あらすじ
第1巻
春休み。日本史のテストで赤点を取ってしまった六合鴇時は、補習で「大江戸幕末巡回展」という、江戸時代の暮らしを再現した次世代型展示場を訪れる。友人らと共に展示を楽しむ鴇時だったが、突如鵺(ぬえ)と夜行に襲われ、そこを朽葉という少女に助けられる。さらに襲われたのがきっかけで、鴇時は自分が元いた世界とは違う、謎の世界に迷い込んでいる事に気づく。直後に出会った同級生の篠ノ女紺の説明により、鴇時は、ここが「妖(あやかし)」と呼ばれる化け物が蔓延る、幕末に似た世界だと知り、当面のあいだ、紺が世話になっている和尚、沙門のもとに身を寄せる事になる。しかしその直後、鴇時と朽葉は道でぶつかったのがきっかけで、ある侍に因縁をつけられてしまう。朽葉を侮辱した侍をどうしても許せない鴇時は、紺と平八と協力し、妖のふりをして侍を脅かす計画を立てる。計画は成功するが、思った以上の騒ぎとなってしまう。鴇時の噂を聞きつけた佐々木只二郎の命令により、鴇時、紺、朽葉の三人は、坂守(さかがみ)神社にいる、ある人物に会いに行く事になるのであった。
第2巻
苦難を乗り越え、六合鴇時達は、どうにか坂守(さかがみ)神社にたどり着いた。しかし、そこで出会った真朱には、鴇時を呼び出した人物はすでに死んでいると告げられ、そのうえ、巫女達には怪しいものだと勘違いされ襲われてしまう。さらに巫女の鶴梅によって無理やり、身体に憑いている犬神を実体化させられた朽葉は倒れ、鶴梅に怒りを燃やす犬神と鶴梅の戦いが始まってしまう。しかし、それを止めたのは、鴇時が発揮した謎の力であった。そして、自分達を呼び出した張本人であり、先ほど死亡したものの、一時的に人形へ心を移す形で生きていた銀朱によって、ようやく誤解を解かれた鴇時達は、合流した佐々木只二郎も交えて、銀朱がなぜ鴇時を呼び出したのか説明を受ける。それは、「天網」という絶対の定めに縛られたこの「あまつき」において、鴇時は唯一未来を変える事ができる「白紙の者」という存在であり、銀朱は「あまつき」に生きる人間のために、鴇時の力を借りたいという事であった。しかし、坂守神社に入った直後に出会った梵天からも協力しろと言われているうえ、そもそも自分が特別な存在であるという実感の湧かない鴇時は悩む。一方、その頃平八は、町で突如空から降って来た謎の男性の露草と出会う。露草から日本橋にある煙管問屋「中村屋」で殺人事件が起きるかもしれないと告げられた平八は、それを止めるため、露草と「中村屋」へ向かうのであった。
第3巻
依然として銀朱と梵天のどちらに協力するか決められないままの六合鴇時であったが、今の自分にできる最大限の事をするため、銀朱にかけられた呪いを解く手伝いをする事を決める。そのためのヒントを梵天から得た鴇時は、朽葉、鶴梅と共に、真朱を連れて日本橋へ向かう事になり、別行動となる篠ノ女紺に、しばしの別れとして自分の眼帯を預ける。そして佐々木只二郎の手下で、「陰陽寮」の一員である黒鳶に案内される事になった鴇時達は、日本橋で阿片の売人をやっていた男が殺されており、その事件に梵天がかかわっているのではと考える。一方その頃平八は、倒れているところを露草の仲間である空五倍子に助けられる。そして目を覚ました平八は、その場に居合わせた空五倍子、梵天、煤竹に、現在露草が危機に陥っており、どうか助けてほしいと頼むのであった。
第4巻
平八が梵天らに助けを求めたのと同時期。六合鴇時と朽葉は、偶然「中村屋」に沙門が訪れている事を知り、現在「中村屋」で妖(あやかし)関係の事件が起きており、そこに梵天もかかわっているのではと考える。二人は早速「中村屋」へ向かい、沙門と合流。「中村屋」で阿片の密売が行われていた事を知る。阿片の隠し場所には「中村屋」敷地内にあった木が利用されており、売人は木を切り落とし、木の内部の傷んで空洞化した部分に阿片を詰め、あくまで木として売る手法で密売を行っていた事が発覚する。さらに「中村屋」を脅かす妖は切られた木を慕っており、その木を悪事に利用した「中村屋」の人間を恨んでいると知った鴇時は、妖を止めようとする。しかし妖の怒りは収まらず、そこへ、妖はすでに夜行の手に落ちており、討つほかないと考える梵天と、妖に味方し、「中村屋」の人間を殺そうと考える露草、そして妖も「中村屋」の人間も両方助けたいと考える平八の三人がやって来る。平八の説得により、考えを改めかける露草であったが、そこに夜行が現れ、不要になった妖を殺そうとする。しかし、そこで鴇時の謎の力が再び発動し、妖をただの動物に変えるという形で命を救うのであった。妖が無力化し、夜行も去った事で事件は解決し、安堵する鴇時であったが、一方その頃、坂守(さかがみ)神社では、恐ろしい事が起きていた。
第5巻
時はさかのぼり、「あまつき」にある坂守(さかがみ)神社の姫巫女として暮らす銀朱は、本当の姫巫女は義妹の真朱の方であり、自分は身代わりであるという事を、従者の鶴梅達にも隠しながら生活していた。ある日、自分を殺しにやって来た少年の妖(あやかし)と出会った銀朱は、自分の正体を明かして彼を逃がすが、それから数日後、今度は鳥居の下で彼がケガをして倒れているところを発見する。銀朱はケガが治るまで、こっそり坂守神社で彼を保護する事にし、やがて彼が「白緑(びゃくろく)」という名である事を知る。完治後も銀朱と白緑の交流は続き、二人は人間と妖という種族の違いを超えて親しくなっていく。しかしある日、銀朱はこの辺りで名の通った大妖怪の名も、また「白緑」である事を知ってしまう。本人に直接たずねるべく銀朱は白緑に会いに行くが、代わりに現れたのは白緑の仲間と思われる、謎の妖であった。彼から銀朱は、なぜ妖は知恵を持ち、高位になるほど人間に似た姿に近づいていくのだろうかと質問をされる。その問いに銀朱は、もしかすると、人間と妖は本当は近い存在なのではと考えるようになる。そのうち、妖の正体が、怒りや憎しみといった、人間の暗い念から生まれたものである事を突き止めてしまう。ショックを受けた銀朱は部屋にこもり、白緑と会うのをやめてしまう。しかし銀朱の知らないところで、今度は真朱が露草ら妖と出会い、交流を深めていくのだった。
第6巻
時はさかのぼる。六合鴇時の暮らす「彼岸」は、少子化が加速し、日本人の人口が急速に減少していた。子供の数が減った事により教育の場は減り、そのため日本の子供は自宅学習や私塾で資格を取るケースと、より高度な教育を受けるために、都市部の学校へ入寮する二つのケースに別れていた。後者となった小学生の鴇時は、ある日、学校を抜け出し、迷子になってしまったところを桑田蘇枋に保護される。それがきっかけで鴇時は、蘇枋や千歳萌黄、半璃寛の三人と親しくなるが、その1年後、突如蘇枋は事故で亡くなってしまうのであった。舞台は「あまつき」に戻る。梵天から再度自分の仲間になれと誘われた鴇時であったが、その発言に矛盾を感じた鴇時は断る。自分の力を今後どうしていくべきか悩む鴇時のもとに、今度は「陰陽寮」の隊員である藍鼠と萱草がやって来る。二人の目的は、朽葉を「陰陽寮」へ連れていく事であった。結果、朽葉は連れ去られ、しかも坂守(さかがみ)神社でも異変が起きていると知った鴇時は、梵天と露草の三人で、坂守神社へ向かう事になる。そこで鴇時はようやく篠ノ女紺と再会するが、紺はなぜか、鴇時の事を忘れてしまっていた。
第7巻
帝天により「あまつき」が再設定され、篠ノ女紺に関する記憶が書き換えられてしまった。紺は六合鴇時の事を忘れ、再設定前に鴇時が紺に渡した眼帯の話をしても、まるで覚えておらず、そのうえ紺と鴇時の共通の知人である沙門や平八の記憶までもが書き換えられており、鴇時は混乱する。さらに鴇時は、紺だけではなく、銀朱に関する記憶も書き換えられている事に気づく。呪いのために坂守(さかがみ)神社からは出られないはずの銀朱が、外へ出て積極的に妖退治を行っていると知った鴇時は、銀朱が本当に自分の知る銀朱なのかを確かめるため、坂守神社へ向かう。そこで銀朱が別人であると確信した鴇時は、銀朱の意見に反対し、投獄されてしまう。しかし、となりの牢屋に閉じ込められていたのは、なんと鶴梅であった。鶴梅もまた、鴇時同様異変に気づいており、銀朱が別人であるのを指摘したところ、気が狂ったと思われ、投獄されてしまったのだという。そこに食事を渡しに来た紺が現れ、眼帯が見つかった事、今までは信じていなかったが、鴇時の言う事が正しいのではと思い始めていると告げる。しかし、喜ぶ鴇時が紺から眼帯を受け取った途端、突如過去の出来事が鴇時の目に映し出されるのであった。
第8巻
