マイナーな神が目標を見つけ成長していくファンタジー漫画。夜ト(やと)は社さえ持っていないジャージ姿のマイナー神。夜トを助けようとしたせいで幽体離脱しやすい体質になってしまった少女・壱岐ひよりや神器の雪音(ゆきね)との出会いをきっかけに、夜トは「福の神」を目指すことになった。しかし、術師として不穏な動きを見せるようになった夜トの父親・藤崎浩人(こうと)から皆を守るために、父親と対決することになる。2014年にテレビアニメ化された。
本作には、夜トを中心に、トラブルメーカーで貧乏神の小福、誇り高い武神の毘沙門天など、個性豊かな神々が登場する。夜トは多くの信者や社を持つことに憧れを抱いているが、元々は禍津神として生み出された奪う側の存在。しかし、人間でありながらいつも夜トの味方となり、手助けしてくれる少女・ひよりは夜トにとって一筋の希望となる。また、「祝の器」へと進化した神器の雪音は夜トを正しい道へ導く道標となった。神と神器は信頼関係が大切だが、展開が進むにつれて、神々の間で禁忌とされている「神の秘め事」についても明かされる。バトルシーンも迫力があるが、神と神器が絆を深めていく様子に心が揺さぶられる作品だ。
宗教の枠を超えた異色の組み合わせでルームシェアを始める日常系ギャグ漫画。東京・立川にある小さなアパート「松田ハイツ」で、目覚めた人ブッダと神の子イエスは長期休暇を利用して同居生活を始めた。名字を「聖」とし、一般人に紛れて神様であることを隠しているものの、意図せず様々な奇跡を引き起こしてしまう二人が過ごす愉快で平和な日々が描かれている。2013年に劇場アニメ化され、2018年に実写ドラマ化された。
舞台となるのは現代社会の東京だが、ブッダは内輪ウケする漫画を描き、イエスはブログを始めるなど、現代によく馴染んでいる。ブッダの長い耳たぶは、満員電車では酔っ払いにつり革と間違えられ、耳たぶを掴まれてしまうことも。しかし、その程度では怒らないブッダが怒りを露わにするのは、イエスが衝動買いで無駄にお金を使ってしまった時くらいだ。とはいえ、互いに足りない部分を補い合い、ルームシェアはうまくいっている。ブッダやイエスの生涯や、起こしたとされる奇跡を元ネタとしたギャグが随所にちりばめられており、肩肘張らずに楽しむことができる。
穏やかに暮らしていた神が理不尽な理由で別の神へ変えられてしまうギャグコメディ。草に携わる草野神(かやのかみ)は、神会議で「若者の草食化」の責任を取らされ、影響力が少なそうな漬物の神へと変えられてしまう。現代では人気が低い漬物を、何とか流行らせようと奮闘するが、貧乏神に横やりを入れられ、なかなか上手くいかない。やがて、八百万の様々な神が突然姿を消すという不可解な事件が起こり、草野神、スサノオ、稲荷大明神が救出に向かうことになる。
日本では森羅万象に神が宿るという古来の考え方により「八百万の神」がいると考えられてきた。主人公の草野神は、その名の通り草を司る神だ。作中には厄災をふりまく貧乏神、農業に携わる稲荷大明神、暴れん坊として知られているスサノオなど、個性豊かな神が数多く登場する。クセが強い者が多く、日常的に彼らと関わっている草野神は苦労が絶えない。後半では様々な神々が姿を消す事件が起こるが、それには天と地の創造にまつわる神世七代(かみよななよ)たちが関係していた。果たして草野神はこの事件を解決に導き、無事に草の神へと返り咲くことができるのか。神話に登場する神々がモチーフになっているため、神話に興味がある人はより一層楽しめることだろう。
縁結びを担う二柱の神の日々を描く一話完結形式の和風ファンタジー。街外れの小高い丘にある小さくて古い縁結びの神社は、恋に関する悩みを持つ様々な者が訪れる。その神社には、恋に悩む者の背中をそっと押してくれる少年姿の二柱の神がいた。神の名は縁(えにし)と結(むすび)。彼らには他の神々のような強力な力はないが、常に参拝者の心に寄り添い、願いを叶えるための道を指し示すのだった。縁と結を中心とした「恋命(こいのみこと)シリーズ」の一作目。
恋愛は人の心を豊かにする半面、悩みの原因にもなる。そんな恋する者が参拝に訪れる神社は、縁結びの神社だ。本作の舞台となる縁結びの神社を守っているのは、神様の縁と結。縁はひねくれ者だが面倒見が良く、結は天真爛漫で物腰が柔らかい。タイプは異なるものの、どちらも参拝者の前に姿を現し、直接話を聞いて恋に悩む者の願いや想いを受け止めてくれる。中には想い人が恋敵を嫌いになってほしいという身勝手な願いをする者もいるが、縁結びの神社は人と人の縁を繋ぐための場所であり、想い人の心を自在に操る場所ではない。果たして縁と結はどのようにして参拝者の本心を聞き出し、縁を結んでいくのか。恋する気持ちの純粋さに爽やかな気持ちになれるはずだ。
疲れた神様を髪の中で回復させる「神々返し」を行う巫女と神々の交流や家族愛を描いたスーパー神々(かみがみ)ファンタジー。神束(かみつか)ましろは、「神々返し」の神事を担う神束家の分家の娘だが、意図せず儀式を邪魔してしまったせいで、本家の娘・神束ルリが受け継ぐはずだった力が宿ってしまう。叔母の茜の怒りを買って13年間幽閉され、話し相手は幼馴染の髪梳き師・黒宮(こくみや)はやてだけだった。しかし、ひょんなことから封印が解け、ましろの髪の中から神様が現れるようになる。
最初にましろの髪の中から現れたヒノカグは、日本の国土の祖であるイザナキとイザナミの息子であり、神話ではヒノカグツチと記されている火の神様だ。ヒノカグは自由になりたいというましろの願いを聞き入れ、外の世界へと連れ出す。ましろは本家の追手から襲われるようになるが、やがて神束家が抱く本当の野望を知り、阻止するために動き出す。二番目にましろの髪から現れたのはタケミカ。神話ではヒノカグツチの血から生まれたとされる剣の神であり、雷を司るタケミカヅチだ。作中には他にも神話にまつわる様々な神々が登場するが、後半ではましろの封印を解いたフワフワとした毛玉のような小さな生き物であるウノとサノの正体にも驚かされることだろう。