家庭の崩壊と共に音楽から遠ざかっていた少年が、一人の少女との出会いをきっかけに高校の部活を通じて大きく成長していく音楽青春ドラマ。青野一(はじめ)は父・龍仁(りゅうじ)の演奏に魅了され、ヴァイオリニストの道を目指していた。しかし、父親が家族を裏切って出て行ったことで、ヴァイオリンが好きな自分を封印してしまう。中学3年生になった青野はヴァイオリン初心者・秋音律子(あきねりつこ)と出会ったことで心の奥底に眠っていた情熱が目覚め、再びヴァイオリンと向き合うことになる。
青野が進学先に選んだのは、生徒が2千人以上在籍する超マンモス校の海幕高等学校。 部活の一番人気は日本学校合奏コンクールでの8年連続最優秀賞を誇る無敵のシンフォニックオーケストラ部だ。部活見学の際に合奏の音が一つに溶けあっていく様に青野は感動し、入部を決めた。2年程前からコンクールで注目され始めた佐伯直(さえきなお)は青野の最大のライバルとなり、ポジション争いを繰り広げる。ソロヴァイオリニストを目指してきた青野にとって大勢で一つの音を作ることは難しく、課題は山積み。演奏時の部員の表情や統一感、空気を震せる音の表現など、細やかな描写が素晴らしく、読めばきっと作品から音楽が聴こえてきそうな感覚に陥ることだろう。
高校生男女3人による想いが複雑に絡み合う三角関係を描く青春純愛ラブストーリー。一ノ瀬太一(いちのせたいち)は小柄で自分に自信が持てない高校3年生。クラスメイトの空勢(くぜ)二葉に対し、同族嫌悪に似た感情を抱き、苦手に思っていた。ある日、ひょんなことから彼女の想い人が誰からも好かれる人気者で太一の幼馴染でもある三田桃真(みたとうま)であることを知ってしまう。二葉に協力することになった太一は、健気な努力を続ける彼女に対し、次第に恋心が芽生えるようになる。
本作では、友情や恋愛感情の狭間で揺れ動く高校生たちの思い悩む姿が描かれる。太一は二葉の恋愛成就に協力しようと色々と手を回そうとするが、そのやり方に対して二葉の親友・伊達真澄(いたちますみ)から非難されてしまう。桃真の気持ちをおざなりにしていたことに気付かされた太一は、自分の浅はかさを反省するのだった。桃真は誰に対しても気さくで人当たりが良いが、誰にも言えない秘密がある。それは、太一に友情を越えた想いを抱いていること。真澄もまた「同類」であるからこそ、桃真がひた隠しにしていた想いに気付いたのだ。未熟でありながらも大人に向かっていく彼らが、どのような答えを導き出し、未来を選択していくのか。どうか最後まで見届けてほしい。
長崎の波佐見焼の窯元を舞台に、波佐見焼の魅力と職人同士の大人の恋愛を描く陶芸ラブストーリー。馬場青子は波佐見焼に魅了され、地元の窯元で働く絵付師。ある日、職場の窯元に、不愛想な青年・真鍋龍生(たつき)がやってくる。彼はフィンランドで作陶活動をしていたが、訳あって長崎でもういちど磁器を学びなおしたいという。青子は絵付けに否定的な龍生と衝突するが、桜陶祭に出す一輪挿しを共同で作り上げる中で互いの才能を認め合うようになるのだった。
舞台となる波佐見町は、長崎県の中央北部に位置する焼き物の町。400年以上の歴史を持ち、分業化することで発展してきた波佐見焼は地元に深く根付いており、主人公・青子の家族も代々焼き物作りに携わってきた。波佐見焼は白磁に呉須(藍色)の絵付けが特徴的だ。しかし、青子の職場の窯元で新しく働くことになった龍生は、絵付けにも量産化にも否定的。波佐見焼の文化や絵付けの仕事に誇りを持っている青子は憤りを感じるが、彼が生み出す器は青子を魅了し、絵柄のイメージが次々に湧きあがる。二人はとある事情により心に傷を負っていたが、やがてお互いに惹かれ合うようになっていく。焼き物にこだわりを持つ職人同士の大人のラブストーリーを堪能しよう。
女子バスケ部の先輩に恋するバドミントン部の少年が、ひょんなことからその先輩と同居生活を送ることになるスポーツ青春ラブストーリー。猪股大喜(いのまたたいき)は中高一貫の栄明中学高等学校に通う中学3年生。朝一番に体育館へ行き、朝練をしながら、女子バスケ部の期待の選手で一つ年上の先輩・鹿野千夏(かのちなつ)の練習風景を見ることが日課になっていた。ある日、実は母親同士がかつて同じバスケ部のチームメイトだったことが判明。千夏は親の海外転勤が決まり、大喜の家で暮らすことになる。
大喜は平凡なバドミントン部員の一人で、思いを寄せている相手の千夏は女子バスケ部で世間的にも注目されているスター選手。まるで住む世界が違うように思える二人だったが、千夏は生まれながらの天才などではなく、誰よりも早く体育館に来て練習を怠らない努力家だ。大喜が千夏に恋をしたのも、1年半程前に千夏が中学最後の試合で惜敗し、悔し泣きをしながらシュート練習を行っている姿を目撃したことがきっかけだった。千夏が親の転勤で海外へ行ってしまうと勘違いした大喜は先走ってしまうが、千夏は日本に残る決意を固めていた。それは、中学時代の悔しさを大喜が思い出させてくれたから。二人はそれぞれの部活で目標に向かって練習に励みながら、同居生活を通じて距離を縮めていく。
悪魔の王の血を受け継ぐ少年が祓魔師(エクソシスト)を目指すダークファンタジー。修道院で暮らす双子の奥村燐(りん)と雪男(ゆきお)は、悪魔・サタンの落とし子だが普通の人間として育てられた。ある日、燐は突然悪魔の力が覚醒してしまう。親代わりだった神父・藤本獅郎(しろう)がサタンに憑依されて命を落としたことで、燐は強くなるために祓魔師を目指し、祓魔塾へ入塾することになる。2011年、2017年にテレビアニメ化、2012年に劇場アニメ化。
人間が住む「物質界」(アッシャー)は、「虚無界」(ゲヘナ)に住む悪魔の悪行から祓魔師たちで構成される正十字騎士團によって守られてきた。サタンは青い炎を操り虚無界を統べる悪魔の王であり、悪魔の力は燐にのみ受け継がれた。青い炎の力が封印された「降魔剣」を抜くと、燐は青い炎に包まれ悪魔の姿へと変わる。一方、幼い頃から事情を知って様々な覚悟を決めていた雪男は最年少で祓魔師となり、祓魔塾の講師として燐の指導に当たる。塾長は獅郎の友人のメフィスト・フェレスだが、その正体は悪魔で、塾生たちは様々な試練を乗り越え成長していく。塾生たちと友情を深める和やかなシーンと、ホラーテイストなバトルシーンとのギャップもこの作品の大きな魅力だ。