新婚さんいらっしゃい？新婚夫婦の初々しい日々を描いた漫画作品オススメ５選！93 Pt.

事故のあと、名を告げずに去ろうとする司を追いかけ、愛の告白をする星空に、司は「結婚してくれるなら付き合う」と返すのであった。そして月日が過ぎ、18歳になった星空のもとに約束通り司が現れ、2人は結婚をする。謎の多い司であるが、夫婦となった2人は、ともに日常を過ごし、愛を深めていくのであった。恋愛に関しては、積極的ではあるが経験不足のため度々赤面する星空と、照れつつもそれにこたえる司のやり取りといった、イチャイチャな場面もあり、読者も思わず頬が緩んでしまうことだろう。作者の代表作で大ヒットした『ハヤテのごとく!』に続く連載である本作。作者らしい一筋縄ではいかない新感覚かつ王道の新婚ラブコメであり、注目作品である。

お互いが相手を思っているのに、空回りすることは多々あることだろう。本作の2人の場合もそうで、お互い「したい」と思っているのに、時間や気持ちがすれ違い、なかなかそういう機会が巡ってこない。ある日、買い物に出た2人は、澄花の学校の生徒に出会い、澄花が生徒の恋愛相談にかこつけて育馬を押し倒そうと考えていたことが判明する。ふだんはクールな澄花の意外な一面に、衝動のスイッチが入った育馬であったが、くもったメガネを外してしまい2人は今回もできないのであった。作者の前作『淫らな青ちゃんは勉強ができない』に続き、一風変わったラブコメである。お互いに愛情を持ちながらも、空回りする2人を悲壮感なしに、コミカルに描いているのが本作の特徴であり魅力である。

彼氏彼女としての交際体験もないまま、式を挙げた2人。結婚式ではキスもできずに、失神してしまう清であった。だが新居でともに暮らし始め、初々しくも、夫婦として一歩一歩進んでいく。顔を見合わせ微笑みあい、歩みはゆっくりでも、お互いを思うひたむきな2人の姿には心打たれる。また、清の先輩でイケメンで面倒見のよい黒坂さん、お弁当屋の金城実乃梨（みのり）など、2人を囲む人々もまた、人柄がよいのも特徴だ。ちなみに実乃梨は作者の前作『ふくらみふくらむ』の登場人物でもある。デビュー作にいて代表作の『むすんでひらいて』以降、多数のラブコメを手掛けてきた作者の面目躍如たる新婚ラブコメ作だ。

きつめの関西弁で話し、表面上は文字通り、まさに「鬼嫁」である美都鬼。本当は友雪を心底愛していて、それをなかなか表に出せないでいる。しかし、友雪に優しくされると、途端に態度を軟化させてしまう。まさにツンデレだ。仕事がたびたび遅くなり、美都鬼を悲しませることもある友雪ではあるが、記念日のことなどは決して忘れない優しい夫である。理想的な夫であると言ってよいだろう。せっかちで表情のころころ変わる美都鬼と、のんびり屋でマイペースな友雪。互いへの思いを伝える態度では、美都鬼が友雪に押され気味なのも面白い。この2人、鬼と人間という種族の差はあれど、お互いを思う気持ちは並の人間同士の夫婦以上で、そんな2人の新婚生活に頬が緩みっぱなしである。

お互いの初めてで部屋のスキ間を埋めていけば、ここは「家」らしくなる、と述べる始。新居での初めての食事の際に出たセリフである。その初めての食事がカップ麺であっても、2人は笑顔を絶やさない。新しい生活用品を2人で揃えたり、真新しいショッピングモールのフードコートで、たこ焼きを買って食べたり、一緒に散歩を楽しんだりと、なにげない生活の一コマ一コマが新鮮で、そこには幸せと愛情が詰まっており、見ていて大変微笑ましい。これまでの作者の作品、例えば『男爵校長』、『光の大社員 』などと比べ、シュールなギャグは抑えられているが、そのぶん行間が雄弁で作品全体に2人の気持ちがあふれているかのような、そんな幸せたっぷりの作品だ。