長崎の波佐見(はさみ)を舞台に、器に魅せられた絵付師と陶芸家の恋愛模様を描いた少女漫画。馬場青子(ばばあおこ)は、波佐見の窯元で絵付の仕事をしていたが、そこへ北欧で陶芸をしていたという青年・真鍋龍生(まなべたつき)が現れる。飾り気のない器を好む龍生は絵付をめぐって青子と対立。しかし、桜陶祭に出す花瓶を共同で完成させたことをきっかけに互いの感性を認め合い、仕事上のパートナーとなる。そしていつしか仕事を越えた特別な感情を覚えるようになっていく。
本作の舞台となるのは、白磁と呉須(藍色)の絵付が代表的な波佐見焼の町である長崎の波佐見。主人公の青子が担う絵付は、器を美しく彩り、価値を高める重要な役割といえる。一方、青子が働く窯にフィンランドからやってきた龍生は、とある事情によりスランプ状態に陥っていた。龍生の作る器は青子の心を捉えたが、絵付の価値を否定するかのような龍生と絵付に情熱を燃やす青子は反発し合う。花瓶の共作で心を通わせ合うようになる二人だったが、青子は元彼の熊田亮平(くまだりょうへい)と再会。だが、現在の青子の心を占めているのは亮平ではなく龍生だった。31歳の青子と27歳の龍生、大人の二人が紡いでいく恋愛模様も楽しむことができる。
焼き物の町・信楽を舞台に、イギリス人の少女が陶芸家になるために奮闘する青春漫画。リリー・スペンサーは、イギリスからやって来た陶芸家志望の女の子。滋賀の信楽に来たのは彼女に影響を与えた信楽焼を代表する名工・瑞峰(ずいほう)の弟子になることが目的だった。しかし、はるばる信楽までやってきたものの既に彼は多額の借金を残して他界しており、工房は差し押さえられていた。だが、リリーはそれでも陶芸家になる夢を諦めず、瑞峰の孫娘・椿に弟子入りするのだった。
信楽焼は日本六古窯のうちの一つ。本作の主人公は、異国の地に生まれながら信楽焼に惚れたイギリス人のお嬢様のリリー。タイトルに使われている「へちもん」とは、「変わり者」を意味しており、作中には信楽焼フェチ、土マニア、ツンデレなど様々なへちもんが登場する。リリーが信楽で師匠になって欲しいと思っていた陶芸家の瑞峰は、釉薬をかけずに高温で焼成する焼締めの作品で有名だった。彼の技は孫娘にも受け継がれており、女子高校生の椿にリリーは弟子入りすることになる。信楽焼の土は鉄分によって赤く発色して「火色」と呼ばれ、それが信楽焼の特徴である温かみと素朴さに繋がっている。作中から異国の人々をも魅了する滋賀が誇る信楽焼の魅力が伝わってくる。
心に傷を負っている陶芸家の女性が同じ陶芸教室で働くようになった後輩の男性と知り合い、新たな恋が生まれるラブストーリー。幸田ランは、陶芸教室「コーダ陶房」の講師をしている陶芸家の端くれ。元彼のせいで、男性恐怖症になってしまったことが悩みのタネで、教室には年齢も職業も様々な生徒がやってくるが、イケメン男性が多く困っていた。そんなある日、経営者の祖父が怪我をし、新しいバイトとして佐久間亮がやってきたことをきっかけに、少しずつ心境に変化が表れる。
無名の陶芸家は制作活動だけでは生活が成り立たず、主人公のランは臨時講師を含め3つの陶芸教室を掛け持ちしている。ランには過去に付き合っていた恋人がいたが、実は彼は既婚者だった。そのことで深く傷付いたランは男性から触れられることが恐くなり、男性恐怖症になり、生身の男性ではなくゲームの中の二次元男子に夢中になっていた。だが、そんなランも29歳。祖父からは結婚を急かされ、友人たちも婚活を始め、挙句の果てに課金していたゲームまで終了し、ランは周囲から取り残された気持ちになっていく。しかし、新しく入ったバイトの亮や男性生徒4人のお陰で、ランは男性恐怖症克服に向けて動き出し、やがてランと亮の間に特別な感情が芽生えるようになる。
裏の顔を持つ陶工師の活躍を描いたヒューマンドラマ。浜田陶太(とうた)は、東京の奥多摩に「自由窯」を構え、多数の生徒に技術を教えている陶工師。模範的な考えにとらわれず、柔軟性のある自由な発想や斬新なインスピレーションを大切にする男だ。「自由窯」を弟子の夏津子が手伝っているなど、陶太は優しげな見た目通り性格は穏やかで、多くの弟子たちに慕われていた。だが、美術商の男・中西錦之助は、陶太には実は「裏陶工師」としての裏の顔があることに気付くのだった。
本作の主人公の陶太は、普段は奥多摩の「自由窯」で陶器を作っているが、秘密裏に依頼を受ける「裏陶工師」の顔も持つ陶工師。「自由窯」の名の通り、陶太は固定概念にとらわれず、自由な発想で作品を作り、多くの弟子から慕われていた。一方、裏陶工師の仕事とは、通常とは異なる特殊な陶磁器を作り、他人と競い合うこと。作中には作ることが困難な様々な焼き物が登場する。例えば「幻の姫茶碗」は水を差すと桜の花びらが浮き上がるというもの。どんな陶芸家も作れなかったその姫茶碗を完成させた陶芸家・藪陶海が殺された殺人事件に、陶太は巻き込まれてしまう。藪陶海の本名は蛙目(かいろめ)音吉といい、その「蛙目」に秘密があることに気付いた陶太は、姫茶碗の再現に挑むことになる。
岡山県備前市を舞台に主人公のOLが備前焼の一枚の大皿と出合ったことをきっかけに新たな夢を追い始めるヒューマンドラマ。25歳の小山はるかは、大学卒業後に就職して3年目の社会人。大きな夢を抱くこともなく、平凡に生きてきたはるかだったが、デパートで行われていた展示会に立ち寄ったことが人生の転機となる。そこで目にした備前焼の大皿に衝撃を受けたはるかは、その皿の作者・若竹修の名前だけを頼りに岡山県へ飛んだのだった。2019年実写映画化。
備前焼は派手さは無いが、備前の土が持つ力強さ、温かみを感じる素朴さが魅力だ。作中で主人公のはるかの人生を大きく動かしたのは、備前赤牡丹大皿。はるかはその大皿を目にした瞬間、体の中から湧き上がるような感動を覚えた。それ以来、仕事が手につかなくなり、遂に岡山在住の作者・若竹修へ会いに行く。だが、修はとある事情で人間不信に陥っており、弟子を取るつもりはないとはるかのことを冷たく突っぱねる。しかし、近所に住む備前焼の人間国宝の榊陶人(さかきとうじん)のお陰ではるかは修のもとで陶芸家を目指して奮闘することになる。25歳からの遅いスタートとなったが、備前の人々と交流しながら知識を吸収して糧とし、少しずつ成長していくのだった。