眼帯が突如六合鴇時に見せ始めたのは、銀朱と梵天に関する過去の記憶であった。銀朱は妖(あやかし)の正体を知って以来、部屋に引きこもり、「白緑」と名乗る妖との交流も断ってしまっていた。しかしある日、真朱が行方不明になる。それは最近できた友人に会いに行っているからと知った銀朱は、真朱を捜索するうち、それがなんと森で最も強い妖の白緑であり、自分の知る白緑は、彼の名前を名乗って自分と親しくしていた、現在の梵天である事を知る。本物の白緑に、真朱こそが真の姫巫女であるという事を悟られずに、真朱を返してもらおうとする銀朱であったが、話の途中で白緑に異変が起き、真朱を連れてその場を去ってしまう。そこに現れた梵天と共に白緑を追いかける銀朱であったが、二人が追い付いた先では、傷つき倒れた露草と、真朱を露草に誘拐されたと思い込み、露草を攻撃した坂守神社の巫女達が、白緑によって殺された無残な光景が広がっていた。責任を感じた銀朱は白緑を倒すが、自らも致命傷を負う。真朱にどうか銀朱を救ってほしいと頼まれた梵天は、その瞬間帝天から与えられた力と方法により、銀朱を蘇生させ、不老不死の身体にする。しかし、それがきっかけで銀朱は四天となり「天網」を見る力を得るのであった。
第9巻
白緑の身体を得た事により大きな力に目覚めた銀朱は、妖(あやかし)の大量殺戮を行い、やがて妖をあふれさせ、人を殺す帝天そのものにも怒りを感じるようになっていた。銀朱は帝天の統べる天を滅ぼそうとするが失敗し、疲れ果て、とうとう「あまつき」の未来を変えられる唯一の存在である六合鴇時に、あとを任せようとしていたのであった。夢の中ですべての経緯を知り、銀朱の思いを理解した鴇時は目を覚まし、助けにやって来た空五倍子と露草と再会する。しかしそこに突如現れた紅鳶は、鶴梅同様、再設定前の記憶を保持しているにもかかわらず露草と戦闘を始め、別室に避難させられた鴇時と鶴梅は、そこにいた謎の女性、緋褪と出会う。そして緋褪と同行していた藍鼠に、体調を崩した鶴梅を治療してもらうあいだ、鴇時は、緋褪こそが「陰陽寮」を作った人物であり、「陰陽寮」が現在の形になるまで、どのような事があったのかを聞かされるのであった。
第10巻
緋褪から「陰陽寮」ができた頃の話を聞いた六合鴇時は、改めて「陰陽寮」は自分達の敵などではなく、打倒天帝に向けて、共に戦う仲間になれる存在であると確信する。人と妖(あやかし)が協力するのは難しいと考える黒鳶らは反対するが、そこに夜行が突如現れ、鴇時達を襲う。しかも夜行は、白緑やすずめ、鳩羽など、その場にいる者達と生前に親しかった存在の死体を利用して戦う事で、みんなを惑わせ、混乱させる。死者を冒瀆する夜行のやり方に怒りを感じた鴇時達は、夜行を倒すために協力を決意。そこに篠ノ女紺達も合流し、さらに朽葉までもが助太刀に入る。戦闘中にいったん坂守神社の中に隠れた鴇時、紺、朽葉、緋褪の四人は、中で何者かが暴れているのに気づく。四人が現場へ駆けつけると、そこでは夜行の仲間である鵺(ぬえ)が、真朱と、鴇時の知人である千歳萌黄に似た男性を連れ去ろうとしていた。
第11巻
六合鴇時達は、緋褪の力によって鵺(ぬえ)を封じ込め、真朱と、千歳萌黄に似た男性の第14代将軍徳川家茂を助ける事に成功した。しかしその場に、今度は銀朱が現れ、襲い掛かって来る。銀朱は、帝天により「あまつき」が再設定された際、銀朱は白緑達のようにその肉体を利用され、鵺にかぶせる皮として使われていた。しかし真朱はそれを理解できず、銀朱の死を恐れるあまり力を暴走させ、その場に謎の大きな穴をあけてしまう。真朱と銀朱は穴にのまれ、二人を助けようとした鴇時は、鴇時を助けようと追いかけて来た朽葉と共に穴に落ちかける。だが穴の中で朽葉の中にいる犬神が暴走し、鴇時だけが穴に落ちず、助かるのであった。そして鴇時が目を覚ますと、辺りは壊滅状態になっており、穴に落ちた三人のみならず逃げ遅れた人も妖も、坂守(さかがみ)神社ごと穴の中に消えてしまったのだという。鴇時は生還した代わりに喉に大ケガを負い、療養生活を余儀なくされる。そしてようやくケガが治り、言葉を話せるようになってきた頃、しばらく眠りについていた梵天がついに目を覚ます。
第12巻
眠りから目を覚ました梵天は、帝天の怒りを買い、「四天」としての力を奪われ、無力な妖(あやかし)に戻ってしまっていた。そんな梵天に六合鴇時はこれまでの経緯を話し、さらに今、帝天を倒すために人と妖が協力関係になりつつあるので、梵天も仲間に加わってほしいと頼む。梵天は承諾したのち、露草、空五倍子、煤竹に自身の過去と銀朱との関係についてを話し、結束はより深まる。しかし、順調に仲間が増えつつある最中、鴇時の存在を怪しんだ新門辰五郎がやって来る。なんでも、日本を裏で導いてきた坂守(さかがみ)神社が崩壊した事で、江戸幕府と朝廷の関係も崩壊してしまい、倒幕運動が高まっているのだという。辰五郎はその責任が鴇時と「陰陽寮」にあるのではと考え、鴇時がどんな人間なのか見に来たらしいが、緋褪によりひとまずその場は収まる。しかし同時期に、江戸中で不審死が相次ぐ。鴇時達は、真朱の開けた大穴からあふれた妖の仕業であると即座に理解するが、妖を見る事のできない一般人は混乱し、強い不安を感じていた。事態を収束させるため、鴇時は夜行を倒し、真朱を説得する事を決意。自らの能力をコントロールするため、緋褪のもとで修業を始める。しかしそれが形になるよりも先に、今度は江戸城が謎の黒い闇に飲まれてしまうのであった。
第13巻
江戸城に起きた異変を調査するため、六合鴇時は仲間と共に突入する事になった。その先には羅城門があり、内部には、なんとかつて緋褪に自らの肉を食べられ、緋褪が不老不死となるきっかけとなった人魚が待ち構えていた。人魚は鴇時達が普段隠している心の弱い部分を暴き、鴇時は苦しめられる。しかし篠ノ女紺によって助けられ、さらに、鴇時は、自分を苦しめた張本人であるクラゲの妖(あやかし)も仲間にする事に成功する。そして一行は全員揃って羅城門を突破するが、その直後、突如梵天が鳥居の向こうに何かを発見し、一人で追いかけて行ってしまう。慌てて鴇時、紺、空五倍子の三人は追いかけるが、その先には「彼岸」における指紋認証システムなどといった、「あまつき」では考えられない最新鋭の設備の空間が広がっていた。そこでは朽葉や銀朱など、鴇時達と親しい人物に化けた敵が襲い掛かり、どうにか敵の本体を倒した鴇時であったが、その瞬間大きな鏡が粉々に砕け、大ケガをしそうになる。それをかばったのは空五倍子であったが、そのせいで仮面が外れ、初めて素顔を見せた空五倍子は、なぜか知人の半璃寛と同じ顔をしていた。
第14巻
空五倍子の仮面が外れた事で、空五倍子は黒い鳥と半璃寛の二つに分離してしまった。梵天によると、空五倍子はもともと妖(あやかし)のかけらや人の死骸といったさまざまなものを混ぜて作った存在であり、その中には璃寛も混じっていたが、仮面が取れたのをきっかけに分離したのではないかという事であった。璃寛には、黒い鳥と同化していた頃、つまり空五倍子であった頃はもちろん、璃寛としての記憶も残っており、璃寛にとって「あまつき」は、明晰夢のように感じられるのだという。混乱しつつも鳥居を抜けた六合鴇時達は、紅鳶と再会する。鴇時達と紅鳶は別の場所を移動していたが、瘴気で二つの道が歪んだ結果、両者がつながり、鴇時達は今、坂守(さかがみ)神社の付近にいるのだと発覚する。そして紅鳶といっしょだった露草が危機に陥った事を知った鴇時達は、かつて助けた妖の助力もあり、敵を倒す。その際に一度死亡した露草も、鴇時が先ほど仲間にしたクラゲの妖を器にする事で再生に成功する。一方その頃、萱草は、一人謎の村に迷い込んでしまっていた。
第15巻
一人どこかへ行ってしまった萱草を追い、六合鴇時達は謎の村に入る事になった。鴇時達は旅人のふりをして村に忍び込むが、なんと村では今晩、犬神祓いの儀式が行われるのだという。そこで鴇時は、この村がかつて朽葉と萱草が暮らした村を模した過去の世界ではないかと考えるが、犬神祓いのグループに沙門はおらず、疑問を感じる。そして儀式が始まり、鴇時はたまらずに幼い朽葉を助けに行くが、逆に村人達に捕らえられてしまう。しかし、鴇時の見張り番となった「宣吉(せんきち)」という幼い少年に萱草の面影を感じた鴇時は、宣吉を説得し、共に朽葉を助けに行く事にする。だが、それは罠で、朽葉の正体はただの人形であった。それがきっかけで宣吉は自分の正体が萱草である事を思い出す。萱草は、そもそもこの村は過去の再現ではなく、自分が敵に惑わされて作り出した、自身にとって都合のいい、朽葉の「白児(しらちご)」にならずに生きていく幻想の世界であった事を告白する。そして自分の過去と向き合った萱草は、自らの手で幻想の世界を見せていた敵を倒す。それによって鴇時の仲間達はなんとか合流するが、そこに篠ノ女紺の姿はなかった。紺を案じた鴇時は、梵天と共に紺を探しに行く事にする。
第16巻
