親によって悪魔に売り渡された主人公・鈴木入間(すずきいるま)が、入学先の悪魔学校で様々なトラブルや戦いに巻き込まれていく学園コメディ。入間は売られた先で大悪魔・サリバンの養子となり、彼が理事長を務める悪魔学校に通うこととなる。その後、ひょんなことから入試首席の悪魔・アスモデウスに決闘を申し込まれるが、持ち前の危機回避能力とたまたま唱えていた呪文の効果によって勝利をおさめるのだった。2019年にテレビアニメ化。
入間は、幼少期から両親によって金目的で様々な修羅場に連れ回され、しまいには悪魔に売られてしまう。だが、そんな波乱な半生を送っているにもかかわらず、性格にまるで卑屈さや暗さがないのが魅力。むしろ、そうした生活のなかで身につけた危機回避能力や「何事も受け入れる癖」が、悪魔学校でのトラブルまみれの日々を乗り越える上で非常に役立っている。その場の状況に振り回されることの多い入間だが、悪魔学校に入学してからは、入試首席からの決闘の申し込みを承諾したり、相手の剣技を冷静に合気道で受け流したりと、少年漫画の主人公らしいバトルシーンも見られる。あらゆるトラブルが軽快に解決されていく一方で魔法に関する設定は濃いので、ファンタジーなコメディー漫画を読みたい人にオススメだ。
気弱な性格の安倍晴明(あべはるあき)が妖怪しかいない学校で教師として働き始め、トラブルメーカーばかりの生徒たちと打ち解けるべく奔走する学園コメディ。百鬼学園に赴任した晴明は、学園長の励ましによって意気揚々と教室のドアを開けるが、中にいたのは巨大な骸骨や一つ目小僧など多種多様な妖怪たちだった。すっかり怯んでしまった晴明は教卓の下に隠れるも、疫病神の生徒・佐野命(みこと)に手を差し伸べられ何とかホームルームを始めるのだった。
晴明は事あるごとに不良に絡まれ、時には小学生に泣かされるほどの弱虫である一方、臆病で平和主義だからこその優しさで人と打ち解けることが得意だ。妖怪の生徒たちも見た目のおそろしさとは裏腹に比較的穏健なタイプが多く、ギャグ要素も満載なので平和な気持ちで読み進められるだろう。また晴明が退魔の力を持つ一族の末裔であり時折無自覚に術を使うこと、学園側がそれを知った上で彼を雇っていることなど、深読みしがいのある設定もあり、本作のストーリーがどのように展開していくか非常に楽しみだ。人間の姿をしている時のキャラクターたちは美少女美少年ぞろいで、ほのぼのとした生徒たちの交流でいやされたい漫画ファンにオススメしたい。
人間妖怪共学校に通う福住篤志(ふくずみあつし)が雪の妖怪・白石無垢(しろいしむく)に恋をし、「心が温まると溶ける」という彼女の体質に配慮しながら心の距離を近づけていくラブコメディ。ある日篤志はクラスメイトの無垢に告白をするが、彼女自身の特殊な体質を理由に断られてしまう。篤志は無垢のために好意の言葉ではなく罵声を飛ばすようになるが、その気遣いに気づいていた彼女に感謝を伝えられると、あっさり態度を翻し、友人の目の前で勢い任せに告白し直すのだった。
恋愛感情を隠そうともせず常にテンションが暑苦しい篤志と、無表情かつ淡々とした口調の中にほんのり好意が見え隠れする無垢の対比が何とも微笑ましい。前途多難な恋でありながらも、終始ニヤニヤしながら読み進められる。妖怪との恋を描く漫画自体は珍しくないものの、「愛情を向けられると物理的に溶けてしまう雪女」というヒロイン像はひときわ新しく、既存のラブコメに慣れている読者でも新鮮な気持ちで楽しめることだろう。また、2人の友人である妖怪の生徒たちも個性的である。篤志の友人で、2人の関係を見守っている猫の妖怪・愁也、無垢に憧れている魚の妖怪・真魚などその他にも、本作には多くの妖怪が登場する。篤志と無垢の関係の進展だけではなく、友人関係にも注目の作品である。
四国の山奥に引っ越してきた渡海隼人(とかいはやと)が、手違いによって四国妖怪たちの学校である魍魎(もうりょう)分校死国校に通うことになる学園コメディ。隼人は山地の麓にある高校に通うはずが、通学路を間違えて妖怪の学校にたどり着いてしまう。しかも化け狸の校長に「せっかく来たんやし」と軽いノリで転校を許可されてしまう。その後、「嘗女(なめおんな)」の飴宮初夏(あめみやはつか)をはじめとした知名度の低い妖怪たちに囲まれながら、ドタバタの学園生活を繰り広げていく。
知名度のかなり低いマイナー妖怪であるがゆえ、コンプレックスをこじらせた面々が勘違いによってパニックに陥るなど迷走していく姿はいずれも面白い。妖怪が通う学校だけあって多種多様な異形の存在と教室を共にするわけだが、隼人の仲間になるのはほとんど人間の見た目をした妖怪である。そのため知名度の低い妖怪たちが主要キャラクターであっても、いい感じに本作のキワモノ感を軽減している。また、妖怪に興味がなくとも、隼人やその仲間たちが繰り広げる青春模様は、成長物語ないしボーイミーツガールものとしても楽しめるだろう。なお作中で名前が挙がる妖怪は、タイトル通りマイナーではあるが、調べてみることで更に本作に深く入り込めるはずだ。
主人公の薬津(やくつ)みこが、中学時代の先輩である新井あずきを追って妖怪女学園に入学する学園コメディ。妖怪の学校と知らずに入学したみこは妖怪だらけの入学式に動揺を隠せず、更には先輩のあずきが妖怪「小豆洗い」だったことに衝撃を受ける。しかしその後、容姿にコンプレックスのある「なまはげ」から相談を受け、妖怪も人間と同じような悩みを持っているのだと知ったみこは、かつてあずきが自分にかけてくれた言葉を引用する形でなまはげを励ますのだった。
みこは厳しい目つきが原因で周囲から避けられ荒んでいた過去を持つものの、基本的には明朗快活で人の気持ちに寄り添える性格の持ち主である。一方で自分が前向きになるきっかけをくれたあずきに対しては過剰に好意を寄せており、しばしばお色気展開を期待するような素振りを見せている。だが、みこの好意は一方通行ではなく、あずきもみこに対して好意を抱いていることがエピソードを読み進めていくうちに判明する。「小豆洗い」のあずきは、桶を手放すと人間への態度が威圧的なものになってしまい、みこがその豹変ぶりにおびえてしまうなど、そうした妖怪特有のハプニングはあるが、「ばけじょ!」の生徒たちは“良い人”揃いなので、読後はハートフルな気分を味わえるはずだ。