異世界おじさん

異世界おじさん

交通事故で17年間昏睡状態だったおじさんは、目覚めた時には異世界からの帰還者となっていた。現実世界に戻ったおじさんと甥っ子の淡々とした日常を、異世界で起こった出来事の回想と、今は亡きゲームハードへの愛情を交えて描く異色の異世界ギャグストーリー。KADOKAWA「ComicWalker」で2018年6月29日から配信の作品。「次にくるマンガ大賞2019」Webマンガ部門で第8位およびU-NEXT特別賞を受賞。2022年7月テレビアニメ化。

正式名称
異世界おじさん
ふりがな
いせかいおじさん
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
MFC(KADOKAWA)
巻数
既刊12巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

異世界おじさん

高校時代に一家離散し、フリーターをしていた青年、たかふみは、交通事故で17年間、昏睡状態(こんすい)となっていたおじさんが目覚めたとの知らせを受ける。おじさんを引き取ろうにも、生活が困窮したたかふみにそんな余裕はなく、親戚一同もおじさんの処遇を決めかねていた。再会したおじさんは奇妙な呪文を唱え、異世界「グランバハマル」から帰って来たと語っており、明らかに様子のおかしいおじさんを見て、たかふみは即座に見捨てようとするが、たかふみの目の前でおじさんは実際に魔法を使ってみせる。すると、たかふみは手のひらを返し、おじさんの力で食っていこうと考える。こうして二人は、YouTubeで動画配信者として活動し始めるのだった。そんな中、異世界にロマンを馳(は)せるたかふみは、おじさんから異世界の冒険譚(たん)を聞いていた。記憶の精霊の力を使い、おじさんの過去を動画のように見始める二人だったが、おじさんの異世界生活は過酷そのもの。醜い容姿であることで魔物と間違われて殺されかけたり、仲間もできずたった一人で冒険を続けていたのだ。そんな中、おじさんは一人の人物について語り始める。おじさんはロクでもないエルフだったと言いながらも、そのエルフの言動はいわゆる「ツンデレヒロイン」そのもので、それを聞いたたかふみは思わずそのツンデレエルフに思いを馳せるのだった。

ツンデレエルフ

たかふみは町中で偶然、疎遠になっていた幼なじみの藤宮澄夏と再会。旧交を温め、彼女を家に招待するが、ひょんなことからおじさんが魔法を使えることが澄夏にバレてしまう。そして澄夏は、たかふみの家に入り浸るようになり、おじさんの異世界冒険譚をいっしょに聞くようになるのだった。そんな中、おじさんは異世界でRPGのような経験をしたことを語り始める。復活した伝説のドラゴン「魔炎竜」を倒すため、魔炎竜を唯一倒せる伝説の神剣「凍神剣」を求めて、おじさんは氷の一族の末裔、メイベル=レイベールのもとを訪れる。しかし、凍神剣を手に入れるためには、メイベルの凍った心を解き放つ必要があった。メイベルから、幼い頃に見た花を採って来て欲しいと頼まれるおじさんだったが、実はRPGのおつかいイベントが苦手なおじさんは、このお願いをスルーしてボスの魔炎竜のもとへと向かう。苦戦しつつもこれを打ち倒し、RPG的イベントを総スルーするのだった。役目から解放されるメイベルだったが、実は氷の一族は役目を盾にニート生活を満喫しており、役目を失ったことでその生活を失ってしまう。おじさんを逆恨みするメイベルだったが、それも筋違いだとすぐ理解し、おじさんと交流する中で少しずつ前向きになる。しかし、おじさんのズレた言動がメイベルを傷つけ、二人は戦闘を開始。そこにおじさんをストーカーしていたツンデレエルフも合流し、二人の様子を見て事情を察したツンデレエルフはメイベルに加勢し、二人がかりでおじさんを倒すのだった。

万能話手

ツンデレエルフメイベル=レイベールはお互いに事情を話し合うが、その中で伝説の神剣「凍神剣」の由来について語る。実は凍神剣は日本から転移してきた武士が神に授かったもので、転移者には何かしらの力が与えられていたことが判明する。しかしそれを聞いていたおじさんは、そのことにまったく心当たりがなく、記憶の精霊の力を借りて、さらに過去の情報を探り始める。そしておじさんは、異世界に来た直後のことをたかふみたちに語って聞かせる。おじさんは異世界に来た直後に、通りすがりの冒険者に魔物と間違われ、殺されかけたのだ。言葉も通じず、一方的に殺されかけたおじさんは、必死に「言葉が通じればわかり合えるのに」と願い、「翻訳」の力を手にしていた。しかし場は混沌としており、力を与える神もかなり手抜きをしていたため、おじさんは現在に至るまでそのことにいっさい気づかずにいたのだ。たかふみたちとの話し合いの結果、翻訳の力は「万能話手」と名づけられる。そしておじさんは、翻訳の力を手にしてからを語り始める。おじさんはその力で冒険者たちを説得するが、今度は言葉を話せる魔物として見世物小屋に売られる。二束三文で買い叩(たた)かれたたうえ、そのまま店主にどうでもいい存在として忘れ去られてしまう。檻(おり)の中で1週間過ごしたおじさんはそんな極限状態の中、精霊と対話することに成功する。そして、おじさんは精霊魔法の力を身に着けて脱出し、異世界生活を始めるのだった。

精霊魔法

おじさんたかふみは万能話手の検証をし、そのためにおじさんの過去の記憶を見る。その中で、おじさんは勇者であるアリシア=イーデルシアとの出会いと再会について話し始める。おじさんはゴブリンの軍団に襲われる村でアリシアとその仲間たちと出会い、彼らと共闘して交友を育む。しかしアリシアが、おじさんの秘密を目撃していたのを知り、おじさんは証拠隠滅のためにアリシアの記憶を消して立ち去ったのである。だが、おじさんはアリシアが魔物退治をしているところに再び遭遇。そこでおじさんは、偶然に翻訳の力が作動し、魔物の言葉が理解できたことを思い出す。だが、話は万能話手の検証からアリシアのことに移り、たかふみたちはアリシアとのその後についておじさんに聞く。実はアリシアはゴブリンの軍団を倒した際の記憶をおじさんが消したせいで、アリシアが大量の魔物を倒したことになっていた。アリシアは政治的な問題もあって、その手柄を誇張され勇者に就任し、分不相応な立場に困惑していたのだ。おじさんは再びアリシアたちと共闘して交友を育み、今度は記憶を消さずに別れるのだった。その後、アリシアの勇者任命に何者かの陰謀を感じたおじさんは、王都へと向かう。王国軍の総司令官であるリカルド=マークフェルドを説得するも、王国騎士となっていたメイベル=レイベールが何者かにあやつられ、おじさんはメイベルと戦うこととなる。おじさんはメイベルの呪縛を解き、その痕跡から黒幕は司祭を務めるカーン=ゼルネガンであることを暴く。カーンは勇者を利用して軍事費を増大させ、その一部を寄付という形で、懐に入れようとしていたのだ。おじさんはカーンの野望を阻み、リカルドに別れを告げて、王都を立ち去るのだった。