六合鴇時と梵天が篠ノ女紺を探していたまさにその時。紺は、突如現れたもう一人の自分に驚愕していた。紺はもう一人の自分を、敵が見せている幻と判断して逃げるが、その際もう一人の自分から記憶を返され、自分の正体が、本当は紺とは無関係の僧、胡僊である事を思い出してしまう。そこに現れた鴇時によってなんとか胡僊は逃げ切り、全員揃った鴇時達は、次は上野を目指す事になる。その途中で鴇時達は露草、半璃寛、空五倍子と再会する。しかし、先ほどの戦いで空五倍子と分離し、記憶を取り戻した璃寛と出会った事で、今度は藍鼠と煤竹が「彼岸」での記憶を取り戻す。なんと藍鼠の正体は青鈍であり、煤竹の正体は十条若桜だったのである。二人は璃寛同様「千歳コーポレーション」を調査していたはずだったが、気づいたら「あまつき」におり、その後は本来の自分の事を忘れて、あまつきの人間として生きていたのだという。それにより「あまつき」はこの中の誰かが見ている夢などではなく、限りなく現実に近い何かであると推測されたが、決定的な手掛かりはなく、何かを知っているはずの梵天は、今はまだ話せないと言うのみであった。数々の謎を残したまま寛永寺に到着した一行は、妖(あやかし)に襲われるがそれを倒し、そこに閉じ込められていた朽葉を救出する。しかし、今度はそこに、穴に飲まれたはずの銀朱と真朱が現れるのだった。
第17巻
銀朱と真朱の待つ弁天堂へは、六合鴇時、胡僊、半璃寛、梵天、露草、空五倍子の六名が向かう事になった。その先では鶴梅ら坂守(さかがみ)神社の巫女達を模した人形が立ちふさがり、さらに鴇時達自身の偽物までもが現れる。しかし胡僊はその術を破り、同時に鴇時に、篠ノ女紺は実はもう一人おり、詳しい経緯は不明だが、自分は偽物である事を告白する。しかし鴇時はそれを受け入れ、たとえ胡僊が紺とは無関係の別人であっても自分の仲間だと語り、二人の絆はより深まる。そして弁天堂にたどり着いた鴇時達は、以前ここに来た事があるらしい璃寛の案内で鴇時と璃寛だけ、先に侵入する事になる。そこで璃寛は、かつて「彼岸」でここにそっくりな場所へ来た事があり、そこで漆原朱緑の恐ろしい研究を知り、実験台にされていた朱緑の実の娘、璃々を助けた事、その後、仕事で「千歳コーポレーション」の調査をしていた際、朱緑が「大江戸幕末巡回展」の関係者であり、つまり「あまつき」を作ったのも朱緑であったと知った事を語る。さらに璃寛は、真朱の正体は璃々であると考えており、鴇時はそこから、朱緑こそが帝天であるのではと考えてショックを受ける。そこに銀朱の偽物が立ちふさがり、二人は逃げながら真朱を探すが、ようやく見つけた真朱は、なぜか璃寛に襲い掛かるのであった。
第18巻
あくまでも 六合鴇時と 半璃寛を敵とみなす真朱を見て、鴇時は、真朱と璃々は、以前の空五倍子と璃寛のように一体化しているのではなく別々に存在し、璃々はどこかに隠されているのではと考える。二人は璃々を探すため、弁天堂まで鴇時の術で移動しようとするが失敗。「彼岸」にあるはずの新橋病院にたどり着いてしまう。しかし病院の外は「あまつき」の江戸城が広がっており、二人は混乱する。そこで二人は、自分達が仲間のもとへ戻るのではなく、鴇時の召喚術で仲間をこちらに呼び寄せる形で合流し、いっしょに行動していた全員と、駆け付けた紅鳶と黒鳶が新橋病院に集結する。だが、そこに夜行とぬらりひょんが現れ、ぬらりひょんは自分が使役する3体の妖(あやかし)を倒せば、鴇時達が探している人間の一人である、徳川家茂に合わせてやると言い出す。鴇時が返事をする前に、ぬらりひょんは鴇時達を三つのグループに強制的に分け、それぞれのグループと因縁の深い妖と戦わせるのであった。
第19巻
露草、朽葉、萱草のグループは、萱草が戦闘中に感電し、大ダメージを負ってしまう。一方その頃、緋褪、藍鼠、煤竹、黒鳶もまた、黒鳶が大ケガを負って危機に陥っていた。しかし、自分の正体が「彼岸」に生きる十条若桜であると思い出している煤竹は、現代の知識を活かして敵を撃破。藍鼠は新橋病院の設備を使って、黒鳶の緊急治療に入る。その直後に露草達も勝利するが、萱草は瀕死の状態にあり、治療できる藍鼠を、朽葉が急いで探す事になる。そして最後のグループである六合鴇時、 胡僊 、半璃寛、梵天の四人は、なぜか妖(あやかし)のもとではなく、新橋病院の奥深くに移動させられていた。その場を知っている様子の梵天は三人を案内し、衝撃の事実を語りだす。それは、「あまつき」の正体が、新橋病院と千歳コーポレーションが作り出した脳内ホスピスであり、最新のターミナルケアシステムであるという事であった。
第20巻
「あまつき」とは、新橋病院と千歳コーポレーションが作り出した脳内ホスピスであり、最新のターミナルケアシステムの事であった。梵天は、かつて「あまつき」で暮らしていた頃、銀朱と白緑の死によりショックで目覚めて「彼岸」に戻った際、「あまつき」が仮想空間である事を知り、また漆原朱緑により管理者権限の一部を与えられて「四天」となった。その権限によって、銀朱の心を白緑の身体に移植する形で不老不死にし、その後は「あまつき」の全容を知るものとして「あまつき」の崩壊を防いできたのである。だが、すでに限界が近づいており、現状を打破するために、六合鴇時に自分の姉である千歳萌黄を見つけて助けてほしいと言い残して、突如現れた帝天にさらわれてしまう。鴇時は衝撃を受けつつも、同行している胡僊がいつの間にか篠ノ女紺に入れ替わっている事を見抜き、紺に、どうしたら帝天に会えるのか尋ねる。一方その頃、鴇時を探していた露草は、病院内で眠っていた、上半身が人間で下半身が蛇の女性と出会う。彼女の正体は、なんと璃々であった。璃々は真朱としての記憶も保持しており、露草が「あまつき」の再設定により忘れてしまっている、露草と真朱が友人であった頃の出来事を語る。すべてを知った露草は激怒するが、真朱の思いを察し、許すのであった。一方その頃、紺は「あまつき」の再設定前、自らが不正ログインユーザーである事がばれぬよう一度ログアウトし、その際に胡僊を利用して自らのダミーにした事、今は胡僊は安全な場所に眠らせた事、ぬらりひょんと協力して帝天の居場所を調査していた事、そして、半璃寛らに千歳コーポレーションの調査を依頼したのは自分である事を明かすのであった。
第21巻
時はさかのぼる。小学生の篠ノ女紺は「ギフテッド」と呼ばれる、日本政府から保護された天才児として、部屋で勉強に没頭する日々を送っていた。やがて実家を離れ、国が用意した寮で暮らす事になった紺は、刺激を求めて街を出歩くようになり、マスターの経営する喫茶店に入り浸るようになる。マスターと親しくなった紺は、店でアルバイトをしたり、釣りや料理を習ったりと、勉強以外の事にも熱中するようになっていく。そんなある日、紺のもとに「LACQUERWARE(うるしざいく)」と名乗る人物から、友達になってほしいというメールが届く。「LACQUERWARE」は紺の優秀さに惹かれており、自分の研究を手伝ってほしいのだという。不審に思いつつも紺は「LACQUERWARE」との交流を続け、やがて、共に人間の脳を人工的に作り出す研究を始める。研究は順調に進んでいくが、ある日、紺はマスターが目に不調をきたしており、失明の危機にある事を知ってしまう。マスターを助けたい紺は、手術するためのまとまったお金を手に入れるため、「LACQUERWARE」の正式な研究パートナーになりたいと相談する。しかし「LACQUERWARE」が提示したのは、紺が個人的に所持する、友人にも等しい存在であるロボットを、自分のもとに預けるという条件であった。
単行本の装丁
本作『あまつき』のコミックスのカバーを外した本体表紙には、毎巻おまけ漫画が掲載されている。内容は作者の高山しのぶとその家族やスタッフが織り成す制作中のこぼれ話で、作品の舞台裏を知る事ができる。また、コミックス第4、5、8、10、20、21、22、23巻には限定版、あるいは特装版が存在し、特典が多数附属する。また、コミックスのカバーもすべて通常版とは異なる絵柄になっている。
関連商品
本作『あまつき』は、2種類のイラスト集が発行されている。1冊目は2008年4月に発行された『あまつき絵巻 金華糖 小さめにしてみました。』で、2冊目は2014年7月に発行された『あまつき絵巻 福梅 今度も小さめに。』。その書名通り、本のサイズは縦22センチほどで、どちらもイラスト集としては小さめになっている。
メディアミックス
TVアニメ
2008年4月から6月にかけて、古橋一浩監督によるテレビアニメ版が放送された。原作・脚本監修として、原作者である高山しのぶも参加し、シリーズ構成と脚本を古橋一浩と鈴木知恵子、キャラクターデザインを田頭しのぶが手掛けた。六合鴇時役を福山潤、篠ノ女紺役を遊佐浩二、梵天役を諏訪部順一が演じた。
WEBラジオ
2008年4月から9月にかけて、アニメイトTVにてwebラジオ「あまつき やみつき ラジオ」が配信された。パーソナリティは、篠ノ女紺役の遊佐浩二と、梵天役の諏訪部順一が務めた。
登場人物・キャラクター
六合 鴇時 (りくごう ときどき)
