平凡なサラリーマンが結婚した最愛の女性が恐ろしい怨霊だったというラブコメディ漫画。32歳の二ノ瀬陸は、少々気弱な性格の会社員。妻の麗美はお料理上手で気配り上手な性格で、欠点がないように思われる麗美。ただし、彼女の正体が身の毛もよだつ怨霊だということを除けば。陸は麗美を愛してはいるが、傷だらけの身体で顔から血を滴らせる風貌には時折悩まされることもある。朝には「リング」の貞子に負けず劣らずの迫力あるビジュアルで起こされ、心臓が飛び出るような恐怖を感じた陸だった。
「もうちょっと、怖くない顔で起こしてくれないかな」と頼む陸に「でも、目は覚めるでしょ」と悪ぶれない麗美。怨霊ゆえに戦慄させるビジュアルではあるが、彼女は陸のために毎朝美味しい朝食を作り、愛妻弁当を持たせる。だが、麗美は決して外出してはいけない。彼女の姿を見た人々がパニック状態になってしまうからだ。それでも麗美は愛する陸のために会社にお弁当を届けたり、窓から手を振ったりと、彼女に悪気はないのだが、否応がなしに皆を恐怖に陥れてしまう。ラブコメ漫画は数多くあれど、ヒロインが怨霊というのはかなり珍しい。それでも読み進むうちに怨霊である麗美の性格が可愛く見えてくるのが最大の魅力で、コアなファンにはたまらない、ストーリーが予測不能の必見作品である。
近未来の東京下町の商店街に店を構える、高い技術力で評判の電器店を舞台に、店を営む家族やご近所の人々との間に起こる様々な出来事を描いた近未来SF系少年ギャグ漫画。高ヶ谷すずらん商店街の一角に、とある天才科学者が店を開いた。品揃えは天下一品、ないものはその場で作ってしまう高い技術力を持つこの店のことを人々は「何でも屋ピース電器店」と呼んでいる。ところが、店の主人であるピース貫太郎と健太郎の二人は、互いの技術力を競って喧嘩の絶えない犬猿の親子だった。
中学2年生の健太郎は、天才科学者である父の貫太郎と同様に発明や発想力に関しては天才肌で、開発した電化製品の売り上げは父を上回るほどである。しかし、機械の自動化を重んじ奇抜なデザインを好むため、実用性とシンプルさを大切にする貫太郎と対立することが多い。そんな二人を温かく見守るのが一家の屋台骨である母親のピース・M・幸子だ。健太郎、小4の則子、小2の康介と三人の子供の母である幸子は、家族のリーダー的存在であるばかりか、格闘技にも秀でている。出生はアメリカらしいが、実は彼女の過去は謎に包まれているのだ。幸子は一体どのようなワケありなのか、読者は気になって仕方がないだろう。
元銀座No.1ホステスだったヒロインが結婚をきっかけに専業主婦となり、周囲の心配をよそに明るい前向きな性格で様々なトラブルを乗り越えていくレディコメ系ヒューマンドラマ漫画。一流クラブのホステスを引退し、警察官と結婚して専業主婦となった相田蝶子。娘すみれも生まれて幸せ一杯の生活を送っているが、彼女のかつての同僚たちは「あの蝶子が夜の商売から足を洗えるはずがない。もって1年。ううん、1か月かも」とシビアな意見だった。2006年テレビドラマ化。
常連客の前で「ヤマグチモモエのような人生を歩むのが夢」と語っていた蝶子だったが、まさかこのような展開になるとは周囲はおろか本人さえも想像していなかった。周囲の心配をよそに勤務時間が不規則である夫六郎のために、夜型の生活を朝型に変えて専業主婦として頑張る蝶子。なれない家事をこなすために主婦向け雑誌を片っ端から読みまくる蝶子を、六郎は優しい眼差しで見守る。かつては銀座でトップホステスとしてならした蝶子だったが、一度だけ客のツケを回収できなかったことがあった。ママのみどりはそれを「結婚祝い金」として帳消しにしてくれたが、それは蝶子にとって唯一の汚点だった。ママ友から怪しい通販を紹介された蝶子は、ツケを踏み倒したその男がマルチ商法で金儲けをしていることを知る。
京都を舞台に鬼嫁ならぬ、本当の鬼を嫁にしてしまった会社員の男性が素直ではない彼女の「ツンデレ」な性格に振り回される楽しい日常を描いたツンデレ系ラブコメディ漫画。身長150センチと小柄な水無瀬友雪の妻は正真正銘の「鬼嫁」だ。二人の出会いは10年ほど前に遡る。鬼の少女・美都鬼(ミツキ)と親しくなった友雪は後に大人になってから彼女と再会し、二人は結婚したのだ。美都鬼は友雪のことが大好きなのだが、天邪鬼的な性格ゆえについ、優しい妻ではなく「鬼嫁」として友雪に接してしまう。
会社の上司の誘いを断れずに、午前様になってしまった友雪を「アンタ、夜中の1時までどこほっつき歩いとるんや」キツイ京都弁でなじる美都鬼。対抗しようにも小柄な友雪に対し、美都鬼の身長は180センチで腕力も半端ない。「酒臭いから、お風呂入って」激怒する美都鬼だが、実の本音は「どうしてあんなにキツイ言い方してしもうたんやろ」と涙を流し「友雪がウチのこと嫌いになったらどうしよう」と心配でたまらない。そんな美都鬼を友雪は「嫌いになんかなるわけない。僕は君が大好きだから」と後ろから抱きしめるのだった。友雪のことを誰よりも愛しく思いながらも上手く伝えられない美都鬼と「僕は彼女の全てが大好きだ」と優しく包み込む友雪。作者の「ツンデレ愛」を存分に味わって欲しい。
妻を交通事故で亡くし、父子家庭となった親子の前に「自分はあなたの妻の生まれ変わりだ」と名乗る小学生が現れたことで巻き起こる様々な騒動を描いたハートフル系ファミリードラマ漫画。10年前に最愛の妻に先立たれ、20代後半の娘の麻衣と二人暮らしになった新島圭介は生きる気力を無くし、娘との夕食は毎回コンビニ弁当という日々を送っていた。いつものように二人で弁当を食べていると、突然ドアチャイムが鳴り、一人の見知らぬ女子小学生が「ただいま」と言って家に入ってきた。
家を間違えているのではないかと言う圭介に対し、白石万理華と名乗る小学生は「私の名前は新島貴恵! あんたの妻で麻衣の母親!」と断言する。最初こそ自分たちをからかっているのかと思った圭介だったが、自分がプロポーズした場所や結婚記念日、家族にしか分からない出来事を妻の口調そっくりに話す万理華に、貴恵が別の家に赤ん坊として輪廻転生したと確信する。万理華は二人の味気ない夕食に「夕飯だけは質素でも彩りのある食卓にするって決めたでしょ!」と怒り、家に引き込もっている麻衣を外に出るよう説教する。翌日、万理華は圭介に弁当を作って手渡す。その余りの美味しさに涙する圭介。一方、麻衣も就活に意欲を持ち始めていた。失った部分をそのままにするのではなく、欠けた部分にどう向き合って生きていくか。家族の在り方について考えさせられる作品である。