煉獄の湯

たかふみは、おじさんが王都を立ち去ってからの話を聞く。おじさんは王都を立ち去る際に、かっこつけて変身魔法で魔炎竜の姿に変身して立ち去ったが、うっかり魔法が解けなくなり、そのまま1か月過ごしていた。おじさんを追いかけてきたツンデレエルフのお陰でおじさんは何とか元に戻るが、ツンデレエルフは質の悪い商会から借金をしており、頭取であるハーゲン=レグファルケンの手によってピンチに陥ってしまう。おじさんは助けられた借りを返すべく、ツンデレエルフをハーゲンの呪縛から解放し、借金の返済の代わりにハーゲンに高価な天星石の指輪を手渡すのだった。借金取りたての脅威から逃れたおじさんとツンデレエルフは、ツンデレエルフの案内で温泉に入りにいくこととなる。おじさんはかつて転移してきた日本人が作った温泉宿「煉獄の湯」にたどり着き、そこで温泉を堪能しつつ、アリシア=イーデルシアと再会する。二人っきりの時間を邪魔されて機嫌を悪くするツンデレエルフだったが、アリシアたちの情報でツンデレエルフの旅の目的である古代魔導具を見つける。一方、温泉で和気藹々(あいあい)と過ごすおじさんたちであったが、そこに突如魔物が襲来。さらに魔物の中には魔法を封じる「魔封鳥」もおり、おじさんはその力を封じられてしまう。ピンチに陥るアリシアたちであったが、アリシアがおじさんとの冒険で手に入れた「救世のワンド」の秘めたる力を解放し、魔物たちを打ち倒すのだった。戦闘のあと、ひと段落ついたおじさんはアリシアと対話。彼女にとって記憶は何より大切であることを知ったおじさんは、過去にアリシアの記憶を消したことを告白し、お互いの事情を打ち明け合って和解するのだった。

荒ぶる神の力

おじさんは「唄う魔物」と戦った経緯を、たかふみたちに語って聞かせる。おじさんは温泉旅館を立ち去って1か月ほど経った頃、森の中で夜に歌い続ける魔物の噂(うわさ)を聞き、討伐のために森を訪れる。しかし、その正体は王国騎士をクビになり、森の中で野宿していたメイベル=レイベールだった。実は歌が得意なメイベルに、日本のゲームセンターの歌を歌ってもらい、おじさんは異世界で故郷に思いを馳せる。だが、おじさんをストーカーしていたツンデレエルフがそれを目撃。ツンデレエルフは黒い嫉妬の炎を燃え上がらせ、おじさんに詰め寄るが、そこで初めてお互いの本名を知り、おじさんから「翠」というあだ名も付けてもらう。一転して機嫌をよくしたツンデレエルフは、おじさんとメイベルの旅路に同行し、三人は古びた祠(ほこら)にたどり着く。祠は神が災いを封じた神聖な場所で、異世界人にとっては加護を与えてくれるありがたい場所だった。しかし、人間不信のおじさんはそれをまったく信じず、祠を破壊。封じられた災厄である荒ぶる神の力を解放し、それと戦おうとする。ボスを倒せば先に進めるという、ゲーム的思考で災いを目覚めさせたおじさんだったが、強大な力を持つ神の力にあやつられてしまう。危機に陥るツンデレエルフたちであったが、たまたま魔物討伐で近くを通りかかったアリシア=イーデルシアの協力で、おじさんは正気を取り戻す。そしておじさんは、不死身に近い力を持つ荒ぶる神の力を倒すため、魔炎竜を復活させてぶつけるが、魔炎竜は神の力を取り込んで神化魔炎竜へと進化し、より強大な脅威へと成り果てる。おじさんと仲間たちはそれぞれが全力を尽くし、神化魔炎竜を打ち倒すのだった。そしておじさんは、神化魔炎竜を滅びる際の光景を見て、日本帰還の手がかりを見つける。

投獄

神化魔炎竜の戦いは周囲を騒がせることとなり、おじさんは首謀者として捕らえられる。処刑されるおじさんを救うため、ツンデレエルフやアリシア=イーデルシアたちは処刑場に向かうも、その寸前、ハーゲン=レグファルケンの部下が処刑場に乱入し、おじさんを連れ去ってしまう。ハーゲンはおじさんにもらった指輪が呪いの指輪と化し、抜けなくなって困っていたのだ。ハーゲンはおじさんの仕業と思うものの、おじさんにとっても偶発的に呪いが発生したものでどうしようもなかった。おじさんは呪いを解くため、ハーゲンをリカルド=マークフェルドに引き合わせる。また、処刑騒動はリカルドの与り知らぬ出来事で、彼の部下の力を借りて、騒動の鎮圧を行うことを決める。処刑場に戻ったおじさんは仲間たちと合流し、騒動を鎮めようとするが、おじさんのミスでハーゲンの部下であるドルドール=レクスドルが大ケガを負ってしまい、おじさんは再び投獄。さらにおじさんは祠を壊し、荒ぶる神の力を復活させたことは事実であるため、その責任を取って全財産を賠償金代わりに払い、無罪放免となるのだった。そして自由の身となったおじさんは、ツンデレエルフとメイベル=レイベールと合流し、彼女たちと新たな地へと旅立つのだった。

コラボレーション

SEGA

本作『異世界おじさん』の主人公であるおじさんは熱狂的なSEGAファンという設定だが、本作では一貫して「SEGA」の名称は「SE●A」と伏せ字として表現されている。しかし、2019年9月19日にSEGAが「メガドライブミニ」を発売した際に、本作とSEGAがコラボ。おじさんがメガドライブミニを紹介する漫画が描かれ、その際には伏せ字が取られ、ゲーム機やゲームタイトルも伏せ字なしで内容を紹介している。

チェインクロニクル

2020年10月22日には本作『異世界おじさん』と、SEGAより配信されているスマートフォン用アプリ『チェインクロニクル』とのコラボレーションが行われた。チェインクロニクルはキャラクターを集めて戦うアクション・タワーディフェンス方式のゲームで、ゲームには本作のキャラクターが登場した。声優もキャスティングされたゲームであるが、コラボレーションが行われたのはTVアニメ発表前だったため、TVアニメ版とはキャスティングが異なり、おじさんは石田彰、ツンデレエルフは佐倉綾音、メイベル=レイベールは今井麻美、アリシア=イーデルシアは内田彩が務めている。ゲーム内でもコラボレーションイベントが行われ、イベントのシナリオは原作者の殆ど死んでいるが監修している。