突如謎の世界「あまつき」に閉じ込められた高校1年生の男子。あだ名は「鴇」あるいは「トキ」で、「あまつき」においては「白紙の者」という特別な存在である事からそう呼ばれ、同じ意味で「白沢」と呼ばれる事もある。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした茶色のストレートショートカットの髪型で、中性的なかわいらしい雰囲気の持ち主。「あまつき」に閉じ込められる直前、鵺(ぬえ)に襲われた事できた傷のせいで左目の視力を失っており、右目が茶色、左目が赤色のオッドアイ。 しかし、左目が見えないにもかかわらず、転んだりぶつかったりする事もなく問題なく歩けたり、死角であるはずの左側から来たものも避けられるなど、目の状態に関しては謎が多い。やがて、それは「あまつき」の正体が仮想世界であり、鴇時は自分の目を通じて物を見ていたのではなく、もっと別の位置に自分の視点があったため、目の状態に関係なく物が見えたという事が発覚する。 穏やかでのんびりした性格で、流されやすく自主性には欠けるが、非常に心優しく、他人に気を遣う。また、適応力が高く、「あまつき」での生活にもあっという間に慣れた。「彼岸」で暮らしていた頃から、何事にも現実感がなく、すべてを他人事のように感じ、何事にも夢中になれずに生活していた。 しかし「あまつき」に閉じ込められて自分が「白紙の者」と呼ばれ、すべての存在が定められた運命を持つ「あまつき」において、唯一運命を変える事ができる特別な存在である事を知らされてからは、自分にできる事を自主的に考え、行動するようになっていく。 朽葉の事が大好き。人のいいところを見つけるのが得意で、女性や子供に非常にもてる。好きな食べ物はオムライス。
篠ノ女 紺 (しののめ こん)
六合鴇時のクラスメイトで、同じ高校に通う1年生の男子。伸びた黒髪を、前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、髷を結っている。「彼岸」では髪型が違い、髪の毛が茶色く、刈り上げヘアにしている。もう一人の篠ノ女紺、つまり紺が一時期ダミーとして利用し、紺と同じ容姿となってしまった胡僊と区別して呼ばれる際は、苗字の「篠ノ女」だけで呼ばれる。 ハンドルネームは「夜明け」。高校では喧嘩っ早く、停学になった事もある不良として知られていたが、実際は非常に頭がよく、落ち着いた頼りがいのある性格をしている。また「ギフテッド」と呼ばれる、日本政府から保護された天才でもある。そのため、小学生の頃には特別支援教育プログラムに沿って、ホームスクール形式で大学生のカリキュラムを修学していた。 当時は両親と共に田舎暮らしをしていたが、やがて部屋にこもって勉強ばかりしている紺と、それを快く思わない両親とのあいだに溝が生まれ、都会にある、国が用意した寮に引っ越す事になる。その頃に親しくなった喫茶店のマスターと、やがて実の親子のように親しくなっていく。ある日、マスターが失明の危機にある事を知り、手術費を捻出するために、当時「LACQUERWARE(うるしざいく)」のハンドルネームを使って紺に近づいていた漆原朱緑の研究パートナーになってしまう。 結果、朱緑と共に「あまつき」の創始者の一人となるが、その際に千歳コーポレーションに売り渡した技術が悪用されている事に、強い怒りを感じている。 そのため、半璃寛ら産業スパイに千歳コーポレーションについて調べさせながら、自らも「あまつき」に不正ログインして内部の調査を続けていた。しかし鴇時には、2年前、鴇時同様なんらかの事故で「あまつき」に閉じ込められてしまい、沙門の世話になりながら暮らしていると説明していたため、鴇時は長らくその事実を知らなかった。 また璃寛も、紺と直接やり取りをしていなかったために知らなかった。「あまつき」にログイン中は、緊急時強制ログアウトができるように、右手だけは神経を「あまつき」へリンクさせていない。そのため「あまつき」においては、右手は動かせるが感覚がなく、鴇時達にはそれをごまかすため、鵺(ぬえ)にケガをさせられたためだと噓をついていた。
朽葉 (くちは)
六合鴇時と篠ノ女紺の仲間で「あまつき」で暮らす犬神憑きの少女剣士。前髪を目の上で切り、胸まで伸ばした黒のストレートロングヘアを、一部は前に向かって垂らし、残りは頭頂部でポニーテールにしている。その後、鴇時と共に大穴に落ちかけた際、鴇時を助けるために髪を切り落としてざんばら髪になってしまうが、救出されてからは整え、顎の高さまで伸ばしたボブヘアになる。 男性のような硬い口調で話し、気が強く男勝りな性格。一方で、一度心を開いた相手に対しては、どんなに隠そうとしても本心が見え見えになってしまう、かわいらしい一面もある。食べる事が大好きで、非常に大食い。そのため、お腹を鳴らしている事が多い。「朽葉」というのは忌み名で、朽葉が犬神一族において最後の人間になるように、「花も実をつける事なく朽ちていく」という意味で名付けられた。 両親の顔は見た事がなく、祖父に育てられるが、10歳の頃に祖父も亡くなった。その後は一人で暮らしていたが、その後、村で犬神祓いの儀式が行われた際に祓い師として村を訪れ、自分を引き取った沙門の事を非常に慕っている。過酷な境遇で育ったため、鴇時と出会った当初は、鴇時の事を恵まれた平和ボケした男性と捉え、快く思っていなかった。 しかし、いっしょに行動するうちに鴇時の人柄に触れ、親しくなっていく。鴇時と出会ってからも、自分に犬神が憑いているというのは、迷信や妄想だと捉えていた。しかし、鶴梅によって無理やり犬神を実体化させられて以降、それが真実であったと知り、自分の存在について思い悩むようになる。 萱草とは、犬神と、犬神の召使いであり手足となる「白児(しらちご)」の関係で、祖父の死後、萱草が朽葉を迎えに来た事がある。しかし萱草が一度朽葉のもとを離れ、二人揃って暮らせる安全な場所を探しているあいだに沙門が現れてしまったため、朽葉は沙門のもとで、萱草は「陰陽寮」で、それぞれ長い間暮らす事になってしまった。 だが、萱草は事態を把握しており、沙門が保護者として適していると判断したため、藍鼠と共に強硬手段に出るまでは、無理に迎えに行く事はしていなかった。そのため、萱草と過ごした時間は極めて短く、自分の身体に本当に犬神が憑いていると知らなかった頃は、萱草を遠ざけていた。 しかし、次第に兄妹のような関係になっていく。
梵天 (ぼんてん)
「四天(してん)」と呼ばれる特別な存在で、妖(あやかし)を統べる天狗の妖。「あまつき」において現在四人しか確認されていない。露草とは、共に白緑のもとで育ったため、兄弟のような関係。そのため露草の事は弟... 関連ページ:梵天
銀朱 (ぎんしゅ)
「あまつき」にある坂守(さかがみ)神社の主。沙門や佐々木只二郎の上役を務める男性。その正体は身代わりで、真の坂守神社の主であり姫巫女の真朱を守るために、姫巫女のふりをして暮らしている人間。そのため巫女... 関連ページ:銀朱
真朱 (しんしゅ)
「あまつき」にある坂守(さかがみ)神社の真の主であり姫巫女。表向きは銀朱の妹として暮らしている。六合鴇時と半璃寛には「彼岸」の人間である璃々と同一人物と推測されていた。しかし、実際は解離性同一障害で、人格が「真朱」と「璃々」の二つに別れてしまっており、幼児退行している人格が真朱、精神的に本来の年齢通りに成長しているのが璃々にあたる。 前髪を目が隠れないようにM字に切り、髪の毛の一部を四つの輪にして高い位置でまとめ、残りの髪は三つ編みにして前に垂らしている。幼い少女の姿をしているが、非常に長く生きており、実際の年齢は不明。永遠の幼子として肉体も精神も成長せず、記憶に関しても覚えては忘れ、覚えては忘れを繰り返す事で幼く無知なままを維持している。 そのため明るく無邪気で、好奇心旺盛な性格。神の子として、未来を予言する力を持っている。その力は非常に強大で、かつては帝天以外で唯一「天網」を捻じ曲げ、「あまつき」の未来を変える事ができる存在だった。しかし無意識下で力を発揮してしまうため、必要以上の影響を「あまつき」に与えられないように、天によって管理されていた。 だが、いつしか銀朱に強い執着と依存心を抱くようになり、銀朱の死亡がきっかけで力を暴走させてしまう。その結果「あまつき」のすべてを否定して破壊しようとし、危険と判断した帝天によって、自身の特権と力のすべてを奪われた。また、その際に梵天が朱緑から管理者権限の一部を与えられたため、梵天は銀朱を蘇生させる事ができた。 銀朱については、白緑と一つになった結果、毎日死んでしまうが、そのたびに生き返る形で不老不死になっているという事を知らず、白緑に毎日死んでしまう呪いをかけられたのだと考えている。そのため強い責任を感じ、どうにか呪いを解きたいと考えており、そのヒントを梵天から得るため、日本橋の事件の調査に同行する。 その後「あまつき」の再設定が行われてからは、銀朱の中身が鵺(ぬえ)に変わっていると知らずに慕い続け、偽の銀朱の命の危機に再び力を暴走させ、すべてを飲み込む黒い穴をあけてしまう。
