「風」を用いて悪しきものを封じる能力を持つ主人公が、付き人や仲間とともにそれらと戦う伝奇アクション漫画。封印が解かれた邪鬼を追って、主人公・水無月流魔(みなづきりゅうま)は、付き人の草薙弥生(くさなぎやよい)とともにある町に赴く。そこでは、邪鬼による猟奇殺人が起こっていた。女子高校生に取り憑いた邪鬼を追い、対峙した流魔と弥生は「風」の力で邪鬼を封じようとするのであった。風、土、水、火などを使役し自然の摂理を守る者たちの物語である。
本作のタイトル通り、主人公の流魔は「風」を操る能力者だ。長身の男子高校生で、クールな性格である。彼の家系はその風を操る能力で邪霊や妖魔といった悪しきものを浄化し、封じてきた。幼少時に、敵対する一族の妖術師・巌倉辰箕(いわくらたつみ)の手により母を失っているため、母と同じく「付き人」役である弥生のことは危険から遠ざけようとする傾向がある。一方、弥生は付き人として流魔に対し従順に付き従うが、流魔のためなら時に頑としてひかないという強い面も持ち合わせている。その2人と悪しき存在との戦いが、壮大なスケールで繰り広げられる本作。王道ともいえる能力バトルが見どころの一つではあるが、世界観の練り込みも魅力的で、ダークファンタジー的な側面を持ち合わせた作品である。
忍術と空手を合わせた武術「忍空(にんくう)」を操る主人公らの活躍を描くギャグバトル漫画。戦争が終わり、仮初めの平和が続くEDO(えど)暦3年。旅を続ける少年・風助(ふうすけ)は恩義のある兄妹の牧場で忍空組の残党が悪事を働く場面を目にする。そして、さらわれた妹を助けるため、残党の隠れ家に乗り込んだ風助は、残党の頭を打ち倒す。実は風助こそが忍空組1番隊隊長なのであった。続編に『忍空 ~SECOND STAGE 干支忍編~』がある。1995年にテレビアニメ化。
十二支にちなんだ12の流派を持つ忍空使い。その中の1番隊・子忍(ねにん)の隊長が、風を操る風助だ。風助はファニーフェイスで愛嬌のある12歳の少年で、争いを好まない性格。だが「忍空」の腕は一流で、必要であれば相手を容赦なく叩きのめす。穏やかであるが、思ったことをそのまま口に出す、いわゆる「空気が読めない」性格でもある。そういった風助の容姿・性格と相まって、本作では緊迫した展開でもユーモラスなギャグ描写があるのも特徴で、それがよいアクセントとなっている。1995年の掲載誌での休止以来、長年展開が中断していたが、2005年に掲載誌を移し、続編の『忍空 ~SECOND STAGE 干支忍編~』で物語は完結した。忍術漫画の傑作である。
中国の同名の伝奇物語を大胆にアレンジした伝奇ファンタジーバトル漫画。古代中国・殷の時代が舞台。皇帝・紂王(ちゅうおう)は悪しき仙女の妲己(だっき)を妃として迎えて以来、それまでの善政とは打って変わり悪政を行っていた。そんな中、仙人界の実力者・元始天尊は、悪しき仙人・道士を封じ込める計画「封神計画」を立案。その実行者として弟子である主人公の太公望(たいこうぼう)に白羽の矢が立った。1999年、2018年にテレビアニメ化。
天才肌で優れた頭脳と実力を持つ太公望であるが、普段は韜晦しており怠け者を装っている。そんな太公望だが、仙人界の武器・宝貝(パオペエ)の「打神鞭(だしんべん)」を愛用し、風を操る。飄々とした太公望の性格と、風のイメージが合っているようで面白い。そして、太公望は持ち前の頭脳と人徳で、宝貝人間の哪吒(なたく)や、天才道士楊戩(ようぜん)といった心強い仲間を得て、妲己配下の仙人・道士や他勢力と戦っていく。本作後に発表された『屍鬼』や『銀河英雄伝説』のコミカライズでも大胆なアレンジで、彼独自の「読ませる」漫画に落とし込んでいる作者だが、その力量がこの時点で垣間見られる。魅力的なキャラクターと、重厚なストーリーを作者独自にまとめあげた傑作コミカライズである。
剣と魔法の世界で、魔力を持たない少年が仲間とともに成長し「魔法帝」を目指すファンタジーバトル漫画。魔法がすべてという世界で、魔法が使えず、位の低い「下民」の孤児として生まれた少年アスタ。ともに育ち、魔法の使い手であるユノと周囲に比較されながらも、アスタはめげず努力を重ねていた。しかし、15歳を迎えた者たちが魔導書(グリモワール)を授与される日、アスタだけはそれが与えられなかった。だがその後、ユノの窮地に際し、アスタの前に黒い魔導書が姿を現すのであった。2017年にテレビアニメ化。
本作の風を操る魔法使いは、アスタのライバル・ユノだ。熱血漢でやたら前向き、無鉄砲といえるアスタとは正反対のクールな性格で優れた魔法の才能を持つ天才だ。ともに育ったアスタの努力を知っており、周囲がアスタの魔法の才能のなさを嘲笑するなか、アスタをライバルとして認めていた。そして才能あふれるユノもまた努力の人だ。自他ともに認める魔法の力を持つが、彼もアスタ同様「魔法帝」を目指しているのだ。2人のライバル関係を中心に、個性豊かなキャラクターたちが魔法バトルを繰り広げる熱い王道ファンタジーだ。
妖怪を滅する結界師の家系である少年の戦いの日々を描いた和風ファンタジーバトル漫画。妖怪退治の専門家である結界師の一族に生まれた正統後継者の男子中学生・墨村良守(すみむらよしもり)。そして、お隣で、墨村家とは犬猿の仲の雪村家の女子中学生「雪村時音(ゆきむらときね)」。2人の結界師は、妖怪を呼びよせてしまう地「烏森(からすもり)」に立つ烏森学園へと、毎夜妖怪退治に赴くのであった。2006年にテレビアニメ化。
次々と現れる妖怪たちと日々戦う2人。そんな中で介入してくるのが異能者組織「裏会」だ。良守の兄・正守(まさもり)も所属する、異能者を取り仕切る自治組織である。その中で大きな発言力を持つのが、風使いの扇一族だ。その一族でとくに天才とされるのが扇七郎(しちろう)。17歳の高校生であるが、幼少時にすでに扇家の次期当主と目されたほどの実力の持ち主だ。優男ではあるが妖怪、人間問わず、ためらいなく手を下すことから「死神」と呼ばれる術者だ。そんな彼をはじめ、善・悪双方の魅力的な登場人物、丁寧に練られ、つづられた設定とストーリーが魅力の本作。緻密に張り巡らされた伏線も回収し、勢いが衰えることなくきれいに完結した。和風ファンタジーのみならず、少年漫画の教科書的作品である。