メディアミックス

テレビアニメ

2022年7月、本作『異世界おじさん』のテレビアニメ版『異世界おじさん』が放送された。アニメーション制作はAtelier Pontdarcが担当している。キャストは、おじさんは子安武人、ツンデレエルフは戸松遥、メイベル=レイベールは悠木碧、アリシア=イーデルシアは豊崎愛生が演じている。テレビアニメ版はSEGA全面監修のもと制作され、原作であった伏せ字もすべて解放される。それに伴ってテレビアニメ版はSEGAと全面コラボレーションを開始し、数々のコラボグッズを販売している。またアニメの公式サイトでは、SEGAの象徴的マスコットであるソニックと異世界おじさんがコラボレーションし、両者が共演するイラストと動画が掲載された。

評価・受賞歴

本作『異世界おじさん』は「次にくるマンガ大賞2019」のWEBマンガ部門第8位、「このマンガがすごい! 2020」のオトコ編第11位、BOOK☆WALKER大賞 2020」の準大賞を受賞している。

登場人物・キャラクター

主人公

異世界「グランバハマル」帰りの中年男性。本名は「嶋㟢陽介」で、誕生日は11月30日。17歳の頃に異世界に転移してから17年間、ずっと異世界にいた。現実世界では交通事故に遭って昏睡状態となっており、現在... 関連ページ:おじさん

たかふみ

おじさんの甥っ子。おじさんの姉の息子で、本名は「高丘敬文」。誕生日は5月23日で、年齢は20歳。眼鏡をかけた青年で、高校時代に一家離散となり、フリーターとして生計を立てている。昏睡状態のおじさんを誰も引き取らなかったため、おじさんが目覚めたあと、身寄りのないおじさんを引き取るため病院を訪れる。ただし生活にかなり困窮しており、当初はおじさんを見捨てるつもりだったが、おじさんが本当に異世界帰りだと知ってからは手のひらを返し、おじさんの精霊魔法で食っていこうと共同生活を始める。おじさんとはジェネレーションギャップを感じつつも、なんだかんだ良好な関係を築いている。異世界ファンタジーものが大好きで、おじさんの冒険譚を心躍らせて聞いているが、斜め下の行動を取るおじさんによくツッコミを入れている。一見すると常識人だが、一家離散後から闇を抱えているため、時おり、物騒な言動をしては周囲から心配されている。おじさんとツンデレエルフの関係にツッコミを入れているが、たかふみ自身も女心には鈍く、幼なじみの藤宮澄夏から好意を寄せられているが、まったく気づいていない。ただし澄夏に対しては思うところがあり、彼女が危ない男性と付き合っているとカンちがいした際には、彼女のことを心配しつつも歪(ゆが)んだ独占欲のようなものを垣間見せている。鬱屈した思いを抱えているため、実は力を持たせると相当ヤバいタイプ。おじさんから一時期、精霊の力を借りたことがあるが、自重なく力を使って澄夏をドン引きさせた。また、精霊の力をただの便利な力程度にしか思っていなかったため、「貌の精霊」の怒りを買い、その代償で一時期は恐竜に姿を変えられた。のちにおじさんが貌の精霊の代償を支払う際に、身代わりとなりアリシア=イーデルシアに変身。その際に高潔な精神を見せたことで貌の精霊に認められ、以降、恒久的に貌の精霊の力を借りられるようになり、自力で変身魔法を使えるようになった。

ツンデレエルフ

エルフの女性冒険者。金髪の美少女で、素直になれないいわゆる「ツンデレ」的な言動が多い。そのためたかふみたちには「ツンデレエルフ」と呼ばれている。異世界「グランバハマル」でもエルフは珍しく、故郷を出て冒険者をしているエルフはほかにいないため、「エルフ」呼びされており、ツンデレエルフ自身もそれを許可しているため、長らく本名は明かされなかった。その正体はエルフの王族で、本名は「スザイルギラーゼガルネルブゼギルレアグランゼルガ=エルガ」。貴重な古代魔導具が価値を知らぬ者に雑に扱われるのを嫌い、その回収を役目としており、各地を旅している。ふだん身にまとっている鎧(よろい)も古代魔導具で、魔法の力を込めることでさまざまな機能を発揮する。秘伝の収納魔法をあやつることができ、鎧や武装はここに格納しており、のちにその収納魔法はおじさんが見様見真似(まね)で身につけている。剣と魔法もかなりの腕前ながら、魔毒竜に襲われ追い詰められたところをおじさんに助けられる。おじさんに恋心を抱き、素直になれず意地を張って典型的なツンデレ的な言動を取る。ただし、おじさんがツンデレの概念が生まれる前に異世界に行ったため、いっさいその思いが通じることがなく、照れ隠しを額面どおり受け取られた結果、どんどん苦手意識を持たれることとなる。おじさんのことを心配し、ストーカー的におじさんの跡を付けている。その甲斐(かい)あっておじさんの命を助け、彼から非常に貴重な「天星石の指輪」をもらう。異世界でも指輪を送るのは婚姻的な意味があるらしく、とても喜ぶが、おじさんは金銭的な意味で渡したため、目の前で売られてしまう。その後、借金してまで指輪を買い戻している。メイベル=レイベールやアリシア=イーデルシアといったライバルの出現で、おじさんへのアプローチが若干なりふり構わなくなっている。おじさんから本名を教えてもらった際に、自分の本名も教える。また本名が長いため、宝石のような瞳をしていることから「翠」のあだ名を付けてもらい、誰もいない時限定であだ名で呼ぶことを許している。