鶴梅 (つるうめ)
「あまつき」にある坂守(さかがみ)神社で巫女を務める若い女性。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸まで伸ばしたロングヘアを編んでお下げにしている。まろ眉が特徴。男性のような口調で話し、生真面目で怒りっぽい性格。武家の生まれで、本来であれば自分が人に仕えるのではなく、人に仕えられる方の立場の名家のお嬢様でもある。ある日、坂守神社に訪れた六合鴇時達が、鴇時が天狗によって目を穢されており、また、朽葉が犬神憑きであった事から、鴇時達が妖(あやかし)であると考えて襲いかかる。 しかし銀朱の説明によって誤解を解いてからは、鴇時達に協力するようになる。銀朱の事を慕っており、その反面、真朱にはつらく当たる。
白緑 (びゃくろく)
妖(あやかし)の中でも特に強い妖に与えられる尊称「天座(あまざ)」の中でもトップの「天座の主」で故人。何百年も生き続けている蛇の化身で、梵天と露草を生み出した育ての親でもあった。「白緑」というのは「天座の主」に与えられる名であったため、自分の死後は、当時「鶸(ひわ)」と呼んでいた梵天に譲るつもりであった。 「鶸」という名前を嫌がっていた梵天が、銀朱に「鶸」ではなく「白緑」と名乗ったのはこのため。前髪を左寄りの位置で斜めに分けて長く伸ばし、お尻まで伸ばしたロングウェーブヘアをしている。右目は前髪で隠れていて見えず、眉が四つに分かれており、下まつげが長い。露草の大本である大樹を宿り木にしており、「天網」を見る力を持っていた。 妖の正体についても知っており、銀朱にもヒントを与えて、間接的に知らせようとしていた。銀朱が梵天とのかかわりを断ち、真朱の事も避けるようになっていた頃、自分達の住む森にやって来た真朱と出会い、露草も交えて三人で親しくなる。しかしある日、真朱が妖に誘拐されたと誤解した坂守(さかがみ)神社の巫女達と戦いになり、銀朱と相打ちになる形で死亡した。 しかし、その際にショックで目を覚まし「彼岸」に戻り、漆原朱緑によって管理者権限の一部を与えられた梵天の手によって、白緑の身体に銀朱の心を移すという形で、身体だけが再生し、銀朱を不老不死にする。
露草 (つゆくさ)
妖(あやかし)の中でも特に強い妖に与えられる尊称「天座(あまざ)」の一人で、梵天、空五倍子、煤竹の仲間の樹妖(じゅよう)。梵天とは、共に白緑のもとで育ったため、兄弟のような関係。そのため露草からは弟扱いされている。白緑が生きていた頃は、前髪を目の上で切って髪をお尻に届くほど長く伸ばし、三つ編みにしてまとめていた。 死後に三つ編みを切り落とし、現在の髪型になった。ぶっきらぼうでやや直情的だが情に厚く、心優しい性格。ある日、妖からのSOSを聞きつけ江戸に向かったところを平八と出会い、共に「中村屋」へ向かう事になる。そして平八と親しくなり、助けようとしていた妖が最終的に六合鴇時によって救われた事で、平八と鴇時に恩を感じるようになる。 そのため基本的には人間嫌いであったが、鴇時の仲間として打倒帝天を目指す事になる。白緑が生きていた頃は、真朱と白緑の三人でなかよくしていた事があった。しかし「あまつき」の再設定により、その頃の記憶を失ってしまっており、新橋病院で真朱の記憶を持つ璃々によって、ついに記憶を取り戻した。 兄がいる者同士、紅鳶とは気が合う。
空五倍子 (うつぶし)
妖(あやかし)の中でも特に強い妖に与えられる尊称「天座(あまざ)」の一人で、梵天、露草、煤竹の仲間の妖鳥。大柄で顔に仮面をつけており、武士のような口調で話す。梵天が妖のカスや人間の死骸を寄せ集め、妖鳥の骨に詰め込んで作ったもので、梵天は空五倍子にとっては親のような存在。しかし梵天の世話係でもあるため、梵天を「梵」と呼び、友人のように接している。 落ち着いた性格だが、周囲に振り回されやすい苦労性。実は作られる際、その素材として、「あまつき」に送られた半璃寛が使われていた。そのため璃寛は自分が「彼岸」から来た人間であるという自覚がないまま空五倍子の一部として暮らしていた。しかし、戦いの最中に仮面が外れたのをきっかけに、空五倍子の中にある璃寛の部分だけが分離した。 以後、空五倍子の身体は璃寛のものとなり、空五倍子の残りの精神の部分は、黒い鳥として別に誕生するという形で二つに別れてしまう。
佐々木 只二郎 (ささき ただじろう)
「あまつき」における会津藩藩士の壮年の男性。「陰陽寮」という幕府直属の護衛隊異能衆を統べており、その一員である黒鳶達からは「佐々木様」と呼ばれている。前髪を上げて額を全開にし、髷を結っている。幕府における妖怪退治の要として活動しており、江戸の町で発生する「妖(あやかし)」がらみの事件を調査、退治をしている。 ある日、六合鴇時が篠ノ女紺と平八と起こした騒動の件で沙門のもとを訪れ、鴇時に坂守神社の銀朱に会うよう命ずる。幕府を守るという使命のためであれば手段を選ばないところがあり、妖を見る力も、もともと持っていなかったところを、緋褪の力を借りて得た。その際、妖は見えるようになったが、視力を失ってしまっている。
緋褪 (ひざめ)
人間と妖(あやかし)のハーフの年老いた女性。「陰陽寮」の創始者の一人。「八尾比丘尼(やおびくに)」という、人魚の肉を食べた事により不老不死の身体を得ている存在。陰陽寮の隊員達からは「緋ィ様」「ばーさん」と呼ばれている。前髪を眉上ほどの位置で短く切り、腰まで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。また、身体中に傷痕があり、包帯で隠している。 穏やかで落ち着いた性格で、古めかしい口調で話す。包容力にあふれる事から周囲からの信頼も厚く、特に陰陽寮の隊員達にとっては母親のようでも祖母のようでもあり、精神的支えとなっている。また、藍鼠には特に慕われており、いずれ藍鼠の手によって全身の傷を綺麗にすると約束されている。ある時佐々木只二郎のもとに現れて陰陽寮を共に作る相談をし、創始者となる。 また、その際自らの血の力を貸して、只二郎に妖(あやかし)が見える目を与えた。陰陽寮ができた当初は頭全体にも包帯を巻いており、その下は傷だらけで、とても露出できる状態ではなかった。しかし、藍鼠の熱心な治療により、現在頭部は、目に包帯を巻くだけにとどまるほど回復した。
黒鳶 (くろとび)
「陰陽寮」の一員で、佐々木只二郎の側近を務める若い男性。紅鳶の兄でもあり、紅鳶からは「兄上」あるいは「兄様」と呼ばれている。また日本橋にある店「萬屋」の若旦那も務めている。前髪を目の上で切って髷を結い、妹同様、極端に黒目がちな目をしている。一見人がよさそうな雰囲気だが、実は気に入った人間に意地悪をして困らせるのが好きないじめっ子。 だが、紅鳶の事は非常に大切に思っており、紅鳶を守りたいと考えている。只二郎の命令で、日本橋へ向かう六合鴇時達を案内する事になり、それがきっかけで鴇時に協力するようになっていく。もともとは普通の人間として、萬屋で暮らしていたが、実は妖(あやかし)を見る力があった。ある日、萬屋の蔵の中にいた妖と出会い、それを面白がって紅鳶にも妖を紹介した事で、紅鳶は妖の声を聞く力がある事を知る。 しかし、そのためにある日、紅鳶が妖にそそのかされ、「鬼憑きの面」をつけてしまうという事件が起きてしまう。駆けつけた陰陽寮の隊員達によって「鬼憑きの面」は外れたものの、その後も紅鳶は「鬼憑きの面」に魂を捧げ続けなくてはならなくなってしまい、魂を得るために陰陽寮に入隊する事になる。 そして、事態に責任を感じた黒鳶もまた、入隊を決意した。紅鳶が「鬼憑きの面」をつけてしまった経緯から、陰陽寮の隊員達の中でも、特に妖に対して敵対心が強い。しかし鴇時が打倒帝天のために、人間と妖の共闘を望むようになってからは、露草達とも協力するようになっていく。
紅鳶 (べにとび)
「陰陽寮」の一員で、黒鳶の妹。兄同様、極端に黒目がちな目をしている。日本髪を結い、たれ目が特徴。黒鳶からは「紅」あるいは「紅ちゃん」と呼ばれている。物静かで落ち着いた性格で、黒鳶からの信頼も厚い。しかし、戦闘中は「鬼憑きの面」と呼ばれるお面をかぶる事で別人のように変化し、強い戦闘力を得る代わりに狂化し、黒鳶以外には従わなくなる。 六合鴇時達が日本橋を訪れ、黒鳶に案内される事になったのがきっかけで鴇時達と知り合った。鴇時達が日本橋で発生した事件を調査するあいだ、黒鳶の店である萬屋で真朱を預かる事になる。もともとは黒鳶と同様に、普通の人間として萬屋で暮らしていたが、ある日、黒鳶の紹介で萬屋の蔵の中にいた妖(あやかし)と出会い、会話する力を得る。 その後、妖と親しくなり、いっしょにいた際に、蔵に強盗が侵入し、身を守るため、妖の勧めで「鬼憑きの面」をかぶってしまう。結果、強盗は退治できたものの自分でも力をコントロールできなくなり、蔵に捕らえられたところを、陰陽寮の隊員達によって「鬼憑きの面」を外す事に成功し、助けられた。しかし、外したあとも「鬼憑きの面」の呪いは続いており、一つの季節に一つ以上の魂を「鬼憑きの面」に食べさせなければ「鬼憑きの面」に殺されてしまう、という契約を結ばされてしまう。 結果、その魂を得るために、自身も陰陽寮に入隊した。自分同じく兄のいる露草とは気が合う。
