概要・あらすじ
三十路の独身サラリーマン河地大吉は、祖父鹿賀宗一の訃報を聞き駆け付けた先で見知らぬ少女と出会う。宗一の隠し子であったその少女鹿賀りんは、一切言葉を発しようとしない無愛想な子だったため、周囲からあまりいい印象を抱かれていなかった。りんを引き取ることに対して渋る親戚らをみかねた大吉は、自ら彼女の育児を買って出る。
その後、りんを自宅へ連れてきて、彼女と共同生活を始めるのだった。自身の家族や周囲の人々に支えられながら、男手ひとつでりんを育てていく大吉。少しずつながらも、大吉とりんは家族としての関係を築き上げていく。
登場人物・キャラクター
河地 大吉 (かわち だいきち)
衣料品メーカーで働いている、30歳独身サラリーマン。芯が強くて正義感に溢れているが、うっかりした一面もある。祖父鹿賀宗一の葬儀で彼の隠し子鹿賀りんと出会い、引き取りを渋る親戚らに代わって彼女の世話をすることになった。りんと共同生活を送るようになってからは、生活に変化が生じていく。 りんの母親吉井正子の正体を知った当初は、すぐにでも正子へりんをかえす覚悟があった。しかし、正子と直接会ったときに自分のほうが保護者としてマシだと考え、以降、りんがひとりで生きていけるようになるまで面倒をみていく決心を固める。実は女性と子どもが苦手。
鹿賀 りん (かが りん)
鹿賀宗一と吉井正子の間に生まれた女の子。自分のことは自分でやるという強い意志を持っている。宗一の隠し子だったため、彼の親族たちに存在を知られていなかった。宗一が亡くなったことにより孤児になってしまう。宗一の葬儀で出会った彼の孫河地大吉に引き取られてからは大吉が住む家で暮らし始める。 共同生活を始めた当初は、「死」に対して恐怖を抱えてひとり思い悩んでいたが、大吉に慰められたことがきっかけで悩みが吹っ切れた。以降、大吉に対して徐々に心を開いていくようになる。戸籍上では大吉の叔母にあたる存在。
二谷 コウキ (にたに こうき)
鹿賀りんの幼馴染で、彼女とはにこにこ保育園へ通っていた頃に出会った。やんちゃな性格だが、優しい心の持ち主である。りんと小学校へ向かう途中で彼女の隣家に住むおじさんに話しかけられた際は、不審者と勘違いして、必死にりんを守ろうとしたこともあった。幼い頃に両親が離婚しているため、現在は母二谷ゆかりとふたりで暮らしている。
二谷 ゆかり (にたに ゆかり)
働きながらひとり息子二谷コウキを育てるシングルマザー。自身の性格に似て無愛想になってしまい、なかなか友達ができないコウキのことを常に心配している。コウキの友達鹿賀りんの育て親である河地大吉とは何かと助け合うことが多く、交流が深い。大吉とりんが初めて見たときに驚いたほどの美人である。
鹿賀 宗一 (かが そういち)
河地大吉の祖父で鹿賀りんの父親。大吉が30歳、りんが6歳のときに亡くなる。存命していたころ、親族に内緒でりんのことを育てていた。その際、りんの母親吉井正子を家政婦として雇っていたことがある。りんや正子への想いを綴った遺書をりんの母子手帳の中に隠していた。 後ほど大吉に見つけられる。親戚一同が驚くほどに、若かりし頃は大吉とそっくりの容貌だった。
吉井 正子 (よしい まさこ)
鹿賀りんの実母。かつて鹿賀宗一のもとで家政婦をしていた。現在は「西園寺まろん」というペンネームで漫画を描いている。子どもを育てながらだと漫画家の仕事を続けられないと考え、仕事を優先してりんを手放した。出産後もりんに自身が母親であるという事実を隠し続けている。人付き合いが極端に苦手で基本大人しい性格。 だが、初めて宗一の孫河地大吉と対面したときはサラッと毒舌を吐いたことがある。
前田 春子 (まえだ はるこ)
河地大吉の従妹。彼が育てることになった少女鹿賀りんと同じ年の娘前田麗奈がいる。りんをどうやったら保育園へ入れられるか悩んでいた大吉に、「緊急一時保育」の存在を伝えた。夫秀行との関係がうまくいかず、大吉の住む家に何日か居続けたことがある。秀行と離婚した後、麗奈が度々秀行と会っているのが気にくわない様子。
前田 麗奈 (まえだ れいな)
河地大吉の従妹である前田春子の娘で、明るく活発的な少女。鹿賀宗一の葬式会場で出会った鹿賀りんのことを、最初は言葉を話さない変な子だと思っていたが、その場でりんと仲良くなった。後日、遊ぶ約束を交わす。春子とともにりんが住んでいる大吉の家を訪れた際には、りんと共に甘食を食べたり風呂に入ったりした。
日高 (ひだか)
河地大吉と同じ衣料品メーカーで働くサラリーマン。営業部の上司を務めている。幼少児鹿賀りんを育てることになった大吉から残業のない課へ移動したいと相談を受けた際には、大吉が他の部署へ移動することに対して心配しつつも、彼の要望に応えて部長に部署転換の話をつけた。既婚者であるため、子育ての大変さを十分理解している。
後藤 (ごとう)
河地大吉と同じ会社に勤めており、保守的な会社体勢をものともせずばりばり働くワーキングマザー。妊娠してからは自分から降格を希望して、定時に帰るようになった。そのため社内中で騒ぎになったことがある。急に少女鹿賀りんを引き取ることになった大吉から相談を受けたとき、最初は驚いたものの、大吉のよき相談相手としてアドバイスを送った。
河地 幸子 (かわち さちこ)
河地大吉の母親。父鹿賀宗一に隠し子鹿賀りんがいたことを知り、驚いたと同時に親戚にどう伝えればいいのか思い悩んでいた。宗一の葬儀が終わった後に大吉がりんの育児を買って出たとき、猛反対する。後日大吉とりんが家を訪れてきたときにりんへの態度を改めた。次第にりんと打ち解けていく。
河地 カズミ (かわち かずみ)
河地大吉の妹。言いたいことがあったら遠慮なしに言う、少しわがままな女性。母河内幸子と同様、大吉が幼少児鹿賀りんを引き取ることに対して反対していた。その後りんと両親がいつのまにか打ち解けあっていたことに驚くが、自身も段々とりんへの態度を少しずつ変えていく。働きながら子育てをするのはありえないと思っている。
織田 (おだ)
河地大吉が働いている衣料品メーカーに新人社員としてやってきた女性。営業課へ配属された。大吉に興味を持ち、頻繁に彼がいる出荷部へ足を運ぶようになる。大吉に出荷部へ移動したいと軽く言ったときには、彼に突っ放されてしまった。大吉に子どもがいると聞いた瞬間、逃げるようにして彼の前から立ち去り、後日会社を辞めてしまう。
集団・組織
にこにこ保育園 (にこにこほいくえん)
『うさぎドロップ』に登場する保育園名。仕事を早く上がれない河地大吉が鹿賀りんを預けた場所。この場所でりんは、わんぱく少年二谷コウキと出会う。大吉が、後々よき理解者となるコウキの母二谷ゆかりと初めて出会ったのもここである。卒園式のときにはお遊戯会が開かれて、子供たちが親の前で演奏したり踊ったりした。