メイベル=レイベール

伝説の神剣「凍神剣」を守る氷の一族の末裔の少女。青みがかった銀髪を長く伸ばした美少女で、儚(はかな)げな雰囲気を漂わせている。魔炎竜が復活した際に、魔炎竜を唯一倒せる凍神剣を、心を許した相手に託すのを役割としている。訪れたおじさんに凍神剣の試練を課すが、RPGを苦手とするおじさんは試練を無視して魔炎竜を倒してしまったため、一族の役目から解放される。実は氷の一族は凍神剣を守るという特権で怠惰な生活を送っており、メイベル=レイベールも本性はかなり自堕落なニート。氷の一族の面倒を見てきた村もかなり鬱憤が溜まっていたようで、魔炎竜討伐後、村人に家を解体されたため、半ば逃げ出す形で故郷を出奔している。さすがに自分にも問題があることはわかっているようで、一度は自分を変えようとしたものの、おじさんの助言で引きこもり生活を肯定されたため、結局性根は変わることはなかった。住所不定無職となったため、おじさんも責任を感じ、売れば一生生活できる「天星石の指輪」を渡している。氷の一族は過去に日本から転移した者の末裔(まつえい)であるため、おじさんの容姿にも嫌悪感を抱くことなく、人生を狂わされたものの魔炎竜を完全に倒してくれたことには感謝している。そのため、天星石の指輪も高価なものと知りつつ、売らずに大事に取っている。のちにそのことを知ったおじさんから、もう一つ天星石の指輪はもらったが、二つ目の指輪も売らずに大事に取っている。氷を自在にあやつる凍神剣を使えるため、戦闘能力は高い。のちにその腕を買われてリュシディオン王国軍の正規騎士となる。無職から脱却して調子に乗るが、おじさんとのつながりを怪しまれたのと勤務態度が不まじめ過ぎたため、あっさり解雇された。「けだもののローブ」という魔法の猫耳ローブを持っており、獣に擬態することができるため野宿が得意。また伝承を語り継ぐのも役目としていたため、実は歌が非常にうまい。そんな中、森で歌って過ごしていたところ、「唄う魔物」として一時期、討伐対象となっていた。吟遊詩人になれば一儲けできるレベルで歌はうまいが、人前では恥ずかしくて歌えない。

藤宮 澄夏 (ふじみや すみか)

たかふみの幼なじみの女性。誕生日は6月3日。登場当初は19歳だったが、誕生日を迎えて20歳になっている。眼鏡をかけたスタイル抜群の美女で、堅実な性格をした常識人。幼い頃からたかふみにほのかな恋心を抱いていたが、その甘酸っぱい思い出は若干美化されており、小学生の頃の藤宮澄夏はガキ大将的な性格をしていた。澄夏も幼い頃の自分の姿を見て「小汚いガキ」と言い放ち、自分だと気づかなかったほど。だが、男前な性格でかっこよかったため、たかふみからは慕われていた。長らく疎遠だったが、街中でたかふみと偶然再会し、旧交を温める。たかふみが無職のおじさんを養っていると知り心配するが、その際の騒動が原因でおじさんが魔法を使うのを目撃する。その後はおじさんたちの理解者となり、おじさんの異世界冒険譚をたかふみといっしょになって聞いている。三人の中では一番の常識人で、おじさんやたかふみにツッコミをしている。ラブロマンスやエロ系的な展開が何気に好きで、それらの話になるとテンションが高くなる。藤宮千秋は弟だが、小学4年生にもかかわらず背が高く、体格もかなりいいため、どう見てもヤンキーにしか見えず、いっしょにいると彼氏に間違えられることもある。

沢江 (さわえ)

藤宮澄夏と同じ大学に通う女性。黒い髪をストレートロングに伸ばした糸目が特徴で、人当たりがよく、好奇心旺盛な性格をしている。澄夏とは友人同士で、澄夏と仲のよいたかふみの関係が気になり、興味本位で彼らと交友を持つ。たかふみと澄夏の関係を察し、たかふみを慌てさせようとからかったりするが、逆にたかふみの言動に振り回されることが多い。実は過去に親戚の伯母がマルチにハマっていた過去があり、それらについては厳しい対応を取る。たかふみ経由でおじさんと出会った際も、おじさんをカルトだと思って強く警戒していた。澄夏のことを心配し、たかふみたちと縁を切らせようと画策しているが、基本的にその思いとは裏腹にロクな目に遭っていない。

ミネア=ル=レヴィンツ

グランツ=ル=レヴィンツの妻で、レニア=ル=レヴィンツの母親。水の魔法が使えるため、その力で宿を切り盛りしている。おじさんの見た目に怯えており、当初は強く警戒していたが、おじさんによって宿が大繁盛する手助けをしてもらったことで、心より感謝している。

カーン=ゼルネガン

リュシディオン王国で司祭の位に就く男性。アリシア=イーデルシアを勇者に任命した黒幕で、教会にとってカビの生えたただの称号でしかない「勇者」の名声を利用することをもくろむ。リカルド=マークフェルドの苦悩に付け込んで、彼と結託し、分不相応な名声でアリシアたちを自滅させ、「勇者すら死ぬ」という事実で大衆を扇動して軍事費を増大させるつもりだった。その利益の一部を寄進という形で得る約束を交わしており、その金を出費のかさむ新大聖堂の建造費に充てようとしていた。乱入してきたおじさんに企みを暴かれ、リカルドも説得されかかったため、メイベル=レイベールを「身躯操作魔法」であやつって、おじさんの抹殺をもくろむ。しかし、おじさんの反撃で失敗し、ズレたおじさんの言動であらぬ疑いを掛けられたうえに、リカルドからは縁を切られた。

アリシア=イーデルシア

駆け出し冒険者の女性。童顔で子供っぽい見た目ながら、年齢は20歳くらい。灰色がかった髪をセミロングにしており、かなりの巨乳。神聖魔法をあやつる神聖魔道士で、白い法衣と帽子を身にまとっている。明るく素直な性格で、幼なじみのエドガー=クロストルガーとライガ=ストライガとパーティを組んで冒険している。しかし、辺境の村に進軍するゴブリンの軍団と遭遇し、絶望的な状況に陥るが、おじさんに助けられて事なきを得る。実は封印都市ルバンドラムで、おじさんが結界を張り直す場面を目撃しており、ゴブリンの軍団を倒したのと併せて彼を尊敬するようになる。しかし人間不信のおじさんから誤解され、証拠隠滅のために記憶を抹消させられる。そのためゴブリンの軍団も、不思議に思いながら自分たちで倒したと思っていた。しかしその後、王国のさまざまな思惑に巻き込まれることとなり、ゴブリン軍団討伐の手柄によって「神聖勇者」に認定されてしまう。名ばかりの勇者として権力者たちにいいように利用されていたが、おじさんと再会後、「深闇の迷宮」のダンジョンを攻略して「救世のワンド」を入手して急速に力を付けていく。また、おじさんが手柄を押し付けて勇者となったため、責任を感じたおじさんが王国の重鎮であるリカルド=マークフェルドを説得。それ以降は政治利用されることもなくなった。その後も旅先でおじさんと再会することがあり、たびたび共闘している。実は幼い頃、ゴブリンに連れ去られていたところを、村の自警団に助けられた過去がある。この時のショックでそれ以前の記憶を失っており、本来の名前も年齢も不明。その時、唯一の持ち物だった破れた誕生日カードからおよそ自分の年齢は10歳だったと判断している。その後、現在の育ての親に引き取られた際に「アリシア」と名づけられた。この出来事から記憶を失うことがトラウマで、おじさんはそうと知らず、二度もアリシア=イーデルシアの記憶を消去していた。のちにおじさんはそのことを知った際、正直に告白し、二度とアリシアの記憶を消さないと約束して、和解した。エドガーやライガとは幼い頃からの付き合いだが、恋愛関係はいっさいない。周囲からそれを聞かれた際も、エドガーとライガに真剣に謝られながら拒絶された。

