人間の男子高校生が同級生の妖怪に恋したところから始まる異種間学園ラブコメディ。人間と妖怪が普通に共存する世界、主人公・福住篤志が恋したのはクラスメイトの雪の妖怪・白石無垢。しかし、無垢は雪の妖怪だけに、人に温かい気持ちや愛情をむけられると溶けてしまう体質で、物理的に付き合うことが不可能。篤志はフられてしまうが、この体質のせいで友達のいなかった雪は、篤志に溶けない程度の友達になりたいと提案するのだった。
篤志が通うのは、人間妖怪共学校。無垢をはじめ、様々な妖怪が普通に在籍している。例えば篤志の友人・美園愁也は猫の妖怪で、隠すことも可能な耳や尻尾もある。篤志に猫じゃらしやおもちゃを出されると思わず遊んでしまうことも。他にも魚の妖怪の菊水真魚(まな)は、肺呼吸とエラ呼吸、二足歩行と魚のヒレを地上と水中で使いわけが可能。こんな正真正銘の妖怪がクラスにいっぱい。とはいえ、一見人間とかわりがない妖怪が多いので、ギャップに驚かされるが、それをみんなが自然に受け入れている世界観が楽しい。篤志が無垢の体を気遣って「寒いんだよ! クソ妖怪!」と好きな気持ちを抑えて懸命に悪口を言うところも笑ってしまう。妖怪と人間の異文化コミュニケーションが楽しく展開する。
妖怪と人間が共存する聖ザビエル学院を舞台に起こる摩訶不思議な事件を描く妖怪ミステリー。美少年・内藤卓麻はミッション系の全寮制男子校・聖ザビエル学院にとある目的をもって転校する。それは亡き姉のため、ある男に復讐することだった。ターゲットは理事長の息子でもある英語教師・佐々木剣士郎。男色家である剣士郎に、卓麻は己の美貌を利用して接近していく。機が熟したある日の晩、丑三つ時に卓麻は剣士郎を呼び出すのだった。
ミッション系の全寮制男子校というと、およそ妖怪とは縁のなさそうなところだが、聖ザビエル学院にはなぜか妖怪が棲みついている。それは、亡き姉のため復讐をはたそうと転校してきた卓麻が原因だった。実は陰陽師である卓麻が妖怪を呼び寄せていたのだ。しかし、蓋をあけてみれば剣士郎との間には誤解があり、卓麻とは恋人同士に。妖怪たちはすっかり学園に馴染んで棲みつき、生徒たちもその存在をあっさり受け入れ共存するように。とはいえ、棲みついた妖怪たちによって聖ザビエル学院ではちょっと不可思議な現象やトラブルが後を絶たない。佐々木と卓麻は、かっぱやおとろし、さとりといった妖怪たちと事件の解決にのりだすことになるのだった。
十二支の名を冠する者が治める十二支町を舞台に、子家の少年と子を恨む猫の妖怪の少女が展開するラブコメディ。十二支町は、代々十二支の動物の名を冠する者たちが治める町。妖怪と人間が平和に共存する十二支町で暮らす子家の頭首・子国(ねくに)恭一のもとに妖怪・恨み猫が姿を現した。恨み猫は、ネズミに騙されたことを恨み、子国一族を滅ぼすために妖怪になった存在。しかし、その素顔は超人見知りな少女・猫ヶ崎夏歩(なつほ)。恭一を付け狙ううちに夏歩の気持ちに変化が起き始める。
十二支の伝説の中には、ネズミが猫を騙して、神様のもとへ挨拶に行く日を一日遅く教えたというものがある。騙されたことを知った猫は、怒り狂い暴れ、それに業を煮やした神様に土地を追われてしまったという。妖怪・恨み猫は、子家への恨みをはらすべく一子相伝で強大な力を受け継いできた妖怪だ。子国一族を根絶やしにしようとする恨み猫に、子家の頭首でもある恭一は「子国家を根絶やすのをやめて俺だけを恨みつくすってできない?」と取引を提案する。恨みの気持ちに囚われている時は、巨大な化け猫の姿をとる恨み猫だが、普段は人ごみが苦手で人見知りな少女・夏歩。恭一の気持ちが本物かどうか、夏歩は恭一と共に過ごして観察することになる。
人間と妖怪、神様も暮らすのどかな町で起こる心温まるファンタジックストーリー。静岡県遠州地方を舞台に、季節と動植物の移り変わりを表す七十二候と共に人外と人の交流をオムニバス形式で描く。ある日、ヨシノは仕事の帰り道に怪我をした大きなネズミを助ける。それから数日後、奇妙な男につきまとわれるように。自分は化けネズミで、命を救ってもらったお礼をしたいという。チュージと名乗る男は「変な妖怪に何かされちゃあ大変ですから」と送り迎えを申し出るのだった。
七十二候は、季節の移り変わりを動植物や気象の変化と共に表すもので、各話のタイトルにもなっている。(ちなみに化けネズミの登場する第一話のタイトルは「閉塞成冬」)。舞台となる静岡県ののどかな田舎町の風景が移ろう季節と共に丁寧に描かれ、旬の食材や料理も登場。リアルとファンタジーが混在し、妖怪をはじめとした人外の存在をより身近に感じさせてくれる。義理堅い化けネズミ・チュージの他にも、人見知りな人魚、お茶が好きな山の主、ちょっと思い込みが激しい田んぼの守り神の泥田坊といった面々が登場する。豊かな自然と寄り添うようにある妖怪や神様といった人外の存在が、何気ない日常に少しの不思議と優しい気持ちを連れてきてくれる。
四国妖怪が通う高校へ転入してしまった高校生とマイナー妖怪たちが巻き起こす学園コメディ。東京から四国に引っ越してきた渡海隼人(とかいはやと)は、手違いで魍魎分校・死国校に転入することに。そこは人間が通えるはずのない、四国在住の妖怪たちが通う高校だった。案内役としてクラスメイトの飴宮初夏(はつか)を紹介されるが、彼女ももちろん妖怪。しかし初夏は秘密主義者。「謎が多いほど妖怪として畏怖される」「それがマイナー妖怪としての強みと品格」と豪語する。
日本には知られていないマイナーな妖怪がまだまだたくさんいる。隼人が転校してしまった死国校にも、今まで日の目を見ることのなかったマイナー妖怪が多数在籍していた。死国校は四国の山奥に存在し、生徒は四国四県在住の妖怪ばかり。そして、それぞれにマイナーをこじらせていた。ヒロインの初夏は、徳島県に伝わる妖怪・嘗女(なめおんな)。「男性の体を嘗めまわす」というおどろきの性質の持ち主で、その性質ゆえに恥ずかしい思いをしたことで自分の正体を明かすのを頑なに拒みがちだ。他にも、全身びっしょり濡れている愛媛県の濡女子(ぬれおなご)の瀬々良木碧(あおい)や、高知県では有名な「勝賀瀬(しょうがせ)の赤頭(あかがしら)」の一族で、紅坂光子といった四国妖怪が次々登場する。