でチケットサービス会社を立ち上げて再起しようとがんばるのです。ヤクザ組織から抜け出すため犬の糞をなめるエピソードも有名ですね。
『幽玄漫玉日記』は、作者の桜玉吉さんが有限会社玉屋をたちあげ、様々な文化・経済活動を行うエッセイ風ギャグ漫画です。原宿で店を立ち上げたり、出版元のアスキーの株を買ったり、同人誌を作って販売したり、税理士さんと納税の打ち合わせしたりするなど、漫画家社長の奮戦が愉快に描かれるはずでした……。しかし、次第に作者の鬱病症状が漫画に浸食し、ダークな雰囲気につつまれていくという、予断を許さない展開となっていきます。
『BOSS』の主人公・大石鉄男は、社会人ラグビーで活躍した一流商社の商社マン。男気あふれる彼は、亡くなった父親が残した借金まみれの鉄工所を再建させるため、商社を辞め、中小企業の社長となります。何度も倒産の危機を迎えながらラガーマンのガッツと指導力で窮地を乗り越えた彼は、会社を再建するとともに設立したラグビーチームを全国大会にまで進出させます。主人公の男気とガッツが読む者すべてを元気にしてくれる作品です。