背景に注目！描き込みがすご過ぎる漫画オススメ５選168 Pt.

本作の舞台は、上空に宇宙人の巨大な宇宙船が居座っている。しかし、それ以外の日常はごく普通だ。そんな世界を、著者・浅野いにおが圧倒的な画力で描きだしている。この独特な世界観を際立てているのが、緻密に書き込まれた日常の風景。主人公の部屋に散らばったコミックスや乱雑に置かれてた洗濯物に至るまで、生活感が精緻に描かれている。リアリティある日常と上空に存在する「宇宙船」の対比が面白い。宇宙船の下で暮らす人々はこんな状況に慣れてしまい、次第に興味本位で宇宙人の動向を見守るようになる。主人公の門出や凰蘭は、大学受験に頭を悩ませるごく普通の女子高生たちだ。だが、彼女たちの友人が小型宇宙船の墜落に巻き込まれて死亡したり、人間の姿に擬態した宇宙人が凰蘭に接触するなど、日常は徐々に非日常へと変わっていく。

代々処刑人を務める、サンソン一家の跡取りとして産まれたシャルルは、見た目も心も繊細な美青年だ。彼の異母妹で、続編『イノサンRougeルージュ』ではもう一人の主人公となるマリーもまた、目をみはるような美しい人物。そんな美麗な登場人物たちをさらに引き立てるのが美しく精緻な背景で、本作の魅力のひとつだ。バロック、ロココ様式の絢爛豪華な貴族の館や家具、衣装から、食器などの小物に至るまで、絵画のような緻密さで表現されている。また、本作の題材が「処刑人」のため、残酷な処刑や拷問シーン、死体や解剖などのグロテスクな表現も多々登場するが、それらも誤魔化すことなく鮮烈に描ききっている。

本作から紹介したいのは、コミックスの表紙や扉のカラーページ。表紙でメインキャラの背景を飾っているのは、日本各地の風景だ。何気ない背景に見えるが、これらの風景は、実在する場所を見事に描いている。これらを手掛けているのは、背景アシスタントの「ヤオキン」氏だ。本作は高校生麻雀の全国大会を題材に描かれている作品で、各都道府県の代表選手が主人公たちのライバルとして登場する。そのため、主人公の咲や彼女の仲間たちが表紙を飾る巻では清澄高校がある長野県の風景が、ライバルたちやその他キャラが登場する際にはそれぞれに縁のある土地の風景が描かれる。各地の魅力に溢れたこれらの背景は、登場人物たちを密かに彩る縁の下の力持ちだ。

本作はその重厚なストーリーや人物描写もさることながら、緻密な背景も高く評価されている。主人公のガッツは、人間界のみならず人外の世界も巡り、圧倒的な存在感の異形の者たちと対峙し、鬼気迫る戦闘を繰り広げる。多数の兵士たちが入り乱れて戦うシーンは、端役のキャラでも顔や動き、一人一人の甲冑までが緻密に描き込まれている。また、平民たちが暮らす貧しく質素な家屋や貴族たちの絢爛豪華な城などの背景も、木目やレンガの一個にわたるまで繊細に描写。そして、人外の者たちが棲む異世界の背景も、精緻な描き込みでその禍々しさや神々しさが表現されている。そうして描き出された美しい世界が、ガッツの凄惨な生き様や、荒々しい戦いをより際立たせている。

本作の舞台は架空の都市である「見滝原」。近未来的なビル群や公共、商業施設が立ち並ぶ一方、西欧風の垢ぬけた建物も街並みを飾っており、劇場版を彷彿とさせる街の風景が描かれている。緻密で美麗な街並みや背景を手掛けているのは、背景アシスタントのすやすや酢屋氏で、これらは3Ｄモデリングにより制作されている。美しくリアリティのある背景が、日常を守るため戦う魔法少女たちの戦いを見事に彩っている。本作の主人公暁美ほむらは、TV版の主人公である鹿目まどかを救うために魔法少女になったというキャラクター。しかしＴＶ版のストーリーで起きたある出来事により、この世界からまどかの存在は消滅し、彼女のことを覚えているのはほむらしかいなかった。その矛盾と苦悩が、ほむらと見滝原の魔法少女たちの運命を揺るがしていくことになる。