クランベル=レイベール

メイベル=レイベールの母親。メイベルは母親といっしょに見た「ポワポワの花」が大切な思い出らしく、おじさんと初めて会った際に、ポワポワの花が見たいとお願いしている。ただクランベル・レイベールはかなり問題のあった人物のようで、メイベルに「一生絶対喰いっぱぐれない」と吹き込み、彼女をニートに仕立てあげた張本人。そのためメイベルは、のちに自力でポワポワの花を見に行ったが、特に感動もしなかったと語っている。メイベルが9歳の頃、若い男性をつくって家を出て行き、その後、氷の一族の秘伝を自著「氷の一族の全て」にまとめて出版している。本で一山稼いだらしく、かなり好き勝手して人生を謳歌しているため、のちにその本の存在に気づいたメイベルから複雑な感情を抱かれている。

魔炎竜 (まえんりゅう)

炎をまとった巨大な竜で、「ブレイズドラゴン」とも呼ばれる伝説の魔物。その身にまとう「魔炎」はあらゆるものを焼き尽くす即死攻撃で、その身を覆う「魔炎の鱗」はあらゆる攻撃を無効化する防御能力を持つ。唯一の天敵は氷の一族が持つ伝説の神剣「凍神剣」で、凍神剣の力によって魔炎を無効化される。しかし、凍神剣でも完全に魔炎竜を打ち倒すことはできず、その力で凍結封印するのが限界だった。凍神剣によって凍らされて封印されてきたが、封印は時間経過で解けるため、そのたびに当代の凍神剣の担い手に打ち倒されてきた。おじさんが凍神剣の存在を無視して戦い、完全に打ち倒される。おじさんによれば、魔炎竜が魔炎で敵を攻撃する際には攻撃が通るようになるという弱点があるらしいが、ふつうは魔炎を食らったら即死であるため、まともな人間には実現不可。そのため、おじさんは魔法によって防御しながら、カウンターをくり出して倒した。倒されたあとは、小さな魔炎状態となり、瓶に魔法で封じられておじさんにトロフィーとして回収される。その後、荒ぶる神の力と戦った際に、おじさんが解放する。おじさんは魔炎竜と神の力を共倒れさせることをもくろむが、魔炎竜が神の力を取り込んで完全に融合し、「神化魔炎竜」へと進化する。

田淵先生 (たぶちせんせい)

恰幅のいい体型をしている中年の男性教師。おじさんの中学2年生時代のクラス担任を務めていた。90年代の教師であるため、体罰としてビンタが日常茶飯事で口答えをする相手を黙らせ、物理的に完全論破する。怒った際の顔や、怒鳴り声も意味不明ながら恐ろしいため、相手は委縮して動けなくなる。おじさんも田淵先生に強い苦手意識を持っているようで、ドラゴンすら倒すおじさんが生物の中で「最強」と認識しているほど。リカルド=マークフェルドを説得する際に、おじさんが変身した。

ミラー=グレイラー

リカルド=マークフェルドの副官を務める女性。ふだんは鎧姿だが、素顔は髪をベリーショートに整えた童顔の若い騎士で、生真面目な性格をしている。幼い頃、ゴブリンの軍団に故郷を滅ぼされた経験があり、その際にリカルドに助けられた。リカルドのことを尊敬しており、リカルドが陰謀を張り巡らせつつも、内心では罪悪感で苦しんでいるのに気づいていた。そのため、おじさんからリカルドを擁護しようとするが、田淵先生に変身したおじさんに物理的に説得される。リカルドに恋慕の念を抱いているが、立場と年齢の差から言い出せずにいる。

グランツ=ル=レヴィンツ

温泉宿「レンゴク」の支配人を務める中年の男性。恰幅がよく、妻と子と共に宿を切り盛りしている。宿名の「レンゴク」はグランバハマルの言葉で、正式名称は「煉獄の湯」。20年前、グランバハマルに転移してきた日本人「ムラヤマショウジロウ」が、神によって与えられた能力「生物由来の素材を自由に操作して物を作る能力」によって建てた。ムラヤマは88歳の大工で、温泉旅行に行く際に事故に遭って異世界に転移した。余命いくばくもない状態だったため、グランツ=ル=レヴィンツ自身の終の住家として温泉宿を作り、静かに余生を過ごした。異世界を「あの世に行く前にお清めをする世界」と考え、宿に「煉獄の湯」と名づけ、当時、ムラヤマの手伝いをしていたグランツ=ル=レヴィンツは温泉宿を託されることとなる。ムラヤマのことは今でも尊敬しており、同じく転移者であるおじさんのことも歓迎した。魔物の群れに襲われ、宿は半壊するが、おじさんとアリシア=イーデルシアたちの活躍で事なきを得る。また、おじさんが半壊した宿の結界を張り直したのが、結果的に露天風呂のリフォームにつながり、宿の目玉商品となる。これによって温泉宿の周囲に町ができ始めるほど大繁盛し、おじさんたちに心より感謝している。

荒ぶる神の力 (あらぶるかみのちから)

「ドルド」「シャレグ」「ジャト」の三つの祠に封印された災い。異世界からの来訪者に縁深い祠で、異世界人はこの三つの祠を訪れることで加護を与えられるが、三つの祠が壊された際、封じられた大いなる災厄が復活すると伝えられている。おじさんはメイベル=レイベールからこの言い伝えを聞き、話がうま過ぎると不信感を抱き、訪れたジャトの祠を即座に破壊。これによって封じられた厄災である荒ぶる神の力は復活する。なお、おじさんは自分が壊したのはジャトの祠だけと思っているが、実はそれまでのおじさんが魔物と戦った際に流れ弾に当たるような形で、ほかの二つの祠もおじさんが壊している。その正体は文字どおり、制御不可能な力の塊そのもの。光り輝く巨大な人型のような姿をしており、周囲に無差別に神聖魔法の力を振りまく。死んだ魔物すら復活させる驚異的な「回復魔法」と、生命体の精神をあやつる「身躯操作魔法」を無差別に周囲に放つ。そのため、荒ぶる神の力が復活しただけで、身躯操作魔法によって周囲のものは同士討ちを始め、回復魔法で死ぬこともできず戦い続けることとなる。また、荒ぶる神の力は実体はなく、攻撃はいっさい通じないため、おじさんは魔炎竜を復活させてぶつけることで、力を大量に消耗させて倒そうとする。しかし魔炎竜は、荒ぶる神の力を取り込んで「神化魔炎竜」へと進化してしまった。

