“伏見 紀人”は漫画家を目指す高校2年生。デビューを目指し日夜漫画を描いてる彼の現在の目標は、夏休みまでに原稿を仕上げ、憧れの雑誌トーラスへと持ち込む事。
やがて作品を書き上げた紀人は上京し、トーラス編集部へと原稿を持ち込むが、結果は惨敗。完全にノックダウンという状態に。
持ち込みをした事により、自分がまだまだ未熟者であることを痛感した紀人。本物の漫画家になる為には本物の努力が必要だと痛感し、夏休みを使いひたすら絵を描き、デッサン力、描く力を鍛えていく。
「おれには漫画しかない!」
夏休みが終わり、投稿した新たな原稿が、トーラスの“沢村叡智賞”の期待賞に選ばれた紀人は、授賞式に出るために東京の式場へと向かった。そしてその会場で“石堂 凛”との運命の出会いを果たすことになるのだ。
あらすじでも述べているが『RiN』は漫画家ストーリーだ。主人公の“伏見 紀人”は幼い頃から漫画家になることだけを目指し、そして青春全てをつぎ込んできた。努力を積み重ね、やがて評価され、連載を勝ち取っていく事になるのだが…この漫画はそれだけではないのだ。
紀人の周囲で不可思議な現象が起きる。不思議な夢、白昼夢の如く現れる謎の“ヤタガラス”の着ぐるみを来たおっさんなど。その存在は彼にしか見えず、節目節目で助言をして忽然と姿を消していく謎の存在である。
ヒロインの“石堂 凛”は幼い頃から霊感があり、その影響で虚弱体質に苦しんでいる。障りのある場所や、人混み、都会などですぐに体調不良に陥るために、あまり出たがらない。そんな彼女がひょんな事から招かれた“沢村叡智賞”の授賞式。会場で初めて会う紀人には、不思議な親近感を感じるのだった。
漫画家サクセスストーリーだけではなく、差し込まれた謎の現象、不思議な夢。そして沢村叡智の霊が凛に語り掛ける「トーラス」という謎の言葉。『RiN』はまだまだ大きな謎を秘めているのだ。
作品中、紀人の描く原稿も挿入されているのだがペンの入っていない下書きで描かれるという新しい試みが行われている。しっかりと読めるネームもあり、それだけでも新しい漫画が作れそうな程しっかりと作り込まれています。『RiN』と紀人のネーム両方を考えるというのは本当に大変だと思う。
オカルティックな謎も魅力の一つだが、作者が作品に込めた「新しいモノを創造する者」たちの情熱と覚悟。それが紙面からひしひしと伝わってくるのだ。
いよいよ佳境に入ったストーリーは、絶対に見逃す事が出来ない。作者の確かな画力に裏付けられたストーリーを是非とも確認してほしい。