想い人に振られたその日から親の都合でその相手と一緒に暮らすことになる同居ラブコメディ。雛川凪(ひなかわなぎ)は、よく視線が合うことで意識するようになった巴瑠夏(ともえるか)に告白するが、相手にその自覚はなく、玉砕してしまう。海外へ長期出張する友人の子をしばらく預かることになったと母親から聞いていたが、それが巴だとは知らないまま帰宅した凪は大パニック。複雑な思いを抱えたまま同居生活がスタートするのだった。
凪が巴と視線が合うと感じていたのは、巴が元飼い猫のしっぽに似ている凪のポニーテールを無意識に目で追っていたからだった。そのことに気付いた巴は髪にキスをし、凪を赤面させる。巴が告白してくる子に冷たく接していたのは、身勝手な女子の告白のせいで大切な飼い猫と最後のお別れができなかった過去が関係していた。凪は繊細な巴の心の内を知り、彼のことを放っておけなくなってしまう。二人は同居のことを周囲に知られないようカモフラージュするために恋人同士のフリをすることに。巴は自分の心に寄り添おうとしてくれる凪を大切に想うようになり、家でも学校でもキスをするようになっていく。一つ屋根の下で暮らす二人の親密度が急激に高まっていく様に胸キュンが止まらない。
泣き虫女子と俺様系野獣男子のワイルドな恋愛模様を描くラブコメディ。高校一年生の小松晴(はる)は、想い人にラブレターを渡すつもりが、席替えがあったせいで別人の手に手紙が渡ってしまう。学校一の暴君の恩田清士郎にラブレターを返してもらえないどころか彼女認定された晴は大ピンチ。強引にキスまでされ、付き合うなんて絶対にあり得ないと半泣き状態の晴だったが、親の都合で恩田が小松家で暮らすことになり、家でも逃げ場がなくなってしまうのだった。
晴は正直で感情表現が豊かな女の子であり、恩田は彼女の表情豊かさや素直さが気に入っている。好きな子の笑顔よりも泣き顔が見たいドSの恩田は、晴にキスをしたり頬や手を噛んだりと好き放題。晴の本当の想い人が四月(しづき)であることが判明してからは恩田の嫉妬による独占欲が強くなっていく。晴にとっては災難の日々だが、次第に恩田の中にある優しさに気付き、気持ちに変化が芽生えるようになる。紆余曲折の末に二人は本物の恋人同士へと発展し、恩田はドS男子からツンデレ男子へと変わり、不器用な愛情表現に甘さが加わり、晴にも笑顔が見られるようになっていく。互いが好きでたまらないキュートなカップルである二人に心が癒やされることだろう。
年の差カップルの恋愛を描いた大人のラブストーリー。朝日奈たま子は三十路を目前に控えた29歳。最近警備室にバイトで入った竹田虎太朗(こたろう)を気に入ってはいたが、恋人にするには若すぎるため、恋愛対象外のはずだった。しかし、婚活サイトを検索していたところ、虎太朗に突然抱きしめられてキスをされてしまう。その後告白されたものの、年齢差を考え、一度は断るたま子だったが、虎太朗が提案した「期間限定」の条件を受け入れ、交際がスタートする。
結婚願望のあるたま子にとって恋愛と結婚はイコールだが、まだ22歳の虎太朗にとって結婚は遠い存在であり、結婚に対する価値観は二人の間で大きく異なっている。突然のキスによって二人の恋は始まるが、婚活と虎太朗への恋心の間でたま子の気持ちは揺れ動く。偶然知り合った若手社長・久龍正宗に相談し、正直な今の気持ちと向き合うことにしたたま子は、婚活をやめて虎太朗との真剣交際をスタート。虎太朗に二股をかけていた元カノ・莉桜(りお)との再会など、様々な試練が二人の前に訪れるが、二人は気持ちを確かめ合い、キスを重ねていくうちに互いへの想いも強まっていく。無理せず自分たちのペースで将来のことを一緒に考えていく二人の恋愛の行方を見守りたくなる作品だ。
人から嫌われることを恐れ、笑顔の仮面を張り付けて生きてきた仮面女子と、自由に生きるアート系男子が出会う青春恋愛ラブストーリー。南条千歳は幼い頃に心を傷つけられて以来、他人の前では本音を隠して生きてきた。ありのままの姿で生きることに憧れていた千歳は、盗撮男から助けてくれた印象的な瞳を持つ樹喜之助との出会いをきっかけに、少しずつ自分を変えていくことを決める。その第一歩として樹と同じ美術予備校に通い始めるのだった。
千歳は両親が営む料理店で自作の雑貨を販売している物作りが好きな女の子。自分の雑貨を樹が使ってくれていることを知って嬉しくなり、思わず素直な気持ちをそのまま出すと、樹は自然体の千歳の方が好きだという。本音を見せない千歳と、思ったことを堂々と口にして毒舌を吐く樹は、正反対の存在だ。しかし、心の奥底ではありのままの姿で生きていくことに憧れを感じていた千歳にとって、樹は眩しく映る。不意打ちのキスをしてきた樹の特別な存在になりたいと思った千歳は、仮面を脱ぎ捨てありのままの自分でぶつかっていくことを決意。樹と同じ美術予備校に通い始めた千歳は少しずつ周囲に正直な自分を見せるようになっていくが、やがて樹の兄・結之助も交えた三角関係へと発展していく。
「キス」をテーマに様々なキスの瞬間を閉じ込めたオムニバス形式の青春ラブストーリー短編集。真面目なクラス委員長の瀬戸は、修学旅行のアンケート未提出のクラスの問題児・山崎を連日追いかけていた。ある日、水族館まで着いていってしまうが、そこでカンニングの噂の真相を聞き、山崎の本音に触れることができた瀬戸は彼を信じるが、突然キスをされてしまう。その他、憧れていた水泳部の先輩との真夜中でのプールでのキスなど、一話完結型の様々なキス物語を収録。
キスをテーマにした短編集である本作には、恋に憧れを持つ年ごろの少年少女による様々なシチュエーションのキスシーンが詰め込まれている。キスしている時間は一瞬でも、その瞬間のドキドキは心に刻まれ、忘れられない思い出となっていく。キスは恋人同士だけのものとは限らず、時には友人関係から一歩抜け出すためにする場合もある。幼馴染のヒカルに恋心を抱いている上村リカは、キスをすれば恋人に昇格できるだろうかと考えるようになる。短編集ではあるものの、どの物語もキスに至るまでの心の機微が丁寧に描写されている。作者のタッチはみずみずしく透明感があり、登場人物たちのピュアな気持ちがその絵柄から伝わり、爽やかな気持ちにさせられる。