ライガ=ストライガ

駆け出し冒険者の男性で、アリシア=イーデルシアの幼なじみ。ワイルドな風貌をした武闘家で、直情的で負けず嫌いな好戦的な性格をしている。ドルドール=レクスドルにあこがれており、強さを求めて実直に鍛錬を続けている。必殺技は強力なパンチを放つ「修羅徹甲」。ゴブリン軍団との戦いでおじさんと共闘し、おじさんのことを仲間と認めるものの、おじさんによって記憶を消されてしまう。その後、アリシアが勇者に祭り上げられた際に、記憶を失ったことを「我を忘れて戦った」と解釈され、「忘我の狂戦士」という異名を付けられてしまう。

バルセイバ

リュシディオン王国軍で部隊長を務める男性。リカルド=マークフェルドの命令で、王国騎士をクビになったメイベル=レイベールの監視を務めていた。しかし手柄欲しさに、メイベルに合流したおじさんを捕まえようとするものの、ツンデレエルフに無力化されて阻止された。そのことを恨みに思っており、おじさんが投獄されたあと、民衆を扇動しておじさんを処刑しようとする。おじさんがリカルドに報告したため、そのことが発覚。民衆を扇動した罪で、おじさんが破壊した三つの祠をたった一人で再建する任務を言い渡される。

神化魔炎竜 (しんかまえんりゅう)

魔炎竜が荒ぶる神の力を取り込んだ姿。魔炎竜がもともと持っていた「即死攻撃」「攻撃無効化」に加えて神の力が持つ強力な「回復魔法」と「身躯操作魔法」を得て、さらに強大な存在へと成長している。また、散々辛酸をなめさせられた氷の一族を相当恨みに思っており、伝説の神剣「凍神剣」対策に魔炎以外の攻撃もしてきている。圧倒的な力を持つが荒ぶる神の力と違い、実態そのものはあるために倒すことができる。おじさんとツンデレエルフたちの共闘によって再び打ち倒される。おじさんは神化魔炎竜が滅びる際に、「時空の歪み」が発生したのを見て、強大な力を持つ者同士のぶつかり合いこそが日本帰還の手がかりと推測する。そのため、神化魔炎竜の残り火を再び回収し、さらに強い力と融合させようと考えている。

リカルド=マークフェルド

リュシディオン王国軍の総司令官を務める壮年の男性。髪をオールバックにセットした偉丈夫で、軍を統括している。ゴブリンの大軍がドルド村に向かっている情報を握りつぶし、アリシア=イーデルシアたちを捨て駒にしようとした。その後、アリシアたちがゴブリン軍団を倒したことを知った際には、教会司祭のカーン=ゼルネガンと結託し、アリシアを勇者に祭り上げ、その名声を利用して軍事費の増大を狙っていた。アリシアの勇者任命に不自然さを感じたおじさんが、その企みに気づいて襲来。おじさんが変身した田淵先生の体罰を食らって、物理的に説得される。権謀術数を張り巡らしているが、根っこの部分は実直な善人で、部下たちからは慕われている。ゴブリンの情報を握りつぶしたのも、過去にゴブリンの大軍によって村が壊滅した失敗があり、その失敗を繰り返さないために、あえて非情な決断をしたのが真相だった。また、アリシアたちにも罪悪感は感じているが、各地で不穏な動きが見られるために軍事費の増大は必須という事情があり、あえて汚れ役を買って出ている。実は不穏な動きの原因は、各地で暴れ回っては目撃者の記憶を消しているおじさんで、そのことを知ったおじさんは責任を感じて和解し、おじさんと協力関係を構築する。

ドルドール=レクスドル

「巨獣狩人」の異名を持つスゴ腕冒険者の男性。奇妙なマスクをかぶった巨漢で、威圧感のある見た目をしている。戦闘能力は非常に高く、闘気をまとった咆哮を敵に放つ「ギガンティックホーン」という必殺技を持つ。ハーゲン=レグファルケンに雇われ、彼の護衛を務める。仕事人気質で、淡々と敵を叩きのめすが、根はフランクな性格で面倒見もいい。かつてマウアの森で大王ヒグマに襲われていたアリシア=イーデルシアたちを助けた過去があり、彼らが冒険者を目指す大きなきっかけとなった。おじさんを連れ去るため、処刑場に乱入してツンデレエルフにギガンティックホーンを不意打ちで仕掛け、彼女に大ダメージを与える。その後、おじさんを助けに来たアリシアたちと遭遇し、お互いに再会を喜ぶが、護衛としての仕事を遂行するために彼女たちを叩き潰す。おじさんがハーゲンと交渉して休戦し、おじさんがそのことを伝えにいくものの話を信じ切れず恫喝。おじさんは信用させるために精霊魔法を放つが、うっかり制御をミスしてそのせいで大ケガを負ってしまう。死んだ風にしか見えなかったが、治療を受けたおかげで五体満足に復活し、その後はおじさんを疑ったことを謝罪しに行っている。仕事に私情は持ち込まないが、私生活ではかなり気安い人物らしく、エドガー=クロストルガーたちからは変わらず慕われている。

藤宮 千秋 (ふじみや ちあき)

藤宮澄夏の弟。小学4年生だが強面で体格もよく、ヤンキーのような姿をしている。大学生に混じっても違和感のない貫禄ながらも、言動は小学生男子そのもので、YouTubeが大好き。人を楽しませることが大好きで、自分でも動画を撮って配信している。ただし見た目が怖いため、それらの言動を別の意味でカンちがいされることが多く、藤宮千秋自身の意図に反して周囲を怖がらせている。おじさんとは動画配信の話で通じ合うことがあり、仲がいい。たかふみとも幼い頃から仲がよかったが、あまりの急成長っぷりに、再会したあともたかふみはしばらく気づかなかった。

エドガー=クロストルガー

駆け出し冒険者の男性で、アリシア=イーデルシアの幼なじみ。髪を七三分けにした剣士で、三人の駆け出し冒険者の中では比較的落ち着いた性格をしている。クールぶっているが、おじさんと知り合って以降は彼に役目を奪われることが多い。必殺技は強力な斬撃を放つ「テンペストキャリバー」。気に入った剣に名前を付ける癖があり、愛剣が雑に扱われるとかなりヘコむ。アリシアが救世のワンドの力を発揮するようになってからは、剣を二本持ち歩くようになり、アリシアが剣を使う際には一本手渡すようになった。アリシアが勇者に祭り上げられた際に、「山薙」という異名を勝手に与えられた。ライガ=ストライガと同じくドルドール=レクスドルにあこがれている。

