作中に登場する滝川幸次は谷川浩司九段をモデルにしている。
本作の滝川幸次は史上最年少名人にして作中最強の棋士のひとりとして描かれているが、谷川九段も現在の名人獲得史上最年少記録(21歳)を保持している大棋士である。
谷川浩司九段は1962年、兵庫県神戸市須磨区の生まれ。
1976年、14歳で加藤一二三九段以来となる中学生棋士としてプロデビューを果たす。
修業時代である奨励会在籍時は「谷川浩司を倒す会」なるものが結成されていたようだが、それすらをものともせず、見事14歳でプロへと勝ち上がった。
プロ入り後も快進撃を続け、わずか19歳にしてトップ10人だけが在籍できるA級八段へと登り詰める。
そして1983年、21歳のときに加藤一二三名人を破って名人位を奪取、史上最年少名人となった。
その時の会見で語った「一年間名人位を預からせていただきます」というコメントは、谷川九段の人柄を窺い知ることのできるエピソードとして今なお語り草となっている。
大棋士として前途洋洋の道を歩み始めた谷川九段の前に、8歳下にもう一人の天才棋士、羽生善治が現れる。
以後、栄光と挫折の中で一時は自身を見失うような時期もあったようだが、見事永世名人の資格を獲得、現在では日本将棋連盟の会長を務めている。