萱草 (かんぞう)
「陰陽寮」の一員の少年。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした黒のウルフカットにしている。「白児(しらちご)」と呼ばれる、犬神の使役物であり手足であり、生まれた時に犬神から「白児」として見定められた際に、その証として額を嚙まれており、額に牙痕がある。そのため自分の犬神である朽葉に強い執着心を抱いている。朽葉が祖父を亡くし、天涯孤独になっていたところを見つけ出し、一時期朽葉の世話をしていた。 その後、朽葉と安心して暮らせる場所を探すため、一度朽葉のもとを離れるが、そのあいだに朽葉が沙門に保護されてしまい、ばらばらになってしまう。しかし沙門が保護者にふさわしい人間であると判断し、無理やり取り返す事はせず、朽葉を預けて自分は「陰陽寮」に入隊して生活していた。 その後、藍鼠と共に突如朽葉のもとに現れ、「陰陽寮」に入隊するよう誘い、無理やり連れていく。感情的でかっとなりやすく、特に朽葉の事になると暴走しがちな一面がある。そのため六合鴇時と出会った頃は、朽葉の事ばかり考える生き方をしていたが、鴇時達とかかわるうちに人間的にも成長していく。 同時に朽葉に対しても、ただ強い執着心を抱くのではなく、兄として朽葉を守るという考えに変わっていく。緋褪の事を「陰陽寮」入隊当初から慕っており、母親、あるいは祖母のように大切に思っている。
鳩羽 (はとば)
「陰陽寮」の一員の中年男性で故人。ちょんまげ頭で、顎ひげを生やしている。元は緋褪に従っていた妖(あやかし)使いで、管狐を使役している。陰陽寮の結成メンバーにおいては、緋褪に次いで、2番目の年長者であった。口も態度も荒いが、面倒見のよい性格。紅鳶を守るために陰陽寮に入隊した黒鳶の指導役を引き受け、妖を使役して戦う方法を教えた。 料理が得意で、表向きは居酒屋の亭主として働いている。また、元は個人で祓い屋をしていた。しかし、子飼いにしていた妖の妖気にあてられて徐々に正気を失い、最後の仕事として大かわうそ退治を行ったあと、行方不明になっていた。その後死亡するが、その死体は夜行によって回収されてあやつられ、敵として陰陽寮の隊員達の前に再度現れる。
すずめ
「陰陽寮」の一員の若い男性で故人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたボブヘアにしている。三白眼で鮫歯が特徴。鳩羽同様、元は緋褪に従っていた。おしゃべりな皮肉屋で、容赦のない辛辣な発言が多い。紅鳶の「鬼憑きの面」に似たお面を持っており、お面をつける事で、その力を活用して戦う。 そのため、陰陽寮に入隊せざるを得なくなった紅鳶の指導役となる。しかしお面の妖気にあてられて徐々に正気を失っていき、ある時ふっといなくなり、行方不明になっていた。その後死亡するが、その死体は夜行によって回収されてあやつられ、敵として陰陽寮の隊員達の前に再度現れる。緋褪には非常に心を許しており、甘えていた。
沙門 (しゃもん)
朽葉の育ての親。「あまつき」で寺の和尚として働く傍ら、妖(あやかし)退治を行っている壮年の男性。住んでいる地域の顔役でもあり、2年前に篠ノ女紺が「あまつき」に突如現れて以来世話をしている。明るく面倒見のいい性格で、紺と同じく別世界からやって来たと語る六合鴇時を引き取り、寺に住まわせる。朽葉とは、朽葉が祖父を亡くし、助けにやって来た萱草も席を外していた際に出会い、萱草の存在を知らぬまま朽葉を引き取って育てた。 そのため、朽葉には非常に慕われている。都合の悪い事があると、すぐに寝たふりをしてやり過ごす。
平八 (へいはち)
篠ノ女紺の友人で、「あまつき」の木戸番として働く若い男性。ちょんまげ頭に三白眼が特徴で、顔がひょっとこに似ている事から、紺にはそう呼ばれている。心優しくお人好しな性格で、トラブルに巻き込まれやすい。そのため、六合鴇時と紺が計画した侍を脅かす計画に協力したり、町で偶然出会った露草に、殺人事件を止めるため協力したりとさまざまな活躍をする。 子供に人気がある。
胡僊 (こせん)
坂守(さかがみ)神社で、妖(あやかし)退治を行っている若い僧。前髪を眉上で短く切ったツンツンのショートカットヘアをし、鼻の周りにそばかすがある。中流武家の三男として生まれ、これといった特技のない自分に悩んでいたが、ある日、妖が見える力を活かして、沙門のもとで修業をする事になった。その際に名前を「三郎」から現在の「胡僊」に変えた。 その後、妖退治をしたい意思を買われ、沙門から坂守神社を紹介され、働いていた。しかし坂守神社で異変が起きた際、強制ログアウトせざるを得なくなった篠ノ女紺が、自分がログアウトしているあいだのダミーとして胡僊を選んだ。容姿は紺だが、生い立ちは主に胡僊のもののままという設定に書き換えられてしまう。そして、胡僊自身はその自覚がないまま「紺」として生きる事になってしまった。 六合鴇時と再会しても、鴇時の事がわからなかったのは、そもそも鴇時に関する情報を持っていなかっためである。また、容姿が紺と同じになっただけなので、紺とは違い、右腕は問題なく動かす事ができる。その後は5年前に江戸に出て来たのち、小料理屋の手伝いをしていた際、沙門の紹介を受けて、坂守神社で住み込みで働くようになった、という設定で暮らしていた。 そのため鴇時の事は、なぜか自分を友人と称し、よく会いに来る見覚えのない男性と思っていた。そのうち、自らの多くの矛盾に気づき、鴇時を信じて同行するようになる。その頃から、「あまつき」の再設定時に、紺が記憶を書き換えられたと思い込んでいる鴇時からは、再設定前を「篠ノ女」再設定後に出会った胡僊の事を「紺」、と区別して呼ばれるようになった。 やがて再ログインして「あまつき」に戻って来た本物の紺と再会し、成り代わられそうになる。しかし、自分の正体が紺とは無関係の別人で、一時的にダミーとして利用されていただけだとしても、鴇時に協力したいと考え、同行を続ける。
徳川 家茂 (とくがわ いえもち)
「あまつき」における第14代将軍の若い男性。ちょんまげ頭に、口元にほくろがある。漆原朱緑 の意向により、性別は違うが、千歳萌黄に非常によく似た容姿に作られている。明るく爽やかな性格。対帝天に向けて、佐々木只二郎と共に戦力を集めていた。
新門 辰五郎 (しんもん たつごろう)
江戸の大親分。町火消でとび職で、香具師の男性。そして浅草寺の門番も務めている、通称「を組の辰五郎」。3000人を超える子分がいる。ちょんまげ頭をし、頭部の左側に網目状の傷跡があり、さらに左目を通過する形で一本線の長い傷跡がある。坂守(さかがみ)神社が崩壊したのがきっかけで、江戸幕府と朝廷の関係が崩壊してしまい、倒幕運動が高まった。 その責任が鴇時と「陰陽寮」にあるのではと考え、鴇時がどんな人間なのか見に来る。バックには幕府の要人がついている。
夜行 (やこう)
「四天」の一人で、帝天に最も近い存在。布をかけて顔を隠しており、布に書かれた紋様は「千歳コーポレーション」の企業マークと同じ形をしている。「大江戸幕末巡回展」に来た六合鴇時を鵺(ぬえ)と共に襲い、「あまつき」に閉じ込めた張本人。その後も帝天の命令で、何度も鴇時達と戦う事になる。すずめや鳩羽など、死んだ人間の身体を利用して戦う事ができる。
ぬらりひょん
帝天から妖(あやかし)がこれまで通り生きられる「あまつき」を取り返すため、篠ノ女紺と協力して暗躍している妖。頭部が極端に長い、和服を着た老人男性の姿をしている。妖の中で最も賢く、独自に「あまつき」の成り立ちを調べ、紺と手を組む。そのため夜行の仲間のふりをする事で夜行の裏をかき、情報を集めている。
帝天 (ていてん)
「四天」の頂点に立ち、「あまつき」におけるすべての権限を持つ謎の存在。その正体は不明。「あまつき」に生まれたすべての存在は、帝天により心と体を与えられる。「あまつき」にあるすべてのものを自在にあやつる事ができ、「再設定」という方法で、あまつきにいる存在の生い立ちや記憶といったものを描き替える事ができる。
半 璃寛 (はした あきのぶ)