ハーゲン=レグファルケン

「レグファルケン商会」の頭取を務める男性。上品な身なりをした糸目の青年で、慇懃無礼な立ち居振る舞いをしている。かなり悪質な商売をしており、ツンデレエルフに「闇の盟約呪符」を用いて高額な金を貸す。「返済が滞納したら自分のものになる」という条件で金を貸したが、真の狙いは契約が有効なあいだはツンデレエルフが自分を害することができないようにすることだった。ツンデレエルフがエルフの王族であることを知っており、借金をかたにエルフを利用し、己の商会の版図を広げるつもりだった。闇の盟約呪符を使ってツンデレエルフを捕まえようとするが、おじさんが闇の剣で闇の盟約呪符を破壊したため、契約は強制的に破棄させられる。またおじさんは借金の代わりに、貴重な天星石の指輪をハーゲン=レグファルケンに渡すが、おじさんがハーゲンの指に指輪をはめた際に、偶発的に呪いが発動。指輪が取れなくなり、大いに困ることとなる。踏んだり蹴ったりな目に遭ったため、おじさんたちとは金輪際かかわらないつもりだったが、指輪が外れないせいであらぬ噂が立つのを恐れ、指輪を外すためにおじさんを連れ去る。おじさんを敵視しているが、責任を感じたおじさんにリカルド=マークフェルドを紹介してもらい、矛を収めた。おじさんによると呪いの正体はのちに判明し、おじさんが直前に闇の精霊の力が宿る「闇の盟約呪符」を、同じく闇の精霊の力が宿る「闇の剣」で破壊したために偶発的に生まれたもので、行き場をなくした呪いが天星石の指輪に宿ったのが真相だった。精霊にとっても意図せず誕生した力であるために干渉することができず、おじさんには呪いを解くことができなかった。

レニア=ル=レヴィンツ

グランツ=ル=レヴィンツの娘。母親から水の魔法をあやつる素質を受け継ぎ、その力で幼いながら旅館を切り盛りしている。幼いながらかなりちゃっかりした性格をしており、口が悪い。健気に父親たちの手伝いをしているが辛辣なところがあり、「娯楽も何もないボロ旅館」と宿を貶めたりもしている。催眠獣にあやつられ、結界の内側に魔物を招き入れて、旅館を半壊状態にされてしまう。しかし助けられたあと、おじさんによって結界を張り直された結果、露天風呂ができると喜ぶなど強かな一面を見せた。おじさんの見た目に怯えており、当初は怖がって近づこうともしなかったが、おじさんに日本旅館の娯楽を教えてもらってなかよくなる。ただし、おじさんが作った娯楽の数々は精霊の怒りを買い、突如巻き起こった竜巻で木っ端みじんに粉砕。唯一、卓球だけは完全な形で残ったため、おじさんと卓球をして遊ぶようになった。

場所

グランバハマル

おじさんが昏睡状態の時に過ごしていた異世界。ドラゴンやエルフ、魔法が実在する中世西洋風のファンタジー空間。住人はいずれも容姿が整っており、迷い込んだばかりのおじさんは、オークの亜種と勘違いされて、殺されかけた。あちこちで凶暴なモンスターが徘徊している、かなり危険な世界。

その他キーワード

万能話手 (わいるどとーかー)

おじさんが異世界で神によって与えられた特殊能力。おじさんが「言葉が通じればわかり合えるのに」と願ったため、神がその願いを叶えて習得した。異世界の人間はおろか、魔物や精霊とも通じ合う特殊能力で、おじさんはこの力を使って精霊魔法を使っている。ただしおじさんがこの力を得たのは、魔物と間違われて現地の住人にリンチされている最中で、さらに神も伝説の神剣「凍神剣」の時代と違い、中国語の録音音声とかなり適当な対応だったため、おじさんは現代日本に帰って来るまで終ぞこの特殊能力に気づくことはなかった。現代日本へ帰還後、凍神剣の伝承からおじさんの転移直後の様子を記憶の精霊で見て、その事実に気づく。その後、たかふみたちによって「万能話手」と命名された。日本に帰ったあと、英語の動画などを見たが発動しなかったため、発動に条件があると判明。おじさんが調べた範囲では「直接対話」と「切実に対象と対話したいという強い意志」ではないかと推測している。おじさんはこの能力を持つおかげで、日本でも精霊と対話し、魔法を使うことができる。対話するにはかなり「必死」な意志が必要なようで、おじさんが精霊と対話できたのは、唯一の身寄りであるたかふみに魔法を使えなければ確実に見捨てられると感じ、死ぬ気で精霊と対話したからだった。

救世のワンド (きゅうせいのわんど)

古代魔道具の杖。高難易度のAランクダンジョン「深闇(しんあん)の迷宮」に保管されていた伝説の杖で、アリシア=イーデルシアたちがおじさんの助けを借りながら、ダンジョンをクリアして手に入れた。アリシアたち冒険者三人組にとって、深闇の迷宮の攻略は幼い頃からの夢で、救世のワンドは攻略の証として大切なものになっている。大きな月煌石がはまった柄の黒い杖だったが、のちにアリシアがかわいくないと柄の部分は色を塗り直している。強力な力を内包した伝説の杖だが、アリシアは長らくその秘めた力に気づくことなく、ただの杖として使っていた。おじさんとアリシアが催眠獣に襲われた際に、おじさんの助言で杖の起動スイッチに気づき、アリシアはその力を発動させる。杖を起動すると、杖の部品がいくつかに分離して方々に飛んでいき、神聖魔法の力を何倍にも強化することができる。また神聖魔法には精神を同期することで、対象の精神を鎮静化する魔法があるが、救世のワンドはこの作用を強化することで対象と自分の精神を同期させ、他人の技や力を使うことができる機能が存在する。アリシアはライガ=ストライガと精神を同期させた際に、彼の必殺技「修羅徹甲」を使っており、格闘戦でも高い戦闘力を発揮するようになった。同期した必殺技はワンドの持つ神の力が上乗せされるため、非常に強力なものとなる。

闇の剣 (やみのつるぎ)

精霊魔法の一種。闇の精霊の力を借りて作る漆黒の剣で、魔法や電波のような「力の流れ」を断つことができる。目に見えない力を断つことができるが、攻撃力そのものはなく、実態のある者は傷つけることができない。また、あくまで力の流れを断つだけで、「冷気」のような環境の変化そのものは断つことはできない。

凍神剣 (とうしんけん)

