実在の人物“エウメネス”の物語。
ギリシアの自由市民としてカルディア市の有力者の次男として裕福な家庭で育てられたエウメネスは、何の不自由もなく暮らしていた。趣味は自宅にある書庫で様々な書物を読むこと。幼い頃から、様々な書物を読み込んだ彼は、年齢よりもはるかに知恵のある子供に育っていた。
当時のギリシアは自由市民と奴隷が存在しており、それはカルディアでも同じだった。蛮族な奴隷狩りがあり、多くの人が拉致あるいは売られて、自由市民の奴隷として働かされていたのだ。
エウメネスが少年の頃、彼のその後の人生を大きく変える事件が発生する。
カルディア市の商人の元に、奴隷として買われてきたスキタイ人。主人から酷い虐待を受けていた彼は、やがて手足の枷が外されたときに自由の為の戦いを始めた。その過程で父親を失ったエウメネス。実は側近のヘカタイオスが、スキタイ人に殺されたと見せかけて、父親の殺害を図ったのだ。
父親が殺される前の日に、瀕死のスキタイ人を見ていたエウメネスは、父親は側近に殺害されたと告発するのだが、逆に自らの出生の秘密を知る事となる。実は彼自身もスキタイ人であり、父親が奴隷狩りに出た際に、抵抗するスキタイ人の家族を殺して奪いとってきた子供だったのだ。父親は母親の死体をみても、涙すら見せないエウメネスを見て、この子は大物になると直感し、自分の子供、養子として育てる事にしたのだった。
奴隷の身分に落とされ、ヘカタイオスによって売り払われたエウメネス。やがて運命は彼を時代の大きなうねりの中へと引き込んでいくのだった。