ジャングルで暮らす少年と彼を取り巻く仲間たちの日常を描いたスローライフコメディ。とある平和なジャングルに住むハレはごく普通の真面目な少年だ。彼とは正反対の陽気な母親・ウェダに振り回される毎日である。ある日、ハレはウェダが連れ帰った身寄りのない少女・グゥと同居することに。初対面で見せた彼女の笑顔にまんざらでもないハレだったが、翌朝彼が見たものは変わり果てたグゥの姿であった。2001年にテレビアニメ化。続編に『ハレグゥ』がある。
初めて会った時の笑顔とは裏腹に、グゥは無愛想な表情と態度でハレを凍りつかせる。彼が可愛がっていた鳥を丸飲みしたり、ウェダを襲った熊を不思議な力で倒したりと奇行を繰り返す彼女にハレはすっかり怯えてしまう。グゥはジャングルの学校へ通うことになるが、気に入らないクラスメイトを飲み込んだり先生に歯向かったりとやりたい放題だ。そのうち彼らの学校にやってきた態度の悪い保健医・クライヴがハレの父親であることが判明し、ますますドタバタに巻き込まれるハレであった。本作は、ジャングルを舞台にグゥたちに振り回されながらも逞しく生きるハレが健気で面白い。また、二人がウェダの故郷である都会の学校に転校し、騒動を巻き起こす都会編も見どころだ。
国民的オンラインRPG「ドラゴンクエストX」のプレイヤー同士の同居生活を描いたラブコメディ。主人公・パウダーこと「さつきたくみ」は、ドラクエXで可愛らしい容姿の種族「プクリポ」の女子を操るオタク男子だ。ひょんなことから逞しい鬼の種族「オーガ」の男子を操るゴローと出会い、仲良くなる。ある日、ゴローが引っ越しを考えていることを知り、男性であることを公言しているパウダーは自分の住む一軒家に住むよう同居を持ちかける。2019年にテレビドラマ化。
ゴローの引っ越しの日、駅前で二人は初めて顔を合わせるが、パウダーはその姿を見て驚愕する。実は、ゴローの正体は「おかもとみやこ」と名乗るギャル系ネイリストだったからだ。性別を偽っていた上に、ギャルが苦手なパウダーはよそよそしい態度を取ってしまう。しかし、ドラクエの協力プレイで垣間見る彼女の明るい性格に惹かれ、心を開くように。ゴローも誠実な彼を徐々に意識するようになり、二人は互いにかけがえのない存在になってゆく。本作は、二人の交際・結婚などのライフイベントが「クエスト」にたとえられるなど、ドラクエの世界観とオーバーラップしているためファンにはたまらない一冊だ。しかし、コアなゲーム要素は少なく、詳しくない人もラブコメディとして楽しめる。
交際0日で結婚したカップルの奇妙な同居生活を描いたハートフルコメディ。主人公・桐島士朗(きりしましろう)は勤めていた会社をリストラされ、おまけに彼女にもフられ散々な日々を送っていた。ある日、バーでヤケ酒を飲んでいたところ、偶然居合わせた石村亜衣(いしむらあい)と名乗る女性に自分のところで働かないかと持ちかけられる。亜衣が美人だったのもあり、桐島は二つ返事で契約書にサインをしてしまう。勤務初日、桐島は彼女の家を訪ねるが目の前に広がるのは驚愕の風景だった。
桐島を出迎えたのは全裸の亜衣と汚部屋であった。なんと、桐島がサインしたのは婚姻届であったことが判明し、二人は夫婦になっていたのだ。亜衣は自分が働く代わりに彼に専業主夫になるよう命じるが、ゴミの捨て方を巡りわずか1日で離婚の危機に。あっさり離婚を承諾する彼女に、なぜ結婚をしたのか問い詰めるが理由は意外なものであった。元々亜衣は恋愛や結婚に興味がなく、呪縛から逃れるために「バツイチ」になろうとしていたのである。それを聞いた桐島は、意地でも離婚するまいと婚姻関係を継続することを決意するのであった。結婚する理由もさることながら、常に裸族で男勝りな言動の亜衣が面白い。心を通わせるうちに、「本当の家族」になってゆく二人に心温まるだろう。
離れれば離れるほど引かれ合う男女の秘密の恋を描いたラブコメディ。主人公・木下新菜(にいな)は、ごく普通の女子高生だ。バイト先のカフェの常連である駆け出しの漫画家・小田朔(さく)と知り合ってはや1年である。彼女が淹れるコーヒーと漫画がきっかけで急接近した二人は、いつしかラブラブな関係になっていた。そんな中、新菜は高校2年の始業式にやってきた新しいクラス担任の顔を見て呆然とする。何とそこにいたのは紛れもない朔であったからだ。
漫画家であること以外彼の素性を知らなかった新菜は、関係がバレるのは時間の問題だと考え、お互いのために別れを選択した。その後、親友の勧めもあり演劇部に入部するが、顧問として朔が関わることになる。部員たちに関係を隠しきれなくなると心配した新菜は、口裏を合わせるために彼に「共闘」を持ちかける。奇しくも再接近する二人だが、彼女のバイト先にクラスメイト・平井深(しん)が入ってきたことで微妙な三角関係に。好青年である深と、別れても変わらず彼女を見守る朔の間で揺れ動く新菜であった。禁断の恋ゆえに離れようとしても、磁石のように引かれ合う運命の恋模様が胸キュンだ。新菜の「N極」は、朔・深のどちらの「S極」とくっつくか、行方から目が離せない。
訳ありで女装をしているサラリーマンが同僚女性に恋をする、擬似同性愛コメディ。主人公・須田真琴(すだまこと)は見た目は普通のサラリーマンだが重大な秘密を抱えていた。血の繋がらない息子・須田崇(たかし)と二人暮らしだが、何と彼の前では「お母さん」として女装で過ごしていたのである。ある日真琴は、女装のまま通勤電車に乗っていたところ、以前から気になっていた女性が痴漢に襲われているのを目撃する。痴漢を撃退し二人は意気投合するが、彼女の正体は真琴の同僚・藤本菜摘(ふじもとなつみ)であった。
菜摘は会社では仕事の鬼として恐れられており、素顔の真琴に気づかず冷たい態度を取っていた。真琴は正体を隠し「戸田須真子」として彼女とデートを重ねる。遂には菜摘から告白され、二人は同性愛として恋人未満の関係に。実は、真琴が女装を続ける理由は、崇の実母が亡くなった時に母親として育てる決意をしたからであった。紆余曲折あり菜摘は彼のカミングアウトを受け容れ、晴れて異性愛カップルになる。彼女の後押しもあり、遂に崇に真実を話す時がやってきたが、反応は意外なものであった。本作は、優しい嘘から始まった真琴の女装がさまざまな人を巻き込みドタバタ劇となっていくところが面白い。同性愛とは何か、血の繋がりとは何か、「愛」について改めて考えさせられる作品だ。