「氷の一族」に伝わる伝説の剣。氷の一族の祖先は400年前に「ニホンバハマル(日本)」から転移してきた騎士階級(武士)の男性で、戦で死んだ男性は異世界に転移する際に神と邂逅(かいこう)する。そして武士の男性は神に「神を殺せる刃」を望み、強大な力を持つが、邪な心を持つ者には扱えない伝説の神剣「凍神剣」を授かった。その後、武士の男性は紆余曲折の末、村の巫女と結ばれることで愛を知り、凍神剣の力を解放し、魔炎竜を討伐した。この一連の話は異世界ではかなり有名で、伝承として伝わっている。魔炎竜は完全に討伐することができなかったため、武士の子孫である氷の一族は唯一倒せる凍神剣を守るという役目を己の一族に課し、心を許した者に凍神剣を託し、魔炎竜を倒すという宿命を連綿と受け継いでいた。ただ、氷の一族はその役目を半ば特権として濫用しており、働かずに回りの世話を村の人にさせるという自堕落な日々を送っている。現在の担い手は氷の末裔であるメイベル=レイベールで、おじさんに託そうとしたが断られたため、彼女が凍神剣を使っている。凍神剣は担い手の心と同期する神剣で、本体は細身の剣だが、担い手が心を閉ざせば氷に覆われた大剣となる。この状態は「氷縛防護形態(ひょうばくぼうごけいたい)」といい、剣本体を保護する形態だが、この状態でもある程度氷をあやつって戦うことができる。しかしその真価は本体の刃にあり、心を開いて本体を振るえば、その刃に触れた大気がかすっただけで対象を凍らせて封印することができる。また、さらに強化された「神威解放形態」と呼ばれる形態も存在する。

貌の精霊 (かたちのせいれい)

物の貌を司る精霊。貌の精霊の力を借りた呪文として「貌」を変える変身魔法があり、別の姿に変身することができる。ただし、変身魔法は単純に姿を変える呪文ではなく、中身もその存在に準じた者へと変えていく副作用があり、よほどのことがない限り使ってはいけない「禁断の魔法」とされている。女性に変身するだけでも、仕草や精神性が女性に近しいものになり、動物に変身すれば思考が本能で支配され、自我が失われる危険も存在する。おじさんは一度、魔炎竜に変身したが、その際、うっかり魔炎竜の思考パターンに自我を乗っ取られた。その後1か月ほど、元の姿に戻れなくなり、最終的にツンデレエルフに戦闘不能にしてもらったことで力を失い、元の姿に戻ったが、下手をすると一生戻れずそのままだったとおじさんは語っている。

精霊魔法 (せいれいまほう)

精霊の力を借り受けて発動する魔法。精霊は「事象」や「概念」の集合意識そのもので、決まった姿は持たず、通常は姿を見ることも、意思疎通することもできない。おじさんは万能話手の力によって万物と意思疎通できるようになったため、その力で精霊と意思疎通し、その力を借り受けることができる。精霊の力を借り受ける魔法は存在するが、直接対話してその力を借り受けているのはおじさん以外いないようで、おじさんも薄々自分の魔法の使い方がほかの人と違うと思っているが、あまりほかの人と会話することはないために確証は得ていない。概念そのものの力を借り受けるため、その力は非常に汎用性が高く、威力も大きい。ただしあくまで力を借り受けるだけなため、精霊の機嫌次第では断られる可能性もある。また、複雑な命令は精霊にとっても面倒くさいらしく、その際には手土産、代償なども欠かせない。おじさんは現代日本に帰ったあと、クーラー代わりに精霊魔法を使ったが、その際の対価は「牛の首で祭壇を作る」で、それが叶えられなかった場合は「この惑星すべての平野部を10年凍らせる」という非常に重い代償を課されている。精霊魔法の呪文は基本的にその世界の言語が基本になるようで、現代日本帰還後のおじさんは異世界の言葉では魔法を発動させることができず、日本語で発動している。ただし、おじさんは長いあいだ異世界で過ごしたせいか、自分自身に掛ける呪文はグランバハマルの言葉でも発動させることができる。

記憶の精霊 (きおくのせいれい)

記憶を司る精霊。記憶の精霊の力を借りた呪文として記憶消去の呪文「イキュラスキュラオ」があり、おじさんは異世界ではつらいことがあった際に、それを忘れるために記憶消去の呪文を多用していた。おじさんは念のため、消した記憶の内容を書いたメモ帳を持ち歩いている。記憶を取り戻そうとすると、記憶の精霊が鼻血を出して警告する。また、記憶を映像として投影して他者に見せる呪文「イキュラス・エルラン」が存在し、おじさんは日本に帰還後、この呪文を使ってたかふみたちに異世界の映像を見せている。記憶を見る呪文は記憶の精霊がかなり融通を利かせてくれるため、一時停止や早戻り(巻き戻し)、スワイプして視点を変更、検索機能、翻訳機能など、動画配信サービス並みにインターフェイスが充実し、お風呂などへのプライバシーも配慮してくれている。また詳しい原理はおじさんにも不明ながら、おじさん視点の記憶でありながらおじさん自身が気づいていない記憶を補完したりもしている。荒ぶる神の力が復活した際には、おじさんが祠を壊したのに気づいておらず、記憶の精霊がそのことに突っ込みを入れている。

神聖魔法 (しんせいまほう)

神の力を借りて発動する魔法。「精神(こころ)と肉体(からだ)の癒やし」が力の本質で、精神を同期させることで対象の心を静めたり、「回復魔法」で傷を負った者を癒やしたりすることができる。回復魔法は低位のものでも、傷だけではなく、生物由来の素材であれば服を癒やすことが可能で、高位の使い手であれば金属でできたものも修復できる。また精神を同期する魔法は、使い方を変えれば自分の意のままに対象をあやつる「身躯操作魔法」として使うこともできる。使い方によっては非常に危険な魔法だが、直接的な攻撃力はなく、神聖魔法の使い手も純粋な暴力には弱いという弱点がある。

書誌情報

異世界おじさん 12巻 KADOKAWA〈MFC〉

第1巻

(2018-11-21発行、 978-4040653686)

第2巻

(2019-04-22発行、 978-4040657073)

第3巻

(2019-10-21発行、 978-4040640938)

第4巻

(2020-04-23発行、 978-4040645759)

第5巻

(2020-10-23発行、 978-4040659527)

第6巻

(2021-06-23発行、 978-4046804020)

第7巻

(2022-02-21発行、 978-4046811233)

第8巻

(2022-08-20発行、 978-4046816849)

第9巻

(2023-03-22発行、 978-4046823588)

第10巻

(2023-09-22発行、 978-4046828811)

第11巻

(2024-03-23発行、 978-4046834928)

第12巻

(2024-09-21発行、 978-4046839978)

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