「彼岸」で白藍のもと、産業スパイとして働く壮年の男性。璃々の養父でもある。かつては警察官で、桑田蘇枋とも親しくしていた。そのため、六合鴇時とも知り合い。十条和桜(煤竹)からは「ドロボウ」呼ばわりされている。前髪をカチューシャで上げて額を全開にし、髪全体を後ろに流した髪型をしている。ある日、仕事で千歳コーポレーションの、夢を実現させるという謎のプログラムと、それを作り出した千歳緑に関心を持ち、和桜に調査を依頼する。 しかし、調査が始まってすぐに和桜の家が襲われた事で、さらに千歳コーポレーションに不信感を抱く。その後、白藍の命令で青鈍(藍鼠)、和桜と共に千歳コーポレーションがかかわっている「大江戸幕末巡回展」に、アルバイトスタッフとして潜入する。 しかしその途中、「大江戸幕末巡回展」には、漆原朱緑もかかわっている事を知り、朱緑のSPにより捕まる。その後は璃々と共に新橋病院に入院させられ、強制的に「あまつき」に送られてしまう。やがて梵天が空五倍子を誕生させる際の素材の一つとなり、自身が「彼岸」から「あまつき」に送られたという自覚がないまま、空五倍子として生きていた。 だが、空五倍子として、いつもつけていた仮面が壊れたのをきっかけに、空五倍子のほかの要素と分離し、半璃寛としての記憶を取り戻す。それ以降は「彼岸」での記憶を持つ人物の一人として、鴇時と共に「あまつき」の謎を解いていく事になる。朱緑との因縁は深く、警察官として働いていた頃、朱緑が璃々を使って人体実験をしている事を知り、そこから助け出す形で璃々を養女にした。 その後も朱緑の存在を非常に恐れている。
煤竹 (すすたけ)
「あまつき」で、梵天、露草、空五倍子の仲間として暮らす若い男性。「天座」の一員ではあるが、妖ではなく人間で、その正体は「彼岸」でハッカーとして活動する若い男性、十条若桜である。ある日半璃寛から、千歳コーポレーションと千歳緑について調査を依頼される。しかし、調査開始直後に千歳コーポレーションの手のものと思われる存在に襲撃され、青鈍(藍鼠)のもとへ身を寄せる事になる。 その後「大江戸幕末巡回展」に、璃寛と青鈍の三人で潜入するが、その途中で何らかの問題が起き、強制的に「あまつき」に送られてしまった。その後、自分が「彼岸」の人間である事を忘れて煤竹として生きる事になる。同じように「あまつき」に送られていた璃寛が空五倍子から分離し、記憶を取り戻した姿を見たのがきっかけで、自分も記憶を取り戻す。 若桜の時は璃寛から「ドブネズミ」と呼ばわりされており、前髪を目が隠れそうなほど伸ばした刈り上げヘアにゴーグルをかけ、眉や耳、唇などに大量のピアスをつけた派手な格好をしている。性格は頭脳派で用心深い。しかし、煤竹になった際は印象が大きく異なり、前髪を眉上で短く切って髷を結っている。 性格もどちらかといえば単純で、不注意で敵の罠にかかってしまった事もある。また、口調も和桜の時と煤竹の時では異なる。
藍鼠 (あいねず)
「陰陽寮」の一員で、表向きは医者として働く若い男性。正体は「彼岸」で、姉の白藍と共に産業スパイとして活動する若い男性の青鈍。血筋は中国系だが、祖母の代からずっと日本暮らし。しかし、白藍が中華風の服装を好むため、彼女に合わせてチャイナ服を着ている。ある日、仕事で「千歳コーポレーション」と千歳緑について調査する事になり、白藍の命令で、半璃寛、十条和桜(煤竹)と三人で千歳コーポレーションがかかわっている「大江戸幕末巡回展」に、アルバイトスタッフとして潜入する。 しかしその途中で何らかの問題に巻き込まれ、「あまつき」に強制的に送られてしまった。その後は自分が「彼岸」の人間である事を忘れ、藍鼠として生きる事になる。 同じように「あまつき」に送られていた璃寛が空五倍子から分離し、記憶を取り戻した姿を見たのがきっかけで、自分も記憶を取り戻す。青鈍の時は、前髪を左寄りの位置で斜めに分け、肩につくほどまで伸ばしたウルフカットに眼鏡をかけている。穏やかな雰囲気の優男で、敬語で話す。藍鼠の時は前髪を右寄りの位置で斜めに分け、肩につくほどまで伸ばした黒のセミロングヘアをハーフアップにし、かんざしでまとめている。 いつも笑顔の、中性的で穏やかな雰囲気だが、目的のためには手段を選ばない性格。藍鼠としての人生が始まった当初は、自分に関する記憶を失っているが、医療に関する知識は深いという奇妙な状態にあった。緋褪の事を非常に慕っている。しかし、緋褪の人柄だけでなく、緋褪の身体も、医者として非常に関心をそそるものだった事から、彼女を治療対象として貴重に感じて愛してしまうという、歪んだ愛情を抱いている。 青鈍の時と藍鼠の時で、比較的印象が変わらない。
漆原 朱緑 (うるしばら あけみ)
瑠々の父親で、「あまつき」の創始者の一人である若い男性。前髪を真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばした、癖のあるボブヘアにし、上下の歯すべてに矯正器具を付けている。大学時代カルトサークル「空想科学同好会」の中心人物として、人間を進化させるべく、「LACQUERWARE(うるしざいく)」のハンドルネームを使って璃々を含めた子供達を集め、人体実験を行っていた。 それを匿名の通報により知った半璃寛ら警察に逮捕され、その後は心神喪失状態にあると判断され、医療施設へと送られた。しかし、その後司法取引により退院。サイバー系の企業に雇われたという噂がある。「大江戸幕末巡回展」にも深くかかわっており、ある日、現場を訪れたところ、璃寛を発見する。 そして璃々ともども璃寛を捕らえ、璃寛を「あまつき」へ強制的に送り込んだ。千歳緑(梵天)が一度「あまつき」から目覚めて「彼岸」に戻ってきた際、管理者権限の一部を与えられたのも朱緑である。
璃々 (りり)
漆原朱緑の娘で、半璃寛の養女の幼い少女。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。白藍の好みで、ゴシックロリータ風の服装をしている。非常におとなしい性格。朱緑の娘として生まれるが、人体実験に使われ、脳をいじられて生きていた。それを匿名の通報から知った璃寛によって助けられ、璃寛の娘として生きる事になった。 人体実験の結果、海馬が異常発達しており、プログラミング言語が読めるが普通の言葉はほぼ話せず、情緒面が未発達で表情の変化に乏しい。璃寛が「千歳コーポレーション」の調査を行っているあいだは事務所に預けられていたが、璃寛が「大江戸幕末巡回展」での調査中に朱緑に見つかったのを機に、璃寛と共に朱緑に捕らえられる。 六合鴇時と璃寛には「あまつき」の真朱と同一人物と推測されていたが、実際は解離性同一障害で人格が「真朱」と「璃々」の二つに別れてしまっている。幼児退行している人格が真朱、本来の年齢通り精神的に成長しているのが璃々である。しかし同じ体験をしているため、真朱としての記憶も保持している。新橋病院にて、上半身が人間の少女、下半身が蛇という姿で、かつて真朱として親しくしていた露草と再会する。 その際、上半身は精神年齢を反映した姿になっており、中学生から高校生程度の少女の姿をしている。
白藍 (しらあい/ばいらん)
藍鼠の姉で、「彼岸」で産業スパイとして活動する若い女性。前髪を左寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアで、右側の髪だけを肩につくほどまで伸ばしたアシンメトリーな髪型をし、眼鏡をかけている。チャイナ服を着ている事が多い。主に「しらあい」と呼ばれているが、おじからは中国語読みの「ばいらん」と呼ばれている。一見クールで落ち着いた雰囲気だが毒舌家で、特に親しい男性には暴言を吐いたり、八つ当たりをする事もある。 ストレス解消法は、人に華やかな服を買い与えて着せる事で、青鈍と璃々によく服を買っている。
桑田 蘇枋 (くわた すおう)
六合鴇時の兄貴分で故人。「彼岸」の人間で、運び屋として活動していた。前髪を上げて額を全開にし、髪全体を後ろに流した髪型に、顎ひげを伸ばしている。左眉の上に、丸い形の傷跡がある。明るく豪快な性格で、面倒見がいい。鹿児島県出身で、5歳で集団上京し、中学生になる頃に素行が悪化。高校生になる頃には暴走族に入っていた。 しかし仲間内の評判はよく、不良だが暴力行為は嫌っていた。4回の補導歴があり、半璃寛とはそれがきっかけで知り合った。8年前、街で迷子になった、当時小学生の鴇時を保護した事で鴇時と出会う。その後も桑田蘇枋に関心を持った鴇時が、何度も蘇枋の家を訪問するようになった事で親しくなる。しかし、その1年後、踏切事故で亡くなってしまった。 遺体は面会できないほどのひどい状態だったと言われており、鴇時や璃寛も見る事ができなかった。そのため璃寛は、蘇枋が実は生きているのではと考えている。もともとは新宿付近を根城にする暴走族で、暴走族を抜けたあとに運び屋となり、裏では有名な人物となっていた。しかし大きな事件に巻き込まれて廃業し、その後は普通の運送屋として働いていた。 だが、実際は事件に巻き込まれたのではなく、自ら警察に情報提供し、大量の犯罪者を告発していた。どんな些細な別れも大げさに惜しむというのがポリシーで、少し会えないだけでも、鴇時にしっかり別れの言葉を残し、自分の片身として持ち物を渡したりしていた。鴇時が坂守(さかがみ)神社で一度篠ノ女紺と別れた際、自身の眼帯を紺に預けていたのは蘇枋の影響。
千歳 萌黄 (せんさい もえぎ)
梵天(千歳緑)の姉で、六合鴇時の知人の若い女性。千歳コーポレーションの創始者夫婦の娘であり、千歳コーポレーションの技術「脳インターフェイス」を作り出した張本人でもある。髪型は、前髪を右寄りの位置で斜めに分け、腰まで伸ばしたストレートロングヘアで、口元にほくろがある。漆原朱緑の意向により、「あまつき」の人間である第14代将軍、徳川家茂は、千歳萌黄に非常に容姿がよく似ている。 千歳コーポレーションの人間として英才教育を受けるが、頭をよくする事に両親がこだわりすぎたせいで両親との軋轢が生まれ、少女の頃から家出を繰り返していた。そして10年前、萌黄の仲間によって緑が誘拐未遂をされた事件により、緑が頸椎を損傷し、指一本動かせない身体となってしまう。 そのため強い責任を感じ、どうにか緑を生かすべく研究に没頭した結果、「脳インターフェイス」の開発に成功。しかし、緑の名義で発表したため、世間は緑が開発したものだと考えていた。「ちとせ」と名乗って行動する事もあり、8年前、街で迷子になった当時小学生の鴇時を、桑田蘇枋が保護してきた事で鴇時と出会う。 鴇時に対しては明るく気さくで、親しみやすい姉のような存在だった。蘇枋に思いを寄せているが、恋人ではない。半璃寛のような、警察官の事は苦手。
マスター
小学生の篠ノ女紺が親しくしていた喫茶店のマスター。スキンヘッドにサングラスをかけて口ひげを生やし、筋肉質のがっしりとした体格をしている。一見強面だが非常に面倒見がよく、ある時から自分の店に入り浸るようになった紺と、実の親子のように親しくなっていく。紺の、優秀だが実体験に乏しい点を案じており、店でアルバイトをさせたり、料理や釣りなどを教えた。 周囲には気づかれないように振る舞っているが、実は両目は義眼。過去に失明しており、人口角膜手術を受けたが失敗し、その後非合法の手術を受け、現在は人口眼球を目に入れて生活していた。しかしそれもうまくいかず、再手術するお金もなく失明の危機にあったところを紺が知り、紺は手術費を手に入れるために、当時「LACQUERWARE(うるしざいく)」と名乗っていた漆原朱緑の研究パートナーになってしまった。
紅葉 (もみじ)
六合鴇時の幼なじみで、同じ高校のクラスメイトでもある1年生の女子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸まで伸ばしたロングウエーブヘアを頭の高い位置でツインテールにしている。明るく活発な性格。日本史は苦手で、補習授業の一環で、同じく補修になった鴇時と、自主的に参加した紅葉と共に「大江戸幕末巡回展」を訪れる。
中原 (なかはら)
六合鴇時と紅葉の友人で、同じ高校のクラスメイトでもある1年生の女子。前髪を眉上で短く切り、髪全体をツンツンに立てたショートカットヘアにしている。身長が低く、非常に小柄。大の時代劇ファンで日本史の成績もいいが、日本史の補習グループにわざと潜り込み、鴇時と紅葉と共に「大江戸幕末巡回展」を訪れる。日本史に明るくない鴇時と紅葉に、江戸時代についての解説をする。 時代劇の話題になると話が止まらなくなる。
集団・組織
陰陽寮 (おんみょうりょう)
佐々木只二郎と緋褪によって作り上げられた、妖(あやかし)退治組織。立場上は幕府直属の護衛隊となっているが、隊員は素性不明のものが多く、完全な能力主義のもと、身分や藩も性別や性格も、前科すら問わずに選ばれている。作られた当時は、幕府に妖の存在を重要視するものは少なかったため、将軍と一部の権力者の断行で生まれたに等しかった。 そのため本格的に活動を開始するまでは閑職とそしられていたが、活動を始めてすぐにいくつもの不可解な事件を解決し、将軍の信頼を得るようになる。結果、只二郎は幕府内でもかなりの権力を得る事になった。坂守(さかがみ)神社とは異なる妖退治の専門家を揃えており、場合によっては共闘する事もあるが、基本的にはそりが合わず、つかず離れずの関係を保っている。 隊員達は鬼や妖(あやかし)を使役する事で鬼や妖を退治しており、隊員の中には、自ら使役していた鬼や妖の穢れに飲まれ、行方不明になってしまったものもいる。
千歳コーポレーション (せんさいこーぽれーしょん)
現在の日本で、総合アミューズメント部門における最大手の企業。企業マークは、人間の目玉のような形をしている。千歳常盤と千歳千草の夫婦と、その子供である千歳萌黄、千歳緑の四人を中心に構成されており、そこに親類縁者、関連企業が下につく形でできている。視覚娯楽分野に特化しており、神経補綴学(ニューラル・プロティクス)から派生したコンピュータ・ニューロサイエンスという学問分野において急成長した。 中でも脳とコンピュータをつなぐ装置「脳インターフェイス」の精細化に成功しており、その開発者は緑であるといわれている。グループ結成からはまた30年ほどで、かつては中小企業だった。しかし、ここ10年で急激に成長しており、同時期にその功労者であるとされる緑が公の場から姿を消している事から、何らかの関係があると見なされている。 しかし、実際に「脳インターフェイス」を開発したのは萌黄で、萌黄は自分のせいで緑の誘拐未遂事件が発生したため、緑の名義で技術を公表したというのが真相である。
場所
あまつき
新橋病院と千歳コーポレーションが作り出した脳内ホスピスで、最新のターミナルケアシステム。また、千歳コーポレーションと漆原朱緑の合同実験場でもあり、六合鴇時は原因不明なまま閉じ込められ、篠ノ女紺は不正ログインする形で侵入していた。対義語として、鴇時と紺がもともといた現実の世界を「彼岸」と呼ぶ。 終末期医療や再生医療、そして福祉ロボティクスを兼ね備えた実験的装置で、脳インターフェイスを使用して人間の脳波をすべて読み取り、幕末の日本をイメージした仮想空間に、脳インターフェイス装着者にとっての「もう一人の自分」を作り出す事ができる。さらに該当患者同士の脳をインターフェイスでつなぎ合わせる事で、仮想空間にいるという孤独感や箱庭間をできるだけなくし、バーチャル世界での疑似人生をつつがなく送らせている。 そのため、たとえ「彼岸」において寝たきりだったとしても「あまつき」においては健康な人間として、ほかの人々と存分に生きる事ができるようになっている。「あまつき」は10年前、千歳緑すなわち梵天が、姉の千歳萌黄の仲間に誘拐未遂をされ、その際に負ったケガで頸椎を損傷し、指一本動かせない身体になった事がきっかけで、研究が推し進められて開発された。 「あまつき」という名前は「雨夜(あまよ)の月」つまり、ありえない事が起こるところ、という意味を込めて付けられた。
彼岸 (ひがん)
六合鴇時達が本来住んでいる、近未来の現実世界。「あまつき」の対義語として「彼岸」と呼ばれる。科学技術が飛躍的に発展している一方で少子化が加速しており、日本人の人口は急速に減少している。さらに日本人は都市部に住む層と地方に住む層の二極化が進んでおり、この二極化には、人手不足を補うための労働力の機械化とネットワークの進化が後押しになったと考えられている。 そのため子供達は自宅学習や私塾で資格を取るケースと、より高度な教育を求めて都市部の学校へ入寮するケースに別れて勉強している。
その他キーワード
大江戸幕末巡回展 (おおえどばくまつじゅんかいてん)
文部科学省推奨の次世代型展示場で、江戸時代の暮らしを再現した国内最大級の文化アミューズメント施設。全身は上野の江戸東京博物館。最先端技術を利用したCGとの合体により、幕末頃の日本人の暮らしを体験できる「触って歩けるバーチャル」が売り。来場者は入り口で和服に着替えたのち、展示を見るための特別なゴーグルを受け取る。 このゴーグルは特別性の簡易ディスプレイで、装着すると会場にセットされたデータと連動し、天井や壁に貼られたブルーシートに空や風景を合成した状態で展示を楽しむ事ができる。そのため実際にその世界の中にいるような、リアルな体験ができる。ブルーシートには出口までの案内図が印刷されているため、もし迷った場合はゴーグルを外して、ブルーシートの案内に従う事で外に出られる。
天網 (てんもう)
「あまつき」の世界の設計図で、「あまつき」の行く末を描いた網。「あまつき」に生まれたすべての存在は帝天により心と体を与えられ、たくさんの心と体が集まる事により世界に運命ができ、それが「天網」と呼ばれている。銀朱のような「四天」のみが天網を読み解く事が可能で、帝天と、「白紙の者」である六合鴇時だけが天網を新しく紡ぐ事ができる。
四天 (してん)
「あまつき」の世界に四人だけ存在する「天網」を読み解く力を持つもの。帝天を頂点に置き、帝天の力を分け与えられた三天(さんてん)である銀朱、夜行、梵天の四名で構成されている。銀朱は「暁天(ぎょうてん)」夜行は「告天(こくてん)」の別名でも呼ばれる。